分析化学
Print ISSN : 0525-1931
41 巻, 11 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 鈴木 章悟, 平井 昭司
    1992 年 41 巻 11 号 p. 521-525
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    機器中性子放射化分析法(INAA)において,Vなどの短寿命核種を測定核種とする微量元素の定量を行うために,高い計数率の状態で精度よくγ線スペクトロメトリーを行う方法を検討した.パルス・パイルアップ・リジェクターを付加し,更に測定中1秒ごとの不感時間率を記録できる高計数率用のγ線スペクトロメーターによりγ線測定を行った.計数率が20kcps程度まではパルス・パイルアップによる数え落しがなく,短寿命核種の52Vについて測定中の放射能減衰も完全に補正できた.このγ線スペクトロメトリによりAl,Cl,Mnなどが多量に含まれて分析が比較的難しい生体試料中のVを定量した.NIES(国立環境研究所)のムラサキイガイ及び茶葉の標準試料中のVの定量値はそれぞれ0.75ppmと0.37ppmであった.
  • 松尾 基之, 小林 孝彰
    1992 年 41 巻 11 号 p. 527-532
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    代表的な都市河川である多摩川の上流から下流にかけての10地点で採取した懸濁物中に含まれる鉄の化学状態を57Feメスバウアー分光法を用いて測定し,人間活動の影響が鉄の化学状態の変化にどのように表れるかを検討した.懸濁物のメスバウアースペクトルは,上流域の試料については常磁性Fe2+及びFe3+に対応するダブレットが2組観測されたが,下流域では常磁性Fe3+のみとなり,二価の成分は検出されなかった.Fe2+/Fe3+比をとると,上流から下流に向かってその値が減少した.X線マイクロアナリシスによる非破壊元素分析により,下流域ではリンと硫黄の増加が見られ,生活排水による汚染が観測された.これらの事実より,人間活動の影響が大きいほどFe2+/Fe3+比が小さくなる可能性が示された.
  • 原田 朋子, 田沼 繁夫
    1992 年 41 巻 11 号 p. 533-537
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    オージェ電子分光法により表面感度の高い低エネルギーピークを用い,Co-Ni合金の定量分析について検討した.Co-Ni合金のCo及びNiの低エネルギーオージェスペクトルは重複して観測される.その重複ピークはCo濃度が高くなるにつれて高エネルギー側にピークシフトを起こしていた.しかし,ピーク合成法を用いることにより両者は定量的に分離することができ,定量分析は可能であった.又,バックグラウンドの除去法として一次微分,二次微分及びtop-hatフィルターの3種類について比較したが,差はほとんどなく,いずれのフィルターを用いても十分にバックグラウンドを除去することができた.又,定量した表面のCo濃度は,バルク濃度とよく一致した.
  • 奥山 修司, 三井 利幸, 藤村 義和
    1992 年 41 巻 11 号 p. 539-544
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    複数の化合物が混合している試料中の個々の成分を非破壊で分析する方法としてX線回折法があるが,この方法は一般に再現性が悪く十分満足できる結果が得られない場合があった.そこで混合物中の個々の成分を分離することなく精度よく定量する方法として,混合比既知の各試料に対する複数の2θを抽出し,多変量解析法で定量する方法を検討してきた.この方法によれば,1試料に対して複数の測定値を用いているために,測定誤差が互いに相殺され,その結果として定量値の誤差が小さくなり十分信頼できる定量結果が得られる.今回はこの方法をSiO2,Al2O3,CaOの混合物に応用し,混合物中のSiO2とAl2O3の含有率を精度よく定量する方法について検討した.SiO2(49.71%),Al2O3(33.09%),CaO(17.20%)を含有する試料を用いての相対標準偏差(n=10)はSiO2が2.13%,Al2O3が1.53%であった.
  • 福本 夏生, 小林 慶規, 倉橋 正保
    1992 年 41 巻 11 号 p. 545-550
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    試料中の元素分布を生きたままで非破壊的に観察することを目的として,高分解能蛍光X線元素マッピング装置を開発した.光源に比較的低エネルギーのKα線を発する銅管球を,集光にガラスキャピラリーを使用し,又大面積の半導体検出器2個を使用することで空間分解能を16μmまで向上させることに成功した、この値は従来の装置の約1/10に相当し,検出能はほぼ同程度の値を維持することができた.開発したマッピング装置を使用して酸性雨模擬溶液を滴下した場合及び,X線を長時間照射した場合のマメ科植物の葉中での元素分布の経時変化を生きたままで観察した.これらの結果を比較したところ,酸滴下とX線照射障害で特に障害発生初期段階の元素移動挙動に差異のあることが示唆された.又希少な医学標本の非破壊分析として,原因不明の脳結石病の解剖標本の元素マッピングを行い,発症機構解明に寄与する情報を得ることができた.
  • 伊藤 潤, 寺前 紀夫, 野路 雅英, 原口 紘〓
    1992 年 41 巻 11 号 p. 551-554
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    ホスフィンを配位子にもつ白金錯体のFT-ラマンスペクトルを測定した.測定は近赤外光を励起光源とし,石英製のキャピラリーセルを回転させながら行った.測定範囲は,150~3400cm-1である.測定したスペクトルの帰属を行い,白金と配位子との伸縮振動に由来するラマン線について検討した.白金-配位子の伸縮振動に由来するラマンシフトと,そのトランス位に位置する白金-配位子の伸縮振動のラマンシフトとの関係を検討した.その結果,白金-窒素結合が強くなると,そのトランス位にある白金-リンの結合が弱くなることが確認された.
  • 金 継業, 藤田 渉, 伊藤 潤, 寺前 紀夫, 原口 紘〓
    1992 年 41 巻 11 号 p. 555-559
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    FT-表面増強ラマン散乱(SERS)法により銀電極表面のアニリン吸着種の構造について検討した.銀電極を0.1M KCl水溶液中で数回酸化還元(ORC)処理した後,アニリン50mMを含むKCl溶液に浸したところ,ラマン散乱強度の増加が観測された.銀電極表面上に吸着したアニリンのSERSスペクトルは電極電位に依存していることが認められた.この実験の過程で,Nd:YAGレーザーを銀電極に照射することにより,アニリン分子が通常の酸化電位より低い電位(+0.15Vvs.SCE)でも重合することを見いだした.電極上化学種の確認は顕微FT-IR法により行い,レーザー照射部位のみで重合が行われたことが分かった.
  • 石田 信昭, 狩野 広美, 小川 秀次郎
    1992 年 41 巻 11 号 p. 561-566
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    超伝導NMR(JEOL GSX-270WB)用のミクロイメージングプローブによって,食品組織の1H-NMRイメージ(MRI)を測定した後,MRI画像上の局所におけるスペクトルを非破壊的に測定する方法を工夫した.測定はスピンエコー二次元FT法によった.測定部位のスライス厚は1.5mmのスリットを持つ磁気遮へい板をサンプルホルダーに装着して決定した.X軸方向の位置は90°パルスをX軸方向の磁場こう配を印加しながら照射して選択励起することにより決定した.Y軸方向の位概は位相エンコードして信号を取り込み,FT後データ処理により決定した.径10mmの試料についてMRI画像上の任意の位置におけるスペクトルを0.3mm×0.05mmの切り出し幅(厚さ1.5mm)で測定することが可能であった.本方法により製造方法の異なる3種類(サラミソーセージ,荒びきソーセージ及び魚肉ソーセージ)の1H-NMRイメージとスペクトルを測定し,比較を行った.
  • 石田 信昭, 狩野 広美, 小川 秀次郎, 渡辺 尚彦
    1992 年 41 巻 11 号 p. 567-572
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    NMR-microscopeによって,植物(ワケギ)組織の水の運動性の部位による違いを測定した.超伝導NMR(JEOL GSX-270WB)のMicr-imaging systcm(JEOL GIM-270)の磁場こう配発生装置に白己拡散係数測定用の磁場こう配発生回路を組み込んで最大278mT/mの磁場こう配を発生させ,パルス磁場こう配を併用したイメージングによって分子拡散に基づくシグナルの減衰を画像化(拡散イメージ)した.Stejskal-Tannerの式によって計算した室温(25℃±1℃)における水の自己拡散係数は2.11±0.08×1-5cm2/sであり文献値とよく一致した.ワケギの水の自己拡散係数は(0.4~1.7)×10-5cm2/sと部位によって異なり,拡散イメージによって組織内及び組織間の部位による水の運動性の差異を形態的イメージと対応させてとらえることができた.
  • 佐竹 弘, 若槻 美保, 金品 昌志, 横野 敦子, 横野 論, 小栗 顕二
    1992 年 41 巻 11 号 p. 573-580
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    局所麻酔薬ブピバカイン(BC)に選択的に応答する小型の被覆線型電極を開発し,ウサギ動脈中に挿入してBC濃度のモニター用センサーとして応用した.電極はイオン交換物質又はそのBCとのイオン対,可塑剤及びポリ塩化ビニルをテトラヒドロフランに溶解したものを銅線の表面に被覆して作製した.種々膜組成の電極を試作して経時変化,安定性,ネルンストこう配,直線応答濃度範囲などについて検討し,最適膜組成を決定した.その結果,イオン交換物質にはリンタングステン酸,テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム又はブビバカイン-リンタングステン酸イオン対,可塑剤にはフタル酸ジオクチルを含むポリ塩化ビニル膜が最適であった.BC濃度が(3~10)×10-5~10-2Mの濃度範囲でネルンスト応答(58~63mV/decade)を示した.イオン交換物質にリンタングステン酸やそのBCイオン対を用いた電極ではpH2~8の範囲で一定した電位を示し,生理的pH領域において電位の変動は認められなかった.無機イオンや生体成分に対する選択係数は小さく,タンパク質の影響は少ないことが分かった.又,BC-リンタングステン酸イオン対を用いた電極をウサギ動脈中のBCイオン濃度の連続測定にも利用した.本電極は小型で種々形状の電極が作製でき,動物実験にも応用できることから,BCカチオンの濃度測定やその代謝過程の研究などに利用できるものと考えられる.
  • 米沢 仲四郎, 今井 秀樹, 本郷 哲郎, 星 三千男, 立川 圓造, 兜 真徳, 鈴木 継美
    1992 年 41 巻 11 号 p. 581-587
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    がん診断前に採血された血清試料について,セレン及び亜鉛濃度と,その後の発がんリスクとの関連を疫学的に明らかにするため,セリウムを内標準とする機器中性子放射化分析法(INAA)による,少量(0.2ml以下)のヒト血清中のセレンと亜鉛の同時定量法を確立した.方法の概要は以下のとおりである.一定量のセリウム標準溶液を添加した血清試料と比較標準溶液を合成石英管にとり,試料は凍結乾燥後減圧封人し,比較標準はそのまま減圧封人し,JRR-2(熱中性子束2.2×1013n cm-2s-1以上)で265.5時間照射をする.約1か月間冷却後,石英管表面をフッ化水素酸で約5μmエッチングし,Ge(Li)検出器で一定時間(4000秒以下)γ線スペクトルを測定する.試料及び比較標準試料の141Ceに対する75Seと65ZRのγ線ピーク面積比から試料中のセレン及び亜鉛含量を算出する.同一試料14個による定量値のRSDは3.0%(Se)及び5.2%(Zn)であった.本法による血清試料及びNISTBovinc Liver標準試料(SRM1577,SRMI577a)の定量値は,NISTの保証値を含む他の方法による定量値と,極めてよく一致することが確認された.
  • 丸田 俊久, 横山 滋, 小林 秀樹, 山根 兵
    1992 年 41 巻 11 号 p. 589-592
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    本蛍光X線分析法は,高純度ムライト微粉末中の主成分である二酸化ケイ素と酸化アルミニウム及び微量成分の同時迅速定量が可能であり,煩雑な操作を必要とせず約30分で分析が終了することから簡便性においても優れたものと考えられ,精度も満足すべき結果が得られた.
    本法は,高純度ムライト微粉末の品質管理に有効な分析方法と考えられる.
  • 米森 重明, 市倉 栄治, 杉崎 満寿雄
    1992 年 41 巻 11 号 p. 593-595
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    A quantitative analysis of an oxygen-containing co-monomer in organic copolymers by an XRF oxygen analysis was investigated. An X-ray fluorescence spectrometer was equipped with a diffraction device having synthetic multilayers (2d=8.06 nm) and a gasflow proportional counter as a detector for the O Kα line with a 0.6 μm polyester film window. The X-ray tube was used with a large current under low potential (40 kV-70 mA); the intensities of the O Kα peak (2θ=34.325°) and those of the background (2θ=33.00, 36.03°) were measured three times for 100 s and 3 times for 50 s, respectively. A calibration curve was constructed based on the oxygen contents of tetrafluoroethylene/perfluoro(propylvinyl ether) copolymer, determined by the IR method. It showed good linearity over an oxygen content range of 0.12% (110 mol % as co-monomer); the relative standard deviation was 2.7% for seven measurements of a 1.12 % oxygen-containing polymer. A rapid, nondestructive determination method of an oxygen-containing co-monomer by XRF was thus established.
  • 朽津 信明, 平尾 良光
    1992 年 41 巻 11 号 p. 597-599
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Mineral mapping of the surface of deteriorated cultural property was attempted with a micro X-ray diffractometer. The profile of the surface rust on a bronze object has been analyzed as an example. Atacamite (Cu2Cl(OH)3) has mainly been observed in the outer green rust area, whereas cuprite (Cu2O) has been observed in the inner red area. This result positively shows the stratified structure of bronze rust. This mineral mapping method may be effective for nondestructive analysis of not only cultural property but also any other materials which have a microstructure or heterogeneity.
  • 金田 英彦, 手塚 真知子, 田中 誠之
    1992 年 41 巻 11 号 p. 601-603
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    The carbonate and clay mineral contents in oil-reservoir rock samples were determined from their diffuse reflectance IR spectra. Both rapidity and simplicity are required for this method, since many samples must be treated. Rock samples were ground into fine particles and measured without dilution. We used the peak-hight ratios of 2500 cm-1 (carbonate) and 3600 cm -1 (clay) to 1880 cm-1. The peak at 1880 cm -1 is characteristic of quartz. We confirmed the high reproducibility of this method by carrying out examinations with mixtures of standard mineral samples (RSDs were within 10%). The actual results for 39 rock samples showed a good correlation with those by XRD.
  • 星加 安之
    1992 年 41 巻 11 号 p. 605-608
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    Two critical-point dry pellet samples of a human foot articulation hypodermic tumoral carcinosis by direct paracentesis and mass extirpation were investigated by particle-induced X-ray emission spectrometry (PIXE) and X-ray powder diffractometry. The data show that the Cu-high concentration due to rheumatoid arthritis, uric acid(-Na) monohydrate, CaHPO4·2H2O, (NH4)2FeP2O7·2H2O are represented as major uric acid (-Na) and minor pyrophosphate in the samples
  • 川崎 実
    1992 年 41 巻 11 号 p. T135-T140
    発行日: 1992/11/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    光ディスクをつくるためには,高精密金型であるスタンパーが必要である.スタンパーの品質評価は非破壊分析が必要条件になるが,現状は破壊と非破壊分析の両方を併用して行っている.現在,品質評価に応用している非破壊分析は超音波及び超音波顕微鏡,光学及び蛍光顕微鏡,SEM,STM,磁化式応力型定,レーザ反射光測定である.これらの分析法の特色を生かしてスタンパーの品質評価技術としての応用を検討した.
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