分析化学
Print ISSN : 0525-1931
37 巻, 8 号
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  • 網田 孝司, 岩本 一優, 一瀬 光之尉, 小島 次雄
    1988 年 37 巻 8 号 p. 389-394
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    流れ分析系においてマルチチャンネルで連続測定された紫外吸収スペクトルの有効利用を目的にして,スペクトルのデータ圧縮の効果と,圧縮データの,高速検索,及びスペクトルの重なった多成分系の連続リアルタイム同時分析への利用の可能性とについて検討した.アダマール変換による圧縮を行い256点の原スペクトルデータに対して圧縮比0.08~0.16程度が最良の識別確度を与えることを示すと共に,達成した検索速度により,リアルタイム検索の可能性について検討した.又圧縮データの,多成分同時分析への利用については最小二乗法による方法を示すと共に,この方法で0.08s間隔でのリアルタイム出力が可能になることを明らかにした.
  • 田村 紘基, 片山 則昭, 古市 隆三郎
    1988 年 37 巻 8 号 p. 395-399
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    水中の酸化マンガン(IV)に対する亜鉛イオンの吸着は,亜鉛イオンと酸化物表面の酸型水酸基との錯体形成によるものとして理解できる.ここでは,次のことを考慮してその平衡条件を導いた.(1)表面には,亜鉛イオン-酸型表面水酸基(1:1)及び(1:2)錯体が生成する.(2)表面錯体形成には,既に生成している錯体が抑制作用を及ぼす.実測の吸着等温線に,平衡条件の式及び表面の吸着サイトに関する質量均衡の式をあてはめ,非線形最小二乗法により(1:1)及び(1:2)表面錯体の安定度定数及び表面錯形成抑制定数を決定した.得られた値は,亜鉛イオン濃度及び水素イオン濃度の広い範囲にわたって実測の吸着等温線によく適合していた.
  • 長島 珍男, 目黒 勝史, 鈴木 繁喬, 保母 敏行
    1988 年 37 巻 8 号 p. 400-404
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    室温作動型二酸化窒素連続測定用検出素子を試作し,その基礎的な動特性について検討した.作製した検出素子はヨウ化銀ルビジウム固体電解質を用いたソリッドステート型で直径13mm,厚さ1.3mmのペレット状のガルバニセルである.本セルはAu/RbAg4I5/Agと表され,ヨウ化銀ルビジウム(0.3g)及び銀(1g)の粉末を層状に重ねて,5.5tcm-2の圧力で成型したものである.作用極はスパッタリング法により金を蒸着して作製した.厚さは25nmである.試料ガスを20ml min-1で検出素子に導入して,二酸化窒素と銀イオンとの反応により発生した電流値を測定した.検出下限2ppbから800ppbの濃度範囲で直線関係のある検量線が得られた.50ppb程度における応答値の相対標準偏差は3%程度であった.
  • 和田 喜久士, 松下 哲巳, 日極 覚, 小嶋 和博
    1988 年 37 巻 8 号 p. 405-410
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    従来用いられているInの水酸化物In(OH)3とは異なり,ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウムとInとの化合物In(C5H12N2S2)3を共沈剤に使用し,微量金属イオンの溶媒浮選を行った.In化合物の沈殿生成には,In 1mg/l以上,ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム30mg/l以上の濃度で酸性域(pH2付近)の条件がより効率よく共沈できることを確認した.ppbオーダーの金属イオンを含む水溶液11からジイソブチルケトン10mlを用いて浮選を行った.本法ではMn2+,K+,Na+,Ca2+,Mg2+は浮選されないため,自然水中に比較的多量に含まれるアルカリ,アルカリ土類金属の妨害は除かれる.浮選の際に妨害する有機物の分解処理には過マンガン酸カリウムによる酸化が有効であり,清浄な自然水中の数ppbのCd2+,Cu2+,Ni2+,Pb2+を90~105%の回収率で定量できた.
  • 内山 俊一, 東福 義信, 鈴木 周一
    1988 年 37 巻 8 号 p. 411-415
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アーモンド種子粉末を高価な精製酵素(β-D-グルコシダーゼ)の代わりに安価なアミグダリン分解試薬として用いると簡便なアミグダリンの定量が行えることを明らかにした.50mgのアーモンド種子粉末を用いると1×10-5~1×10-3Mの間でシアン化物イオン電極の応答電位は良好な直線性を示し,相対標準偏差は3~4%であった.更にアーモンド種子粉末懸濁液中に浸した炭素繊維布をシアン化物イオン選択性電極表面に装着すると2週間安定なアミグダリンセンサーが作製できた.検量線の傾きは炭素繊維布を懸濁液に浸した時間によって大きく変わり,40日間浸した炭素繊維布を用いたセンサーの検量線は57mV/decadeの傾きを持ち,直線範囲は3×10-5~1×10-3Mであった.又アミグダリン応答の最適pHは6.2であり,検出限界は1×10-5Mであった.
  • 日色 和夫, 田中 孝, 川原 昭宣, 脇田 慎一, 山根 昌隆, 山本 襄, 山下 岩男
    1988 年 37 巻 8 号 p. 416-420
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    血液中の塩化物イオンを測定するために,ポリウレタン樹脂をマトリックスとする塩化物イオン選択性電極を開発した.電極は100Mから10-4Mまでの塩化物イオン活量に対し直線の応答を示し.活量の10倍変化に対する電位変化は25℃で59.0mVであった.膜中のイオン交換体のトリドデシルメチルアンモニウムクロリドの最適量は約40%であった.電極の応答性に対する温度の影響,応答速度,pHの影響なども検討した.各種陰イオンに対する電極の選択係数を混合溶液法と連続変化法で決定した.又,100M~10-6Mの塩化物イオン水溶液で長時間にわたって電極の耐久性を試験した結果,電極は少なくとも260時間,一定の応答を示すことが分かった.
  • 山本 善丈, 梅田 政裕, 森重 清利, 西川 泰治
    1988 年 37 巻 8 号 p. 421-425
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    チオニンの蛍光特性について検討し,その発光機構を明らかにした.チオニンの蛍光はキノイド構造に起因し,同じチアジン環色素であるメチレンブルーの蛍光より強い.この蛍光を利用してチオニン生成反応により,(0.1~2)×10-5mol dm-3(吸光光度法),(0.2~10)×10-7mol dm-3(蛍光法)の硫化物イオンが誤差2%以内で迅速,簡便に定量できることを明らかにした.
  • 奥谷 忠雄, 新井 信正
    1988 年 37 巻 8 号 p. 426-429
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    Cdは,KIの存在で2,4,6-トリ-2-ピリジル-1,3,5-トリアジン(TPTZと略記)と反応し,錯体を形成してニトロベンゼンに抽出される.このニトロベンゼン相をAASで測定することにより,微量のCdを定量した.抽出時のpHは,2~3の範囲で最大の吸光値が得られ,抽出される錯体の組成比は,Cd,TPTZ,Iそれぞれ1:1:2であった.検量線は,水試料500cm3にCd0.03~1.5μgの範囲で再現性の良い直線関係が得られ,濃縮倍率は100倍であり,定量下限は0.06ppbであった.Hg(II),Pb(II),Cr(III),Ni(II),Co(II),Zn(II)などは,大過剰共存しても影響しない.0.2及び2.0ppbのCdを含む溶液について測定したときの本法による相対標準偏差(n=10)は,それぞれ3.4%,0.8%であった.本法を水試料中の微量Cdの定量に応用した.
  • 加藤 健次, 王 林珍, 冨田 弘, 佐藤 訓孝
    1988 年 37 巻 8 号 p. 430-434
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    大気圧イオン化質量分析法を用いて,高純度窒素ガス中の微量酸素の定量を行った.イオン源の放電電流や中間圧力部に印加するドリフト電圧の最適値について検討すると共に配管,減圧弁などでの空気の残留や混入を極力避けることにより,バックグラウンドを約2ppbまで減少させた.又,共存する水は,酸素定量に影響があり,モレキュラーシーブトラップで除去した.高圧容器詰め窒素ガス中の酸素の,標準添加法による定量値は3~5ppbであった.又マススペクトルの積算により1ppb以下の濃度に対しても,S/Nの良い測定が可能であり酸素除去精製カラムを通した窒素ガス中の酸素定量値は,約0.1ppbであった.
  • 毛利 正明, 森 定雄
    1988 年 37 巻 8 号 p. 435-438
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    各種測定条件下で得られたポリスチレンの紫外吸収スペクトルと四次微分スペクトルを測定した結果,四次微分法の有効性とその応用に関する知見を見いだした.微分法の手順として,n次微分時において(n+1)回のスムージングを適用することにより,微分に伴って発生するノイズを効率よく取り除けることが認められた.それにより,S/N比が悪いスペクトルに対しても微分法の適用が可能となった.又,分解能の低い吸収スペクトルに対して適用したところ,その四次微分スペクトル極大位置は,より分解能の高い吸収スペクトルから得られた極大位置に相当し,吸収極大位置を精度よくとらえることができることが分かった.更に,吸光度が低い吸収スペクトルの四次微分スペクトルも吸光度の大きい吸収スペクトルと同様に測定することができ,吸収スペクトルによらない分析法として利用できることが分かった.
  • 小田嶋 次勝, 川手 靖俊, 石井 一
    1988 年 37 巻 8 号 p. 439-444
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ピリジン及び過塩素酸イオンの存在下でCo及びNiのN,N'-(1,3-ジメチルプロパンジリデン)-ジ-(2'-ヒドロキシ)アニリン(DPDHA)錯体を炭酸プロピレンに抽出し,抽出液に過塩素酸テトラブチルアンモニウムを加えて直接微分パルスポーラログラムを測定する抽出/ポーラログラフ分析法について検討し,感度,選択性に優れた簡便なCo及びNiの定量法を開発した.Co(III)-及びNi(II)-DPDHA錯体は水相(pH8)でピリジンを付加し,更にCo(III)錯体は過塩素酸イオンとイオン対を形成し,いずれも炭酸プロピレンに定量的に抽出された.-0.44及び-1.21Vvs.SCEにそれぞれCo(III)及びNi(II)錯体に由来するピーク電流を示し,それらの値は水相のCo(II)及びNi(II)濃度に比例した.Cu(II)だけは共存するとCoの定量を妨害した.提案した定量法を合成試料の分析に適用したところ,満足し得る結果が得られた.
  • 鈴木 章悟, 平井 昭司
    1988 年 37 巻 8 号 p. T83-T86
    発行日: 1988/08/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    機器中性子放射化分析(INAA)により,国立公害研究所で調製された頭髪標準試料(NIES,No.5)中の微量元素を多元素同時定量する方法を検討した.照射は武蔵工大炉で短時間照射(気送管2分間)と長時間照射(中央実験管5時間)で行った.γ線測定は主に同軸型Ge検出器とマルチチャネルアナライザーによるγ線スペクトロメトリーで行った.一部の試料については同軸型Ge検出器と井戸型NaI(TI)検出器を組み合わせた反同時・同時測定法及び平板型Ge検出器を用いた低エネルギー光子スペクトロメトリー(LEPS)でも測定した.51元素の分析を試みて43元素を定量することができた.NIESの保証値及び参考値の示されている元素について結果を比較すると,Srを除いてよく一致していた.
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