放送研究と調査
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69 巻, 8 号
放送研究と調査
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 「メディア利用動向調査」を読み解く
    黛 岳郎
    2019 年 69 巻 8 号 p. 2-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    アメリカのNETFLIXとAmazonプライム・ビデオが日本でサービスを開始して3年が経過した。放送事業者は独自の有料動画配信を展開し対抗する一方で、連携も深めている。有料動画配信のユーザーはどれくらいいて、今後、サービスはどこまで拡大していくのかについて、NHK放送文化研究所が2016年から毎年行っている世論調査「メディア利用動向調査」の結果分析を中心に考察した。有料動画配信市場の今後について分析を進めていくうえでは、2つの観点を設定した。WOWOWやスカパー!といった有料多チャンネル放送の加入者と、YouTubeなどの無料動画配信のユーザー、それぞれの調査結果を掘り下げることで、有料動画配信に加入する可能性があるのかをみていった。有料多チャンネル放送加入者については、現状においても有料動画配信に加入する動きがみられ、今後もこうした動きが続きそうだ。ただ、アメリカで起きているような有料多チャンネル放送から有料動画配信への乗り換え、いわゆる“コードカッティング”が日本で起きる可能性はしばらくの間は低いと思われる。一方、無料動画配信ユーザーについては、有料動画配信に加入する動きが増えるかどうか、断定できる材料は見つけられず、むしろ無料動画配信のサービス内容の充実が有料動画配信への加入を遠ざけているのかもしれない、という傾向を感じ取った。
  • 東京 2020 パラリンピックをきっかけに
    山田 潔, 中村 美子, 渡辺 誓司, 越智 慎司, 大野 敏明
    2019 年 69 巻 8 号 p. 20-37
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    東京2020パラリンピック競技大会開催を機に、障害の有無にかかわらず誰もが自分の可能性を発揮でき、互いを尊重し合える共生社会実現の機運が高まっている。果たして放送はどのような役割を果たせるのであろうか。NHK放送文化研究所は2019年3月、「文研フォーラム2019」の中で「共生社会実現と放送の役割~東京2020パラリンピックをきっかけに~」と題したシンポジウムを開催した。パネリストは、1998年長野パラリンピック金メダリストで、パラリンピック教育を通じて障害者の理解促進に取り組むマセソン美季氏、イギリス・チャンネル4で2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロのパラリンピック放送に携わり、現在は商業テレビのITVでダイバーシティー部門の責任者を務めるアディ・ロウクリフ氏、NHKで東京2020パラリンピック関連の取組みを指揮する樋口昌之氏。シンポジウムの中でマセソン氏は、工夫次第で誰もが同じ舞台に立てるという、共生社会に通じるパラリンピックの理念を意識した放送が必要とした上で、アスリートのインパクトや魅力を伝えることは障害者への偏見を打ち壊す一方、障害者=アスリートといったステレオタイプの障害者像を刷り込むリスクにつながることにも言及。多様な障害者の社会参加に繋がる放送が重要だと語った。ロウクリフ氏は、パラリンピック放送のエポックとなったロンドン、リオ大会のチャンネル4の斬新な視聴促進キャンペーンや、現在携わるITVの番組や制作現場のダイバーシティー化について報告。一般番組や制作現場に当たり前のように障害者が登用される状況をつくり、その視点を入れることが、共生社会を実現する上で重要だと発言。さらにダイバーシティー化によって生まれる多様な視点は、創造性あふれるコンテンツの開発や、イノベーションにも繋がると語った。またNHKの樋口氏は、2018年ピョンチャン大会を機に起用した障害者リポーターの存在が、制作現場に少しずつ意識変化を及ぼしていることを報告。東京2020パラリンピックに向けては、自国開催という絶好の機会をどう生かしきるかが大事であり、周知広報を徹底するともに、競技中継だけでなく選手の人生や取り巻く環境などを丁寧に描き、障害者に対する理解を深めていきたいと述べた。パラリンピック放送は、共生社会実現に向け、健常者の障害者に対する偏見を打破する起爆剤となり得るが、決して万能薬ではない。放送事業者には、その契機を最大限に生かすことと同時に、一時的な盛り上がりに留まらない持続的な取り組みが求められる。そのためには、放送事業者自らが多様性を受け入れる組織となることが重要であり、パラリンピックの自国開催は改革の大きな契機でもある。
  • 田中 孝宜, 青木 紀美子
    2019 年 69 巻 8 号 p. 38-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    BBCは、かつてロンドン一極集中と批判されたこともあったが、現在は地域への貢献を重要な使命の一つとして、地域サービス充実のための投資を拡大している。スコットランドでは2019年2月に新しい地域放送チャンネルが誕生した。毎日正午から深夜0時まで放送し、スコットランドの生活を織り込んだドキュメンタリーやコメディ、ドラマなどを放送しているほか、平日21時から1時間の地域向けニュース番組「Nine」を新設。従来のローカルニュースとは異なり、ロンドンの中央政治の動きや国際ニュースもスコットランドの視点で伝えている。また、BBCは、報道機関の代表団体ニュースメディア協会とともに地方取材を支援・連携する「ローカルニュース・パートナーシップ(LNP)」を始めた。2027年までの現行特許状の期間中、毎年最大800万ポンド(12億円)を支出し、その予算で地域メディアが地方政治などを取材する「ローカル民主主義記者(LDR)」を雇用する給与など人件費が賄われる。LDRが執筆した原稿は、BBCとパートナーシップを結ぶ全英約850のメディアの間で共有される。2018年は約140人の記者が採用され、1年で5万本を超える原稿が執筆された。LNPは地域の民主主義を守るBBCの新しい取り組みとして注目されている。本稿では、終わりに文研フォーラム2019にゲストとして参加したLNP副本部長とともに、地域ジャーナリズムの課題や連携する意味について話し合ったパネルディスカッションの要旨を採録する。
  • 「メディア利用の生活時間調査2018」から
    吉藤 昌代, 渡辺 洋子, 林田 将来
    2019 年 69 巻 8 号 p. 54-75
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    NHKが1960年から5年おきに実施している「国民生活時間調査」では、インターネットの普及などによりメディア利用行動を時系列で捉えることに課題が生じている。そうした課題を考慮し、生活の中でのメディア利用を詳細に捉えることを目的として、2018年12月に「メディア利用の生活時間調査」を実施した。調査の設計では、細切れのメディア利用行動を捕捉するための工夫をしたり、SNSなどインターネット上のコミュニケーション行動を項目として設定したり、デバイス別の利用や移動中のメディア利用を捉えられるようにするなどした。調査結果からは、スマートフォン・携帯電話は朝の通勤・通学中に利用が多かったり、夜はテレビ視聴のピークより遅れて利用のピークがあることなどを示すことができた。また全体のメディア利用の中ではリアルタイム視聴が多いが、若年層ではSNSや動画、ゲームにもテレビに匹敵する時間量を費やしていることがわかった。詳細な生活シーンに焦点をあてると、朝の通勤・通学中に男20代は、スマートフォン・携帯電話でSNSや音楽やゲーム、ニュースなど様々な利用をしていること、10代は夕食時にテレビも視聴するが、夜間のスマートフォン・携帯電話の利用も活発で、特に男10代ではゲームの利用が多いことなどが明らかになった。このように、若年層ではスマートフォンや携帯電話が日常生活に溶け込み、欠かすことのできないデバイスとして存在感をいっそう増している。
  • “水俣”を終わったことにさせない
    七沢 潔
    2019 年 69 巻 8 号 p. 76-99
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    前編では赴任地の熊本で初めて“水俣”に出会った吉崎健ディレクターが、心身傷だらけになりながら胎児性水俣病患者たちの番組を作り、その後転勤した東京では制作環境に戸惑い、思うように番組を作れないうちに長崎に異動を命じられたことまで伝えた。後編はその後吉崎が長崎からの転勤先に福岡を選び、<地域にこだわる>決意を固め、再び“水俣”に取り組んでいく姿を追う。吉崎は2009年の水俣病特別措置法により「最終決着」が計られる中、たくさんの潜在被害者が切り捨てられる実態をリポート、そこから「終わりにさせられようとしている“水俣”とは何であるのか」の問いをかかげる。まず半世紀以上に渡って“水俣”の社会への発信と患者支援を続けた医師の原田正純と作家の石牟礼道子の生き方と思想を検証、二人の人生をかけた「告発」の本質に肉迫する。さらに戦後史を検証するシリーズに参加、社会階層間に差別の構造をつくり、企業経営者からも、医師からも、官僚からも、人間性を排除していった「日本の近代」の実像を見つめ、いま必要な「救済」とは何であるかを掘り下げた。そして同じように20年以上にわたって水俣にこだわってきたNHK記者・東島大と出会い、東島の粘り強い交渉でチッソの最高責任者・後藤舜吉へのオンカメラ・インタビューが実現、二人は“水俣”を終わらせようとする張本人に切り込み、その「思惑」を白日の下に曝した。吉崎の”水俣“を終わったことにさせない「闘い」はいまも続いている。
  • 留意すべき事柄を考える
    福長 秀彦
    2019 年 69 巻 8 号 p. 100-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    本稿では、誤情報・虚偽情報の打ち消し報道を行うに際して、マスメディアとして留意すべき事柄をピックアップした。留意点は以下の通り。■打ち消し報道は誤情報・虚偽情報と比べ「新奇性」=「ニュース性」が弱いので拡散力が弱いと考えられる。従って、打ち消し報道は繰り返し行う必要がある。 ■打ち消し報道を行うタイミングが早すぎると、誤情報・虚偽情報をまだ知らない人にまで伝え、新奇性の強い誤情報・虚偽情報の中身だけが独り歩きしてしまうおそれがある。 ■誤情報・虚偽情報に惑わされないよう呼びかける打ち消し報道のメッセージは、受け手の心理的抵抗や反発を招かないような工夫が必要である。 ■流言の中には事実と間違いが混然としたものも多い。それらを「デマ」という言葉で一括りにして表現すると、すべてを事実無根、ウソと決めつけてしまうことになりかねない。 ■偽動画はAIのマシンラーニング(機械学習)の手法を悪用して、ますます巧妙化するおそれがあり、アメリカではメディアや大学などが偽動画を見分ける技術の研究を行っている。日本国内でも精巧な偽動画が出回る可能性がある。 ■テレビやラジオで打ち消し報道を見聞きしても、聞き逃しや聞き間違い、早合点をしてしまうこともある。放送画面からネット上などの打ち消し情報(活字・図表)に随時アクセスできれば便利である。
  • 原 由美子
    2019 年 69 巻 8 号 p. 112-115
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
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