水中に存在するPPbオーダーのカドミウム,亜鉛,鉛および銅の定量は,500~1000m
l/25m
lのような大きな水相と有機溶媒の比を用いる抽出-原子吸光法により可能である.
抽出操作は次の3法につき検討した.
A法:検水を分液漏斗にとり,ロッシェル塩(20%,5m
l),塩酸ヒドロキシルアミン(10%,2m
l)を加える.ついでアンモニア水でチモールブルーを指示薬とし中和ののち,アンモニウム塩緩衝液(pH10)を加えpHを調整する.次にジチゾン-四塩化炭素溶液(0.03%,10m
l)を加え2回抽出する.水洗ののち,塩酸(1
N,10m
l)と振り混ぜる.この塩酸溶液をカドミウム,亜鉛および鉛の原子吸光分析に供試する(銅の場合には6
Nの塩酸を用いて逆抽出することが必要である).
B法:A法で得たジチゾン-四塩化炭素抽出液にメチルイソブチルケトン(10m
l)を加えた液を原子吸光分析に供試する.
C法:検水のpHを4~5に調整し,ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム(1%,5m
l)を加え,メチルイソブチルケトン(25m
l)で抽出する.抽出液を原子吸光分析に供試する.
3法ともに種々の水中の4元素の定量に応用し,じゅうぶん満足すべき結果が得られた.
C法が最高の感度を示した.これはメチルイソブチルケトンが水にわずかばかり溶けるために(約2%の溶解度),抽出後の有機相の得量が少なくなり,濃縮効果が増大するばかりでなく,有機溶媒効果が加成されるためである.
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