植物分類,地理
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31 巻, 4-6 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 植田 邦彦
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 117-126
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    オオヤマレンゲ Magnolia sieboldii は,モクレン属オオヤマレンゲ節に分類される落葉性大本植物である。雄〓の色・葉形・葉の大きさ・毛の色と量・花の咲き方・樹形・樹高及び生育環境に変異が見られ,その変異に地理的なまとまりがあるので,2亜種,日本(谷川連峰から屋久島)と中国の安徽省・広西省に分布するオオヤマレンゲM. sieboldii ssp. japnicaと,朝鮮,南満州に分布するオオバオオヤマレンゲ(新称) M. sieboldii ssp. sieboldii を認める。オオヤマレンゲは,古く花壇地錦抄(三代目 伊藤伊兵衛,1695)にあげられており,また地錦抄附録(四代目 伊藤伊兵衛,1733)によれば延宝年間(1673〜1680)に江戸に栽培用として持ち込まれた。その後,岩崎灌園は草木育種(1819)と本草図譜(1828)で,雄〓の色に紅白の2種類があるとしている。オオヤマレンゲの名は大峰山に生えているため,つけられたということなので,日本に自生していることは,当時すでに知られていた。伊藤圭介は栽培されていたオオバオオヤマレンゲの標本をSIEBOLDにわたしたが,ラベルには日本の高山に自生と書かれている。その標本がもとになって,オオバオオヤマレンゲ M. parviflora SIEB. et ZUCC.(non BL.)が記載された。伊藤圭介が両者を混同していた事は,後年著した小石川植物園草本図説(1881)からもうかがえる。彼は,濃赤紫色の雄〓が示されているオオバオオヤマレンゲの絵に,日本の深山に自生するオオヤマレンゲの説明文を書いている。更に,雄〓に紅色と紫色の2種類があって,紅色のものは中国産のオオヤマレンゲであると誤った説明をしている。欧米では,上記の文献等は訳されてはいたが,雄〓の色に2種類あることは問題にされず,日本の種苗商より得たオオバオオヤマレンゲは日本産と信じられていた。それと,WILSONらが朝鮮より持ち帰ったものは,当然のことながら,同一物とされてきた。こうして,長らく日本のオオヤマレンゲの実体は,顧みられず,状況は日本においても同様であった。文献にみられる限りでは,岡ら(1972)の山口県植物誌でのオオヤマレンゲの記載をきっかけに,ようやく雄〓の色が注目され始めたようである。また,園芸的に栽培されているものは朝鮮産ではないかとの疑いも生じていた。オオバオオヤマレンゲは,朝鮮では少し山地に入れば極めて普通で,様々な環境下で旺盛に生育しており,3-10mの大灌木〜小喬木である。それに対し,オオヤマレンゲは,深山に点在し,やせ尾根や岩場,林縁等の限られた所にのみ生え,1〜3mの灌木で,葉もより小さく毛も少なく,全体的にひ弱な印象を受ける。大峰山以外では稀な植物で,オオヤマレンゲ節の他の種と,生育地・分布型・樹形等を比較して考えると,遺存種といっていいだろう。雄〓の色は,前者では本節の他種同様,濃赤紫色であるが,後者では白地に紅色が少しさす程度である。この様に,両者は容易に区別がつき,明らかに分類群を異にする。しかし,葉・花・毛等の形質を,個々にとり出してみた場合,雄〓の色をのぞいて,変異が連続してつながってしまう訳ではないが,多少とも変異は重なりあう。更に,モクレン科を通じて重要な分類形質である葉裏面の毛を両者間で比較すると,オオバオオヤマレンゲの方が,図2に見られる様に,色素沈着のない細胞が長い点等で違うものの,細胞構成や直毛で基部からねている点ではまったく同一である。こうしたことを考え合わせると,両者は互いに独立種として扱える程ではなく,地理的亜種としてとらえるのが適当であろう。八重咲きのものが時にオオバオオヤマレンゲに見られ,花彙(1765)や上記の小石川植物園草木図説,白井光太郎(1933)の樹木和名考等に絵がのせられており,欧米の書にもよく紹介されている。和名・学名とも様々につけられているが,正式に記載された学名はなく,また分類群としても認められない。オオヤマレンゲに6枚以上の花弁はまず見つからないが,オオバオオヤマレンゲでは6〜8枚の花弁は普通で,同一の木に6枚の花弁の花と八重咲きのものが同時に咲いたりする。
  • 角野 康郎
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 126-
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 加藤 雅啓, 佐橋 紀男
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 127-138
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    コウヤワラビ群は5種からなる小さい群で,一般には単型属コウヤワラビ属,Onocleopsisと3種からなるクサソテツ属に分類される(LLOYD, 1971)。群内の類縁関係を検討したところ,イヌガンソクはコウヤワラビに,クサソテツはMatteuccia(=Onocleopsis) hintoniiに共通する形質を多くもつことが明らかになった。すなわち,前者2種では根茎は匍匐しストロンを出さず,葉柄基部は嘴状に細くはならず,葉柄・中軸の向軸面はほぼ平らで溝がない,栄養葉は三角状卵形-卵形で,羽片特に下部羽片は基部が細くなる。後者2種では根茎は直立しストロンを出す,葉柄基部は嘴状に細くなる,葉柄・中軸の向軸面に明らかな溝がある,栄養葉は倒被針形-長楕円形,羽片は基部が細くならずむしろ下部羽片基部は耳状に突出する。またコウヤワラビとイヌガンソクにみられる前葉体上の毛はクサソテツとMatteuccia hintoniiにはない(百瀬,1958; LLOYD,1971)。相関したこれらの形質はイヌガンソクはコウヤワラビと,クサソテツはMatteuccia hintoniiとより近い類縁関係にあることを示唆する。胞子の周皮がイヌガンソクとクサソテツで相当に異なっていることもこの関係と矛盾しない。BOWER(1928)はコウヤワラビ群でも葉脈は遊離脈から網状脈へ複雑になるという一般傾向があったとみて,遊離脈の栄養葉をもつクサソテツ属を原始的と考えた。ところがその胞子葉は葉脈,ソーラス(隣接のものが1つの包膜に包まれることがある)の形質で退化的であり,栄養葉の葉脈においても単純化が起った可能性がある。いくつかのシダ群でも葉脈の単純化が起ったとみなされている(HOLTTUM,1947; HENNIPMAN,1977; HAUFLER,1979)。一方コウヤワラビとMatteuccia hintoniiは葉脈,胞子葉,胞子の周皮形態の点で互に類似する。これはイヌガンソク・コウヤワラビ群とクサソテツ・Matteuccia hintonii群がコウヤワラビとMatteuccia hintoniiを通して系統関係をもっていることを示唆する。コウヤワラビ群の分類上の位置については,この群はこれまでヘゴ科,オシダ科,メシダ科,シシガシラ科などと比較されてきた。今回推定した群内の類縁関係を念頭において形質の比較を行うとメシダ科,シシガシラ科との共通点がいくつかみられる。しかし今のところ問題提起にとどまり,その解明には,それぞれの科の中に類縁関係がより明らかにされる必要がある。
  • 小山 鐵夫
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 139-148
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    Nomenclatural identity has been established for the three Far Eastern species of Bolboschoenus that I recognize as valid. They are B. fluviatilis ssp. yagara (n. comb.), B. maritimus and B. planiculmis, which may be differentiated by the following key. A) Achenes truly trigonous, rhombic-obovate, subacute at apex; stigmas 3; inflorescence an open anthela bearing several to 20 spikelets on several elongated rays. 1. B. fluviatilis ssp. yagara. A) Achenes lenticular (or rarely obcompressed-trigonous with obscurely angular dorsal side), obovate, rounded to mucronate apex; stigmas 2 (rarely 3) ; inflorescence frequently capitate bearing 1 to several spikelets, occasionally developing 1 to few rays. B) Leaf blades dorsi-ventrally flattened ; inflorescence truly terminal, bearing few to several spikelets ; leafy bracts spreading ; hypogynous bristles 2 to 4 (rarely to 6). 2. B. maritimus. B) Leaf blades 3-sided ; inflorescence quasi-lateral, mostly of a single spikelet, rarely with few digitate spikelets ; the lowest bract culm-like, erect ; hypogynous bristles 5 to 6. 3. B. planiculmis.
  • 赤堀 昭, 岩男 徹, 奥野 勇, 武内 康義, 辻 迢, 山下 善見, 安田 郁夫
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 149-158
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    ヒメドコロの4倍体は,紀伊半島では,熊野市鬼ケ城から新宮を経て,熊野川と十津川を遡って吉野に達する線の西側に,2倍体は北山川と吉野を結ぶ線の東側に見出された(Fig. 2)。しがたって両者の分布城の境界線は今回未調査の大峰山塊中にあると考えられる。吉野では下の千本から上の千本に至る丘陵から東には2倍体が,その西側の谷から西には4倍体が生育している。境界線はここで吉野川を横断して北上し,高取山の東の芋ガ峠付近では多少混乱しているが,それ以北では比較的はっきりしていて,4倍体は明日香村東部の山地には侵入せず,多武峰西北の山地に4個体発見されただけである(Fig. 3)。境界線はその後,長長谷寺付近から少し東北に進んだのち,天理,奈良両市と上野市のあいだに広がる山地のほぼ中央部を北進して笠置山の東麓に達し,木津川の北岸に出たのち東方に転じ,上野市付近では再びやや混乱するが,その後は木津川の上流に沿って東進している(Fig. 4)。この線は鈴鹿山脈に対してはその分水嶺の上を北進し続けるということはなく,水沢峠付近で山脈を横断する形をとっている。今回の調査の結果では,前述の芋ガ峠と上野市周辺の2カ所以外では,この線を越えての出入は認められなかった。特に1カ所で採取した検体のなかに両者が発見されたのは,上野市東方の喰代(ほうじろ)だけで,ここでは4個体のうちNo. 1936だけが4倍体で,残りは2倍体であった(Fig. 4)。2倍体はこのほかに九州の鹿児島県南部と寄崎県五カ瀬町でも発見されたが,九州での調査は不十分であるため,両者が連続して分布しているのか,隔離しているかは明らかでない(Fig. 1)。成分については,取扱い不注意のため実施できなかった一部を除いて,大部分の検体について調査し,ステロイドサポゲニンと染色体数の対比を行なった結果,4倍体も2倍体も地下部には同様にサポゲニンを含有しているのに,地上部には4倍体のみが含有しているというこれまでの実験成績とほぼ一致する結果を得た。すなわち4倍体は,367検体のうち5検体以外は薄層クロマトでサポゲニンのスポットを検出することができ,この5検体についても含量が低くて検出できなかったという可能性もある。ただし2倍体では358検体の大部分でサポゲニンを検出しなかったが,12検体ではサポゲニンを検出し,そのうちの2検体(1検体は4倍体が混入した可能性も完全には否定できない)からはdioti-geninの結晶を分離したから,2倍体のなかにも地上部にサポゲニンを含有している固体のあることが明らかになった。4倍体のサポゲニンの薄層クロマトのパターンはほぼ一定していたが,それから外れるものもあり,それらは九州で発見された。ヒメドコロとオニドコロは形態的にも成分の面でもよく類似し,近縁の植物と考えられるが,染色体数と成分からみて,ヒメドコロはオニドコロよりヘテロの要素を持った植物と考えられる。ヒメドコロの種子には翅があり,風で或程度運ばれる可能性があるが,その2倍体と4倍体はよく住み分けていて混在は少く,しかも両者の境界線は吉野川や鈴鹿山脈を横断するという興味ある走りかたをしている。その分布には何か未知の要素が関与しているのであろう。
  • 三木 栄二
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 159-163
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 岩槻 邦男, 加藤 雅啓
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 164-181
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    本報では10科29属164種を記録するが,更に詳細な検討を必要とするものも多い。 シシラン科(3属15種) タキミシダ属特にA. callifolium群は分類が困難で満足できる研究はない。ここでも仮同定にとどめた。A. vittarioidesにあてたものはブラヤン川岸の岩上に生育する渓流沿い植物で,シシラン属に非常に似る。典型的なA. vittarioidesとは葉幅・ソーラスで異なる。シシラン属のV. angustifoliaとV. longicomaの葉は共に狭長でよく似るが葉質・鱗片などで異なる。 イノモトソウ科 3属11種を記録する。ミミモチシダ属はマングローブ林の発達する河口域に生育し,Stenochlaenaは道路沿い灌木・林縁・疎林のclimbing fernである。イノモトソウ属の殆んどは林内・林縁で採集したが,P. ensiformisは橋下で,外来種と考えられるP. ligulataは開けた林道沿いで採集した。 チャセンシダ科(1属24種) オオタニワタリの仲間はHOLTTUMの最近の研究もあるが分類が難しい。採集品のうち葉基部が幅広いものがある。A. dichotomumとA. subaquatileは渓流沿い植物で前者は標高1000mの川岸に,後者はブラヤン川岸に生育する。 ツルキジノオ科(4属12種1変種) この科についてはHOLTTUM・HENNIPMANの報告が出た(Flora Malesiana II. 1巻-4号。1977年)。琉球に分布するオオヘツカシダは分布も変異も大きい。カリマンタンでも羽状複葉の個体と狭被針形の単葉のものを採集した。後者はブラヤン川の渓流沿い植物で幼葉もみつかった。 オシダ科(12属32種) 南カリマンタンの山地でタイワンヒメワラビ,近縁のDiacalpeとStenolepia,Polystichum gemmiparum,Didymochlaena,Ctenitis vilisなどがみつかる。ナナバケシダ属は低地の熱帯降雨林に生育し種数が多い。 ヒメシダ科(1属37種) この科はマレーシア地域に多様な種が分化・分布し,最近のHOLTTUMの論文を参考にしても同定できない種が多く,分類上興味深い新種と思われるものもある。T. merrillii,T. hosei,T. salicifoliaは渓流沿い植物である。 メシダ科(2属25種) ナンゴクシケチシダはカリマンタン新記録でボルネオでは他にキナバル山にもある。ヘラシダ属も熱帯降雨林で多様に分化している。新種D. squarrosumを記載する。
  • 平野 實
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 182-188
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    半細胞が倒立三角形で上端のかどに一本の刺のある種類群のなかで細胞中央部のくびれている部分が伸長している種類は少ないので区別が出来る。互に類似しているもののなかでSt. cuspidatumとSt. curvatumとの区別点としてSMITHは半細胞の頂辺が凸面のものをcuspidatumとし凹面のものをcurvatumとする。スミス氏のウィスコンシン湖沼産プランクトンの図のなかには中間形のものも描かれていて名古屋の志段味池のものも凹凸何れにも属せず平坦な頂辺を持つ。くびれの部分の形は円柱形であるが両半細胞の接点にへこみindentationが名古屋産では辛じて認められる。SMITHはこの点でへこみのあるものをvar. canadenseとして分けた。しかし氏の描く基本形のものvar. cuspidatumの図のなかにもへこみのあるものと無いものが描かれている。pl. 68, f. 28, 29にはへこみがあるがf. 27, 31には無い。f. 28, 29とvar. canadenseを示すpl. 69, f. 1-3とでは半細胞の外形,細胞中央部の円柱形の部の外形に多少のちがいが示されていて氏の図を見る限りでは区別が出来る。TAYLORはニューファウンドランドの鼓藻を描いたもののなかにこのvar. canadenseが含まれていて氏の図はSMITHの図とは少し感じがちがうが名古屋産のものはむしろTAYLORのものに近い。WESTは英国鼓藻誌のなかで刺の外向きのものはvar. divergens NORDST.として内向きのものものと区別している。もっともvar. divergensはブラジル産にあたえられたものであるが私にはvar. divergensとvar. canadenseとの区別がつかない。両氏の描く図には微妙な違いはある。例えばindentationの有無など。これとても注意深く見ていないと見落としてしまう。WESTのvar. divergensの図でみる半細胞の頂辺は僅かに凸面を示す。pl. 2, f. 14. 本篇の資料は桑原淳行氏から提供していただいた。深く御礼申し上げます。
  • 梅本 光一郎
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 189-193
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 加藤 雅啓
    原稿種別: Article
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 194-
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 北村 四郎
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 195-200
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 清水 建美, 豊国 秀夫, 北川 尚史, 小山 博滋, サンティスク タワチャイ, 矢原 徹一
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 201-211
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 村田 源
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 212-214
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 北村 四郎
    原稿種別: 本文
    1980 年 31 巻 4-6 号 p. 214-
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
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