281. 臺灣や琉球にあるタウゲシバは葉が大きくて長さ3糎幅5粍に達し,はつきりした葉柄があり,實葉は一般に裸葉よりはずつと小さい.これが Lycopodium javanicum SW. に相當するもので,和名をオニタウゲシバとした.しかしこれもホソバタウゲシバ L. serratum THUNB. との間にヒロハタウゲシバ . serratum f. intermedia NAKAI があるから變種にした方がよいと思ふ.それで學名には Lycopodium serratum THUNB. var. longepetiolatum SPRING を採用しやう.282. 臺灣其他亞細亞の熱帶に廣く分布してゐるボウカヅラ Lycopodium carinatum DESV. は石垣島にもある.琉球には新發見の一種.京大の〓葉室には小泉教授が1923年に採集せられた標本及び多和田眞淳氏が1933年に採集せられた標本がある.283. ヒモラン Lycopodium Sieboldii MIQ. は奄美大島(小泉教授採集)や沖縄(多和田眞淳氏及び金城鐵郎氏採集)にもある.琉球には未記録の一種である.284. イヌワラビ Athyrium niponicum (METT.) HANCE は臺灣には未記録の種類であつたが,京大農學部林學教室の岡本省吾氏は高雄州旗山郡三合溪流域の扇平で採集せられた.日本,朝鮮,南滿洲,支那北部中部にあり,臺灣は分布の南限である.變異も頗るはげしいので異名も澤山にあるが,朝鮮のコウリヨウイヌワラビ A. concinnum NAKAI もその一であると思ふ.285. 下澤伊八郎氏が臺灣新竹州竹東郡蕃地の根本と佐藤との間で採集せられたタイワンヒメワラビの一型は包膜が大きく,圓腎形で徑約1.5粍,質も硬いものであるから,變種にして Acrophorus stipellatus (WALL.) MOORE var. macrostggius TAGAWA と命名した.286. タイワンヲシダ Dryopteris taiwanicola TAGAWA はホウライマクワヲビ D. lepidopoda HAYATA に似てゐるが,葉柄や中軸にある鱗片に二型があつて,その一は小さい赤褐色のもので放射状に細かく裂けてゐるから區別ができる.臺灣の阿里山や卑南主山にある.287. 臺灣のオニクマワラビはヒマラヤや支那にある Dryopteris marginata (WALL.) CHRIST と同種であるから,D. grandissima TAGAWA はその異名となる.288. 臺灣のタイトウベニシダはスマトラ,ボルネオ,印度支那にある Dryopteris polita ROSENST. と同種であるから,D. laurisilvicola T. SUZUKI 及び D. taitoensis TAGAWA は共にその異名となる.289. 臺灣のアリサンヒメワラビは南阿弗利加,マダガスカル,ブルモン島,印度,支那,にある Dryopteris squamiseta (HOOK.) O. KTZE. と同種であるから D. thrichorhachis HAYATA 及び D. atrosetosa ROSENST. はその異名となる.290. 九州のヒロハナラヰシダ Dryopteris Miqueliana var. fimbriata KOIDZ. と3年後に發見せられた支那の Rumohra sinomiqueliana CHING とは同じものである.これは獨立の種であると考へるからナラヰシダ屬に移して學名を Leptorumohra sinomiqueliana (CHING) TAGAWA と變更した.九州では英彦山,市房山,大平山にある.291. ハゴロモジフモンジシダ Polystichum Hancockii (BAK.) DIELS var. laciniatum TAGAWA は園原咲也氏が沖縄の佐手山で發見せられたタイワンジフモンジシダの變種である.標本は金城鐵郎氏より分譲を受けた.羽片は羽状に深裂し,裂片は披針形又は長楕圓状披針形で幅1-2粍缺刻状の鋸齒がある.最下前側の羽片は菱状卵形で幅3-4粍殆ど常に游離してゐる.292. タカサゴサジラン Loxogramme confertifolia TAGAWA は筆者が臺灣高雄州旗山郡蕃地の藤枝と溪南山との間で發見した新種.イハヤナギシダの小さいものに似てゐるが,根莖は短く,葉は相接して生じ,中肋は兩面に著しく隆起してゐる.
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