シアン化物,塩化物およびシアン酸塩の混合溶液に回転白金電極-S.C.E.からなる短絡電流滴定法を適用して,硝酸銀標準液と反応して生成する沈殿の溶解度差に基づき,各イオンを段階的に逐次定量する方法を開発した.
1~10×10
-4グラム式量のシアン化物,2~10×10
-4グラム式量の塩化物,および5~20×10
-4グラム式量のシアン酸塩を含み,0.1
F硝酸カリウム溶液を支持電解質とする試料溶液100m
lを,まず約10℃で滴定してシアン化物の終点を求め,続いて0.02~0.03%になるようゼラチンを添加したのち滴定して塩化物の終点を求める.最後にメタノールを40~50m
l添加して5℃以下に冷却しながら滴定してシアン酸塩の終点を求める.
試料に炭酸塩が含まれる場合には,滴定に先だち過剰の硝酸バリウムを添加して炭酸バリウムとして沈殿させておく.各成分の濃度と混合比によって誤差は異なるが,濃度0.01
Fの等式量程度の混合比の場合には約2%の精度で定量可能であった.シアン化物と塩化物の少量が多量のシアン酸塩と共存する場合もこれらを比較的精度よく定量できた.しかし少量の塩化物およびシアン酸塩が多量のシアン化物中に含まれる場合には,これらを精度よく定量することは困難であった.このような場合には,標準添加法を採用することによって,精度が改善されることを明らかにした.混合溶液の定量に要する時間は1回につき約90分であった.
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