分析化学
Print ISSN : 0525-1931
40 巻, 10 号
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  • 堀 智孝, 姫野 貞之
    1991 年 40 巻 10 号 p. 507-524
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    水・有機溶媒混合系で幾つかのヘテロポリモリブデン錯体が特異的に生成することが分かった.すなわち,経験的に予見されていながら,これまで発見されなかった錯体(β-[PMo12O40]3-),多くの試みが不首尾に終わって,もはや存在しないのではないかと考えられていた錯体([S2Mo18O62]4-,[SMo12O40]2-,[S2Mo5O23]4-),同種のヘテロ原子が核とMoO3縮合環の双方に入るもので,これまでその存在の推定すらできなかった一連の錯体([VMo12O40]3-,[V(VMo11)O40]4-,[V(V2Mo10)O40]5-,[V(V3Mo9)O40]6-),存在が認められていてもその実態が明らかでなかった錯体([P2Mo18O61]4-),HPO32-を含有していても電気化学的に還元されて青色となる錯体([(HP)2Mo12O42]4-)とその類縁錯体([(HP)5Mo6O33]10-,[(HP)4Mo8O36]8-)などが,それである.これらの錯体の単離法と分光学的特性,構造化学的性質,溶液中での反応性を明らかにし,これらがヘテロポリモリブデン法による酸素酸陰イオンの特異的分析法の基礎錯体となることを総合的に考察した.又,各種のリン化合物とモリブデン酸との反応性を類別し,この結果が,リン化合物の含水酸化鉄への吸着現象とよく対応することを論じた.
  • 勝岡 尉浩, 林 純二郎, 山田 正昭, 保母 敏行
    1991 年 40 巻 10 号 p. 525-529
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    フェントン反応によるアドレナリンの化学発光(CL)検出とフローインジェクション(FI)法を組み合わせた,アドレナリンのFI/CL分析法を開発した.検出下限は,20μl注入法で3×10-8M(S/N=2)であり,応答の直線性は検出下限より約1000倍高濃度領域まで認められた.又,選択性は高く,カテコールアミン類であるノルアドレナリン,ドーパミンには応答しないことが分かった.最も大きい応答を与えたのはメタネフリンで1×10-3M溶液の応答は1×10-6Mアドレナリンの66%であった.更にこのCL系を尿,製薬品中のアドレナリンの定量に応用した.その結果,製薬品中のアドレナリンの定量には良好な結果を与えたが,尿試料ではアドレナリン以外にCL応答を与える化合物の存在が示唆された.本CL機構にも考察を加えた.
  • 野村 毅, 森 博幸
    1991 年 40 巻 10 号 p. 531-535
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    銀リン酸鉛・アルミニウムガラスをイオン選択性電極に使用したとき,大多数の一価陰イオン及びアンモニアに応答することを利用して,このガラス膜をフローセルに組み込み,じん機能低下の重要な指標とされているクレアチニンを,クレアチニンディミナーゼによる酵素反応によって生成するアンモニアから間接的に測定する方法を検討した.アンモニアのpKaが9.25であるため,この電極の使用可能なpH領域は10以上であるが,この酵素がpH10近くでも,ほぼ定量的に酵素反応が進行するので,キャリヤー溶液として,10-3MNa2SO4,10-3MNaOH混合溶液を用い,流量1.0ml/min,カラム温度30℃で測定したところ,検出限界5.6μg/mlで0.14~5.66mg/25mlの間のクレアチニンを,簡便に精度よく定量することができた.又尿素,アルブミン,クレアチンなどの生体内物質の共存は影響しなかった.
  • 河本 美津子, 荒川 秀俊, 前田 昌子, 辻 章夫
    1991 年 40 巻 10 号 p. 537-541
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を高感度に測定することを目的として酵素サイクリング法によりNADHを増幅させ,化学発光法で測定する方法を検討した.酵素サイクリングに用いた酵素反応系はリンゴ酸デヒドロゲナーゼ/アルコールデヒドロゲナーゼ系で,生成したリンゴ酸を過剰量のNADP+とMalic enzymeによりNADPHとし,既報の方法に従ってイソルミノール/ミクロペルオキシダーゼによる化学発光法で測定した.最適条件下でのNADHの検量域は0.01-5pmo1/assayで,酵素サイクリングを用いない既報と比較して約1000倍感度が向上した.本法をアルカリホスファターゼの酵素活性測定に適用したところ0.036-18amol/assayの検量域で既報と比較して約50倍感度が向上し,その精度は3.9-6.3%(相対標準偏差)であった.更に本法を17α-ヒドロキシプロゲステロン(競合法)及びヒトじゅう毛性ゴナドトロピン(サンドイッチ法)酵素免疫測定法に応用した.
  • 山田 真吉, 高井 直人, 中村 基, 中村 茂
    1991 年 40 巻 10 号 p. 543-547
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    反応速度の差を用いるタンタル共存下でのニオブの定量法を開発する目的で,ニオブ及びタンタル-ペルオキソ錯体とモリンとの配位子置換反応の平衡と速度を蛍光光度法で研究した.生成するニオブ及びタンタル-モリン錯体の蛍光強度及びその生成速度に十分な差がある条件として,過酸化水素3.2×10-2M,pH3を選んだ.この条件では,ニオブ-モリン錯体の蛍光はタンタル錯体のそれに比べて約30倍強いとともに,その生成速度は約900倍大きい.これらの差異に基づき,タンタル共存下でのニオブの選択定量を直線補外法で検討したところ,検出限界6×10-8Mで1×10-5Mまでの定量が可能であり,4×10-6Mのニオブの定量におけるタンタルの共存許容量は5.6×10-5Mであった.
  • 岡田 往子, 平井 昭司
    1991 年 40 巻 10 号 p. 549-555
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    半導体材料となる高純度SiO2中のUとThを陰イオン交換分離法及び共沈分離法を伴う放射化学中性子放射化分析法により数pptレベルまで定量する方法を開発した.本法はU及びThの分析目的核種である239Np及び233Paをまず,陰イオン交換樹脂に吸着させ,主な不純物を選択的に分離し,次に溶離した後,LaF3の共沈で239Npと233Paとを沈殿させ,わずかな不純物からの分離を行った.その後,濾紙に捕集した沈殿物のγ線測定をし,U及びThの数pptレベルの分析を可能にした.化学操作中における回収率はUで99%,Thで96%と良い結果であり,又,同一試料を用いた繰り返し分析でも良い再現性を得た.試料を数gに増加させ,照射時における放射化量の均一性を調べたが,その影響もなく分析できることが分かった.
  • 朝日 豊, 田中 正己, 杉本 真弓
    1991 年 40 巻 10 号 p. 557-562
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    日本薬局方収載の尿素(I),ピラジナミド(II),エテンザミド(III),アセトアミノフェン(IV),メチル硫酸ネオスチグミン(V),プリミドン(VI),塩酸プロカイン(VII)及びアミノ安息香酸エチル(VIII)の非水滴定法を検討した.無水酢酸-氷酢酸溶液中0.1M過塩素酸-氷酢酸液で電位差滴定し,データ処理で数値の平滑化,一次微分,二次微分を行った.I,II,III,V,VIIは無水酢酸中で精度よく定量し得るが,IVは精度が悪く,VIは定量し得ない.VIIIは氷酢酸中で精度よく定量し得る.臭化ネオスチグミン(X)も無水酢酸中で1当量の過塩素酸と反応するが,Vは酢酸メチルと硫酸とに分解するため1/3当量の過塩素酸と反応する.
  • 伊東 琢史, 村田 旭
    1991 年 40 巻 10 号 p. 563-566
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    Hafnium reacts with 2-methyl-3, 7-dihydroxychromone in media of pH<3 up to 6 M hydrochloric acid to form a water-soluble complex. The complex shows an intense fluorescence in 0.1-4 M hydrochloric acid solution. Excitation and emission maxima of the complex are 350 nm and 421 nm, respectively. Hafnium can be determined in the range of 4-200 ng/ml in 1 M hydrochloric acid containing 50% methanol. EDTA, oxalate and fluoride give serious negative errors. Zirconium does not interfere up to 10-fold amounts. The molar ratio of hafnium to the reagent was 1 : 1 in 1 M hydrochloric acid and 1 : 3 at pH 2.0. The relative fluorescence intensities of the hafnium complexes of 3-hydroxychromone, 2-methyl-3, 7-dihydroxychromone and 3, 7-dihydroxyflavone are 25, 100 and 172, respectively.
  • 野村 俊明, 高田 主岳
    1991 年 40 巻 10 号 p. 567-570
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    Piezoelectric quartz crystal (PQC) having no evaporated metallic electrodes (quartz plate) oscillated in gases when an oscillator was connected to platinum plates set on both sides of the quartz plate. The frequency of the quartz plate increased with increasing the distance between the plates. The frequencies shifted with the densities of gases and the mass adsorbed onto the plate just as in normal PQC. The system was named an electrode-separated PQC. The electrode-separated PQC with a Teflon-coated quartz plate could be used to detect the relative humidity in gases.
  • 五十嵐 淑郎, 吉田 和実, 四ツ柳 隆夫
    1991 年 40 巻 10 号 p. 571-573
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    Based on the color reaction with titanium(IV), a simple spectrophotometric method for the determination of 10-5 mol dm-3 levels of DFB was developed. The recommended procedure was carried out as follows: an aliquot of a sample solution (15 cm3) containing less than 4.4 mg of Desferrioxamine B mesylate was taken into a 25 cm3 volumetric flask, and 4 cm3 of a 1 mol dm-3 hydrochloric acid solution and 5 cm3 of a 1 × 10-3 mol dm-3 titanium(IV) solution were added and the mixture was diluted to the mark with water. After 5 min, the absorbance at 356 nm was measured against water. The calibration curve was linear over the DFB concentration range 2× 10-5-2 ×10-4 mol dm-3. The relative standard deviation was 0.65% for, [DFB]T=1× 10-4 mol dm-3 (12 determinations). The detection limit was 1.31 × 10-6 mol dm -3 (S/N= 2). For the determination of 4× 10 -5 mol dm-3 DFB, diverse ions were tolerated up to 1000-fold molar excess of NO3-, Cl-, Cl04-, SO42-, K(I) and Na(I); they were tolerated up to a 100-fold molar excess of EDTA, glycine, Al(III), Co(II), Cu(II), Pb(II) and Zn(II), respectively. For the determination of 4 ×10-5 mol dm-3 DFB, equal amounts of Fe(III), V(V) and Mo(VI) interfered; however, a 50-fold molar excess of Fe(III) was tolerated with the use of [HNO3]T = 1.5 mol dm-3 instead of [HCl]T= 0.16 mol dm -3.
  • 佐藤 秀治, 菊地 洋一, 鈴木 俊雄, 澤田 清
    1991 年 40 巻 10 号 p. T167-T170
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    相分離器を導入して溶媒抽出法の併用を可能とした高感度分光光度測定システムを環境試料中の微量銅の定量に応用した.銅の抽出比色試薬にはジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを用い,本測定システムによる銅の定量の最適条件を決定した.銅濃度0.0-4.0 ppbで作成した検量線は原点を通る良好な直線性を示し,銅の検出限界は0.05ppbであった。溶媒抽出による濃縮を用い,かつ吸光度が0.035以内という領域での測定であるにもかかわらず,銅濃度4.0 ppbでの繰り返し精度は, RSDが0.83%と非常に良好であった.本法を用いて陸水中の数ppbレベルの銅の定量を行い良好な結果を得た.
  • 一瀬 典夫, 足立 恭子, 山田 雅仁, 菱田 明, 本田 西男
    1991 年 40 巻 10 号 p. T171-T173
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    従来のペレットを用いる固体蛍光光度法に代わるものとして著者らが既に確立した蛍光分析法を応用して,酢酸ウラニルとしてウラン(VI)を静脈注射投与することにより急性じん不全を発症させたウサギの尿ウランの定量法を開発した.ウサギの尿を湿式分解した後,酸化トリオクチルホスフィン-ベンゼン溶液を用いてウランを抽出し,その抽出液の一部をTLC板上に滴下して,そのスポットをフライングスポットスキャナにより蛍光分析した.本法は,回収率95.4%,標準偏差率5.9%でウサギの尿中の微量のウランを定量することができる.又,従来の蛍光光度法と比較して分析操作が簡便なので単位時間当たりより多くの試料を分析することが可能である.
  • 吉川 裕泰, 秋吉 孝則, 塚田 鋼二
    1991 年 40 巻 10 号 p. T175-T178
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    亜鉛及び亜鉛-アルミニウム合金中の微量鉛を二酸化マンガン共沈分離/ICP-AES法で定量した.試料1.000 gを7M硝酸で溶解後,試料溶液のpHをアンモニア水で2-2.5に調節した.試料溶液に硝酸マンガン溶液及び過マンガン酸塩溶液を添加して二酸化マンガンの沈殿を生成させた後,濾過した沈殿を2M硝酸と少量の過酸化水素で溶解した.鉛を定量的に回収するためには二酸化マンガンは30mg必要であった.又,鉛の回収は試料溶液のpH値に依存し, pH 2以上で定量的に回収できた.一方,pH0.2-3.8の条件では沈殿から亜鉛は99.8%分離されたが,アルミニウムは水酸化アルミニウムの生成のためにpH値の上昇とともにその分離率は低下した.本法による分析結果は標準試料の標準値と一致した.
  • 林部 豊, 竹谷 実, 佐山 恭正
    1991 年 40 巻 10 号 p. T179-T182
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    高塩濃度溶液(亜鉛電解用硫酸亜鉛溶液)中の微量の銅を,バソクプロインスルホン酸ナトリウムを発色試薬として吸光定量する逆フローインジェクション分析システムを構築した.試料溶液を直接システムに導人して希硫酸により希釈,酢酸塩-クエン酸塩緩衝液によりpHを調整した後,発色試薬を注人し,生成した銅-バソクプロインスルホン酸錯体の吸光度(525nm)を測定する.本システムを利用すると,試料溶液中の0.5μg ml-1レベルの銅を分析速度50試料/時,R.S.D.2%(n=5)で定量可能である.
  • 上蓑 義則, 森川 久, 柘植 明, 飯田 康夫, 石塚 紀夫
    1991 年 40 巻 10 号 p. T183-T187
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    アルミナ及びジルコニア焼結体中の微量不純物定量のため,テフロン製容器を用いる加圧酸分解条件について検討した.分解を容易にするための試料の粉砕は,多量の粉砕容器成分の試料中への混入をもたらす.又粉砕した試料の酸による洗浄を行っても定量結果は影響を受ける.従って試料粉砕は行うべきではない.アルミナは硫酸(1+2)で,ジルコニアは硫酸(1+2)もしくはフッ化水素酸-硫酸(1+2)により,それぞれ塊状のままで分解できることが分かった.得られた分解溶液を1CP-AESに供することにより,焼結体中微量不純物(アルミナ中11元素,ジルコニア中10元素)を精度よく定量できた.
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