分析化学
Print ISSN : 0525-1931
41 巻, 12 号
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  • 藤本 京子, 岡野 輝雄, 松村 泰治
    1992 年 41 巻 12 号 p. 609-616
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    試料直接挿入ICP-AESを固体試料中微量元素の定量に適用し,有機材料及びセラミックス中の不純物が標準溶液で作成した検量線でppmレベルまで定量可能となった.鉄鋼試料では鉛,ビスマスのように鉄と固溶しない元素についてはマトリックス(鉄)を含まない標準溶液によりppmレベルまで定量できた.それ以外の元素でも標準試料で作成した検量線を用い,鉄の蒸発量を補正すれば相対標準偏差数%で定量可能となり,偏析調査などには十分適用できる精度が得られた.更に,従来黒鉛材料を用いる加熱気化法では検出が困難であったチタン,バナジウム等の耐火性あるいは高沸点の炭化物生成元素を効率よく気化させるために,ハロゲン化法を検討した.キャリヤーガスをフロンや塩酸等のハロゲン化試薬中でバブリングさせ,原子化部へ導入することにより,溶液や有機材料中の難揮発性元素も簡便に検出可能となり,適用元素の拡大が図られた.
  • 石井 幹太, 高橋 亨, 馬場崎 晋一
    1992 年 41 巻 12 号 p. 617-625
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    天然資材の化学発光(CL)分析への応用について検討した.赤バラ(市販品:ローデ・ローゼ)花弁硫酸抽出色素溶液(赤バラ溶液)には一般的な増感剤色素に比べて著しいCL増感効果が認められた.この効果を利用した高濃度硫酸測定用FIA/CL分析システムを開発した.本CLは,酸とアルカリとの中和熱を利用して溶存酸素から生じる活性酸素が関与するCLで,赤バラ溶液中の色素により増感される.本分析システムは試薬溶液及び赤バラ溶液を配置した3流路から成り,10μlの微少量試料を用いて,感度よく,又迅速に高濃度硫酸を測定できる.検出下限は4M(S/N=1.5),定量範囲は4~18M,分析所要時間は約10s,相対標準偏差は2.0%(9MH2SO4の5回繰り返し測定)であった.本法の測定値は中和滴定法とよく一致した.
  • 伊藤 克敏, 前田 昌子, 辻 章夫
    1992 年 41 巻 12 号 p. 627-632
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    血中セクレチンを測定する目的で,高感度な時間分解蛍光イムノアッセイ法を開発し検討した.イムノアッセイは抗家兎IgG抗体を固相化したマイクロタイタープレート中で血中セクレチンとウシ血清アルブミン(BSA)-セクレチンの結合体にユウロピウム(III)キレートを標識化したものを競合させる方法で行った.このとき検量域は,2.5~100pg/assay, 50%阻害濃度は29.2pg/assayであった.これは,セクレチンに直接ユウロピウム(III)キレートを標識化したものと競合させる方法に比較して11.8倍高感度であった.又,血中セクレチンを測定するためには試料の前処理が必要であり,これは市販の逆相の樹脂を用いることにより行った.このとき,回収率はサンプルにプロテアーゼ阻害剤としてAprotininとEDTAを加えることにより良好な値が得られた.前処理を行った試料は濃縮しての測定が可能となり,血しょう中セクレチンの検出感度は8.3pg/mlであった.
  • 林部 豊, 竹谷 実, 佐山 恭正
    1992 年 41 巻 12 号 p. 633-638
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    フローインジェクション法により,高塩濃度溶液中(亜鉛電解用硫酸亜鉛溶液)の0.1μg ml-1レベルのコバルトを定量した.試料をキャリヤー(0.25M硫酸)に注入し,緩衝液(酢酸アンモニウム-クエン酸二アンモニウム)の流れと合流させた後,発色試薬{1.0%(w/v)ニトロソR塩}を注入して,コバルト-ニトロソR錯体を形成させる.最終的に干渉除去剤{2M硫酸-1%(v/v)H2O2}の流れと合流させた後,分光光度計に導入して吸光度(480nm)を測定し,コバルトを定量する.ポンプ流量の変動,及び分光光度計の変動を補正するために試料測定前に発色試薬のみを系内に注入して,試薬から試験値吸光度を測定してシステムの補正を行う.本システムの分析速度は6試料/時であり,測定精度RSDは8.0%(0.5μg ml-1レベル,n=3)である.
  • 大槻 荘一, 足立 公洋
    1992 年 41 巻 12 号 p. 639-642
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    光学的湿度検出法を目的として,ローダミン色素を含むヒドロキシプロピルセルロース・フィルムの感湿膜としての特性を調べた.ローダミン6G(R6G)又はローダミンB(RB)を含むフィルムは0%から90%までの相対湿度の増加に対して,それぞれ50%又は88%の蛍光強度の減少を示した.0%と90%の間で相対湿度変化を繰り返すと,R6Gフィルムの蛍光強度は可逆的な変化を示した.RBフィルムの蛍光強度は湿度変化のサイクルで最初は減少し,その後一定の値となった.エージング後のRBフィルムの蛍光強度は可逆的な変化を示した.蛍光強度の減少は色素の励起状態の水分子による失活が原因と考えられる.段階的な湿度変化に対するRBフィルムの90%応答時間は6~15分であり,湿度の高い領域で早い応答を示した.
  • 岡崎 公哉, 御舩 正樹, 尾堂 順一, 斎藤 寛
    1992 年 41 巻 12 号 p. 643-647
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    イオン交換樹脂の用途を拡大するために,陽イオン交換樹脂(Amberlite CG-50)にオキシジルコニウムイオン,更に陰イオン性のテトラキス(スルホフェニル)ポルフィン(TPPS)を固定化させた三元塩様樹脂の合成とその分析化学的応用を検討した.その結果,CG-50 1g当たりオキシ硝酸ジルコニウム53.4mgとTPPS 25mgとを固定化したTPPS・オキシジルコニウム塩固定化イオン交換樹脂(R-Zr・TPPS)は,試料溶液中でフッ化物イオンと反応し,TPPSを遊離し,このTPPSを吸光定量することによりフッ化物イオンを容易に定量できることが分かった.検量線は,フッ化物イオン1~5ppmの範囲で良好な直線となり,又,10回繰り返しによる相対標準偏差も2.2%と優れていた.このように,イオン交換樹脂,金属イオン及び色素との三元塩様樹脂が,陰イオンの定量用試薬として利用できることを明らかにした.
  • 内山 一美, 箕輪 潤一, 吉村 吉博, 渡辺 卓穂, 大沢 敬子, 今枝 一男
    1992 年 41 巻 12 号 p. 649-653
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    水中の陰イオン界面活性剤を固相濃縮し光音響分析法により定量する方法を検討した.JIS法に従って陰イオン界面活性剤とメチレンブルーの会合体を調製し,この会合体を吸引濾過装置により3M社製Empore薄層プレート上に吸着濃縮した.これをヘリウムネオンレーザーを光源とする光音響分析装置で定量した.Emporeプレートを0.1M炭酸ナトリウムで処理するとブランク信号強度は無処理のものの約1/2となり,再現性も向上した.本法による検量線は0~500ppbまでの範囲で良好な直線関係が得られた.ドデシル硫酸ナトリウムの検出限界は3.60ppbであり,JIS法に比較して約10倍感度が向上した.河川水を試料として定量を行ったところJIS法と同様の定量値が得られた.又河川水を用いて陰イオン界面活性剤の添加回収実験を行ったところ98.0~99.6%と良好な回収率が得られた.
  • 米森 重明, 笹倉 英史, 田口 久美子
    1992 年 41 巻 12 号 p. 655-658
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Chemical degradation method of ester-type polyurethanes composed of polyesterpolyols, polycaprolactonepolyols, or polycarbonatepolyols was investigated. Pyridine containing water was an effective reagent to hydrolyze urethane bond selectively without cleaving ester bond. One gram of polyurethane sample was heated at 160°C in a mixture of 10 ml of pyridine and 0.5 g of water in a pressure vessel. Urethane bond was completely hydrolyzed after 15 h under this condition. After evaporating the reagent, the molecular weight and composition of the polyols were determined by GPC and NMR. In the case of polycarbonates, a lower decomposition temperature of 130°C was preferable to avoid the cleavage of carbonate bond.
  • 中野 信夫, 小林 良夫, 長島 珍男
    1992 年 41 巻 12 号 p. 659-661
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    A quantitative method, using tapes which have been impregnated with silver nitrate (AgNO3) has been used in the detection of hydride gases such as phosphin and arsine. The hydride gas is absorbed on the surface of the tape and reacts with the silver nitrate to form a stain and the intensity of which can be measured quantitatively by an optics system to determine the concentration of the gas. Silver nitrate is extremely light sensitive and unstable. The tape coated with silver p-toluenesulfonate (AgC7H7SO3) is more stable to light (about 1500 lx) and retains a white background for five times as long as the tape coated with silver nitrate. The sensitivity of the tape coated with silver p-toluenesulfonate for phosphin and arsine is nearly equal to that of the tape coated with silver nitrate.
  • 1992 年 41 巻 12 号 p. e1
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
  • 安藤 汀, 加藤 隆史, 大蔵 常利, 水嶋 康之, 徳本 淳一, 光岡 健, 岡田 光史, 竹村 朱
    1992 年 41 巻 12 号 p. T141-T144
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    化学反応熱を光ビーム径の変化に転換する液レンズセルを試作すると共に,転換効率の高い液体として,1,1,2-トリクロロトリフルオロエタンを見いだした.更に液レンズセルと触媒反応槽を組み合わせ,FIA方式により過酸化水素水の分解熱に対する光学的応答性を評価した.過酸化水素濃度8mMに対して約20μm,20mMに対して約50μmの光ビーム径の変化を生じた.又,応答時間は約4分であった.バイオセンサーへの応用には感度,精度の向上が必要であり,液レンズセルや反応槽の熱容量の低減と断熱性の改善,更に光ビーム径のゆらぎの低減などが今後の検討課題である.
  • 木下 英明, 臼井 敏明, 兼田 喜明, 池田 篤治
    1992 年 41 巻 12 号 p. T145-T149
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    1,4-ベンゾキノンを練り込んだグラファイトペースト表面にオリゴ糖デヒドロゲナーゼを固定した電極を用いるとグルコース及びオリゴ糖の酸化電流が得られ,単位濃度当たりの電流値はグルコース,マルトース,マルトトリオース,マルトペンタオースの順に減少した.マルトペンタオースを基質にしてアミラーゼを添加するとマルトースとマルトトリオースが生成するので,電流値が増大し,単位時間当たりの電流値変化はアミラーゼ量に比例した.しかしアミラーゼ活性の低い血清の測定ではベース電流及び測定ごとの変動の大きさが無視できない値となった.a-グルコシダーゼを添加して,マルトース,マルトトリオースを更にグルコースにまで分解させると,単位時間当たり7倍大きい電流値変化が測定され,実分析に十分な測定感度となった.本法で得られた血清アミラーゼ活性値と,臨床的に使用されている比色法による値との相関係数はr=0.974,(n=13)であった.
  • 上蓑 義則, 森川 久, 柘植 明, 中根 清, 飯田 康夫, 石塚 紀夫
    1992 年 41 巻 12 号 p. T151-T156
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    炭化ケイ素並びに窒化ケイ素焼結体中の微量不純物定量のため,テフロン製容器を用いる加圧酸分解条件について検討した.試料を粉砕すると,試料中には最大10%を超える量の粉砕容器成分が混入し,定量結果に大きく影響を及ぼすことが分かった.炭化ケイ素は硫酸+フッ化水素酸+硝酸で,窒化ケイ素はフッ化水素酸+硝酸により,24~48時間程度の時間をかければ,塊状のままで分解できることが分かった.得られた分解溶液のICP-AESにより,原料粉体と同様に精度よく焼結体中微量不純物(炭化ケイ素中22元素,窒化ケイ素中21元素)の定量が可能であった.
  • 荻原 俊弥, 田沼 繁夫
    1992 年 41 巻 12 号 p. T157-T161
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    オージェ電子分光法による深さ方向分析において,Ni/Cr多層膜を用いた場合のイオン加速電圧と深さ分解能の関係について検討した.イオン種にはAr+を用い,イオン加速電圧は0.5~3.0kVである.その結果,深さ分解能はイオン加速電圧の1/2乗に比例することが分かった.そして,イオン加速電圧を大きくするにつれ深さ分解能が低下する主要因はイオンエッチングによる表面あれであった.又,イオン加速電圧0.5kVでは表面からの深さに対する深さ分解能の変化率は約0.5~0.7%であり,分解能をほぼ一定にして深さ方向分析が可能であった.
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