分析化学
Print ISSN : 0525-1931
40 巻, 6 号
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  • 内海 喩, 松野 茂雄, 磯崎 昭徳
    1991 年 40 巻 6 号 p. 257-262
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    銀はジエチルジチオカルバミン酸(DDTC)と1:1との安定なキレートを生成し, pH8~10において四塩化炭素に抽出される.このキレートの紫外部の測定に基づいて,微量塩化物イオンを間接的に定量する方法を検討した.塩化物として5×10-4M (17.8ppm)以下の酸性試料溶液に硝酸銀溶液を加えて塩化銀を生成させ,メンブランフィルターにより濾過する.濾液中の銀イオンを銀-DDTCキレートとして四塩化炭素で抽出し,吸光度(340nm)を測定する(濾液法).妨害イオンが予想されるときは,フィルター上に捕集された塩化銀を純水で洗浄して,アンモニア水で溶解してから銀イオンとし,以下同様にして銀-DDTCキレートの吸光度(340nm)を測定する.この際塩化物イオンが1×10-4M以下のときは,キレートの吸収極大波長(280nm)で測定する(沈殿法).本法を河川水に適用したところ,濾液法による10回の定量結果の平均値は5.3ppm,相対標準偏差は0.83%であった.
  • 細谷 稔, 石黒 三岐雄
    1991 年 40 巻 6 号 p. 263-269
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    高純度鉄中の微量ヒ素(<10ppm)を定量するため,従来より採用されている亜鉛還元/Ag-DDTC吸光光度法に代えてテトラヒドロホウ酸ナトリウム還元/モリブドヒ酸青吸光光度法により定量する方法について検討した。水酸化ベリリウム共沈分離によりヒ素を鉄から予備分離後,沈殿を硝酸,過塩素酸で分解,乾固し,塩酸(1.5M)溶液としてテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液(25g/l)を滴下してアルシンを発生させた.アルシンをモリブデン酸アンモニウム,過マンガン酸カリウム及び少量のポリビニルアルコールを含む溶液中に吸収後,アスコルビン酸によって還元し,モリブドヒ酸青吸光光度法によって定量することにより, Ag-DDTC法の実用分析法としての種々の難点を大幅に改善する新しい分析法を開発した.
  • 山口 仁志, 原口 紘〓, 大河内 春乃
    1991 年 40 巻 6 号 p. 271-276
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2010/01/19
    ジャーナル フリー
    炭化ケイ素中の不純物であるアルミニウム及びカルシウムの定量法を確立した.試料を白金るつぼに量り取り,炭酸ナトリウムを用いて溶融する.次に溶融物を塩酸で溶解して酸性にし,更に過塩素酸を加えて加熱し,白煙処理を行った後,生成した二酸化ケイ素を濾別し,陽イオン交換樹脂を用いて不純物元素を吸着させマトリックスを除去する.硝酸を用いて不純物を溶出させ,溶離液を定容としてICP-AESにより定量を行う.本法は炭化ケイ素中のアルミニウム及びカルシウムをppmから%オーダーの濃度範囲で精度よく定量できる.
  • 斎藤 栄二, 徳田 一, 松本 清
    1991 年 40 巻 6 号 p. 277-282
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    各種家庭用製品中の多種多様の溶剤成分を,キャピラリーガスクロマトグラフィーにより一斉に分離した後,自動的に同定及び定量を行うことが可能な,全自動溶剤分析システムの開発を試みた.検討の結果,溶剤の分離にはDB-1701キャピラリーカラムが最適であることをことを見いだし,約60種類の溶剤成分の一斉分離が可能となった.分離成分の同定には保持指標を用いた.アルコール系溶剤を保持指標計算のための標準物質とすることにより,良好な保持指標安定性を得ることができ,保持指標のデータベース化が可能となった.本研究では,ガスクロマトグラフをパーソナルコンピューターとオンライン結合させることにより,分析を完全に自動化することができた.
  • 加藤 健次, 佐藤 訓孝
    1991 年 40 巻 6 号 p. 283-288
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    大気や高純度ガス中の微量成分分析に適したパルスレーザー励起光音響装置について報告する.内管及び外管から成る二重管型軸モード共鳴セルを試料セルとして用いた.光源にはパルスNd:YAGレーザーを中心とする波長可変レーザーを用いた.パルス励起による共鳴では様々な周波数成分がセル内に生じるが,その中から最適なものを選択して分析を行った.3種類の内管を用いて検討を行った結果,長さ42cmの内管の最も低次の共鳴によるものが感度及びバックグラウンドにおいて優れていた.二酸化窒素に対しては,試料流量,パルス間隔による信号強度への影響が見られたが,流量21/min,パルス間隔1pps(パルス/秒)にて,検出下限は,およそ5ppbであった.又,室内の二酸化窒素濃度変化の測定,及びベンゼン蒸気のスペクトル測定を行った.
  • 齋藤 祥治, 三木 健, 伊藤 汎, 鴨田 稔, 伊藤 三男
    1991 年 40 巻 6 号 p. 289-294
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    清涼飲料,食酢,砂糖などの食品中のNa+, K+, NH4+ のイオンクロマトグラフィーによる定量法を検討した.溶離剤として使用する種々の酸とその濃度及び試料中に存在する共存物質(糖,酸,.無機物)の影響を標準物質を用いて検討した.次いで,市販の食品を用い,それらの共存物質の影響を統計学的方法で検討し,前処理法を確立した.その結果,糖,無機イオンは,当該成分の分析に影響を与えないが,酸は影響した。そこで,塩基性イオン交換樹脂による酸除去の方法を検討し,本処理法により酸を除去し,得た溶液を分析用カラムとして日立2720-SK-IC,溶離剤に3.0mM HClを用い,流量1.0ml/minにて電導度計で検出する方法を確立した.本法は検出限界がNa+で0.1μg/ml, K+で0.3μg/ml, NH4+で0.1μg/ml,分析精度がRSDでNa+ 7.30%, K+ 8.3%, NH4+ 2.0%の結果を得た.
  • 花咲 徹, 大西 春樹, 草岡 勉, 久保 建二
    1991 年 40 巻 6 号 p. 295-300
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    水中に含まれる微量の陽イオン性及び非イオン性高分子凝集剤の定量方法を陰イオン性高分子凝集剤に適用した.試料水に0.1%タンニン酸溶液, 2M塩化ナトリウム溶液と0.1%EDTA溶液を加えて全量を50mlにした.その試料を20℃,1時間放置して波長554nmの吸光度を2cmセルで測定した.検量線はポリアクリルアミドーアクリル酸共重合物の陰イオン度20mol%, 30mol%及び40mol%でそれぞれ0-20mg/l,0-30mg/lそして0-20mg/lの間で直線性が成立し,ポリアクリル酸ナトリウムについても0-20mg/lの間で直線性が成立した.検出下限は各々0.85, 2.0, 1.3及び2.9mg/lであった.10mg/lにおける測定のRSD(n=8)は各々3.2%, 5.0%, 4.7%及び3.9% であった.
  • 中林 安雄, 長岡 健二, 増田 嘉孝, 新家 龍
    1991 年 40 巻 6 号 p. 301-304
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    溶媒抽出-細管式等速電気泳動法を排水中のマンガンと亜鉛の同時分析に適用し,定量方法を確立した.排水試料は硝酸-硫酸分解した後,ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを用いて金属イオンを酢酸ブチルに抽出した.更にEDTAのようなポリアミノポリカルボン酸で逆抽出を行い,マンガンと亜鉛の同時定量を試みた.本法と排水分析の公定法である吸光光度法との相関関係において,良好な結果を得た.定量下限は,40倍濃縮時で,原試料濃度はマンガンが0.05mgl-1,亜鉛は0.06mgl-1である.
  • 酒井 忠雄, 大野 典子, 佐々木 英人
    1991 年 40 巻 6 号 p. 305-308
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    A sensitive spectrophotometric determination of vitamin B12 (V. B12) in complexing vitamin preparations is proposed. Since V. B12 contained cobalt, it is possible to use cobalt for the V. B12 assay. Cobalt reacts with 3-(2-pyridy1)-5, 6-dipheny1-1, 2, 4-triazine (PDT) to form a cationic chelate ion and the complex can be extracted into 1, 2-dichloroethane with tetrabromophenolphthalein ethyl ester (TBPE) at pH 9.0. The composition of the ternary complex is assumed to be Co(PDT)3(TBPE)2. A predetermined amount of V. B12 (0.1-3mg) was heated at 200°C for 2h with 20ml of nitric acid. After adding 10ml of nitric acid and 2ml of perchloric acid, the mixture was evaporated to dryness. The residue was dissolved in 30ml of 1M hydrochloric acid by heating and diluted to 50ml with distilled water. The required volume of the sample solution containing 0.5-2.5μg cobalt (10-60μg V. B12) was transferred to a 50-ml volumetric flask. To this, 1ml of 10-4 M potassium periodate, 2% Tiron, 7.5×10-3M PDT, 10ml of the borate-phosphate buffer (pH 9), and 1ml of 1.35×10-3M TBPE, were added. It was then diluted to 50ml with distilled water. The mixture was transferred to a separatory funnel and shaken for 5 min with 10 ml of 1, 2-dichloroethane. The organic phase was centrifuged and the absorbance was measured at 610 nm against a reagent blank. Molar absorptivity was 134000mol-1 cm -1 l, and relative standard deviation, 1.7% for ten determinations of 30 ng ml-1 cobalt. Fe(II) was tolerated up to 0.1μg ml-1 (5-fold for cobalt) by addition of 2×10-6 M potassium periodate and 0.04% Tiron and also Cu(II), 0.1μg ml-1 by adding 0.2M thiourea. This method can be applied to the indirect assay of V. B12 compounds such as cianocobalamin, hydroxocobalamin and mecobalamin in commercial preparations containing other vitamins.
  • 久野 祐輔, 川辺 勝也, 秋山 孝夫
    1991 年 40 巻 6 号 p. T113-T118
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    使用済核燃料再処理プロセス溶液中のウラン(U),プルトニウム(Pu)の酸化状態別濃度(以下原子価別濃度と呼ぶ)及び酸濃度を,同液において直接求めた吸光スペクトルから各単独原子価成分のスペクトルを差し引き演算することにより分析する方法を検討した.U及びPuの安定原子価状態であるU(IV) (VI)及びPu (III) (IV) (VI)の吸光スペクトルは,硝酸系溶液において,その硝酸濃度に依存して変化する.又これら各原子価別スペクトルは, U, Pu混合溶液中で,複雑に重なり合っているためその解析は非常に困難であった.そのため近年市販されるようになったスペクトル演算機能を有する分光光度計を用い,上記の混合スペクトルを各原子価成分のスペクトルに分解し各々の濃度を分析することを試みた.本操作に当たっては,あらかじめ記憶させた単独原子価成分の酸濃度別スペクトルを拡大又は縮小させ,混合スペクトル中の最も重なりの少ないピークから順にフィッティングさせスペクトル図形上で差し引いていく方法を採った.又上記操作で必要となる硝酸濃度は,スペクトル中の特定のピーク比から推定する方法を採った10mmの吸光度測定セルを用いた場合,本法により0.7-20gl-1のU(IV),1.4-60gl-1のU(VI), 0.3-8gl-1のPu(III), 0.1-6gl-1のPu(IV),0.05-2gl-1のPu(VI)が混合した試料溶液に対し自動定量が可能であることが分かった.分析精度については,成分元素の混合比に依存するため一概には評価できないが,例えばU(IV) 5gl-1, U(VI) 17gl-1, Pu(III)1.7gl-1において2%以下の精度で分析できることが確認できた.又酸濃度については,0.5-55Mの範囲で0.2M以下の精度で定量できることが分かった.なお,本解析処理はすべて自動で行われるため,試料の組成に関係なくプログラムをスタートさせるだけの操作で結果が得られるよう考案されている.
  • 佐藤 秀治, 菊地 洋一, 佐藤 敬一, 鈴木 俊雄, 澤田 清
    1991 年 40 巻 6 号 p. T119-T123
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
    フロー吸収セルとマイクロコンピューターを利用した高感度分光光度測定システムに相分離器を導入して,溶媒抽出法の併用を可能とする拡張システムの開発を行った.相分離器により分離された有機相は吸収セルを介してフロー系内を循環し,連続的に吸収スペクトルが測定される.このシステムでは,従来法において複数の測定溶液を個別に調製しなくてはならなかった標準添加法やpH変化などの一連の測定操作を,単一溶液を用いて連続的に行うことができる.その結果,溶媒抽出による濃縮及び再現性の向上により測定の高感度化を実現した.相分離は,極性の高い有機溶媒を用いても安定であった.抽出比色試薬としてオキシン(8-キノリノール)を用いて鉄(III),銅(II),アルミニウム(III)の各定量法の高感度化を行い,本測定システムの性能を確認した.更に,それらの同時定量法への応用についても検討した.
  • 中村 靖, 村井 幸男, 倪 徳〓, 劉 永明
    1991 年 40 巻 6 号 p. T125-T130
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    酸化テルビウム及びテルビウム中の不純物希土類元素を,HPLC/ICP-AESにより迅速かつ高感度に定量した.HPLCの分離カラムにはシリカ-ODSを,溶離液に2-ヒドロキシイソ酪酸を用いてこう配溶離(0.05~0.4mol/l)を行うことにより,約10分間でテルビウムと不純物希土類元素相互の分離ができた.溶離時間が短いため,溶離曲線のピークがシャープであり高感度に測定できた.HPLC装置への検液の注入量は,テルビウム1g/100mlの検液で30μlまで可能である.又ICPの高周波出力を0.8kW程度に小さくすると,S/Bが5倍以上良くなり感度を向上させることができた.酸化テルビウムに不純物希十類元素を添加し,被検元素だけを含む標準溶液で作成した検量線を用いて定量し回収率を求めたところ, 85~110%であった。本法は高純度のマトリックスマッチング用希土類元素を必要としない.
  • 山口 憲治, 西 末雄
    1991 年 40 巻 6 号 p. T131-T136
    発行日: 1991/06/05
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    水中のこん跡濃度のジクロロエチレン異性体の定量を目的に,パージ・トラップ濃縮法とキャピラリーGC/MS法を組み合わせた方法を検討した.パージ・トラップ装置で濃縮した試料物質を,GC/MS装置に導入する際のフォーカッシング法として, (1)キャピラリーインターフェースを液体窒素で冷却して試料をトラップする方式と, (2)直接に分離カラムを冷却して試料をトラップする方式とを検討し比較した.検出下限はいずれの方式とも0.01μg/l付近であった.しかし(2)の方式では本実験の場合,フォーカッシング温度を十分な低温にできなかったため,選択イオンモニタリング(SIM)で得られたクロマトグラムピーク面積値の変動は比較的大きく,特に1,1-ジクロロエチレンでその傾向が大きかった.各モニターイオンから得られたSIMクロマトグラムのピーク強度比は,両方式ともに良い繰り返し精度を示した.又,いずれの方式でもWHOガイドライン付近の濃度において十分な感度と精度が得られた.
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