植物分類,地理
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43 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 菅原 敬, 荻巣 樹徳
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 89-96
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    台湾及び中国大陸からは, これまで30種ほどのカンアオイ属(Asarum)植物が報告されているが, 染色体数や核型の特徴についてはわずか数種の報告があるのみである。それら多くの種は日本産のカンアオイとの強い類縁性が指摘され, 分類学的にも同一の分類群(Cheng and Yang, 1983,1988)として扱われることが多い。本研究では, 台湾と中国大陸に産するsect.Asarumの2種(Asarum leptophyllum, A.caudigerum var.caudigerum), sect.Heterotropaの8種(A.chinense, A.hayatanum, A.ichangense, A.macranthum, A.maximum, A.sagittarioides, A.splendens, A.taitonense), sect.Longifloraの1種(A.petelotii), 合わせて11種の核型を解析した。その結果は表1に示す通りである。ここで特に注目すべき事実は, sect.Heterotropaにおいて2n=24(x=12)の染色体数に加えて, 2n=26(x=13)の染色体数が4種で確認されたことである。これまでに中国産2種で基本数x=13が報告されていたが, 今回の観察により, この節の中国産カンアオイにはこのような染色体数がより一般的である可能性がでてきた。前川(1953)やCheng and Yang(1983,1988)によると, この節の諸種は, 特に日本産の常緑カンアオイに強い類縁性があるものとみなされている。しかし, この一群の日本産諸種にはx=13は見られず, いずれもx=12である。中国産のx=13の6種(A.chinense, A.maximum, A.sagittarioides, A.splendens, A.petelotii, そしてすでに報告されているA.delavayi)はその核型からはむしろ北米東部に固有とみなされている分類群(いわゆるHexastylis)に類似している。この結果は予想外であり, 今後, 中国産のsect.Heterotropaやsect.Longifloraの形態の再検討を含む, 分類学的検討が必要であろう。
  • シンワリ , チョードリ
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 97-110
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    パキスタンあるいはその周辺地域のハッカ属(Mentha)は, Hooker(1885), Mukerjee(1940), Borisova(1954), Sterwart(1972), Rechinger(1982)によって分類されているが, それぞれの見解には少なからぬ違いが見られる。本研究はパキスタンに産する分野群を再検討し, M.arvensis, M.piperita, M.spicata, M.longifolia, M.royleanaの5種に分類した。そして, 4新変種, M.longifoila var.swatica, M.longifolia var.muqarrabica, M.royleanavar.glabra, M.royleana var.gilgiticaを記載した。
  • 秋山 弘之
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 111-120
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    東京大学とインドネシア科学院ボゴール標本館との協同事業として, 1983年から1986年にかけて合計三回にわたりインドネシア国セラム島・アンボン島の植物相の調査が行われた。著者は1984-5年および1986年の2回, 合計6カ月にわたりこのプロジェクトに参加し, 両島より多数の蘚苔類標本を収集した。この標本に基づいて両島の蘚苔類植物相について順次発表を続けているが, 本論文はその第5報に当たりクジャクゴケ科についての報告である。アンボン島はニューギニア島の西に位置する小さな島である。ニクズクやチョウジといった香料の集散地として大航海時代より有名であり, 古くから開けた島なので自然の植生はほとんど残っていない。従って我々の採集品もそのほとんどは隣のセラム島からのものである。セラム島はアンボン島のすぐ北にある島で, 四国ほどの大きさがある。島の大部分が石灰岩からなり, また中央部には3000mに達する高い山脈を有している。島内の交通手段は発達しておらず, 村から島の中央部への移動にはもっぱら徒歩が用いられる。集落のほとんどは海岸にあるが, 村から村への移動もまた容易ではなく, 一度アンボン島に戻り再びセラム島へ向かうほうが便利な場合が多い。この移動の困難さに加え, 植物採集を目的とする我々は奥地へ徒歩旅行する際に古新聞紙やアルコールを必要とするため, 滞在中何度も両島の間を往復することになった。このような交通の不便のため, 滞在日数に対して採集に費やせる日数の割合は著しく低くなる。しかしながら移動が徒歩に限られると, かえって綿密な採集が可能となる利点がある。我々の採集品中にはこれまであまり採取されたことのない低地や海岸沿いの標本が多いのはそのためである。内陸部へと旅行するときは, 村人が日頃利用している深い森の中にほそぼそと続いている小道をたどり村から村へと移動して行く。我々はインドネシア内務省や警察から通行許可等を得ているので, 訪れた村の村長の世話で村人の家に世話になることが多いが, それも標高600mを越えると村がなくなるため(斜面が急であること, 気温が低くなり作物が育ちにくいこと, 生活用水を得にくいことなどがその理由), 森の中で野営することになる。野営の際には何本かの木を切ってテントをつくる。その際に普段は目につきにくい樹上着生の種を得ることができ, またテント設営を待つ間付近を丁寧に探し回ることができる。つまり野営することで行動は制約されるが, 山間部でも綿密な採集が可能なのである。沐浴(マンディー)あるいは飲み水を確保するため野営地は一般に渓流のそばが選ばれるから, 蘚苔類にとって好適な環境での採集品も多い。本論文で扱ったクジャクゴゲ科はそういった渓流に近い場所に多く見られる植物群である。我々の採集品中からクジャクゴケ科植物としては5属を確認した。論文中には属・種への検索表とともに従来よく理解されていなかった種について記載を与えた。そのうちの4属, ソテツゴケ属(Cyathophorella), キダチクジャクゴケ属(Dendrocyathophorum), クジャクゴケ属(Hypopterygium), ナゼゴケ属(Lopidium)は日本にも産する。また日本にはないCyatophorum属のD.spinosumは東南アジアに広く分布している種である。木種はこれまで胞子体が知られておらず, その帰属が不明であった。長い間ソテツゴケ属として扱われてきたが, 胞子体の検討によってCyathophorum属の特徴を備えていることが分かり, 新組替え名を提唱した。この組替え名は「ボゴール(旧名プイテンゾルク)蘚類誌」の著者として有名なフライシャー博士(M.Fleischer)により, 彼の発行した標本集の標本ラベルにおいてすでに提案されていたのだが, basionymを記していないのでこの組替えは無効である。フチナシクジャクゴケDendrocyathophorum paradoxumは, 疎らではあるが分枝する茎を持つ点でクジャクゴケ属に, 一方胞子体の特徴ならびに葉に舷が見られない点などでツテツゴケ属に似ており, そのため独立の単型属として認識されている。しかしながら, ソテツゴヶ属の種であっても時に分枝することがあることを考慮すると, 属としての独立性については再検討が必要と思われる。現在ライデン標本館のクリエール氏がソテツゴケ属およびその近縁属についてのモノグラフを準備中であるのでその結果が待たれる。現地での著者の観察によると, クジャクゴケ属はもっぱら地上生で, 条件が良いと大きな群落をなす。セラム島に生育する種はH.aristatumをのぞき胞子体をつけることはなく, もっぱら栄養繁殖に頼っているようである。フチナシクジャクゴケ属もやはり地上生であり, セラム島では山地林内の石灰岩の岩壁の基部で一度だけ採集することができた。そこでは石灰岩の風化した土壌が薄くつもった岩の上に生育しており, 上部からしたたる水によって常に濡れている場所に疎らな群落をなしていた。残りの3属は山間の小五/textarea></td></tr><tr><td width="50%"><a href="help_create_kiji.html#abse" target="help">ABSE [抄録(欧)]</a></td><td width="50%" colspan="2"><textarea name="abse" cols="45" rows="5" tabindex="18">Mosses of Seram and Ambon islands collected on our botanical expeditions are discussed. This fifth report deals with the Hypopterygiaceae (nine species of the Cyathophorella, Cyathophorum, Dendrocyathophorum, Hypopterygium and Lopidium). A new combination, Cyathophorum spinosum (C. Muell.) H. Akiyama is proposed.
  • 秋山 弘之
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 120-
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 陶 徳定
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 121-123
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    ユリ科のハラン属は多年生の草本で, 約30種を含み, 東アジア(中国〜ヒマラヤ, 中国〜日本の地域)に分布し, 特に中国の南西部に多い。この属の種は通常, 石灰岩地域の林の縁の林床に生育する。ここに記載した新種は貴州の西南部の石灰岩地域で発見されたものであり, 表1で示した特徴によって近縁種と区別される。
  • 田端 英雄
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    Betula nikoensis Koidz.マカンバは, Betula ermanii Cham.var.japonica(Shirai)Koidz.ナガバノダケカンバとして扱われることが多いが, Betula ermaniiダケカンバとは形態的に明確に区別できるばかりでなく, 生態的にも明確な違いがあるので, 別種として取り扱うのが適当であると考え, 私はB.nikoensisを採用してきた(Tabata, 1964,1976)。しかし, 大陸にあるBetula costata Trautv.とよく似ているので, 分類学的検討をする必要があると長年考えていたが, 生育環境や生育状況の観察ができなかったので検討できなかった。1988年に, 韓国でBetula costataを採集し, その生育場所を観察する機会を得たので, Betula nikoensis, B.costata, B.ermanii 3種の比較検討を行なった。ここでは, 従来B.nikoensis Koidz.とされてきた植物を, 仮に'makamba'として議論をすすめる。約0.5cmの枝をSchultze法でマセレーションし, 道管の穿孔板のバーの数の比較を行なった。外部形態は, 葉身の長さと幅, 側脈の数 を測定し, おもに SAS(1985)でANOVA, CANDISC, DISCRIMなどの統計処理を行なって, 比較検討した。道管の穿孔板(perforation plate)のバーの数(図1), 側脈の数(図2)に関しては, 'makamba' と B.costataは分布の形がよく一致した。葉の縦/横比から見ると, 'makamba'とB.costataがそれぞれ1.75±0.17(n=164), 1.85±0.19(n=168)で, 1.38±0.16(n=115)のB.ermaniiと比べると葉が細長い。側脈の数では, 'makamba'とB.costataは有意差なしで, この両者とB.ermaniiは, 有意に異なる(表1)。葉の長さと幅の関係に関しても, 'makamba'とB.costataは分布が重なり, B.ermaniiとは異なった分布を示すだけでなく, SAS の GLMによる回帰直線の傾きの検定でも, 'makamba'とB.costataとでは有意差がなく(p>0.05), これら2種と B.ermaniiとは有意に異なっていた(p<0.001)(図3)。葉の3つの形質(側脈の数, 葉身の幅と長さ)を用いて, SAS の candiscriminant分析と discriminant分析を行なった。candiscriminant分析の結果は, 表2と図4に示すように, 'makamba'とB.costataとはよく似ており, これら2種とB.ermaniiとの識別に葉の幅の寄与が大きいことが示された。discriminant分析の結果, B.ermaniiの葉は, 約95%の葉がB.ermaniiと正しく分類され, 'makamba'やB.costataに分類されるのは極くわずかであるのにたいして, B.costataの葉はB.ermaniiに分類されるのほとんどないが, 約35%の葉が'makamba'に分類され, 'makamba'の葉は約28%がB.costataに分類された(表3)。このことは, 'makamba'とB.costataを区別することが難しいことを示している。果鱗の形態は, 'makamba'と B.costataでは, 中央の鱗片が長く側鱗片の約2倍ある。B.ermaniiでは, 中央の鱗片が側鱗片より長く, 側鱗片は形が変異にとむ(図5)。果実の翼の幅は, B.ermaniiでは果実の幅の約半分で, 'makamba'とB.costataでは, 果実の幅と同じか果実の幅より狭い。生態的にも, B.ermaniiと違って, 'makamba'とB.costataは, 川沿いや谷沿いの水分条件の良いところに見られる(図6)。Komarov(1904)は, 満州植物誌のなかで, B.costataが川沿いにのみ純林をつくると記載している。B.costataは, しばしば純林を作るようであるが, 'makamba'は, 個体数も少なく, 普通純林を形成することは稀である。これにたいして, B.ermaniiは純林を作ることが多い。また, 'makamba'の垂直分布は, B.ermaniiと著しく異なっており, 普通冷温帯上部に見られることが多く, 針葉樹林帯に見られることは稀である。B.costataの垂直分布については, 韓国で標高2300mまで生育するという報告もあり, 検討する必要がある。これらの比較を行なった結果, 'makamba'とB.costataとの間には, いくつかの形質でわずかな形態的な差異が見られるが, どの形質もその変異が大きく重なっており, 両者を分けることができないので, B.nikoensisは, B.costataの概念のなかに含まれるとするのが, 適当であると結論した。その結果, 日本におけるB.costataチョウセンミネバリの分布は, 図7に示すようになる。したがって, 日本産の B.costata は, 最終氷期終了後, 日本列島と大陸とのつながりが切れた後も, 日本列島の中央部の関東地方と中部地方の, 一部のごく限られた地域に隔離分布して, わずかに見られる遺存植物の一つであると考えられる。
  • 荻沼 一男, ギレルモ イバラーマンリケス, 戸部 博
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 135-137
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    最近コスタ・リカとメキシコからの新属として発表された Tuxtla の唯一の種 T.pittieri(Greeman in W.W.Jones)Villasenor and Strotherについて, 染色体数と核型が初めて明かにされた。 染色体数は2n=34(x=17)で, 間期核は"diffuse-complex type"であった。34本の染色体のうち, 30本は中部に, 2本は次中部に, 残り2本は次端部から端部に動原体を持つ。染色体基本数(x=17)が一致することから, TuxtlaがVerbesinaと近縁であることが示唆された。
  • 田村 道夫
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    Two new genera, Peltocalathos and Callianthemoides are described for Ranunculus baurii and R. semiverticillatus, respectively. Classifications of Delphinium, Consolida, Anemone sect.Eriocephalus and Ranunculus sect. Micranthus are revised, and Delphinium sect. Paroligophyllon is regarded as a synonym of D. sect. Grumosa; and new combination names, Consolida subsects. Brevipedunculatae (Huth ex Trifonova) Tamura, Macrocarpae (Huth ex Trifonova) Tamura, Longibracteolatae (Huth ex Trifonova) Tamura and Ranunculus subsect. Leptocaules (Prantl) Tamura are proposed.
  • 村田 源
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    Four species of eastern Asian plants are studied. Three new taxa are described; Melampyrum macrantha as new species, Galium pseudoasprellum var. bingoense as new variety and Benthamidia capitata f.grandis as new form. Chloris truncata is newly found in Japan as naturalized plant.
  • 原稿種別: 付録等
    1992 年 43 巻 2 号 p. 154-
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 岡本 素治
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 155-166
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    The dispersal characteristics of angiosperms are briefly reviewed based mainly on their fruit and seed morphology. Among anemochorous, hydrochorous, epizoochorous and endozoochorous fruits we find convergent forms, where various organs have been modified to utilize external locomotive forces effectively. Autochory is the least influenced by the external forces among various dispersal methods. In many plant species, particularly in autochorous ones, the dispersal distances by their apparent dispersal methods are not sufficient to account entirely for their isolated distributions. Dispersal characteristics appear to contribute chiefly to insuring that propagules reach suitable habitats for the maintenance of populations.
  • 戸部 博
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 167-168
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 戸部 博
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 168-
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 永益 英敏
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 169-170
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 北川 尚史
    原稿種別: Article
    1992 年 43 巻 2 号 p. 170-171
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 河野 昭一
    原稿種別: 本文
    1992 年 43 巻 2 号 p. 172-
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
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