分析化学
Print ISSN : 0525-1931
27 巻, 2 号
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  • 瀬田 和夫, 和志武 三徳, 安茂 寿夫, 高井 信治, 奥山 典生
    1978 年 27 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    スチレン系多孔質ゲルに第4級アンモニウム基を導入した巨大網状型陰イオン交換樹脂を,内径0.4cm,長さ50cmのクロマト管に充てんし,酢酸緩衝液の直線的濃度こう配溶出法を用いて,高速陰イオン交換クロマトグラフィーによるヒト尿中の紫外部吸収物質の迅速分析法について検討した.その結果,粒径(6±1)μmの樹脂を用いたとき分析が120分間以内に終了し,約100成分の尿中紫外部吸収物質の存在が認められる方法を確立し,この方法を標準分析法とした.次に分析の再現性,流速及び酢酸緩衝液のpHの影響などを調査し,更に使用した樹脂の特性について検討した.
    これらのことからこの分析法における標準法は,C.D.Scottらの開発した従来法と比べて,1/10~1/20の分析時間であり,本分析法に用いた陰イオン交換樹脂の特性とともに,本分析法の多方面への有用性を認めた.
  • 西田 宏
    1978 年 27 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ペリリウムとクロムアズロールS(CAS)は,ポリオキシエチレンドデシルアミン(POEDA)の存在下で1:2錯体(吸収極大605nm,モル吸光係数1×105)を生成する.平衡に達した後の吸光度に対して,共存する陰イオンの種類による影響が見られなかった.
    錯体の生成反応速度において,ベリリウム及びCASに関して反応次数はそれぞれ1及び2である.反応速度はPHによる影響は見られなかったが,POEDA濃度の増大とともにわずかに減少し,又,共存する陰イオン濃度の増大とともに増大した.この場合,共存する陰イオンの種類によって反応速度が異なり,その速さの順序はEDTA≫過塩素酸塩>硝酸塩>塩化物≧硫酸塩であった.ベリリウムイオンとミセルイオン界面におけるCASとの相互反応が律速段階と考えられる.
    EDTAの添加は反応速度を最も大きくし,又,金属イオンをマスキングするので有効である.
  • 天川 映子, 大西 和夫, 田口 信夫, 関 博麿
    1978 年 27 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    グラファイト管を用いた無炎原子吸光分析法によるスズの定量法を検討した.共存物質による干渉は,水酸化ジルコニウム共沈法と簡易標準添加法により除去できた.試料(2~5)gを硝酸-過塩素酸を用いて湿式灰化した後,微アルカリ性で,水酸化ジルコニウムとスズを共沈させた.沈殿を東洋ろ紙No.5Aでろ過し,水洗後,残さを5%熱塩酸で溶解し,簡易標準添加法により,試料溶液中のスズ濃度を測定した.本法を清涼飲料水に適用した結果,回収率は(100~106)%,変動係数は2.3%であった.
  • 秋吉 孝則, 塚本 多香子
    1978 年 27 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    鉄鋼中の微量ホウ素(10ppm以下)を精度よく定量するために,高周波プラズマトーチスペクトル分析装置の利用について検討した.その結果,高周波プラズマトーチのホウ素検出感度がメチルアルコール溶液で非常に高いことが分かった.そこで鉄鋼中のホウ素をメチルアルコールでホウ酸メチルとして蒸留分離した後,留出させたホウ素のメチルアルコール溶液を直接,高周波プラズマトーチで測定する分析方法を確立した.本法によれば,鉄鋼中の微量ホウ素が従来法の約1/2の操作時間で分析でき,操作も簡便である。又,定量範囲が(0.0150~0.00002)%と広範囲で,微量域の分析精度もよい.共存元素の影響を受けないので,高合金鋼についても普通鋼同様本法が適用でき,分析値は化学分析値とよく一致した.
  • 深沢 力, 岩附 正明, 川久保 進
    1978 年 27 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    薄片状や繊維状以外の結晶粉末で,通常の試料支持法では選択配向を起こしやすく,これにより回折線強度の再現性が悪くなる試料として,斜方晶系酸化鉛(II)を用い,数mg以下の場合でも可能な無配向測定試料の作製法を研究した.まず,粉末試料の分散ふりかけ装置を試作した.次いで,無反射試料板にはった粘着テープにガラスやイオン交換樹脂の微粒を一層だけ付着させたものや,アルミニウム製試料ホルダーにはった薄い布に粘着剤を付けたもの,その他の上に,この分散装置を用いて試料をふりかけ付着させ,回折線強度を測定した.その結果,粘着テープに(100~150)メッシュのガラス粒を付着させたものやストッキング用ナイロン製布を用いて,ほぼ無配向で回折線相対強度の再現性も満足できる測定試料を作製できることが分かった.
  • 電量検出型液体クロマトグラフィーに関する研究(第4報)
    田中 一彦, 砂原 広志
    1978 年 27 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    対応する酸が接近した第1次解離定数(pK1)を有するリン酸,亜リン酸,次亜リン酸各イオンを,水素型陽イオン交換樹脂を用いてイオン排除的に分離するために,カラム温度,溶離液組成(水と有機溶媒及び過塩素酸の混合系)を検討した.
    水溶離液を用いた場合,各リン酸イオンはその対応する酸が接近したpK1(約2,18℃)であるため接近したキャパシティー比(k')を示したが,カラム温度の上昇,メタノール,エタノール及びアセトン添加により溶離液の誘電率が低下してpK1が増大する結果,これらリン酸イオンのk'は増大した.各リン酸イオンのk'は0~80%(v/v)のアセトンにおいてその濃度の増大とともに直線的に増大し,同様に(25~80)℃のカラム温度においてその温度の上昇とともに直線的に増大した.
    カラム温度50℃,溶離液70%(v/v),アセトン(1ml/min)の分離条件下でこれらリン酸イオンの混合物は完全分離できた.
    一方,各リン酸イオンの電解効率は0~80%のアセトン溶離液においてその濃度の増大とともに低下し,その程度は次亜リン酸,亜リン酸,リン酸各イオンの順であった.
  • 中沢 林子, 田中 邦雄
    1978 年 27 巻 2 号 p. 100-104
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    有機塩基のハロゲン化物及びハロゲン化水素塩の非水滴定において,環境汚染の原因にならない方法を検討した.その結果,氷酢酸-ジオキサン混合溶媒系で硝酸ビスマスを加えて過塩素酸で滴定する方法を案出し,十分満足できる結果を得た.繰り返し精度は変動係数0.18%であった.硝酸ビスマス添加量は,ビスマス/ハロゲンのモル比が0.35~0.42(当量比1.05~1.26)の範囲では定量値に影響がなかった.この方法を市販の試料の定量に応用し,従来法と比較検討した結果,実用分析として十分使用できることが分かった.
  • 保母 敏行, 須藤 良久, 鈴木 繁喬, 荒木 峻
    1978 年 27 巻 2 号 p. 104-108
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    起ほう分離法を用いる水中の銅(II)イオンの濃縮分離法を検討した.捕集剤にn-ブチルキサントゲン酸カリウム(n-BuXn),起ほう剤に臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を用いる方法である.
    まず,銅(II)イオン濃度2×10-8g/mlの試料1000mlを用い,バッチ法により検討した.pHを9.0,0.5%n-BuXn水溶液添加量を40mlとし,0.075%CTAB水溶液を90ml/h,窒素ガスを500 ml/minで供給しながら起ほう分離を40分間行うと,濃縮率100倍,回収率もほぼ100%という良い結果が得られた.
    この結果をもとに連続法の検討を行った.1000ml/hの試料速度においてほぼ96%一定と満足すべき回収率が得られることが分かった.
  • 海水中のアルミニウムのけい光定量;芳香族シッフ塩基金属錯体(第3報)
    森重 清利, 平木 敬三, 西川 泰治, 重松 恒信
    1978 年 27 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    サリチルアルデヒド-セミカルバゾン及びその各種誘導体は微酸性溶液中でアルミニウム,ガリウム,スカンジウム,イットリウム,亜鉛などと反応し青色のけい光性錯体を形成する.これら各種シッフ塩基金属錯体のけい光特性を明らかにした.その結果2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドセミカルバゾン(DHBS)はアルミニウムと極めて安定な強いけい光性錯体を形成することが分かった。そこで本試薬を用いた海水中の微量アルミニウムの定量を目的に基礎的定量条件を検討し,海水中のアルミニウムの分析を行ったところ精度よく定量できることが分かった.
  • 東 国茂, 萩原 一芳
    1978 年 27 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    紫外吸収検出器を用いた高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により,石油及び石油製品の識別について検討を行った.ポリスチレンゲルHSG-15を充てんしたカラムを用いテトラヒドロフラン(THF)を溶離液として測定し,検出波長を変えてクロマトグラムのプロフィールに与える影響について検討した.(240~400)nmの範囲で測定した結果,特に原油,重油について,クロマトグラムのプロフィールは検出波長により変化し,多くの波長でクロマトグラムを測定することが識別の確実性を高めることが明らかとなった.この結果をもとに,これらの油識別のための実用的な分析手順について考察を行った.
    以上の結果から紫外吸収検出器を用いたGPCにより,石油及び石油製品の実用的な識別を行う場合,次のような分析手順が考えられる.
    まず,はん用型検出器(波長254nm固定)を用い,クロマトグラムを測定する.そのクロマトグラムより,ピーク幅が狭く比較的単純なプロフィールを示す(1)燈油,軽油,潤滑油,A重油のグループと,それ以外の(2)B重油,C重油,原油のグループに分類することができる.(1)のグループ内は一般に保持時間で識別することが困難であるので,ポアサイズの異なるカラムでの分離を試みる.あるいはガスクロマトグラフィーが有効な手段になると考えられる.(2)のグループ内では,原油について上記8種類に限定した場合,特にマーバン,カフジ,ミナス原油,C重油が明確に識別できる.他の原油もクロマトグラムの低分子量側でわずかなプロフィールの相違を示すが,254nmで類似のプロフィールを持つ原油の識別性を改善するため,プロフィールの相互の差が比較的大きくなる280nmでのクロマトグラムを測定する.
    油が相互に混入している場合,そのクロマトグラムは混入成分の種類と量によりプロフィールが異なり,識別は一層,複雑になると判断される。しかし,二つの油の同一性の判定の場合は,できるだけ多くの検出波長でクロマトグラムを比較するのが有効な方法であると考えられる.
  • 中埜 邦夫, 三浦 武美
    1978 年 27 巻 2 号 p. 121-123
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    The determination of copper in a very diluted solutions which could not be detected by the ordinary carbon tube method became possible by a multifold concentration method. The method is carried out by atomizing after repeated injection of sample and drying. However since the reproducibility tends to decrease when the conventional carbon tube (type A) is used, an attempt was made to improve the carbon tube. The first one (type B) has a smaller injection window of 1.5 mm diameter, so as to stopper the top of the pipette at fixed position. The second one (type C) has a small hole right under the injection window of type B. The reproducibility was improved by using the new tubes but type C was better than type B when the number of times of injection repeated was increased. Although the relation between the peak height and the number of times repeated was linear within fifteen times, the peak height slightly exceeded the expected value over twentytimes.
  • 田辺 良久, 宮谷 順子
    1978 年 27 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    A simple and rapid method for the microdetermination of nitrogen in cyanides, cyanocomplexes and apricot kernel water is proposed. The method is based on the reductive decomposition of cyano group to the mixture of ammonia and methylamine in alkaline medium by using Raney nickel and subsequently on the titration of the mixed bases which are distilled and collected in 4% boric acid, using 0.01 N HC1 as titrant. The reduction and the distillation were carried out with the improved micro Kjeldahl apparatus previously reported by the author. A (510) mg of sample was taken in the distillation flask, and the appropriate quantity of Raney nickel powder (0.35 g for ordinary cyanides, 0.45 g for cyanocomplexes) was added, the powder then being washed down with (510) ml of water. After the whole apparatus was assembled by glass joint, 2 ml of alkaline solution (30% NaOH) and 5 ml of water were run in through the introductory funnel and the condenser tip was put beneath the solution of boric acid in the receiver. The distillation flask was heated gradually by a burner flame under aeration (one or two bubbles per second) till red colored boric acid solution with methylred turned to pale yellow. After the violent distillation for fifteen minutes, the microtitration with 0.01 N HCl was carried out in that the blank value was suggested to be substracted from the experimental value. The standard deviation and the coefficient of variation were (0.20.1)% and (1.10.5)%, respectively, in a series of experiments. NO3-, NO2-, SCN-, CNO-, NH4+ and volatile amines interfere the analysis.
  • 山口 研二, 奥村 逸男, 出口 正一
    1978 年 27 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    Cadmium was quantitatively extracted by shaking thiothenoyl-trifluoroacetone (STTA) solution in xylene in the presence of ο-phenanthroline from an aqueous solution at pH 4.09.0. The resulting organic phase directly subjected to atomic absorption spectrophotometry. The determination of small amounts of cadmium in tin metal by use of this analytical technique was investigated. A required amount of the sample (0.5 g) was dissolved by heating in 5 ml of nitric acid (1+1), and was evaporated to (23) ml on a hot plate. The residue was dissolved in 150 ml of warm water and filter pulp was added. The solution containing the precipitate was stood for 30 minutes on the hot plate. The solution was filtered through filter paper, and the residue was washed with warm water. After the pH of the filtrate was adjusted to 5 by adding acetate buffer (pH 5.0) and ammonium hydroxide (1+10), the solution was taken into a separatory funnel. Five milliliters of 1.5 × 10-3 M ο-phenanthroline solution and 10 ml of 8.4 × 10-4 M STTA solution in xylene were added. After shaking for 3 minutes, the organic phase was introduced into air-acetylene flame and the absorbance was measured at 228.8 nm. The calibration curve was linear for 010μg of cadmium in 10 ml of the organic phase, and the coefficient of variation was within 2.7%. The sensitivity was 0.017 μg/ml [xylene]/1%. No appreciable interference was caused by other impurities likely to be present in tin metal. The accuracy of the procedure was checked by B.A.M. standard samples with good agreement. The proposed method was successfully applied to the determination of cadmium above 0.0002% in tin metal.
  • 山下 敏夫, 佐々木 敏夫, 藤村 満, 橋本 芳一
    1978 年 27 巻 2 号 p. T1-T5
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    粒子状物質の捕集時における,大気中の酸性ガス(特に二酸化硫黄)の影響によるガラス繊維製濾紙の重量増加について検討するため,野外実験及び室内実験を行った.各種の濾紙を用いた野外実験から,pHの高い東洋GB100,同GB100R,GelmanAEなどには大きな重量増加と多量の硫酸根が見いだされ,濾紙のpHとの間に密接な関係のあることを確認した、又,高濃度の二酸化硫黄あるいは二酸化窒素と接触させる実験を行ったところ,野外実験と同様な傾向が見られた.結論としてガラス繊維製濾紙は大気中の低濃度の二酸化硫黄の吸着によってその重量が増加し,pHの高い数種の濾紙では測定値に大きな誤差を与えることが判明した.
  • 広川 吉之助, 奥 正興
    1978 年 27 巻 2 号 p. T5-T8
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    X線光電子分光法(XPS)による固体表面の定量的分析(標準試料を使用しないで濃度の相対比を求める方法)により表面層並びに表面下のある範囲の層の組成が決定できることを示した.ただし,固体表面層中2組以上の元素からの電子線の運動エネルギーが非常に近いスペクトル線同士が2種以上測定できる場合は非常に単純な計算となる.沈殿反応など表面層での反応の様子もXPSである程度定量的に測定できることも知られた.
  • 安部 和久, 渡部 徳子, 藤原 鎮男
    1978 年 27 巻 2 号 p. T9-T13
    発行日: 1978/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    遊離のニトロキシドラジカルのESR信号の強度(吸収曲線の一次微分曲線の振幅)を定量する場合の測定条件の決め方や測定法について,1例を報告した.マイクロ波出力(P),磁場変調幅(M),磁場掃引速度と装置の時定数などに対する,ESRシグナル強度の依存性や再現性を調べ,P<8mW,M<0.4ガウスで測定した場合,±3%以内の誤差でシグナル強度を求められることを明らかにした.又,濃度域(10-6~10-4)Mのテンポコリン水溶液は,変調磁場0.32ガウスで,一次微分曲線の振幅から直線性よく定量できること,及び(10-7~10-6)Mの濃度域の水溶液では,変調磁場の大きさを線幅の倍程度に大きくし,時間をかけて測定すれば,この範囲でも直線性のある検量線を求めることができることを示した.10-3M以上の濃度領域では,線形が変わるため,振幅からは直線性のよい検量線は求められず,2回積分などのデーク処理が必要である.
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