シケチシダ属はヒマラヤから東アジア,東南アジアに分布するメシダ属近縁の属で9種よりなる。次はその検索表と分布である。1. 葉は軟骨質縁か亜軟骨質縁,単細胞毛をもつか無毛…2 1. 葉は軟骨質縁でない,単または多細胞毛をもつか無毛…3 2. 葉は軟骨質縁(長線形細胞),裂片は鈍-鋭細歯縁,胞子嚢群は円形-楕円形…イッポンワラビ(陝西,河南,中国東北,ウスリー,朝鮮,本州,北海道) 2. 葉は亜軟骨質縁(短線形細胞),裂片は鋸歯少なく,鈍歯縁-細歯縁,胞子嚢群は楕円形-線形…ハコネシケチシダ(本州,四国,九州,済州島) 3. 胞子嚢群は楕円形-線形,葉は2-3回羽状深裂…4 3. 胞子嚢群は円形-楕円形,葉は3-4回羽状深裂…7 4. 根茎は匍匐…5 4. 根茎は直立…6 5. 葉は隣接する,裂片は全縁-細歯縁…シケチシダ(浙江,福建,広東,広西,江西,湖南,台湾,済州島,九州,四国,本州) 5. 歯は疎につく,裂片は鋭歯縁…C. birii(シッキム) 6. 歯は尖鋭頭,裂片の幅は4-5mm…ナンゴクシケチシダ(ヒマラヤ,ビルマ,雲南,四川,広西,台湾,九州,ベトナム,タイ,フィリピン,ボルネオ,ジャワ,バリ,セレベス) 6. 葉は細長い尖鋭頭,裂片は2-3mm…C. philippinensis(ミンダナオ) 7. 裂片はほぼ全縁-鈍歯縁頭…8 7. 裂片は鋭歯縁頭…C. quadripinnatifida(ネパール,シッキム) 8. 葉は無毛,裂片は近接せず,鈍歯縁頭…ホソバシ ケチシダ(シッキム,雲南,台湾,屋久島,小笠原,フィリピン,パプアニューギニア) 8. 歯は単細胞毛を密生,裂片は近接し,全縁-やや鈍歯縁頭…C. atroviridis(マレー半島,スマトラ,ジャワ) ハコネシケチシダは済州島のC. christensenianaと同種であり,これがその学名となる。シケチシダ,ナンゴクシケチシダ,イッポンワラビには有毛型と無毛型があるが区別できない。広東のC. tsangiiはシケチシダ,フィリピンのAthyrium gymnocarpum,雲南のC. likiangensis,四川のC. omeigensisはナンゴクシケチシダ,雲南のC. badiaはホソバシケチシダである。C. philippinensisとC. quadripinnatifidaの2新種を記載し,C. atroviridisを新しく組み換えた。蛇足ながらホソバシケチシダには最近C. banajaoensisが使われるようになった。ヤクシケチシダとシケチイヌワラビは各々種間,属間雑種と推定されている。
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