日本語の現況を把握するために毎年おこなっている「日本語のゆれに関する調査」の結果について、2回にわたり記す。次のような傾向が明らかになった。
【新興の表現・用法・解釈について】
▶「貴重な情報を
共有してくださり」〔「送ってくださり・知らせてくださり」という意味で〕と言い表す用法が、現代ではかなり一般化している
▶「花に水を
あげておいて」のような言い方に対して何らかの抵抗感を覚える人は、もはや少数派になっている
▶プラスの意味で用いる「
やばい」をめぐる年代差(意識・使用)は、非常に大きい
▶「あげる・とか・大丈夫ですか・っていうか・やばい」に関して、この10年間の使用率の変動はさほど大きくないが、許容率の変動は相対的に大きい
▶新興の諸表現における許容率・使用率の年層差に関して、ある程度の年層差が存在する場合には、「使用率の年層差」のほうが、「許容率の年層差」よりも大きくなる傾向が見られる
▶「~弱・強」について、新興の解釈を支持する意見が、20・30代にある程度多く見られる
【配慮表現について】
▶自身のことを謙遜して表す「不勉強」「僭越(せんえつ)ながら」は、おかしくはないが自分では言わないという人が、全体では多い
▶「おっしゃるとおりです」〔「そのとおりです」という意味で〕は、おかしくないし自分でも言うという人が高齢になるほど少なくなっており、この言い方が必ずしも昔からおこなわれていたものではないことを推定させる
▶自身のことを謙遜して「不勉強」と表すのはおかしいし自分では言わないという人が、若い人に多くなっている
▶「返信をくださり」を支持するのは高齢層に多く、「
ご丁寧に返信をくださり」を支持するのは若年層に多いという傾向が見られる
▶「ここを直したほうがいいように
思います」が感じがいいという人が全体的に多い中で、若い人たちの間には「ここを直したほうがいいように
思いました」を支持する回答も少なくない
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