分析化学
Print ISSN : 0525-1931
36 巻, 7 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 野田 泰子
    1987 年 36 巻 7 号 p. 403-406
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    コロイド滴定法によるリポソームの表面荷電の定量について検討を行った.正コロイド試薬としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを,負コロイド試薬としてポリビニル硫酸カリウムを用いた.リポソームは,精製したリン脂質を超音波照射によって作製した.滴定の結果,ホスファチジルコリンは同一分子内にあるリン酸基と第四級アミンとの分子内の強い塩形成のために,pH 2~11の全領域にわたって荷電0となった.ホスファチジルグリセロールはpH 3以上では常に一定負荷電量,0.633×10-6当量/10-6総リン当量を示した.ホスファチジルエタノールアミンは,低いpHではリン酸基とアミノ基が塩形成をしているため荷電0であるが,-NH3+→-NH2への変化に伴って塩形成がこわれてリン酸基が正コロイドと結合するようになり,pH10.5以上では一定負荷電量,0.612×10-6当量/10-6総リン当量が得られた.ホスファチジルセリンではpH6~7及びpH10.5以上で,各々0.541及び1.087×10-6当量/10-6総リン当量の一定負荷電量をもつ二段階の解離がみられた.両者は各々,カルボキシル基及びリン酸基の荷電量に対応する.又,このことからカルボキシル基:リン酸基:アミノ基の構成比が1:1:1であることも示された.本法では試料量10~20mgでpH2~11までの広いpH領域にわたる滴定が可能であり,官能基の解離状態の検索並びに荷電定量が行える.独立2回以上の実験結果から再現性は良好であることが分かった.
  • 三浦 恭之, 立神 光司, 康 智三
    1987 年 36 巻 7 号 p. 407-411
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    1 molのヘキサチオン酸イオンが4.5 molの過マンガン酸イオンと定量的に反応する条件を見いだした.硫酸酸性溶液中でヘキサチオン酸イオンを一定過剰の過マンガン酸イオンと反応させた後,ヨウ化物イオンを加えると過剰の過マンガン酸イオンに当量のヨウ素が生成する.このヨウ素(三ヨウ化物イオンとして)の吸光度を波長350nmで測定することにより,1.8×10-7~1.1×10-5Mのヘキサチオン酸イオン(試料溶液10ml中に 0.5~31.7μg S6O62-)を定量することができる.ヘキサチオン酸イオンの濃度が増加するに従って吸光度は減少するが,濃度と吸光度の間には良好な直線関係があった.本法は抽出を行わないヘキサチオン酸イオンの吸光光度定量法としては感度が最も高い方法である.5.00×10-2μmolヘキサチオン酸イオンを含む試料溶液10mlずつを用いて11回繰り返し実験を行ったところ,平均値は5.02×10-2μmolで,標準偏差と相対標準偏差は3.2×10-4μmol と0.63%であった.
  • 西川 孝子, 穂積 啓一郎
    1987 年 36 巻 7 号 p. 412-415
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    有機試料の低温灰化において,グロー放電領域に試料を置く従来のチャンバー構造では,プラズマ中の電子やイオンなど高エネルギー粒子の作用を受けて,試料中のハロゲン塩などは一部が揮散又はハロゲン酸塩に転化する.直管型のプラズマチャンバーの一端に放電域を設け,非放電の下流に塩化物を含む有機試料を置き灰化したところ,著しい塩化物の回収率の向上と,低い塩素酸塩の生成率が得られた.そこで放電域と近接してステンレス鋼製バスケットを入れたプラズマチャンバーを製作し,バスケット内で灰化を行ったところ,金属網による電界シールド効果によって試料付近にプラズマは発生せず,かつ放電域の電子やイオンは金属表面で中和され,原子状酸素のみによる緩和な灰化が進行し,ほとんど定量的に塩化物が回収できることが分かった.
  • 斉 文啓, 魏 復盛, 古谷 圭一, 合志 陽一
    1987 年 36 巻 7 号 p. 416-419
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    生体中のLiの役割が注目されるようになってきた今日,生体試料中のLi量の迅速かつ簡便な定量方法を確立することが重要になってきている.本研究では,血清中のppbレベルのLiを前処理なしに直接黒鉛炉AASにより定量する方法を示した.血清試料に対しては,大量の共存Naの干渉を避けるために2回脱イオン水により4倍希釈を行った.硫酸アンモニウムを添加剤として加えることで,塩素及び他のイオンの干渉を排除した.又,高い灰化温度(900℃)を設定することで血清中の有機物による影響をも取り除いた.測定にはLiの共鳴線670.8nmを,又バックグラウンド補正のためにZr の 670.2nm を用いた.本法を用いると,0.04~30ppb及び30~3000ppbの領域で直線の検量線が得られた.又,過去に報告されている前処理を行う方法に比べて,感度及び信頼性でも優れていることが分かった.更に,実際に健康な人と精神病患者の血清試料を分析し,Li濃度が精神疾患に対応して減少していることを示した.
  • 青木 幸一, 前田 和伸, 徳田 耕一, 松田 博明, 長谷部 清
    1987 年 36 巻 7 号 p. 420-424
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    高感度かつ高速測定可能な高速く形波ボルタンメトリーは電極形状によらないベル型のボルタモグラムを示し,それとベースラインとで囲まれる面積は,く形波振幅に比例する.その比例定数は電流の次元を持つ.固体電極,特に生体内反応の検出器として用いられているカーボンファイバー電極により,K3Fe(CN)6の還元く形波ボルタモグラムを測定することによって濃度と面積の比例性及び定量限界を検討した.く形波振幅を変えることは,(1)装置上極めて容易であること,(2)ピーク電流は変わるがボルタモグラムの形状は変化しないこと,及び(3)ピーク面積に比例することから,本法はノイズの多い系又は微量定量分析にふさわしい方法の一つである.
  • 室住 正世, 中村 精次, 川原 伸一郎
    1987 年 36 巻 7 号 p. 425-430
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    203Tl,107Ag,65Cu,116Cd,206Pb,61Ni,68Znの7安定同位体をスパイクとして用いる生態系標準物質中のTl,Ag,Cu,Cd,Pb,Ni,Znの同位体希釈表面電離質量分析法による同時定量法について報告する.本法を標準物質に対して応用した結果,実効上の検出限界を10-11gレベルとすることができ,205Tl/203Tl,109Ag/107Ag,63Cu/65Cu,114Cd/116Cd,208Pb/206Pb,58Ni/61Ni,66Zn/68Znの測定精度を9回以上の繰り返し測定において相対標準偏差で1%以内とすることができた.又,分析条件を規格化したうえで試料量のみを変えての繰り返し分析の誤差は1%以内となった.本法による分析値を標準物質の保証値と対比すると,本法が優れた感度,精度,正確さをもつことが明らかである.
  • 粒子個数濃度の減少と粒径との関係
    河口 広司, 鎌倉 勝善, 前田 英治, 水池 敦
    1987 年 36 巻 7 号 p. 431-435
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    エアロゾルを直接ICPのプラズマに導入し,各粒子の発光に基づく目的元素の発光スペクトルを波高分析することにより,粒子中の成分量の分布を得る方法を既に発表した.ここでは組成が既知のエアロゾル(カルシウム化合物やガラスの粉末)をいったん金属容器(7l)中に入れ,そこから一定時間ごとにサンプリングし,粒子の個数濃度nの減少を測定した.粒径が一定ならば,log(n)と時間tとは理論的に直線関係が成立する.その傾きd log(n)/dtと粒子密度をパラメーターとして,粒径を理論的に計算し,実験的に得た粒径と比較したところ,良い一致が得られた.従って,組成が一定で密度が既知のエアロゾル粒子については,実験で得たd log(n)/dtから粒径が求められることが実証できた.
  • 斉 文啓, 古谷 圭一, 合志 陽一
    1987 年 36 巻 7 号 p. 436-440
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    黒鉛炉AASによるCo及びNiの定量法につき検討し,茶葉,植物試料(NBS SRM Orchard Leaves, Spinach)中のCo,Niの定量に応用した.植物試料中に微量で存在しているCo,Niは,添加剤としてトリオキソバナジン(V)酸アンモニウムを加えることにより,濃縮,共存物質の分離などの前処理なしに,直接定量可能であった.本方法によってNBS SRM 1571と1570のCoを定量した結果,0.19と1.35μg/gであり,参考値の0.2,1.5μg/gと良く一致した.Niの結果については,1.22,5.68μg/gであり,1.3±0.2μg/gの表示値あるいは6μg/gの参考値と良く一致した.本方法の相対標準偏差はCo及びNiに対してそれぞれ0.42~1.80%及び0.89~4.80%である.溶媒抽出/黒鉛炉AASなどの定量法より簡便,迅速であり,かつ定量精度も良かった.
  • 内海 喩, 山内 淳一, 磯崎 昭徳
    1987 年 36 巻 7 号 p. 441-446
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    臭素及びヨウ素によるビンドシェドラーズグリーンロイコ塩基(BGL)の酸化生成物(BG+)の吸光度を測定する微量臭化物及びヨウ化物イオンの吸光光度定量法を検討した.臭化物イオン又はヨウ化物イオンを,硫酸酸性で過マンガン酸カリウム又は過酸化水素により,遊離臭素又はヨウ素に酸化する.四塩化炭素で抽出分離した後,有機相を希硫酸で洗浄する.有機相にBGL溶液を加えて逆抽出を行う.水相におけるBG+の吸光度を,臭化物イオンでは715nm,ヨウ化物イオンでは725nmで測定する.臭化物イオンの3ppm以下,ヨウ化物イオンの4ppm以下が定量できる.共存イオンの影響などを検討し実試料に適用した.一例として,海水中の臭化物イオンを定量したところ62.3ppmであり,相対標準偏差は1.4%であった.
  • 田尾 博明, 今川 隆, 宮崎 章, 番匠 賢治
    1987 年 36 巻 7 号 p. 447-450
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Atmospheric pressure helium microwave induced plasma sustained with a Beenakker type cavity (He-MIP), which is very useful for the determination of metallic and non-metallic elements, has not yet been applied to volatile β-diketonates. The purpose of this work is to investigate optimum conditions for the determination of Be and Cr acetylacetonates with GC/ He-MIP emission spectrometry. A OV-1 coated fused silica capillary column (0.53 mm i. d., 10 m long, 2μm film thickness) and a TM010, Beenakker type cavity were used. The most critical parameters were plasma power and plasma gas flow rate. Optimum conditions for Be II 313.01nm (these two lines could not be resolved with a monochromator used) with 1 mm i.d. discharge tube were as follows: microwave power, 60 W (10 W reflected); carrier gas flow rate, 15 ml/min; plasma gas flow rate, 600 ml/min. In general, gas flow rate influenced emission intensities of ionic lines more severely than those of atomic lines. Each special distribution of emission intensity of Be II 313.0 nm, Be I 234.9 nm and He I 388.9 nm was different. The linear dynamic range was almost 104, and the limits of detection (S/N=3) were 0.1 pg for Be and 9 pg for Cr, respectively. The relative standard deviation was 11 % at 1.7 pg of Be.
  • 林 謙次郎, 佐々木 義明, 田頭 昭二, 村上 良子, 楠森 功吉, 森永 佳子
    1987 年 36 巻 7 号 p. 450-452
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    Ammonium 1-pyrrolidine dithiocarbamate (NH4pdtc) was used for a gravimetric determination of Cu(II). Cu(II) ion in the solution was quantitatively precipitated as [Cu(pdtc)2] in the pH range 112, when a small excess of NH4pdtc solution was added. The precipitate was not decomposed at 60°C for 6h in contact with mother liquor, and was stable on heating up to 140°C after filtration. The procedure for the determination of crystalline copper(II) sulfate was following: crystalline copper(II) sulfate (containing 10100mg of copper) was dissolved in 200cm3 water, a 0.1% NH4pdtc solution was added to the solution until precipitation was completed. After the adjustment of pH to 8.09.5, the mixture was allowed to stand at 60°C for 1h. The precipitate was filtrated, washed with hot water, dried at 110°C, and weighed. This method is accurate and precise, e.g., the mean of relative errors and the relative standard deviation obtained for 20mg of copper were 0.1% and 0.1% (n=6), respectively. This method is suitable for standardizing a Cu(II) solution containing no other heavy metal ion.
  • 河口 広司, 堀田 吉則, 水池 敦
    1987 年 36 巻 7 号 p. 453-455
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    An image dissector tube with a slit aperture (17μm ×3mm) was attached to a 1-m Ebert type spectrograph whose plate holder and racking mechanism were removed. Almost flat responses were obtained along the horizontal axis of the photocathode (16mm long, spectral range 7.4nm). Spectral signals were measured by dc amplification, phase sensitive amplification with wavelength modulation, or digital integration with a transient memory and a signal averager. The first method was most unfavorable as for the detection limits, the second was convenient for the automatic background correction, and the third was useful for qualitative and multielement analysis. Detection limits were nearly the same for the last two methods but worse by one order of magnitude than those by the conventional method with a photomultiplier.
  • 山田 圭, 鯨井 脩, 郡 宗幸, 井手 邦和, 大河内 春乃
    1987 年 36 巻 7 号 p. T67-T71
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    鉛精鉱脱鉛残留物を湿式酸化したときに得られる反応溶液(分析対象溶液で以下試料溶液と略記)は,反応機構や硫黄の挙動解明のため高精度な元素分析が必要である.試料溶液組成は酸化反応の進行とともに広範な濃度変化がある.少量の試料溶液中のS,Fe,Mn,Zn,Cu,Pb,Al,Mg,Siの定量法をイットリウム内標準法を用いたICP-AESにより検討した.試料溶液は2及び10倍希釈溶液として測定した.検量線溶液は液組成を試料溶液組成にマトリックスマッチングして,2及び10倍希釈溶液相当に調製した.合成試料溶液を分析した結果,10及び2倍希釈溶液を用いることにより上記9元素を迅速かつ正確で高精度に定量することができ,三けたの分析植の表示を可能とした.
  • バックグラウンド補正とバンドフィット法の適用
    村田 勝夫, Donald E.IRISH
    1987 年 36 巻 7 号 p. T72-T76
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    熱水地質学における熱水化学反応挙動の研究に関連して,実験室的に高温高圧条件を設定し,鉄(III)-クロロ錯体水溶液のラマンスペクトルを測定した.得られたラマンスペクトルは,著者らが開発したPETEXPOLプログラムによりバックグラウンド補正した後,PETBNDFTプログラムによりバンドフィットを行った.その結果,100℃では鉄(III)-クロロ錯体として八面体と四面体の化学種が混在するが,300℃の溶液では完全にFeCl4-の四面体化学種になることが判明した.
  • 渡部 和男, 大内 操
    1987 年 36 巻 7 号 p. T77-T80
    発行日: 1987/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    質量分析法による硫黄の同位体比測定のため,硫酸塩硫黄から二酸化硫黄の簡便な調製法を確立した.硫黄を硫酸2-ペリミジニルアンモニウムの沈殿として回収した後,真空中,450℃に5分間加熱して熱分解し二酸化硫黄を得た.確立した方法を鉄鋼に含まれる硫黄の同位体希釈定量に応用した.実際試料の場合,硫酸2-ペリミジニルアンモニウム沈殿の生成に先立ち主成分の鉄などを除去する必要があることが分かった.本法の精度は硫黄含有率が0.0014~0.019%の鉄鋼標準試料に対して相対標準偏差で5%以内であった.
feedback
Top