溶媒可溶性メンブランフィルターを用いることにより,水中の微量鉄(II)を迅速,簡便に濃縮して吸光光度法で定量する方法を開発することができた.鉄(II)を4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンジスルホン酸との錯陰イオンとした後,ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムイオンとのイオン会合体として,硝酸セルロース製のメンブランフィルターに吸引濾過により捕集した.フィルターごと少量の
N,
N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し,541nmにおける吸光度を測定した.50倍の濃縮で2μgdm
-3の鉄(II)を相対標準偏差約3%で定量できた.フィルターに捕集されたイオン会合体は非常に安定であり,2週間後にフィルターを溶解して吸光度を測定しても,捕集後直ちに溶解した場合と同じ結果が得られた.このことを利用すれば,採水地点で鉄(II)を錯体としてフィルター上に固定しさえすれば,後はいつでも溶解して吸光度を測定できるので大変有用である.又,試料に塩酸を加えて加熱処理後,鉄(III)を塩化ヒドロキシルアンモニウムによって還元した後,発色操作を行って微量全鉄の定量もできる.本法を,河川水及び地下水中の鉄(II)の定量に応用して,良好な結果を得た.
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