放送研究と調査
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最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 戦前の教育・教養番組とテキスト
    村上 聖一
    2025 年 75 巻 1-2 号 p. 2-16
    発行日: 2025/01/01
    公開日: 2025/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ラジオ番組の講座テキストの刊行は、放送開始と同じ1925年に始まった。NHK放送文化研究所では、研究での活用に向けて、戦前のラジオ講座テキストなどをデジタル化する取り組みを進めていることから、それにあわせて、本誌では3回シリーズで、テキストとともに戦前の教育・教養番組について振り返ることにした。
    ラジオ講座のテキストの発行は、語学講座向けの教材や講演番組の書き起こしから始まった。当初は放送局どうしを結ぶ中継網がなかったことから、大阪や名古屋など各放送局で教育・教養番組の制作が行われ、テキストも各地で刊行されるなど形態は多様なものだった。1931年に第2放送が東京で始まり、日本放送出版協会が設立されると、次第にテキストの発行は出版協会へと集約されていったが、東京以外での発行も続き、各地で企画された趣味・教養講座などにあわせて多様なテキストが発行された。
    テキストの普及拡大は1930年代後半にかけて進んだが、太平洋戦争開戦とともに第2放送が休止されると、語学講座も中止され、テキストは、国民学校放送や戦時体制の維持に関連したものなどに制限された。語学講座をはじめとするテキストが復活したのは、太平洋戦争終結後のことだった。
    シリーズ1回目の今回は、戦前のラジオ講座テキストの概要とその歴史を振り返る。そのうえで、第2回、第3回でジャンル別にテキストを分析するとともに、戦前の教育・教養番組の実態について見ていく。
  • 47都道府県アンケートから見る現状と課題
    渡辺 健策
    2025 年 75 巻 1-2 号 p. 16-35
    発行日: 2025/01/01
    公開日: 2025/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2024年1月の能登半島地震をはじめ、大災害が起こるたびに課題となるのが、建物倒壊などの現場で進められる捜索・救助活動の迅速化である。
    最近は、数多い被災現場のうち、捜索活動を優先的に行う対象を絞り込む目的で安否不明者の氏名や住所などを速やかに公表し、消息を知る家族や知人からの情報の提供を促す自治体の動きが広がっている。
    NHK放送文化研究所では、2023年3月に内閣府が安否不明者の氏名公表に関する指針を策定してから約1年を経たのを機に、自治体がどのような対処方針を定めているのか、47都道府県を対象にアンケートを行った。
    その結果、多くの都道府県では、人命救助第一の観点から、個人情報保護の例外として、安否不明者の氏名等を家族の同意の有無に関わりなく速やかに公表する方針を定めていた。しかし、死者の氏名公表については、内閣府の指針に見解が示されなかったこともあり、判断は大きく分かれている。都道府県の中には、遺族の同意を公表の条件とする動きが広がっているが、その一方で死者の氏名も原則として速やかに公表する方針の県もある。
    能登半島地震では、石川県は遺族の同意を得た死者のみ氏名を公表したが、公表されたのは全体の3分の1に満たない。識者からは、死者の氏名が公表されなければ災害の教訓を検証できず、将来の防災対策に生かせないという指摘がある。また、自治体が遺族同意を公表の条件とするのは、これまでのメディアの取材における遺族への配慮が十分でなかったことも原因となっている、と指摘されている。
    災害時の死者・安否不明者の氏名公表はどうあるべきなのか。本稿では、現状から浮かび上がる問題点と今後の課題を探る。
  • 国際比較調査『ロイター・デジタルニュースリポート』から
    税所 玲子
    2025 年 75 巻 1-2 号 p. 36-59
    発行日: 2025/01/01
    公開日: 2025/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿は、イギリスにある「ロイタージャーナリズム研究所」が行っている国際比較調査『ロイター・デジタルニュースリポート』の2024年の調査結果を紹介する3回シリーズの第2回である。“フェイクニュース”に対する意識と、利用が拡大するAI(人工知能)をニュース制作に使用することについての意識を探った。
    日本の“フェイクニュース”に対する不安は、世界よりも低い水準で推移してきたが、ここ数年増加傾向にあり2024年は世界と同じ水準に達した。不安の度合いは、性別や年層、使用する情報源による大きな違いはなく、違いが生まれる要因として「ニュースへの関心」や「政治への関心」の度合いの方が、影響が大きいことがうかがえた。
    GoogleやYouTubeなど個別のプラットフォームごとに、偽情報・誤情報の見分けやすさを尋ねた際にも、政治への関心の有無による違いが浮かび上がった。
    また2024年は、初めて、ニュース制作におけるAIを取り上げた。人間のジャーナリストの関与が強い場合と弱い場合の2つのシナリオを提示し、ニュース制作にAIが関与することへの不安感を問うた。日本の「不安の度合い」は、世界と大きな違いはなく、「ニュースへの信頼」が高い人ほど、人間が介在した場合に不安が和らぐ傾向が見られた。また、扱うトピックについては、政治や犯罪などいわゆる「ハードニュース」をAIに委ねることへの抵抗感が強かった。
  • 2024年「日本語のゆれに関する調査」から(1)
    塩田 雄大
    2025 年 75 巻 1-2 号 p. 60-84
    発行日: 2025/01/01
    公開日: 2025/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本語の現況を把握するために毎年おこなっている「日本語のゆれに関する調査」の結果について、2回にわたり記す。次のような傾向が明らかになった。
    【新興の表現・用法・解釈について】
    ▶「貴重な情報を共有してくださり」〔「送ってくださり・知らせてくださり」という意味で〕と言い表す用法が、現代ではかなり一般化している
    ▶「花に水をあげておいて」のような言い方に対して何らかの抵抗感を覚える人は、もはや少数派になっている
    ▶プラスの意味で用いる「やばい」をめぐる年代差(意識・使用)は、非常に大きい
    ▶「あげる・とか・大丈夫ですか・っていうか・やばい」に関して、この10年間の使用率の変動はさほど大きくないが、許容率の変動は相対的に大きい
    ▶新興の諸表現における許容率・使用率の年層差に関して、ある程度の年層差が存在する場合には、「使用率の年層差」のほうが、「許容率の年層差」よりも大きくなる傾向が見られる
    ▶「~弱・強」について、新興の解釈を支持する意見が、20・30代にある程度多く見られる
    【配慮表現について】
    ▶自身のことを謙遜して表す「不勉強」「僭越(せんえつ)ながら」は、おかしくはないが自分では言わないという人が、全体では多い
    ▶「おっしゃるとおりです」〔「そのとおりです」という意味で〕は、おかしくないし自分でも言うという人が高齢になるほど少なくなっており、この言い方が必ずしも昔からおこなわれていたものではないことを推定させる
    ▶自身のことを謙遜して「不勉強」と表すのはおかしいし自分では言わないという人が、若い人に多くなっている
    ▶「返信をくださり」を支持するのは高齢層に多く、「ご丁寧に返信をくださり」を支持するのは若年層に多いという傾向が見られる
    ▶「ここを直したほうがいいように思います」が感じがいいという人が全体的に多い中で、若い人たちの間には「ここを直したほうがいいように思いました」を支持する回答も少なくない
  • WEBモニターアンケート・オンライングループインタビュー調査の結果から
    川窪 洸介
    2025 年 75 巻 1-2 号 p. 86-105
    発行日: 2025/01/01
    公開日: 2025/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「すきま時間」の捉え方の変化やタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する人の出現など、現代人の時間意識は以前とは様相が変わりつつある。こうした時間意識はメディア利用とどのように関係しているのか。NHK放送文化研究所が行ったWEBモニターアンケート調査の結果から、「時間に余裕があると感じるか否か」だけがメディア利用の選択を定めるものではないことがわかった。他方、動画の速さを変える「倍速視聴」、異なる動画を同時に見る「マルチ視聴」、動画の一部分だけを見る「部分視聴」といったいわゆる「タイパ視聴」について、いずれかを行っている人の割合は、すべての年層で5割を超えるほど広まっていることが確認できた。「タイパ視聴」を行う理由として、「倍速視聴」と「マルチ視聴」は「時間を効率的に使いたいから」、「部分視聴」は「好きな部分だけを見たり、聞いたりしたいから」を挙げる人が多く、動画を自分に最適化し、時間を有効かつ快適にしたいという意識があることがうかがえた。さらに時間の使い方に関する意識については、若年層ほど空白の時間や予定がない日を嫌がる傾向がみられたが、同時に日々の生活の中で「ぼーっとする」時間があると答えた割合も高かった。また「何かをしている最中であっても、見るものや聞くものがないと、「暇だ」と感じる」という意識がメディア利用に影響しており、この意識があるグループはインターネット系メディアの利用率が高かった。
  • 資料の概要とその特徴
    村上 聖一
    2025 年 75 巻 1-2 号 p. 106-107
    発行日: 2025/01/01
    公開日: 2025/01/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
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