1983年から1986にかけて3回の調査で収集した11, 000点以上の標本に基づく研究によって, セラム島とアンボン島には約700種のシダ植物が産することが分かった。この数は比較的小さな島のシダ植物相としては極めて多く, 四国と同じ面積でありながら日本全域の種数よりも多いシダ植物が分布するのである。その主な理由は, 世界で最も豊かなシダ植物相(2, 000種)をもつニューギニアが近くにあって, そこが供給源となっていることであると思われる。本稿ではコバノイシカグマ科(コバノイシカグマ属, ユノミネシダ属, イワヒメワラビ属, フモトシダ属, オオフジシダ属, ワラビ属, Orthiopteris属, Paesia属)の19種, シシラン科(タキミシダ属, シシラン属, Monogramma属)の15種, オシダ科ナナバケシダ亜科(カツモウイノデ属, ナナバケシダ属, Cyclopeltis属, Heterogonium属, Pleoenemia属, Pteridrys属)の35種を報告した。その中で, ユミノネシダの変種var.seramensis, Antrophyum lancifolium, Ctenitis calcicola, C.clathrata, C.coriacea, Tectaria crenata var.petiolata, T.melanocauloides, T.seramensisを新種あるいは新変種として記載した。
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