植物分類,地理
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50 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 田中 教之
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    Ophiopogon gracilipes Craibの副花冠(corona)は6深裂し,それに付着する葯も比較的大きいので,花はOphiopogon(ジャノヒゲ属)のそれに類似する。しかし,Ophiopogonの花彼は子房より上部において6裂するが,本種の花被は副花冠より上部において6裂する。この性質はPeliosanthes(シマハラン属)と一致する。また,Ophiopogonの雄ずいは子房に隣接して起立し,花被上からは起立しないが,O. gracilipesの雄ずいは,他のPeliosanthesのように,花被上に発達する副花冠に付着する。本種の葉の性質などもPeliosanthesと一致する。本種はPeliosanthesの他のどの種とも区別できる明瞭な特徴を持つので,同属の独立種として扱い,新組合'P. gracilipes'を提案した。タイにおける本種の1新産地も報じた。一方,故早田文蔵博士がラオスで採集した標本に基づき,Peliosanthes属の1新種P. subcoronataを記載した。本種は同属の他種に見られるような顕著な副花冠を持たず,葯には短い花糸が底着し,雄ずいは花被に付着するなどの点で同属の他種とは異なっている(Peliosanthesの他種では,花糸がほとんど退化し,葯はその背の一部において副花冠に付着する)が,葉の特徴などは同属のそれとよく一致する。また,本種において大変特徴的な点は,花被片基部に極めて小さな副花冠様の裂片が存在すること,そして半葯の頂部間で連合があることである。本種の花被の6裂はその副花冠様微小裂片のある付近までで,子房にまでは達していないことと,雄ずいは子房に隣接して起立せず,子房より少し上部の花被の筒状部から起立する点で,Ophiopogonとは異なっている。
  • 朴 宰弘, 金 南貞, 崔 〓, 伊藤 元己
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    日本のタカサゴソウの三倍体と四倍体がどのように出現するか知るために4カ所の個体群から採集されたサンプルに基づいて,それらの倍数性を調べた。2個体しか採集できなかった小さな個体群を除き,他の個体群では三倍体と四倍体が同時に出現し,三倍体の頻度は38%から60%であることが明らかになった。このことから三倍体と四倍体がそれぞれ独立してではなく一緒に大陸から渡ってきたと推定された。タカサゴソウは日本ではかつてもっと多くの個体数が見られたが,現在はその数も少なくなり絶滅の危機にあると思われる。
  • 崔 〓, 朴 宰弘
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 161-171
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    韓国テグ地方Mt. Bisulsanのフロラ調査のおり,Pseudostellaria heterophyllaとP. palibinianaの他に,これらに種によく似ているが同定のできない個体を採集した。それらの外部形態,体細胞染色体,花粉稔性,アロザイムのバンドパターンを調べ比較したところ,同定できなかったそれらの個体はP. heterophyllaとP. palibinianaの間の自然雑種であることが判明した。それをP. heterophylla × P. palibinianaとして記載した。なお,この種間自然雑種はワチガイソウ属では初めての記録である。
  • 荻沼 一男, WILLIAM S. ALVERSON, DAVID A. BAUM
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    熱帯アメリカに自生するキワタ科3属3種について,根端分裂細胞を用いて調べた体細胞染色体数を報告する。調べた3属3種の染色体数はすべて初めての報告である。染色体数は以下の通りである。Gyranthera caribensis(キワタ亜科分岐群)は2n=96,Quararibea aurantiocalyx(アオイ亜科分岐群)は2n=88,"Spirotheca" rosea(キワ夕亜科分岐群)は2n=88の染色体数をもつことが明らかとなった。また,今回の染色体の観察から,従来の分類システムのキワタ科の染色体数は一般的に2n=86から2n=92の範囲にあるとするBaum and Oginuma(1994)の提唱を基本的に支持できた。
  • 副島 顕子, 武 素功, 岩槻 邦男
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    中国雲南省東北部の昭通地区で採集されたシロヨメナ群(Aster ageratoides Complex)17個体の染色体数を観察した結果,2倍体が4個体,4倍体が7個体,8倍体が6個体であった(x=9).形態はいずれも互いによく似ており,中国植物誌の検索表(Lin and Chen,1985)によると,すべてA. ageratoides var. laticorymbusとなる。この変種は白い舌状花をもち,植物体全体に毛が少ないもので,日本のシロヨメナとよく似ている。Lin and Chen(1985)は日本のシロヨメナをA. ageratoides var. leiophyllusとし,頭花サイズがより小さいことでvar. ageratoidesおよびvar. laticorymbusと区別している。一方,var. ageratoidesとvar. laticorymbusは総苞片の形で区別され,前者の総苞片には縁毛と細鋸歯があり鈍頭で幅が広く,後者の総苞片は全縁,尖頭で幅が狭いとされているが,シロヨメナ群においてこれらの特徴は集団間や個体間での変異が大きく,分類の再検討が必要である。シロヨメナ群の2倍体は中国,日本,台湾,韓国と広い地域に出現することが明かとなったが,このことは2倍体の分布の拡大が倍数化に先立って起こったか同時進行的に起こった可能性を示唆している。
  • 木本 行俊, 徳岡 徹
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 187-200
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    キプシ属の生殖器官の解剖学的特徴をこれまでの研究結果と今回の観察結果を合わせてまとめ,分子データから類縁関係が示唆されたクロッソソマ科,ミツバウツギ科,ゲイッソロマ科と類縁関係の比較検討を行った。その比較検討の結果,キブシ属はクロッソソマ科,ミツバウツギ科とよく似ており,クロッソソマ科とは葯の表皮細胞が残ること,始原細胞が複数あること,外種皮が薄いこと(4〜5細胞層),外種皮の細胞が非常に厚膜化すること,種衣があることから特によく似ていることが分かった。しかし,キブシ属は倒生胚珠を持っており湾生胚珠を持つクロッソソマ科とは明らかに異なっていた。従って,生殖器官の解剖学の結果からキブシ属はこれと姉妹群の関係にあるクロッソソマ科と同様にキブシ科として独立の科と扱うべきであり,ミツバウツギ科およびゲイッソロマ科と近い類縁関係にあることが示唆された。しかし,ゲイッソロマ科は生殖器官の解剖学についてほとんど分かっておらず今後の研究が望まれる。
  • 瀬戸口 浩彰, 渡邊 かよ, 高相 徳志郎, 仲里 長浩, 戸部 博
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 201-205
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    南西諸島西表島の船浦にあるニッパヤシ集団は1959年に天然記念物に指定されて以来,縮小の一途をたどっている。この集団の全ての個体(28個体)の遺伝的多様性をRAPDで解析した結果,27個体は全く同じRAPDバンドをもち,小型の1個体だけが僅かな多型を示した。従って,この27個体は遺伝的に同一なクローンである可能性がある。これは集団内で開花しても種子が全く形成されない事実にも関連していると思われる。ニッパヤシは根茎が水平方向に伸長して2分岐し,その各々の先端にシュートを形成しながら栄養繁殖をする性質があり,船浦においてもこの栄養繁殖によってのみ集団が維持されていると考えられる。集団サイズの急激な縮小,集団が栄養繁殖によるクローンであること,結実しないことなどを考えると,船浦のニッパヤシは絶滅の途をたどっていると言える。
  • 國分 尚, 安藤 敏夫, 渡辺 均, 塚本 達也, EDUARDO MARCHESI
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 207-219
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    既に報告したウルグアイにおけるPetunia axillaris subsp. axillarisとsubsp. parodiiの中間型の由来について考察するため,野生種子由来のsubsp. axillarisとsubsp. parodiiから正逆組み合わせのF_1,さらにF_2個体を育成し,花器形態の遺伝様式を調査した。特に,ウルグアイの2亜種を区別する重要な形質でありながら,今まで無視されてきた雄ずいの状態(2強または4強)に注目し,以前の研究者にも取り上げられている花筒長および花冠径とともに計測した。また,花筒長/花冠径比と,Kokubun et al.(1997;植物分類,地理48巻:173-185)の判別関数Z_<12>による判別得点を2次変数として分析に供した。その結果,各形質は量的に遺伝していたが,4強雄ずいはF_1個体には現われず,F_2になって初めて出現し,あたかも劣性遺伝子のようにふるまった。Subsp. axillarisとsubsp. parodiiよりも分散が大きく,それはsubsp. axillarisを母親にしたF_1個体にも継承された。F_1,F_2個体とも,計測値はおおむね両親の値の範囲に分布した。正逆の組み合わせを比較した場合,計測値は母親の値に近く,特にsubsp. axillarisを母親とした場合,subsp. axillarisとF_1・F_2個体の値の分布に重なりが見られた。このことは判別得点についても言え,前報でsubsp. axillarisと判定された群落の中にもsubsp. parodiiの遺伝子が浸透している可能性が示唆された。F_2個体では花筒が長いほど4強雄ずいに近くなる(subsp. parodiiに似る)傾向が示された。Colonia州のLa Plata川沿いに見られた中間型は本研究で得られたF_2個体の一部に似ており,この中間型が雑種起源である可能性が認められたが,FloresおよびSoriano州のNegro川下流域に見られた小輪の花をもつ中間型はsubsp. axillarisとsubsp. parodiiの交雑だけで説明することは難しいと思われた。
  • 小林 禧樹, 邑田 仁, 渡邊 邦秋
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    セッピコテンナンショウは,わずか4個体の標本に基づき,雌雄株の区別がされないまま記載されていた。最近,新たにみつかった集団から,多数の個体で形質の測定が可能になったので,本種の再検討を行った。これまでの記載と異なり,葉が2個ある個体がはじめてみつかった。雄株では,雌株に比べて偽茎や花梗の長さがかなり短かく,小葉数が5枚になる個体もみられた。仏炎苞,附属体及び葯の色には黄緑〜濃紫〜黒紫色と大きな変異があり,それらの様々な組み合わせの個体がみられた。これまで近縁と考えられてきたホロテンナンショウとは,染色体数や胚珠数の違いのほか,形態上でも大きな違いがみられ,両種は近縁ではないことが示唆された。
  • 植野 啓子, 中村 俊之, 角野 康郎
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    日本産タチモ(アリノトウグサ科フサモ属)の染色体数を,北海道,本州,四国の57集団で採集した植物を用い調査した。その結果,2倍体(2n=14)と3倍体(2n=21)の存在が確認された。このうち2倍体は57集団全てで確認されたが,3倍体が確認されたのは1集団のみであった。同一地域から2倍体と3倍体の存在が確認されたのは初めてであるが,日本では3倍体は稀で2倍体が優勢であることが明らかになった。
  • 荻沼 一男
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 229-241
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    ロイプテレア科とクルミ科からなるクルミ目の核形態の特徴とその進化を,総説としてまとめた。エンゲルハルディア連のEngelhardia serrataの核形態については初めて報告する。これまで,唯一の属Rhoipteleaからなるロイプテレア科と,4連8属からなるクルミ科のうち,4連5属の核形態が明らかとなっている。これまでの報告をまとめた結果,両科の核形態は均質であることが判った。すなわち,両科は分裂期中期染色体の核型が類似していること及び互いに基本数x=16(但し,ノグルミ属のx=15を除く)をもっている。これらの核形態を各科内,両科間及び近縁なヤマモモ科,カバノキ科,Ticodendraceae及びモクマオウ科の核形態と比較した。その結果,ロイプテレア科とクルミ科が近縁であることが支持されると共に,クルミ目のx=16は,ヤマモモ科(x=8),カバノキ科,モクマオウ科の一部の属と共通の祖先群からの四倍体起因と推察された。また,詳細な分裂期中期染色体の核型から,ロイプテレア科及びクルミ科の中で単系統をつくるヒコリ連とクルミ連とは,他の連とは異なる系列にあることが支持される。しかしながら,この仮説を確証するためにはCyclocarya, Alfaroa,及びOreomunneaの研究が期待される。クルミ目におけるこれまでの研究から,核形態はクルミ目の科内や科間の属間(属群)で均質であることが判った。このことは,クルミ目の近縁群でも核形態が属や科内で均質であることを示唆しているものと思われる。
  • 木下 覚, 小山 博滋, 小川 誠, 太田 道人
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 森田 弘彦, 村田 源
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 246-248
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 小林 史郎
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 248-250
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 田中 徳久, 勝山 輝男, 木場 英久
    原稿種別: 本文
    2000 年 50 巻 2 号 p. 250-252
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 索引
    2000 年 50 巻 2 号 p. 253-
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
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