81. チヂミノキシノブは近年支那の Lepisorus heterolepis CHING と同種であると考へられてゐるが,根莖は細く,鱗片は殆んど全邊,葉は小くて質が薄く,葉柄は短いが明瞭であるから別種であると思ふ.それで學名を Lepisorus monilisorus (HAYATA) TAGAWA とした. 82. 牧野先生が支那の Polypodium lineare THUNB. var. contortum CHRIST と同定し,和名をツクシノキシノブとせられた標本が東京科學博物館にあるが,これは同年に發見せられた新變種 P. lineare var. caudatum MAKINO であつて支那の P. lineare var. contortum CHIRST ではない.var. caudatum MAKINO には安田篤氏がトサノキシノブと云ふ和名を與へられたが,牧野先生もこれを種にして P. tosaense MAKINO とせられたときヲナガウラボシと云ふ新和名をつけられた.本種は臺灣にもあつて,アリサンホテイシダ P. infraplanicostale HAYATA,ウスバホテイシダ P. Morii HAYATA,オホボシホテイシダ-名ホウザンホテイシダ P. hoozanense HAYATA はすべてツクシノキシノブの色々の型である.以上の學名和名を整理すれば結局ツクシノキシノブ Lepisorus tosaensis (MAKINO) H. ITO がよいと思ふ. 83. 高雄州旗山郡蕃地の内本鹿越にある藤枝,渓南山兩駐在所の間で雲南の Lepisorus suboligolepidus CHING を發見した.和名をヒロハノキシノブとする.ツクシノキシノブに似てゐるが葉質はやや硬く,葉片は披針形又は狹披針形で下部三分の一程の所が最も廣く,嚢堆は中肋と邊縁との中間に並んでゐる. 84. オニノキシノブ Lepisorus kuchenensis (WU) CHING の記相文 85. 臺灣産ノキシノブ屬12種の檢索表 86. 高雄州旗山郡蕃地の三合渓流域に,ヤリノホランによく似てゐるが葉は披針形で中央が最も廣く兩端に段々と狹くなつたものがある.これをヤリノホランの新變種にして Colysis Wrightii (HOOK.) CHING var. heteroclita TAGAWA と命名した.又臺北州ウライ附近,花蓮港廳サカダン附近,臺東廳バリブガイ附近に支那の C. Henryi (BAK.) CHING があつたが,ヤリノホランに比較すれば葉は大きくて廣披針形,長サ30cm. 幅8cm にも達することがある.大きさの外には別に差がないから,ヤリノホランの變種にして學名を C. Wrightii var. Henryi (BAK.) TAGAWA とした.
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