分析化学
Print ISSN : 0525-1931
42 巻, 2 号
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  • 丁 明玉, 鈴木 義仁, 小泉 均
    1993 年 42 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    有機酸と陽イオンを同時に定量するために,陰イオン交換カラムと陽イオン交換カラムとに適用できる溶離液の種類と分離条件について検討した.又,流路に陰イオン交換カラム(横河電機SAM3-075)と陽イオン交換カラム(横河電機ICS-C25)を並列又は直列に接続し,シュウ酸を溶離液に用いてバルブ切り替えを行う方法を確立した.両カラムを陽陰の順番に直列に配置し,注入された両イオンのうち陽イオン交換カラムに保持されない陰イオンはいったん陰イオン交換カラム中に停留される.流路を切り替え,陽イオンを分離した後,再度流路を切り替え,陰イオンを分離した.このようなバルブ操作を行うと,1回の試料注入で同一クロマトグラム上に陰・陽両イオンのピークが検出できた.1.5mMシュウ酸溶離液,流量0.75ml/minにより,5種類の陽イオン,5種類有機酸及びリン酸イオンを含む両イオンは室温で60分以内に分離できた.本法をワイン,ジュース及びコーヒー飲料中の有機酸と陽イオンとの同時定量に応用した.
  • 番匠 賢治, 田尾 博明, 今川 隆, 宮崎 章
    1993 年 42 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    地下水汚染で問題となっているトリクロロエチレン(TCE)を対象として化学発光法を利用した光ファイバー化学センサーの試作を行った.センサーは,光ファイバーバンドル(直径8mm)の先端に酸化剤(濃硫酸と硝酸ナトリウム)とルミノール溶液を内蔵したセルを装着した構成で,定量では水中のTCEを多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜で分離し,酸化剤で分解したときに発生する二酸化窒素ガスと過酸化水素を含むpH8.5のルミノール溶液との反応による発光強度を測定した.酸化剤が不安定なので耐久性に欠け使用可能時間は約15分に限られるが,応答性は良好で2分以内に測定できた.各試料ごとに新しく作製したセンサーで測定した場合の検量線は0.05~0.6μg/mlの範囲で良好な直線となり,0.5μg/mlにおけるRSDは3%であった.ファイバーバンドルの長さを10mに延長した条件でも良好な検量線が得られ,遠隔計測法としての可能性が明らかになった.
  • 奥山 修司, 三井 利幸, 野村 俊明, 藤村 義和
    1993 年 42 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    クロマトグラムでピークの重なった個々の成分を定量する方法を多変量解析法で検討した.方法は 以下のとおりである.クロマトグラムの重なった各ピーク高さを,ピークの頂点を中心として, 2.5mm(0.625秒)間隔で測定した.測定値を内標準のピーク高さで割り多変量解析のためのデータとした.例として,クロマトグラムのピークが重なるように測定した,メタノールと酢酸エチルの混合物について定量した.メタノールと酢酸エチルの混合比50:50を用いてのRSD(n=10)はメタノールが0.63%,酢酸エチルが0.57%であった.同一クロマトグラムを用いたピーク面積からのRSDはメタノールが3.92%,酢酸エチルが0.88%であった.GCなどで分離の悪いピークから定量分析を行う場合,ピークの重なりの程度が増加するにつれて,定量誤差が大きくなる.そこで定量誤差が大きくなるような重なりをもったピークから,正確に定量できる方法として,ピークの高さを一定の時間間隔ごとに測定し,その測定値を用いて多変量解析法で定量分析を行った.その結果,メタノールと酢酸エチルの混合試料(メタノール:酢酸エチル=50.00:50.00)を用いての再現性は,メタノールについて言えば,従来から行われているピーク面積による定量法のRSD(n=10)は3.92%であったが,本方法の RSD(n=10)は0.63%と従来法と比較して再現性のよい結果が得られた.
  • 田嶋 晴彦, 加部 利明, 石原 篤
    1993 年 42 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    軽油留分中の含硫黄多環芳香族化合物(PASH)をシリカゲルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー,及び10%塩化パラジウム/シリカゲルカラムを用いた配位子交換クロマトグラフィーによって分離した.分離したPASHの各成分はガスクロマトグラフィー原子発光検出器(GC/AED)及びGC/MSで分析し,42種類のアルキルベンゾチオフェン類及び29種類のアルキルジベンゾチオフェン類を確認し,かつGC/AEDによって個々の成分を定量した.
  • 柴田 康久, 小沢 理, 宮城 宏行
    1993 年 42 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アルキル基の炭素数が12~18のメチルトリアルキル及びテトラアルキルアンモニウム塩を感応物質とする高分子支持膜型塩化物イオン電極を試作し,選択性に対する可塑剤の効果について検討した. 可塑剤にはエーテル,エステル及びアルコール化合物を用いた.すべての電極は良好なネルンスト応答を示し,スロープ感度は-52~-56mV/decade,直線範囲は10-4~5×10-1mol/lであった.メチルトリドデシルアンモニウム塩を用いた塩化物イオン電極の可塑剤にエーテルやエステル化合物を用いると,その種類によらず親油性イオンに対する選択性は低い.しかし,アルコール化合物を用いると,過塩素酸イオンに対する選択性を2~3けた改善できた.又,アルコール化合物は芳香族よりも脂肪族化合物のほうが効果的であった.本研究で用いた種々の第四級アンモニウム塩を感応物質とする塩化物イオン電極の選択性改善に対し,脂肪族アルコール化合物は最適な可塑剤であることが分かった.
  • 小林 健二
    1993 年 42 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    フッ化物光ファイバー原料のZrF4,BaHF3を溶媒抽出法と昇華法を組み合わせて精製した.不純物元素のFe,Co,Ni,Cuの含有量は中性子放射化分析で,酸素は荷電粒子放射化分析で評価した.照射後,高レベル放射能を帯びた光ファイバー原料中のFe,Coを溶媒抽出法を用いて分離することで高感度に定量した.このとき,58Ni(n,p)58Coの核反応により生成した58Coを測定することで超微量Niを定量した.精製品の工不純物濃度は,ZrF4ではFe13ng/g, Co0.018ng/g, Ni4.6ng/g, Cu1.1ng/ g,BaHF3ではFe17ng/g, Co0.044ng/g, Ni1.4ng/g, Cu0.2ng/gであった. Fe, Co, Ni, Cuの定量値より,溶媒抽出法と昇華法を組み合わせた精製法は,高純度のZrF4及びBaHF3の優れた製造法であることが分かった.又,精製したBaHF3で調製したフッ化物ガラスの酸素濃度は10μg/gであり,これまでの報告の中で最も低い値であった.
  • 今任 稔彦, 吉塚 武司, 石橋 信彦
    1993 年 42 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    トリドデシルヘキサデシルアンモニウムイオンをイオン交換体とするポリ塩化ビニル膜型テトラフルオロホウ酸イオン電極を試作し,その性能を検討した.試作電極を用いて,ホウ酸塩がフッ化水素酸との反応でテトラフルオロホウ酸へ転化する反応過程を測定した.これらの検討を基礎にして,試作電極を検出器とし,フッ化水素酸の流れを利用するホウ素のフローインジョクション分析法を検討した. すなわち,キャリヤー液としての水の流れにホウ酸塩を含む試料を注入し,フッ化水素酸の流れに合流し,ホウ酸塩をテトラフルオロホウ酸イオンに転化する.この流れをリン酸水素二ナトリウム水溶液の流れと合流し,フッ化水素酸を中和するとともに試料をテトラフルオロホウ酸イオン電極検出器に導く. このときの検出器の電位変化をピーク状信号として計測し,ピーク高さからホウ素を定量した. Na2B4O7を試料とした場合,1×10-2M~3×10-6Mの濃度範囲でピーク高さは濃度の対数値に対して傾き 56mV/dccadcの直線関係を示した.ホウ素としての検出下限濃度は10ppbであった.分析速度は 1 時間当たり約20検体で,0.1ppmの試料の10回注入におけるピーク高さのRSDは1.8%であった.
  • 稲木 良昭, 松川 賢治, 王 紅, 望月 衛子, 和田 健彦, 竹本 喜一
    1993 年 42 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    核酸成分分離用の新規なHPLC用充てん剤としてデオキシアデノシンを固定化したシリカゲルを合成し,得られた充てん剤を用いてオリゴヌクレオチドの塩基特異的分離を試みた.デオキシテトラヌクレオチドの分離において,固定化リガンドと相補的な核酸塩基を含むpd(T)4が他のデオキシテトラヌクレオチドから特異的に分離された.この系においては,測定温度の低下に伴い溶質-リガンド間の相互作用が増大し,相補的塩基を含む溶質の分離係数に大きな変化を生じた.又,シリカ結合相-リガンド間に親水性部位をもつスペーサーを有する充てん剤は,親水性部位をもたない充てん剤に比べてその相補的塩基の認識性がかなり高くなるという結果を得た.更に,固定化リガンドの糖の保護基を脱保護した充てん剤よりも脱保護しない充てん剤のほうが比較的良好な分離特性を示した.
  • 笠原 一世, Scott N. WILLIE, Ralph E. STURGEON, Shier S. BERMAN, 田口 茂, 後藤 克 ...
    1993 年 42 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Several materials were tested for their usefulness as supports to immobilize 8-quinolinol through an azo bonding to prepare clean adsorbents for the preconcentration of trace metals in water. Satisfactory results were obtained with CAPCELL-NH2 (silicone-coated silica gel with alkyl amino groups), and with SEPABEADS (polyvinyl polymer with alkyl amino groups). The adsorbents synthesized from them are clean and can be used for the concentration of metals prior to determination by GFAAS or ICP-MS. Six metals (Cd, Cu, Fe, Ni, Pb, and Zn) in the standard seawater sample, NASS-3, were determined by GFAAS after enrichment with 8-quinolinol bonded SEPABEADS. The results were in good agreement with the certified concentrations.
  • 山下 務
    1993 年 42 巻 2 号 p. 111-113
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Rare earth-iron magnetostriction alloy (0.1g) was decomposed with hydrochloric acid and hydrogen peroxide within a few minutes. The solution obtained was diluted to 100ml with water. To 10 ml of this diluted solution, an internal standard solution and hydrochloric acid were added and then diluted to 100 ml again with water. The amounts of Mn, Fe, Tb and Dy were measured by ICP-AES without any concomitant effect. Among the internal standard elements investigated (Sc, Y and La), La was most suitable. Recoveries of each element measured with a synthetic sample solution were over 99.7%. The relative standard deviations (n=5) were 0.04%0.35%.
  • 赤間 美文, 斎藤 尚, 林 明彦, 佐藤 健二, 田中 誠之, 菅野 等
    1993 年 42 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    A simple method was developed for the determination of trace keto-form PMBP admixtured in the commercial PMBP reagent; which is mainly yellow enol-form, by a differential thermal analysis technique. The enol-form PMBP (m.p. 92±1°C) is obtained by crystallization from hexane solution while the keto-form (m.p. 118±1°C) is obtainable by crystallization from ethanol solution. The white keto-form PMBP converts into enol-form upon melting. Calibration graph for keto-form, which was represented by the peak height ratio of keto- to enol-form in the DTA curve, is linear in the studied range (010wt% keto form). The relative standard deviation for five determinations was 4.3% at 0.7wt% level.
  • 川原 順一, 服部 滋
    1993 年 42 巻 2 号 p. T29-T36
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    光散乱測定の高精度化を目指して,市販の代表的光散乱光度計を例にとり,装置定数の時間変動特性に関して詳細に検討し,その改善法について考察した.同光散乱光度計はレーザー光源を用いることの特徴が生かされておらず,むしろ異なる二つの受光部を用いていることにより,装置定数の時間安定性に問題を生じていることが示された.その改善策としては,光電子増倍管を周期的に0度方向へもっていくことにより入射光強度のほうもモニターするようにする方法が,大きな改造を必要とせずかつ効果的であることを示した.又装置本体の改造を行なわない場合でも,ガラスブロック製標準散乱体を用いることにより,装置定数変動の問題はかなり改善されると思われる.更に液浸型の光散乱光度計の場合,セル差,セルの配向差は非常に小さくなることも示された.
  • 大栗 直毅, 大西 彰, 中橋 計治, 内野 滋己
    1993 年 42 巻 2 号 p. T37-T41
    発行日: 1993/02/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンゲルを充てんしたSEC(GPC)カラムに,移動相にクロロホルムを用いて,高極性のオリゴマーを測定すると,分子量に相当する保持容量に溶出せずに,大幅に遅れて溶出したり,又,試料注入濃度によって分子量分布が変化するなど,再現性のないクロマトグラムしか得られない.著者らは,クロロホルムにアミン系の溶媒を微量添加した移動相を使用することによって,エポキシ樹脂用硬化剤のポリアミド,有機磁性体材料のポリアニリン,塩化ビニル用の複合安定剤などの高極性のオリゴマーを分離し,それらの分子量分布測定を再現性よく測定できることが判明した。
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