分析化学
Print ISSN : 0525-1931
36 巻, 4 号
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  • 川島 泉, 藤永 清久, 本間 中八郎
    1987 年 36 巻 4 号 p. 223-227
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    SIMSを用いた同位体希釈法による微量元素の分析方法を検討した.試料溶液にスパイクを添加した後,妨害成分を分離,除去する.この溶液を5μlまで濃縮してSIMS試料台へ滴下,乾燥させる.乾燥残留物試料をSIMSで分析し,測定した同位体比から目的元素を定量する方法である.10-9~10-6gオーダーの天然のB,Ni及びMoの標準溶液を本法で分析したところ,3元素とも,相対誤差5%以内で定量できた.本法の応用として大規模集積回路(LSI)プロセスにおけるホウケイ酸ガラス膜中のB,ドライエッチングした後のシリコン基板中のNi,及び金属酸化物半導体LSIのモリブデン電極形成の際に,ゲート酸化膜中へ侵入したMoを定量した.求めた不純物の絶対量で,SIMSで個体試料を直接測定して得た不純物の深さ方向の二次イオン強度分布を校正し,各不純物の深さ方向の濃度分布をそれぞれ明らかにすることができた.
  • 山本 隆彦
    1987 年 36 巻 4 号 p. 228-232
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    水中のリン酸イオンをモリブデン酸と8-キノリノールを用いて三元錯体沈殿を生成させ,これを0.45μmメンブランフィルター上に捕集しXRF分析法により定量する方法について報告する.沈殿生成の最適pHは1.4でPO43-10μg/100cm3以下で検量線は良好な直線となり,検出限界は0.3μgであり,相対標準偏差はPO43-10及び4μg/100cm3でそれぞれ3.5,4.2%であった.共存イオンとしては鉄(III)イオンと鉛(II)イオンの妨害が特に著しく,その許容量はそれぞれ1.5,3mg dm-3であった.鉄(III)イオンはヒドロキシアミンを添加し鉄(II)イオンに還元することにより10mg dm-3までその許容量を上げることができる.ケイ酸は20mg dm-3まで妨害せず,本法は天然水中の微量のリン酸イオンの定量に十分適用することができると考えられ,河川水について行ったところ満足のいく結果を得た.
  • 白土 房男, 岡島 義昭, 黒石 忠文, 高田 芳矩
    1987 年 36 巻 4 号 p. 233-237
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    相互に定量の妨害となる元素の混合系として,Ni-Fe合金薄膜をモデルに選びNiの高精度FIA定量法を検討した.発色剤には4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノールを,Fe(III)のマスキング剤にはピロリン酸ナトリウムを,又,pHの緩衝剤にはホウ酸ナトリウムを用いた.16方自動バルブを用いて,これらの試薬類を混合した混合反応試薬各60μlで試料40μlの前後を挟み,FIA流路系に注入する.65℃の反応コイル(0.5mm i.d.×10m)内で安定な錯体を生成させ,波長520nmの吸光度を測定して定量する.微量試料(約0.3mg)に適用できる分析条件の定量精度は,15回繰り返しの再現性が相対標準偏差で0.09%,又検量線精度は±0.2%であった.なお,測定時間は1検体当たり2分間であった.
  • 北爪 英一, 伊藤 倫康
    1987 年 36 巻 4 号 p. 238-243
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    溶液化した試料を前処理により100μmφ以下の微小点に蒸発濃縮し,エネルギー分散X線分析法で絶対量の定量を行う新しい分析法について基礎的な検討を行った.濃縮用基板を種々検討した結果,半導体用シリコンウエハが適していることが分かった.表面に深さ約5μm,径10~100μmの穴をエッチングしたシリコンウエハ上でマニピュレーターとテフロンプローブで液滴を操作することにより,約10μmφまで濃縮が可能となった.検出限界はPの場合0.02ngであった.フッ化水素酸で溶解した半導体用リンガラス膜中のPを定量した結果,吸光光度法,ICP-AESによる定量値と良く一致した.実試料定量の繰り返し精度は18%であった.
  • 松下 秀鶴, 塩崎 卓哉, 半田 隆, 田辺 潔
    1987 年 36 巻 4 号 p. 244-249
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    環境試料中の芳香族アミン(AA)の微量分析方法作成の一環として,逆相HPLCにおける22種のAAの分離挙動を調べた.本法は,移動相にメタノール-水,あるいはメタノール-緩衝溶液を用いて行った.その結果,移動相にメタノール-水混合溶媒を用いると,AAはほぼ構成炭素数の少ない順に溶出されることが認められ,構成炭素数が同じであれば,ジアミノ体がモノアミノ体よりも早く溶出されることが分かった.又,移動相にメタノール-緩衝溶液を用いると,幾つかの化合物についてはその保持時間が逆転しており,適切なpHの移動相を用いることにより,異性体相互を容易に分離し得ることが分かった.又,メタノール-水系及びメタノール-緩衝溶液系こう配溶離法の併用により,AAを同定・定量し得るものと考えられた.又,検出器に分光蛍光光度計を用いてAAの検出下限を調べたところ,S/N=2で20ng以下となり,そのほとんどは5pgから3ngと高感度に検出し得ることが分かった.次に,得られた分離分析条件を市販AA中に含まれる発がん性異性体の分析への適用を行った.その結果,市販の1-ナフチルアミン,1-アミノアントラキノン及び1-アミノアントラセンに含まれる発がん性異性体の日常分析に有用であると考えられた.
  • 青木 伊豆男, 渡辺 邦洋, 斎藤 隆
    1987 年 36 巻 4 号 p. 250-255
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    シッフ塩基[N-(アルキル)サリチリデン-1-ブチルアミン]とそのZn及びBe錯体の蛍光及びりん光特性に及ぼすアルキル置換基の効果を検討した.錯体の吸収スペクトルはシッフ塩基の中性分子ではなく,その陰イオンに類似していた.シッフ塩基の中性分子は低温においても蛍光を示さず,陰イオンは室温(296K)では微弱であるが蛍光を示し,低温では強い蛍光を示した.錯体は室温でも強い蛍光を示し,そのスペクトルは77Kにおけるシッフ塩基陰イオンのスペクトルに類似していた.又,錯体は77Kにおいて強いりん光を示すがシッフ塩基陰イオンのりん光性は小さい.錯体の蛍光及びりん光はシッフ塩基イオンが金属イオンに配位することにより固定され,イオンの振動が抑制された結果と考えられる.又,シッフ塩基のフェニル環中のアルキル置換基は錯体の蛍光及びりん光に大きな影響を及ぼす.アゾメチン基に対して5位のアルキル基はシッフ塩基のπ電子を非局在化させることにより,錯体の蛍光を増大させ,4位のアルキル基は局在化させることにより,りん光を増大させると考えられる.
  • 首藤 貴子, 古賀 実, 田中 勇武, 秋山 高, 伊規須 英輝
    1987 年 36 巻 4 号 p. 256-260
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    生体試料中の微量タソパク質の定量に,高感度で妨害物質の少ないクマシーブリリアントブルーG-250を用いた色素結合法と,迅速で再現性の高いFIAとを組み合わせた迅速高感度分析法を開発した.本法は従来の方法に比べ少量の試料(20μl)で測定でき,検出限界(40ng)も低く,定量精度も良好で1μgにおける相対標準偏差(n=10)は0.2%で,サンプリング速度(60回/時間)も迅速であった.更に本法をラット肝臓ミクロソーム中のタンパク質の定量に応用し,従来用いられている用手法と比較した.その結果良好な相関が認められた.
  • 蛍光分析法,誘導プラズマ発光分析法,蛍光X線分析法の適用
    笹岡 伸光, 森重 清利, 重松 恒信, 西川 泰治, 松本 孝春
    1987 年 36 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    2-ヒドロキシプロピルイミノジ酢酸をセルロースファイバーに化学結合させた高性能キレート〓紙"ExpapierF-2"を用い,モナズ石中の希土類元素イオン(III)よりTh(IV)を〓過,予備濃縮捕集し,捕集したSc(III),Y(III)及び希土類元素イオン(III)はpH1.5の酢酸ナトリウム溶液を溶出剤として完全に溶出分離できた.Expapier F-2上に残留するTh(IV)は2 mol dm-3塩酸20cm3を用い5cm3 min-1の速度で通過させると簡便,迅速に溶出でき,溶出液中のTh(IV)はフラボノール蛍光法あるいはICP-AESで精度良く定量できる.本キレート〓紙のキレート容量は(6.35±0.25)×10-2meq g-1であり,XRF法を用いて捕集,溶出挙動を詳細に解析できた.
  • 加藤 健次, 佐藤 訓孝, 冨田 弘, 前田 恒昭
    1987 年 36 巻 4 号 p. 267-270
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    高純度ガス中に含まれる極低濃度の水分の定量を行うため,冷却した吸着剤を利用して水分の濃縮を行った.濃縮された水分は,吸着剤の加熱により脱離し,熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフにより分離検出した.この方法は,極めて高感度であり,高純度窒素中の0.1ppm以下の水分を容易に定量することができた.高圧容器詰めの窒素,混合ガスについて水分濃度を測定し,容器の温度及び圧力に対する水分濃度の変化を測定し,その影響を明らかにした.
  • 河口 広司, 田中 智一, 中村 哲成, 水池 敦
    1987 年 36 巻 4 号 p. 271-275
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    市販の発光分光分析用の誘導結合プラズマと四重極質量分析計を用いて試作を行った.3段の差動排気系にCu又はNi製の試料導入オリフィス(直径0.5mm)とステンレス鋼製のスキマー(直径1.0mm)を取り付けた.感度を上げるためには,オリフィス,スキマー,イオンレンズ及び質量分析計の軸を精密に調整することが重要であった.水,5%の塩酸,硝酸及び硫酸溶液で測定したバックグラウンド質量スペクトルは,文献に報告されたものとほぼ同様のものが得られた.試料導入オリフィスの口の部分にはピンチ放電は観測されなかったが,キャリヤーガス流量を増加させると急激にBa及びLaの2価イオン強度が増加した.Ba及びLaの2価と1価イオンの強度比は又,プラズマの高周波電力によっても変化した.これらの比は,高周波電力1.2kW,キャリヤーガス0.751/minのとき,約2%であった.
  • 高見 勝重, 加茂 智子, 望月 京司, 杉前 昭好, 中本 雅雄
    1987 年 36 巻 4 号 p. 276-281
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    河川水などの環境水中における直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)をオクタデシルシランを化学結合させたシリカゲル(ODS)を充てんしたミニカラムで濃縮し,クリーンアップした後,HPLC用分析カラムに導入して分離し,蛍光検出器(励起波長225nm,蛍光波長290nm)で定量する方法について検討した.ODSミニカラムは試料注入用高圧六方バルブに装着し,ミニカラムで濃縮したLASを,バルブの切り換えによって,分析カラムへ導入できるようなシステムにして使用した.試料水を非水系のメンブランフィルター(0.45μm)で濾過し,次いで残留物及びフィルターをメタノールで洗い,洗液を試料の濾液と合わせて試験溶液とした.その0.5~5.0mlをシリンジでODSミニカラムに注入し,LASをミニカラムに濃縮した.50%メタノールをミニカラムに通してクリーンアップした後,バルブを切り換えて移動相(0.05M過塩素酸ナトリウム-アセトニトリル,2:3,v/v)をミニカラムに通し,濃縮したLASを分析カラムに導入して分離し,保持時間で同定,ピーク面積法で定量した.本法によるLASの検出限界は10ngで,5mlの試験溶液を注入した場合の定量限界は0.003mg/lであった.又,0.1mg/l濃度となるようにLASを添加した実試料からの回収率は90.0%で,相対標準偏差は2.6%であった.
  • 原田 泰
    1987 年 36 巻 4 号 p. 282-283
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Simple methods for the determination of nitrate nitrogen in environmental waters were developed. To eliminate Fe(III) and Mg(II), sample water was heated for 30 min with alum solution and ammonia water. After separation of the precipitate, ammonium sulfamate and hydrochloric acid were added to the solution to decompose nitrite. The pretreated sample solution was determined by the following two methods : Method A (hydrazinium sulfate reduction method), the solution was heated for 60 min at 35 °C with Cu-Zn catalysis and hydrazinium sulfate, followed by colorimetric determination of nitrite with sulfanilic acid and N-1-naphtylethlenediamine : Method B (sulfonic acid method), a solution of a sulfonic acid in concentrated sulfuric acid (a special reagent for nitrogen meter, Central Kagaku) was added to the sample solution. The violet-colored solution was measured by the nitrogen meter. The relative standard deviations with nitrate standard solutions (n=5) were 4.9% (at 0.1 mg/l of nitrate nitrogen), 2.0% (0.5 mg/l) and 1.8% (1.0 mg/l) for method A, and 9.4% (0.1 mg/l), 6.1% (0.5 mg/l) and 6.0% (1.0 mg/l) for method B. The analytical results of river waters around the Lake Kasumigaura (n=22) by the above two methods were in good agreement with each other with the correlation coefficient of 0.981.
  • 平井 昭司, 早川 泰弘
    1987 年 36 巻 4 号 p. 284-285
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    半導体構成材料中に含まれるU,Th及びその娘核種から放出されるα粒子によって,半導体メモリーの蓄積データが反転する,いわゆるソフトエラーの問題が指摘されて以来,その対策の検討が行われている.この中で,材料の精製技術の発展に伴い,極微量U,Th及びα放射体の分析法の確立が強く要求されている.
    現在,これらの分析法の中でも高感度分析法として知られているNAAでさえ,非破壊法(INAA)では目的核種以外の核種からの生成放射能の影響で,0.n ppb程度までしか定量が行えない.本研究では,検出限界を下げるために,中性子放射化後,イオン交換分離操作を行い,U及びThからの生成核種である239Np及び233Paを選択的に分離し,その後γ線測定する方法で数十pptレベルまでのU,Thを定量する方法(RNAA)を開発したので報告する.
  • 今井 登
    1987 年 36 巻 4 号 p. T41-T45
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    河川たい積物についてICP-AESによる%オーダーからppmオーダーまでの21元素の分析法を検討した.試料の分解法として硝酸-過塩素酸-フッ化水素酸と塩酸-硝酸による酸分解法を検討し,炭酸ナトリウム-ホウ酸による融解法と比較した.その結果,簡便で迅速な方法として,硝酸-過塩素酸-フッ化水素酸分解が一番よいことが分かった.米国及び中国の河川たい積物の標準試料を分析し良好な値を得た.
  • 佐藤 幸一, 伊藤 真二, 中村 佳右, 大河内 春乃
    1987 年 36 巻 4 号 p. T46-T50
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    ニッケル基耐熱合金粉のXRFにおいて酸分解/ガラスビード法の適用を検討した.検量線は各元素の標準溶液で調製した合成標準ガラスビード試料を用いた.共存元素の影響の補正にはde Jongh による理論α係数を用いる補正法を適用したところ,未補正値と比較し正確さ(σd)が向上した.ニッケル基耐熱合金標準試料(チップ状)の定量を行い,表示値と良く一致した定量値が得られた.本法の繰り返し分析精度は含有量の少ないFe及びZrを除いて,相対標準偏差は2%以内であった.本法を用いて実用ニッケル基耐熱合金粉中のAl,Ti,Cr,Fe,Co,Y,Zr,Nb,Mo,Ta及びWの定量を行い,化学分析値と比較した結果良い一致を示した.
  • 檀崎 祐悦
    1987 年 36 巻 4 号 p. T51-T54
    発行日: 1987/04/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Ti,Zr,Nb及びTaを含む多元ニッケル基合金中のNiを,予備分離せずに,pH5.5でEDTA錯体を形成させ,その吸収を1000nmで測定する吸光光度法により定量した.試料を硝酸とフッ化水素酸で溶解した後,試料溶解に使用したフッ化水素酸でZrを,過剰のフッ化水素酸をホウ酸で,そして,Ti,Nb及びTaを過酸化水素でマスキングすることにより,各共存元素それぞれ300mgまでの単独の共存下で,140mgまでのNiを定量できた.
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