237.FAURIEが臺灣高雄州の萬金庄附近で採集し,又筆者が蕃地クワルス附近で採集したウラジロの一種は頗る大きなもので,葉柄は長さ2米,羽片は長さ2米,幅50糎,小羽片は幅3糎に達し,中軸や羽片の裏面には星状毛があり,小羽片には長さ3粍ばかりの顕著な柄があり,裂片はほぼ直角に出ている.これは沸領印度支那や海南島にあるGleichenia Blotiana C. CHR. であって,臺灣には新発見の一種である.コシダ屬Dicranopterisに移して学名をDicranopteris Blotiana (C. CHR.) TAGAWAと變更した.238.支那のGleichenia chinensis ROSENST.が臺灣のウライ附近や新竹州のマブトクにある.臺灣には新発見の一種である.これはウラジロの大きなものの葉柄や中軸に黄褐色の鱗片が密生したやうなものである.コシダ屬に移して学名をDicranopteris chinensis (ROSENST.) TAGAWA と變更した.239.〓世界の熱帯に廣く分布しているPteris linearis POIR.は臺灣の南部にもある.筆者は高雄州旗山郡の山脚数カ所で採集した.ハチジヤウシダによく似ているが羽片中肋の両側には網目隙がある.しかしこの網目隙は不安定なもので一枚の葉でも場所によっては細脈が連結していないところがある.240.臺灣のアリサンスダレAsplenium tenuissimum HAYATAは多数の標本を観察してみると,印度,マラツカ,仏領印度支那,支那等にあるAslenium tenuifolium DONと全く同種である.241.印度南部,ヒマラヤ,支那,トンキン,フィリッピン群島にあるAsplenium exiguum BEDD.は臺灣にもある.筆者はこれを高雄州旗山郡蕃地のマスホアルと中間との間で採集した.これはトラノヲシダに似たものであるが,葉柄は光沢のある黒い栗褐色,又,羽片や葉の先端には無精芽ができる.新に和名をコモチトラノヲシダとした.242.昨年の末に金城鉄郎氏は沖縄の與那覇岳でウスバクジャクHymenasplenium cheilosorum (KUNZE) TAGAWAを採集せられた.屋久島に産することは30餘年前のCHRISTの記録があるが,琉球には新発見の一種である.
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