生体試料中の微量スズを,硫酸酸性下ヨウ化物とし,ベンゼン抽出後,アノーディック・ストリッピング・ボルタンメトリー(ASV)により定量する方法について検討した・ヨウ化物-ベンゼン抽出を行うことにより,19種の共存イオン{ナトリウム(I),マグネシウム(II),アルミニウム(III),カルシウム(II),バナジウム(V),クロム(VI),マンガン(IV),コバルト(II),ニッケル(II),銅(II),亜鉛(II),ゲルマニウム(IV),ヒ素(V),セレン(IV),カドミウム(II),アンチモン(V),水銀(II),鉛(II),リン酸イオン}の影響をほとんど除き,微量のスズを抽出分離することができた.多量の3価の鉄イオン共存下では,スズの抽出率の低下が見られたが,0.29/mlL-アスコルビン酸添加により,0.2μgのスズに対し10mgの共存まで鉄(III)の影響を除くことができた.ASVによるスズの定量は,精度及び感度の点で,生体試料中の微量スズを定量するのに十分であった.本法による,毛髪,尿及び血液試料における添加スズの回収率は,(91.6~98.3)%であった.
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