黒鉛電極を使用し,アーク放電条件および担体濃度などを種々変えた場合の黒鉛中の銅の蒸発量,蒸発挙動およびスペクトル線強度の関係を検討した.
試料は,高純度黒鉛中に銅10ppmを酸化銅の形で混合し,担体としてフッ化リチウム0.5~10%を加えて調製した.発光には直流アーク法を用い,放電後の黒鉛中の銅濃度の測定は中性子放射化分析法で行なった.
アーク電流が大になれば,蒸発量,陽極温度は増加する.アーク電流8.5~12.6A,極間3mm,放電60secの放電条件で,両極に詰め込んだ試料1mgあたりの銅の蒸発量は,空気中で陰,陽極とも9×10
-9gであり,アルゴンふんい気中では陰,陽極とも5×10
-9gである.空気中およびアルゴンふんい気中で,蒸発量が同じであっても後者では銅3247.5Åのスペクトル線強度は前者に比べて弱い.銅の蒸発挙動として
Cobs.と
Cstand.の比をとった場合,空気中ではこの比がアーク電流および放電時間におもに依存する.フッ化リチウム濃度を0.5~2.0%添加した試料を陰極,陽極に詰め,放電させることにより,試料中の銅の蒸発量は増加し,さらに,その場合のCu 3247.5Åの線強度は強くなる.
抄録全体を表示