3-メチルグリオキシム(以下MGOと略記)を合成し,コバルト(II),鉄(III),ニッケル(II)および銅(II)との反応を調べた結果,アルカリ性溶液中で紫外部に吸収極大波長をもつ錯体が生成されることがわかった.これらの錯体のなかで,コバルト錯体(以下MGOCoと略記)が最も安定で,この錯体はpH8~8.5で容易に生成され,その吸収極大波長は260.5mμ,モル吸光係数は約16,700であることがわかった.MGOCo錯体を利用し,コバルトイオンの吸光光度定量法についての諸条件を調べた結果,0~7ppmの濃度範囲でベールの法則がなりたっていることがわかった.また共存イオンの影響を調べた結果.ニツケル(II)イオンは呈色後にEDTAを添加することによって,その妨害を除くことができることがわかった.しかし鉄(III),銅(II),シアンおよびチオシアンイオンの妨害を除く適当な方法は見いだせなかった.またMGOCo錯体の組成比を調べた結果,MGO対Coは2対1で結合していることがわかった.
(1) MGO試薬を合成し,各種金属イオンとの反応を調べた結果,アルカリ性溶液中でコバルト(II),ニッケル(II),鉄(III)および銅(II)イオンと反応し,紫外部に極大吸収をもつ錯体が生成されることがわかった.
(2) これらの錯体のうちで,モル吸光係数の大きいものはMGOCo錯体であることがわかった.
(3) そこで,この錯体によるコバルトイオンの定量法について検討した結果,0~7ppmの濃度範囲でベールの法則がなりたっていることがわかった.
(4) またコバルトイオンの定量の際の妨害イオンについて調べた結果,ニッケル(II)は発色後にEDTAを添加することによって,その妨害を除くことができた.しかし鉄(III),銅(II),シアンおよびチオシアンイオンは妨害する.
(5) 次にコバルトとMGO試薬との結合比を調べた結果,1:2で結合していることがわかった.
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