植物分類,地理
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46 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 平碆 雅子, 角野 康郎
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 117-129
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    コウキクサは, 葉状体にやや厚みがあることと, 根端が鈍頭で根鞘に翼がなく, しばしば根の付け根や葉状体(特に裏面)が紫色に色付くことが特徴で, 同定はそれほどむずかしくはない。しかし, 他のアオウキクサ属植物と混同されて, 我が国における分布実態について正確な情報はなかった。文献によっては, かなり稀な種のように記載されているが, 最近の調査で実際には全国各地に分布することがわかってきた。ところがLandolt(1980)は, 日本のコウキクサは欧米に分布する狭義のコウキクサL.minor s.s.とは別種であるとして, 新種L.japonica(ムラサキコウキクサ)を記載した。Landoltは, 日本に分布するのは全てムラサキコウキクサで, 狭義のコウキクサは分布しないとしたが, 私たちはこの見解に疑問を持ち, 日本産コウキクサ(広義)の変異を調査した。日本各地から採集した119系統について調べた結果, まず酵素多型分析によって大きく3型(X, SとS', NとN')に分けられることがわかった。S型は, 染色体数2n=50で, 葉状体にやや厚みがあり, しばしば紫色に着色する特徴をもつ。N型は染色体数2n=40で, 葉状体はほとんど膨らまず, 紫色の着色はいかなる場合も見られなかった。X型は冬になると葉状体が殖芽となって水中に沈むという特色をもつ。これらの型を今までに報告されてきた分類群の記載と比較検討した結果, それぞれムラサキコウキクサL.japonica, コウキクサ(狭義)L.minor s.s., キタグニコウキクサ(新称)L.turioniferaに相当すると結論した。種の範囲を狭く取った場合, 日本には3種のコウキクサ類が分布することになった。これら3種の分布調査は今後の課題であるが, 西南日本ではムラサキコウキクサが多く, 日本海側ではコウキクサ(狭義)の出現頻度が高いようである。キタグニコウキクサは今のところ北海道東部からしか確認されていない。なお, 角野(1994)では, L.turioniferaを「エゾコウキクサ(新称)」としたが, この和名は不適切と考え, 新たにキタグニコウキクサを正名として提案したい。
  • 角野 康郎, 碓井 信久
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    タシロカワゴケソウは, 1977年8月に鹿児島県の大隅半島にある田代町「奥花瀬」の雄川上流で新敏夫博士によって発見された(新, 1977)。新博士はこれをカワゴケソウ属の新種と考えたが, 花を得られなかったために正式の発表を控えた。新博士はその後まもなく病床に伏し1982年に逝去されたため, 正式の報告がないまま"幻の新種"となって今日に至っている。我が国におけるカワゴケソウの発見者である今村駿一郎博士も, これを新種と考え, "タシロカワゴケソウCladopus austro-osumiensis"という和名と学名を付した資料を残されている(「カワゴケソウ科分布現況略図」と題する手書きの地図で, 水草研究会会報23号の拙稿「今村駿一郎先生を悼む」に転載してある)。この名前が新博士によるものか今村博士によるものかは不明である。新博士と親交のあった土井美夫氏は, 『広島県植物目録』(1983)の末尾に「鹿児島県植物目録追加」としてタシロカワゴケソウ発見の経緯を記録し, 「在鹿の人により正式の発表」がなされることへの期待を述べている。その後, 鹿児島大学理学部ならびに水産学部の卒業研究などでカワゴケソウ科植物の現状に関する調査は幾度か進められたが, タシロカワゴケソウの記載は行なわれないままになっていた。このような状況の中で1990年12月, 筆者のうちのひとり碓井は雄川上流の田代町新田南風谷橋付近で良好に生育するタシロカワゴケソウの群落を再発見した。そして, その標本を角野に託した。今回得られた標本は, 採集時の水位の関係と思われるがつぼみの状態か既に果実になったものばかりで, 開花中のものは無かった。しかし, 幅0.4〜1mmしかない細い葉状体は他種には見られない特徴で, 花は無くとも新博士の慧眼どおり新種に間違いないと判断し, 記載の準備を開始した。一方, ほぼ同じころ, 鹿児島大学理学部堀田満教授研究室に所属する学生の谷口宏君が, 同じ場所でタシロカワゴケソウの調査を進め, 花についても詳しい観察資料を得ていたことが後日判明した。私どもは, 保全の取り組みのためにもまず種として正式に認知することが急務と考え, 手元にある標本に基づいて記載の準備を進めていたが, 今回の報告に際し堀田先生から谷口君の観察資料の一部を御提供いただくことになった。花の記載を盛り込むことができたのは, 堀田先生の寛大な御好意の賜物であり, 心より感謝する次第である。周知のように, カワゴケソウ科植物は急流にのみ産する特異な植物として注目され, 日本では鹿児島県と宮崎県の11水系の河川から2属6種が知られていた。しかし, 近年, 河川改修や水質汚濁の進行などでほとんどの種が絶滅の危機に瀕し, 保護の重要性と研究の必要性が訴えられている。タシロカワゴケソウも例外ではない。今回の新種記載を契機として, その形態についてのさらに詳しい研究が行なわれるとともに, 生態や現状についての詳しい調査が進むことを期待する。
  • 高宮 正之
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    1991年から1992年にかけて, 文部省国際学術調査「フィジー諸国とその周辺地域における隠花植物の分布と分化, 代表者岩月善之助(当時広島大学理学部教授, 現在服部植物研究所岡崎分室)」の一員として参加し, フィジー及びバヌアツ共和国産のシダ植物を, 現地で固定あるいは生植物を持ち帰り, 染色体研究を行った。本地域のシダ植物の染色体の報告は, コケシノブ科とイヌナンカクラン属を除いてこれまでになかった。本論文は, 研究論文の第1報として5種のシダ植物について報告した。マツバラン科のPsilotum complanatumは, 減数分裂中期で52個の二価染色体を形成し二倍体だった。ハナヤスリ科のOphioglossum petiolatum(コヒロハハナヤスリ)は, 同じく約240個の二価染色体を形成し四倍体だった。本種の四倍体は初めての報告である。リュウビンタイ科のAngiopteris evectaは, 体細胞中期で2n=160で四倍体だった。リュウビンタイ科のMarattia smithiiは2n=78の二倍体, Lygodium reticulatumは2n=60の二倍体であり, この2種の染色体数は初報告である。L.reticulatumについては, 体細胞分裂各期の核形態も記載した。
  • 荻沼 一男, 顧 志建, 岳 中枢
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    クルミ目(Juglandales)はクルミ科(Juglandaceae)とロイプテレア科(Rhoipteleaceae)からなっているが, ロイプテレア科の核形態についてはこれまで観察されていない。ロイプテレア科唯一の種R.chilianthaの間期核, 分裂期前期及び中期染色体の形態を初めて報告する。間期核が単純染色中央粒型, 染色体数が2n=32及び中期の32本の染色体中, 最長の4本の染色体が二次狭窄を持つことはクルミ科と類似していることが分かった。しかしながら, 32本の染色体中, 次端部型染色体を6本持つことは, 2本(或いは持たない)を持つクルミ科とは相違していることが分かった。また, クルミ科と同様にロイプテレア科(x=16)は, 2n=16(x=8)の染色体組中, 2本の染色体が二次狭窄を持つヤマモモ科と共通の祖先から派生した四倍体と推察された。
  • 川窪 伸光
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 153-164
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    日本産アザミ属植物はすべてが両性花を咲かせる雌雄同株として取り扱われてきたが, 最近になってノマアザミCirsium chikushiense Koidz.がメス株を分化させた雌性雌雄異株(gynodioecy)であることが判明した。そこで日本産アザミ属全体に, メス株を分化させた分類群が, どの程度存在しているかを明らかにするために, 京都大学理学部所蔵の乾燥標本(KYO)を材料として雄ずいの形態と花粉の有無を観察した。その結果, 観察した97分類群のうち約40%の39分類群において, 花粉を生産しない退化的雄ずいをもつ雄性不稔株を確認した。これは種レベルで換算すると, 68種中の約43%の29種で雄性不稔が発生していることを意味した。発見された退化的雄ずいのほとんどは株内で形態的に安定しており, 雄性不稔の原因が低温障害などの一時的なものではないと考えられた。また22種類の推定雑種標本中, 5種類においても雄性不稔を確認したが, それらの雑種の推定両親分類群の少なくとも一方は, もともと雄性不稔株を生じていた分類群であった。雄性不稔株を確認したすべての分類群がメス株を分化させているとは言えないが, 雄性不稔株の発生頻度の高い分類群の多くは遺伝的にメス株を維持し, 雌性雌雄異株の状態にあるのかもしれない。
  • 横川 水城, 堀田 満
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 165-183
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    1.霧島山系におけるミヤマキリシマ, キリシマツツジ, ヤマツツジの形質変異と訪花昆虫相について調査を行った。2.諸形質の解析と生育地域の空間構造からキリシマツツジ集団はミヤマキリシマ集団やヤマツツジ集団からは, 区別する事が出来る。3.ヤマツツジ(南九州型)は標高800mまでの低地の林縁沿いに生育し, ミヤマキリシマは火山性山岳の標高1000m以上の比較的開けた斜面に生育する。一方, キリシマツツジはヤマツツジとミヤマキリシマの中間ゾーンに分布し, 形態的にはややヤマツツジに近いながらも花色に著しい変異をもつ自然雑種起源と推定される集団である。4.キリシマツツジ集団の成立にはミヤマキリシマとヤマツツジの交配親和性の高さが原因となっていると推定される。5.ヤマツツジ集団とミヤマキリシマ集団の訪花昆虫相は, 送粉者として適合的な種では, 互いに異なっており, 自然状態では両種間の生殖隔離は一応保たれている。6.一方, キリシマツツジを含む2集団間, あるいは3集団間に共通する訪花昆虫も存在し, これらによってヤマツツジ集団とミヤマキリシマ集団間の遺伝的隔離が部分的に破られ, 雑種集団のキリシマツツジが成立し, この集団を通してさらに遺伝子の浸透性交雑が進行していると推定される。
  • 邑田 仁
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 185-208
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    マムシグサ群は長い偽茎と, 葉軸の発達する鳥足状小葉により特徴づけられるテンナンショウ属マムシグサ節sect.Pedatisectaの一群である。形態的に多型であり, 多くの分類群が記載されてきたが, 遺伝的には分化がきわめて小さいことが明らかになっている。また, 群内で認められた形態群間に低頻度ではあるが中間型がある, 自然雑種がある, F_1雑種の花粉稔性が低下しない, など雑種形成を通じて遺伝的な交流があることを示唆する状況証拠もある。しかし一方では, 多くの場所で, 異なる形態群が形態上の差異を保ちつつ同所的に分布しているのも事実である。本稿では, 低頻度の中間型を除いた場合, マムシグサ群内にどのような形態群が認められ, どのような分布を示すかについて現在までの知見をまとめることを試みた。また, 認めた形態群に関して発表されている学名との対応を試みた。マムシグサ群を, 花期が遅く, 仏炎苞が葉よりも遅く展開し, 舷部内面に細かい縦皺がある第1亜群(カントウマムシグサ亜群), 花期が早く, 仏炎苞が葉よりも早く展開し, 舷部内面が平滑な第2亜群(マムシグサ亜群), 花期や仏炎苞展開のタイミングがそれらの中間的で, 舷部内面や辺縁にしばしば微細な突起を生ずる第3亜群(ホソバテンナンショウ亜群)に大別する。第1群にはカントウマムシグサ(トウゴクマムシグサ), ミクニテンナンショウ, コウライテンナンショウ, ハチジョウテンナンショウ, オオマムシグサ(イズテンナンショウ, ヤマグチテンナンショウ), ヤマトテンナンショウ, ヤマザトマムシグサ, ヤマジノテンナンショウ, スズカマムシグサ, 第2群には, マムシグサ(ヤクシマテンナンショウ), ヒトヨシテンナンショウ, タケシママムシグサ, 第3群にはホソバテンナンショウ, ミャママムシグサ, ウメガシマテンナンショウ, "中国地方型のホソバテンナンショウ", などが認められる。しかし, 現地調査はまだ不十分なものであり, フェノロジーやポリネーターに関することも含め, より詳細な検討が必要である。
  • 太田 久次, 村田 源
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 209-210
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 田村 道夫
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 210-
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 藤井 伸二
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 211-
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 村田 源, 高原 光, 本城 尚正
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 212-213
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 高橋 弘, 成瀬 亮司, 角野 康郎
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 213-215
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 立石 庸ー
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 216-218
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 加藤 英寿, 高橋 弘, 河野 昭一
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 218-219
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 白岩 卓巳
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 220-227
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 福原 達人
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 228-
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 邑田 仁
    原稿種別: 本文
    1995 年 46 巻 2 号 p. 229-
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
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