分析化学
Print ISSN : 0525-1931
36 巻, 5 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 市橋 啓子
    1987 年 36 巻 5 号 p. 287-292
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    水道水及び水道原水中の10ng/mlレベルのCu(II),Pb(II)及びCd(II)を簡単迅速に同時定量するのを目的に,つり下げ水銀滴電極を用いる微分パルスアノーディックストリッピングボルタンメトリーを日常分析に適用するための基礎検討を行った.塩化物イオンを含む塩化カリウム及び塩酸はCu(II)及びPb(II)のピーク電位及びピーク電流に大きく影響を及ぼすことが分かった.鉄及びマンガンなどのけん濁物が認められる試料では,塩化カリウムを除いて,塩酸,硫酸,硝酸,リン酸及び過塩素酸が支持電解質として適当であった.感度を高めるために析出時間を長くすることは特にCd(II)については効果がなく,又,Pb(II)のから試験値が高くなるので析出時間30秒で測定を行った.実試料として水道水,井戸水及び伏流水を用い,AASと比較したところ,良好な結果を得た.本法では試料に酸を添加するだけの前処理で,5分間の除酸素時間を含めても測定時間は約10分間であった.
  • 相原 将人, 渡部 英雄, 木卜 光夫
    1987 年 36 巻 5 号 p. 293-296
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    キサントゲン酸基をシリカゲル表面に化学修飾した担体(シリルザンセイトと略記)を合成し,これを配位子として用いるMn(II)及びPb(II)の予備濃縮/AASについて検討した.定量目的金属イオンを含む試料溶液の一定量を,定量ポンプを用いてシリルザンセイトを詰めたカラムに通じて捕集する.純水で洗浄後,0.2M塩酸溶液により溶離した流出液を定容量として,AASにより定量した.Mn(II)及びPb(II)とも,pH5.5付近で最大捕集量が得られ,それぞれ0.111mmolg-1及び0.122mmolg-1であった.担体として用いたシリカゲルは,4種類について検討したが,細孔直径の小さいものほど捕集量が大きいことが分かった.本法の応用例として,海水及び河川水中に目的金属イオンを標準添加してその回収率を求めた結果,海水中のMnの定量以外は満足する結果を得た.
  • 永瀬 誠, 深町 和美
    1987 年 36 巻 5 号 p. 297-300
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    豚肉,牛肉及び鶏肉中に残留するバージニアマイシンM1(M1),S1(S1)の蛍光検出HPLCによる定量法を検討した.M1,S1をアセトニトリル-ハイフロスーパーセルで高速かき混ぜ抽出後抽出液を吸引濾過し,濾液の一部を濃縮乾固した.残留物をメタノールに溶かし、クロロホルムを用いた液-液分配により妨害物の除去を行った.分離用カラムはTSKgel ODS-120T,移動相にはメタノール-アセトニトリル-0.015Mリン酸二水素ナトリウム水溶液-テトラヒドロフラン(43:22:34:1)を用い,励起波長311nm,蛍光波長427nmで検出した.定量下限はM1の場合0.1μg/g,S1の場合0.01μg/gであった.
  • 斉 文啓, 河合 潤, 福島 整, 飯田 厚夫, 古谷 圭一, 合志 陽一
    1987 年 36 巻 5 号 p. 301-305
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    生体試料の分析の分野においても,定性・定量分析だけでなく,含まれている元素の状態分析の必要性が高まっている.本研究では,ヒトの毛髪を試料に取り上げ,高分解能XRF法により試料に含まれる硫黄の状態分析が可能であることを示した.高分解能蛍光X線スペクトルは,二結晶型分光器{分光結晶:Ge(111)×2}を用いて測定した.更に得られた高分解能SKαスペクトルに対し,最小二乗法によるピーク分離法を適用して解析を行い,定量的な状態分析を行った.22種の標準物質の測定と,試料の測定及び解析から,ヒトの毛髪中の硫黄はS2-(有機物)が主成分であり(95~96%),S6+(無機物)がわずかに存在することが分かった.この二つの状態以外は存在しないことも分かった.中国人と日本人,男性と女性を対照させて検討した結果,硫黄の量,状態共に国籍の差が認められた.又,女性のほうがS6+がわずかながら多いことも認められた.一方黒髪と白髪を対比して検討したところ,白髪は黒髪に対しS2-が減少する傾向にあることが分かった.X線照射による損傷については.本研究での条件程度のX線(Cr,35kV,30mA)であれば,1時間強程度の照射ならば硫黄の状態が変化することはないことが明らかになった.
  • 森川 久, 柘植 明, 飯田 康夫, 上蓑 義則, 石塚 紀夫
    1987 年 36 巻 5 号 p. 306-310
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    酸化チタン粉末試料中の不純物(9元素)を定量するため,フッ化水素酸-塩酸により試料を加圧酸分解した溶液を対象としたICP-AESについて検討した.測定に用いたICPトーチは市販の石英トーチと自作のアルミナトーチの2種類である.石英トーチは試料溶液にフッ化物イオンのマスキング剤としてホウ酸を添加した溶液の測定に用い,アルミナトーチは試料溶液を直接測定するのに用いた.試料溶液中のTiは各元素の発光強度をかなり減少させ,バックグラウンドを増加させた.そのため試料溶液とマトリックスをマッチングさせた標準溶液を用いて,各元素の検量線を作成する必要があった.実試料の分析を行った結果,2種類のトーチを用いて得られた値はほぼ一致した.
  • 竹内 浩士, 武藤 英佳, 指宿 堯嗣
    1987 年 36 巻 5 号 p. 311-315
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    水に溶解したオゾンを迅速,簡便に定量するために,ローダミンBを試薬とする液相化学発光法を検討した.オゾン発生器からの空気を精製水に通気することで,0~400ng ml-1の溶存O3 (O3aq) 試料を調製した.最適試薬組成は,60mg l-1ローダミンB/10mg l-1没食子酸であり,O3aq濃度に比例した発光が得られた.検出限界は0.03ng ml-1であり,従来の方法より二けた高い感度が得られた.気液分配過程も含めた総括的な再現性は相対標準偏差として約9%であった. Na+, K+, NH4+, SO42-, NO3-などのイオン類は妨害しないが,ハロゲン化物イオン,アルデヒド,過酸化水素は干渉を与えた.
  • 石井 幹太, 山田 正昭, 鈴木 繁喬
    1987 年 36 巻 5 号 p. 316-319
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    シアン化物イオン(CN-)の化学発光分析をモデルにFIAに新しい展開をもたらすと考えられる循環式FIAを検討し,その有用性を実証した.本研究で用いたCN-の化学発光系は,{陽イオン界面活性剤二分子膜ベシクル(臭化ジドデシルジメチルアンモニウム)/水酸化ナトリウム/CN-/ウラニン}である.この循環式FIAでは妨害となる残余水酸化ナトリウムの除去に硫酸アルミニウムによる中和法が利用されている.循環式FIAは目的に応じて感度,試料処理能などを選択できるが,本システムでは0.5pg(20μl注入法)の検出下限で調製試薬100mlに対して120試料の分析が行え,これは循環しない場合の約2倍の試料処理能であった.妨害成分はS2-やEDTAどが考えられるが,10-7MCN-試料とそれらの10-4Mを共存させてもCN-分析における妨害は認められなかった.
  • 康 智三, 小野 正範
    1987 年 36 巻 5 号 p. 320-325
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    ヨウ化物イオンをヨウ素に酸化・抽出して共存イオンから分離する.有機相中のヨウ素を還元して水相に逆抽出し,これに一定過剰量のAg(I)を加え,生成するヨウ化銀の沈殿を除去する.そして,過剰の銀のシアノ錯陰イオンをメチレンブルーとのイオン対として1,2ジクロロエタンに抽出する.この有機相の吸光度を波長657nmで測定すれば,2.7×10-7M(0.03ppm)~9×10-6M (1.14ppm)濃度範囲のヨウ化物イオンを定量することができる.ヨウ化物イオン濃度と吸光度との間に負の直線関係が得られ,波長657nmにおける見掛けのモル吸光係数は1.04×105 1 mol-1cm-1であった.本法を種々の天然水実試料に応用したところ満足な結果が得られた. 6×10-6M ヨウ化物イオン溶液について,11回繰り返し実験の相対標準偏差は0.52%であった.
  • 相沢 一雅, 柴山 真有美, 小宮 泉, 西尾 元宏, 甲斐 文夫
    1987 年 36 巻 5 号 p. 326-329
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    GC/MSによるヒト血しょう中のアンフェナクナトリウム(AMF)及び代謝物(S1,S2,S3)の測定法を開発した.アルカリ条件下でS1を溶媒抽出により分離し,その後酸処理によりAMFをS1に変換しS2, S3と共に溶媒抽出した.S1及びS1に変換されたAMFはそのまま,S2,S3はメチルエステル誘導体に導きGC/MSで定量した.この測定法の開発によりAMF,S1に併せ, S2, S3の同時定量が可能となった.ヒトにAMF製剤を投与し,その血しょう中濃度を測定したところ,AMFとその代謝物の血しょう中濃度はそれぞれ異なる推移を示した.
  • 三谷 明恒, 山崎 秀夫, 合田 四郎
    1987 年 36 巻 5 号 p. 330-334
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    偏光ゼーマン黒鉛炉AASで環境試料中のVを迅速簡便,高精度に定量するための基礎的条件を検討した.粉末試料は炭酸ナトリウムで融解し,水を加えてVを温浸し,不溶性残留物を〓別した〓液を測定試料とした.チューブ型パイロ化黒鉛炉と光温度制御装置を併用することにより高感度,高精度なVの定量法を確立した.V濃度0.2ppmの2%炭酸ナトリウム溶液10mm3を炉に注入した場合の吸光度の相対標準偏差は2.1%であり,本法によるVの検出限界は0.06ngであった.本法を岩石,たい積物などの環境標準物質中のVの定量に応用し,迅速に精度良く定量できた.
  • 山本 幸市, 本水 昌二
    1987 年 36 巻 5 号 p. 335-338
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    海水中の陰イオン界面活性剤の定量法として,エチルバイオレットを用いたトルエン抽出法を行った.ラウリル硫酸ナトリウムのトルエンへの抽出は1回の操作でほぼ完全であり,検量線は0~2.0×10-5Mの濃度範囲で良好な直線性を示し,見掛けのモル吸光係数は92500であった.多量に存在する塩化物イオンの影響は,0.08M塩酸溶液で有機相を洗浄することによって除いた.海水に存在するその他の主成分イオン及びホウ酸による影響はなく,海水中の10ppb~0.3ppmまでの陰イオン界面活性剤を精度良く定量できる.
  • 田辺 和俊, 田村 禎夫, 都築 誠二
    1987 年 36 巻 5 号 p. 339-341
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    A pattern recognition method for elucidating functional groups of compounds from their IR spectra has been investigated by utilizing spectral data compiled in the Spectral Data Base System developed in our laboratory. Spectral data of about 9500 compounds were used, and error ratios in the elucidation of six functional groups (C=O, C=C, C≡N, C-O-C and NO2 groups, and benzene ring) by using a learning machine method were evaluated. As a result, it was found that all functional groups except C=C could be elucidated with high probabilities above 85%. Thus the present method has a high performance when applied to the elucidation of functional groups from IR spectra.
  • 工藤 節子, 細野 長悦, 鈴木 信男
    1987 年 36 巻 5 号 p. T55-T57
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    低圧ボイラーを対象にして, 強く着色したボイラー水中の塩化物イオンをチオシアン酸水銀(II) 吸光光度法によって定量する際の前処理として, アルミニウム塩を用いる凝集沈殿脱色法を検討した. 試料50mlに対して5w/v%KAl(SO4)2・12H2O 3mlを加えたとき, 一般に酸を加える必要がなく,脱色率の点でも満足し得る結果が得られた.
  • 中村 進, 久保田 正明
    1987 年 36 巻 5 号 p. T58-T60
    発行日: 1987/05/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    フタル酸水素カリウム,リン酸二水素カリウム,リン酸水素二ナトリウム(無水),四ホウ酸ナトリウムの市販pH測定用試薬をイオン交換水を用いて再結晶し,その不純物含有量(Na, K, Ca など)をNBS試薬や他の市販試薬と比較した.その結果,再結晶試薬は他の試薬に比べて高純度であった.又,用いたpH測定システムが0.0001pHレベルで安定に測定が可能であったことを確認し,それぞれの再結晶した試薬より作製したpH標準液を測定した結果,いずれもその再現性は±0.001pH以内であった.又,市販のリン酸塩試薬より作製したpH緩衝液はpH標準液とは異なるpH値を示した.
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