植物分類,地理
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42 巻, 2 号
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  • 近田 文弘
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    Streptocaulon属の植物は,つる性で,直径1cmに満たない星型の花をつける。この属はインドの半島部,マレー半島,インドシナ半島,中国の南部,フィリピンにかけ5種知られる小さな属である。タイのStreptocaulon属については,Kerr(1951),Suvatti(1978)等が報告しているが,彼らの間では種の数が一致していない。ガガイモ科の植物は,タイではわずかの種として,どこででも採集されるというものではなく,タイ国王立森林局や京都大学の標本庫の標本も少ない。そのこともあって,なかなか同定作業が進まないが,Streptocaulonは,林縁や道端によく見られる属で,最近の20年間で相当な数の標本が得られており,タイ国産の種がかなりはっきりしてきたように思われる。筆者は,これら蓄積された標本と野外での観察に基づいて,Streptocaulon juventas, S. Kleinii, S. Wallichiiの3種を同定することができた。また,ガガイモ科の属や亜科レベルで分類を考える上で重要な形質である花の構造について,前報(Konta & Kitagawa, 1989)に引き続いてS. juventasとS. Wallichiiを用いて観察することができた。これらの花では,花粉塊が発達せず,花粉は四分子の状態でフォーク型の運搬装置に載っている(図1-6, 7)。四分子は四面体型や十文字型で,線型の四分子のみを持つイケマ属など,ガガイモ科の中で進化した属といわれるものとは異なっている。一方,1枚の珠皮を持つ倒生の胚珠が亜辺縁胎座に着くこと,雄ずい性副花冠を持つことでは,Streptocaulon属はイケマ属などと同様である。
  • 近田 文弘
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 91-92
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 寺内 良平
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 93-105
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    Guinea yam (Dioscorea cayenensis Lamk. and D. rotundata Poir), a staple root crop in the west tropical Africa, accounts for the largest share of the world yam production. Despite its economical and cultural importance in the region, its taxonomy has been confusing, and little is known about its phylogeny. In this paper, the history of Guinea yam classification is overviewed. The enormous diversity of wild relatives of Guinea yam is described and discussed with regard to their habitats (rain forest vs. savanna) and the selection of the shape of the storage organ by animal predators. New insights into Guinea yam phylogeny are presented on the basis of the chloroplast DNA and nuclear ribosomal DNA analysis.
  • 山中 二男
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 106-
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 福原 達人
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    北海道東部及び中部産の新種,Corydalis kushiroensis(和名:チドリケマン-新称,Fig. 1)を記載する。この種は,従来,フロラなどにおいてナガミノツルケマン C. raddeanaと混同されていた。チドリケマンは日本産のキケマン属Corydalisのうち,ナガミノツルケマン(Fig. 2, B; Fig. 3, C),及びツルケマンC. ochotensis(Fig. 2, D; Fig. 3, B)に類似する。以上の3種は,盛んに分枝し,多数の茎葉を付ける二年草であり,黄色の花冠,朔果のバルブが巻き上がることで種子を弾いて散布すること,夏から秋に掛けて開花・結実することなどの特徴で,日本産の他の種から区別される。チドリケマンは,ナガミノツルケマン,ツルケマンからは,花が小さい(長さ9-13mm)ことと,距が真直ぐ斜め上へ伸びていることで区別できる。後の2種は15-20mmの花を持ち,下向きに湾曲する距を持つ。シベリア・モンゴル・中国北部に分布するC. impatiens (Fig. 2, A)は小形の花冠,斜上する距,線形の果実を持つ点,チドリケマンに似るが,柱頭の形が両者では異なる。花冠が更に小さく長さ10mm以下であり,小葉やその裂片がチドリケマンより狭いことでも区別できる。チドリケマン,ナガミノツルケマン,ツルケマンの3種とも沢沿いや林縁,疎林内,路傍,人家近くなどの半陰からやや開けた草地に生育する。チドリケマンは,北海道の東部・中部に固有であり,西限は日高支庁の南端部,あるいは旭川に達する(Fig. 4)。ナガミノツルケマンとツルケマンは,共に,東アジアに広く分布し,前者の分布は全体として後者のそれより南に偏っている。日本では,ナガミノツルケマンが本州・九州に広く分布するのに対し,ツルケマンの分布域は日光・尾瀬周辺,上信国境の一部に限られる(Fig. 4)。大井(1953, 1965),北村・村田(1961)はナガミノツルケマンとツルケマンの差異を変種レベルの違いとした。しかし,両者は果実の形状に加え,苞の形状,花序の花数,柱頭の形態において異なる変異域を持っている。そこで本稿では両者を別々の種として認識した。日本産の3種への検索表:1. 花長9-13mm,距は短く,やや斜め上を向く。外下花弁の基部に疣状の突起がある。果実は線形,種子は果実内で1列に並ぶ。…チドリケマン 1. 花長15mm以上,距はより長く,下側へ屈曲する。外下花弁の基部に疣状の突起は通常無い。2. 果実は線形,種子は果実内で1列に並ぶ。…ナガミノツルケマン 2. 果実は倒披針形から倒卵形,種子は果実内で2列に並ぶ…ツルケマン
  • 高橋 弘
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    ホトトギスは核型に変異が大きい。染色体数は2n=26が多いが,2n=24と25もみられる。Ogihara(1971)は2n=24は2n=26の2対の末端動原体型染色体のcentric fusionによりできたもので,2n=25のものは両者の雑種であると推察したが,今回の観察もそれを支持するものであった。2n=24の集団はOgiharaの見いだした伊豆半島と房総半島に加えて紀伊半島の集団でも確認された。紀伊半島のものは他の染色体の形態が伊豆半島や房総半島ものとはかなり違う。centric fusionを含めたRobertsonia fusionは植物でもあまり珍しくはないとの見方もあるが(Jones, 1977),ホトトギスという1種の中で並行的にこのような変化が起きたとは考え難い。従って,このような違いは,2n=24ができた後,他の核型を持つ植物との交雑などによって生じたと考えられる。染色体の形態はきわめて変異が大きかったが,地理的にある程度のまとまりが見られ,5つのタイプを認めることができた。そられは,(I)関東地方と伊豆半島,(II)中部地方内陸部,(III)中部地方西部と紀伊半島東部,(IV)紀伊半島西部(V)四国と九州,(VI)北九州の犬が岳である。染色体の相称性は東部から西部へと低くなる傾向があったが,犬が岳のものは東日本の方に近かった。四国と九州のホトトギスは花被片が広くてその上にある紫色の斑点は細かく,中部地方のもの葉が細くてしばしば葉や茎の毛が少なくなる,という特徴がある。しかし,西日本のものがより進化しているという証拠はない。
  • 中村 俊之, 植田 邦彦
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 125-137
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    カンサイガタコモウセンゴケDorosera spathulata ssp, tokaiensisの分類学的再検討を行った結果,コモウセンゴケD. spathulataとモウセンゴケD. rotundifoliaの雑種起源の分類群であり,独立種として認識されるべきものであるとの結論に達した。従って,学名をDrossera tokaiensis (Komiya & C. Shibata) T. Nakamura & Uedaとし,通称名であったカンサイガタ(関西型)コモウセンゴケを改め,標準和名としてトウカイコモウセンゴケを提唱する。トウカイコモウセンゴケは種子の形態,大きさ,腺毛の発達する部分の葉長に対する比,托葉の形態,裂片数においてコモウセンゴケとモウセンゴケの中間型を示す。また核型は,トウカイコモウセンゴケが2n=60=20L+40Sであり,モウセンゴケの2n=20=20Lとコモウセンゴケの2n=40=40Sの双方のゲノムを有している。なお,これまで葉形についてコモウセンゴケはヘラ型,トウカイコモウセンゴケはスプーン型とされてきた。東海地方では通常確かにそうであるが,近畿地方の集団に顕著にみられるように後者にもヘラ型的な個体が多く,両者の識別点にはならない。形態上の識別点として有効なのは托葉の形態である(Fig. 10)。さらに,トウカイコモウセンゴケは核型と托葉の形態を除けば,東海地方と近畿地方の集団では形態上かなりの点で異なっていることが判明した。この差異がトウカイコモウセンゴケが分類群として成立してからの分化なのか,異なった起源によるのかは今後の課題である。トウカイコモウセンゴケがコモウセンゴケの関西型として認識されだしたのは1950年代後半ごろからのようであり,新分類群として記載されたのは1978年である。しかし,東海,近畿地方の植物誌などでは本種には言及されず,どちらもコモウセンゴケとして扱われてきた。現在の分布状況から判断すると,そのほとんどはトウカイコモウセンゴケであると思われるが,判断は不可能である。湿地が急速に失われていく現状では標本が保管されていない産地にどちらの種が生育していたのか調べようがなく,不明のままであることが多い。改めて,公的機関での永続性のある標本の蓄積の重要性を認識した次第である。
  • 森本 範正
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 138-140
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 北村 四郎
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 141-157
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    This is the continuation of Compositae asaticae 5 in Acta Phytotax. Geobot. 42:45-56 (1991). This report treats Artemisia, Cacalia, Cremanthodium, Ligularia (including a new species) and others, and provides the first record of Artemisia incisa and Cacalia deltophylolla from Yunnan.
  • 北村 四郎
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 158-
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 根来 健一郎
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    The water-bloom of blue-green algae (so-called "Aoko" in Japanese) occurred in late August of 1990 on the littoral zone of Otsu City, the southernmost shore of Lake Biwa. The water-bloom was composed of the following blue-green algae: Microcystis wesenbergii (63.5%), Anabaena spiroides var. crassa (14.4%), Oscillatoria tenuis (12.0%), Microcystis aeruginosa (6.6%), Anabaena affinis (3.5%). Oscillatoria kawamurae was found for the first time from Lake Biwa.
  • 根来 健一郎, 青木 啓子
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 165-172
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    In summer and autumn of 1987, we examined the planktonic blue-green algae of Lake Mikata and Lake Kitagata and identified 7 genera and 12 species, including Romeria elegans (Koczwara) Woloszynska.
  • 根来 健一郎
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 172-
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 角野 康郎, 野口 達也
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 173-176
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    One new species of Potamogeton, P. nomotoensis, is described from the Nomoto River, Tochigi Prefecture of central Japan. The new species is distinguished from other related species in possessing both submersed and floating leaves and in that a "stipular sheath"is formed by adnation of stipules to the basal part of lamina in the submersed leaves. Potamogeton nomotoensis is probably of hybrid origin, although its parent species are uncertain.
  • 田村 道夫
    原稿種別: 本文
    1991 年 42 巻 2 号 p. 177-187
    発行日: 1991年
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    キンポウゲ亜科は痩果をつくり,染色体は長く,クリスマスローズ亜科より進化したと考えられる。フクジュソウ連では胚珠は心皮の両側の縁より生じ,対向帯中央より生じるほかの連とは異なっている。イチリンソウ連は普通花弁をもたないが,Kingdonia,Naravelia,ボタンヅル属(ミヤマハンショウヅル節),オキナグサ属のいくつかの節には花弁がある。キンポウゲ科の花弁は雄蕋の変化したもので,とくにオキナグサ属のものは小さい棍棒状の蜜分泌器官である。イチリンソウ属は世界中に分布し,南半球にもSubgen. Rigida, Subgen. Hepaticifolia, Sect. Crassifolia, Sect. Pulsatilloides, Sect. Archimillifoliaなど分布範囲の狭い固有分類群がある一方,綿毛に被われた小さな痩果をもつアネモネ亜属に属する種などは南米に新しく分布していったものと思われる。キンポウゲ連では,普通花弁が発達するが,モミジカラマツ属は花弁をもたず原始的とみなされる。キンポウゲ属は約600種をもち,本科でもっとも大きく世界中に分布する。イチリンソウ属と同じくSect. Pseudadonisのような南半球の固有分類群がある一方,Sect. Micranthusのように新しく南半球に広がったと思われるものもある。
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