鉄(III)を臭化水素酸(7~8
N)中で臭素錯陰イオンとし,これを高分子量アミン(Amberlite LA-1またはLA-2の1vol%キシレン溶液)で抽出したのち,475mμの波長で有機相の吸光度を測定することにより鉄を定量した.吸光度はすこぶる安定で1週間後も変化せず,再現性も良好であった.本法は,臭化水素酸溶液中で吸光度を測定する鉄の定量方法よりも,酸濃度および共存元素の影響が少ない.ニッケル,クロム,コバルト,亜鉛,カドミウム,鉛,ビスマス,スズ(IV),アルミニウムなどは全く妨害しない.銅(II)は,抽出率が低く,しかも475mμにおいて吸光度が最低となるため,少量は妨害しない.500μg以上の銅も,有機相をふたたび新たな臭化水素酸で洗浄することにより妨害が除かれる.本法をアルミニウム合金,ニッケル金属中の微量の鉄の定量に応用したところ良好であった.
抄録全体を表示