局所麻酔薬ブピバカイン(BC)に選択的に応答する小型の被覆線型電極を開発し,ウサギ動脈中に挿入してBC濃度のモニター用センサーとして応用した.電極はイオン交換物質又はそのBCとのイオン対,可塑剤及びポリ塩化ビニルをテトラヒドロフランに溶解したものを銅線の表面に被覆して作製した.種々膜組成の電極を試作して経時変化,安定性,ネルンストこう配,直線応答濃度範囲などについて検討し,最適膜組成を決定した.その結果,イオン交換物質にはリンタングステン酸,テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム又はブビバカイン-リンタングステン酸イオン対,可塑剤にはフタル酸ジオクチルを含むポリ塩化ビニル膜が最適であった.BC濃度が(3~10)×10
-5~10
-2Mの濃度範囲でネルンスト応答(58~63mV/decade)を示した.イオン交換物質にリンタングステン酸やそのBCイオン対を用いた電極ではpH2~8の範囲で一定した電位を示し,生理的pH領域において電位の変動は認められなかった.無機イオンや生体成分に対する選択係数は小さく,タンパク質の影響は少ないことが分かった.又,BC-リンタングステン酸イオン対を用いた電極をウサギ動脈中のBCイオン濃度の連続測定にも利用した.本電極は小型で種々形状の電極が作製でき,動物実験にも応用できることから,BCカチオンの濃度測定やその代謝過程の研究などに利用できるものと考えられる.
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