分析化学
Print ISSN : 0525-1931
43 巻, 2 号
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  • 田口 茂, 夏 敏, 柴田 恵, 波多 宣子, 笠原 一世, 後藤 克己
    1994 年 43 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    溶媒可溶性メンブランフィルターを用いることにより,水中の微量鉄(II)を迅速,簡便に濃縮して吸光光度法で定量する方法を開発することができた.鉄(II)を4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンジスルホン酸との錯陰イオンとした後,ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムイオンとのイオン会合体として,硝酸セルロース製のメンブランフィルターに吸引濾過により捕集した.フィルターごと少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し,541nmにおける吸光度を測定した.50倍の濃縮で2μgdm-3の鉄(II)を相対標準偏差約3%で定量できた.フィルターに捕集されたイオン会合体は非常に安定であり,2週間後にフィルターを溶解して吸光度を測定しても,捕集後直ちに溶解した場合と同じ結果が得られた.このことを利用すれば,採水地点で鉄(II)を錯体としてフィルター上に固定しさえすれば,後はいつでも溶解して吸光度を測定できるので大変有用である.又,試料に塩酸を加えて加熱処理後,鉄(III)を塩化ヒドロキシルアンモニウムによって還元した後,発色操作を行って微量全鉄の定量もできる.本法を,河川水及び地下水中の鉄(II)の定量に応用して,良好な結果を得た.
  • 平野 義博, 保田 和雄, 広川 吉之助
    1994 年 43 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    高温炉原子吸光法における,Seの原子蒸気温度を二線法により測定した.そして,種々のマトリックスモディファイアと上記の原子蒸気温度との関係について検討した.Pd又はRhを添加すると,Seの原子化開始時の原子蒸気温度は,Mn添加に比べて約400℃上昇した.これはSeがPd又はRhと金属間化合物を作り,活量係数が1.0より小さくなったと考えられる.更に,プラットホームを用いて原子化したときのSeの原子蒸気温度は,管壁からの原子化に比べ,約200℃上昇した.以上の方法を,実試料の例として尿に適用し,干渉について調べた.この場合にはSeの原子蒸気温度が異常に高くなった.これは"準励起状態"のSeの密度が増加したためであった.このような励起干渉は,多量の金属モディファイアや,還元剤の添加により抑制することができた.
  • 佐々木 義明, 田頭 昭二, 村上 良子, 藤原 勇, 林 謙次郎
    1994 年 43 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    強酸型イオン交換樹脂へのマンガン(II),カドミウム(II),あるいは銅(II)の吸着に対してフロイントリッヒ吸着等温式がよく適合した.この事実に基づいて,イオン交換樹脂への二価陽イオンの吸着量に及ぼす溶液中の当該イオンの濃度,共存塩濃度あるいはpHの影響などを記述できる実験式を導いた.Na形イオン交換樹脂への二価陽イオンの吸着は吸熱反応であった.併せて,この吸着に伴う自由エネルギーとエントロピーの変化量も求めた.又,この実験式はイオン交換樹脂へのイオンの吸着現象のみならずキレート樹脂による吸着現象にも適用できた.すなわち,架橋度の異なるポリ(4-ビニルピリジン)樹脂への銅(II)イオンの吸着量に及ぼす溶液中の銅イオン濃度あるいはpHの影響に関する既報のデータは実験式に極めてよく適合した.
  • 丁 明玉, 鈴木 義仁, 小泉 均
    1994 年 43 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    陽イオン交換カラム (ICS-C25)と陰イオン交換カラム(ICS-A23)を直列に接続した系における陽イオンの溶離挙動とその溶離機構について検討した.陽イオンのクロマトグラムは陰及び陽イオン交換カラムの接続順序によって異なる.陽イオンは陽イオン交換樹脂から移動相に溶出するとき,溶離液の有機酸陰イオンとイオン対又は錯体を形成して有機酸陰イオンの濃度を減少させる.陽イオン交換カラムからの溶出物は後に接続した陰イオン交換カラムに入ると,有機酸陰イオンはイオン交換又は疎水性分配相互作用により陰イオン交換樹脂に保持される.従って,移動相中の有機酸陰イオンの濃度の減少に由来する寄与分のピークは本来の陽イオンピークより遅れて現れる.酒石酸(TA)と2,6-ピリジンジカルボン酸(PDC) の混合溶液を溶離液に用いる場合には,陰イオン交換カラム中での2種類の有機酸陰イオンの保持時間が異なるため, 1 種類の陽イオンに対して3本のピークが現れる.つまり,一次ピークは陽イオンの溶出及び移動相中の溶離イオン (H+) の減少に由来するものであり,二次と三次ピークはそれぞれ移動相中のTAとPDC陰イオンの減少に対応するものである.これらのピークはピーク面積の比較及びサプレッサーの有無により確認した.
  • 宮脇 彰, 我妻 和明, 広川 吉之助
    1994 年 43 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    次亜リン酸塩を還元剤として作製した無電解ニッケル皮膜の深さ方向の元素分布について, グリム放電管を用いた発光分光分析により解析した.このメッキ層中には還元剤に起因するリンが約8%含まれる.ニッケル皮膜中のリンの濃度分布をその発光強度により調べたところ, 表面付近にリンが偏在している部分があることが分かった.又, 鋼板上に作製した無電解ニッケル皮膜に熱処理を施し, その前後での皮膜構造の変化について測定した.その結果, 750℃, 2.5時間の熱処理によってめっき皮膜は大きく変化し, ニッケル-鉄酸化物層, ニッケル-リンめっき層, 鉄の拡散層から成る複雑な構造となることが明らかとなった.
  • 福岡 栄介, 鈴木 薫, 吉成 昌郎, 奥西 秀樹, 宮崎 瑞夫
    1994 年 43 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    キャピラリー電気泳動装置によるブラジキニン (BK)とその代謝物(des-Arg9-Bradykinin,des-Phe8-Arg9-Bradykinin,des-Ser6-Pro7-Phe8-Arg9-Bradykinin) の同時一斉定量法を開発した. この方法により血しょうに添加したBK及びその代謝物を10~100μg/mlの範囲で再現性よく分析することができた.回収率は約80%であった. BKとその代謝物の泳動時間はすべて10分以内であった. HPLC法と比較して測定感度は多少劣るが, 注入量が5nl程度と少なくてすむこと, 分解能に優れ, 異なる分離条件を容易に組み合わせることができるなどの利点を有している. 本法はこれまで十分に明らかでないBK の生体内運命を解析し, ひいてはBKの生理学的,病態生理学的機能の解明に強力な手段となり得る.
  • 中野 信夫, 石川 成俊, 小林 良夫, 長島 珍男
    1994 年 43 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    ホルムアルデヒドが硫酸ヒドロキシルアミンと反応して生じる硫酸の量からホルムアルデヒドを定量することが可能である.この硫酸の定量はpH指示薬を用いた試験紙の呈色の強度が硫酸の量に比例することを利用した.試験紙は以下の手順で作製した.セルロース系テープ(幅20mm;長さ25m;重量41g)を,硫酸ヒドロキシルアミン0.2gを純水20mlに溶解後,メタニールイエロー0.02g,グリセリン7.5mlをメタノール42.5ml に溶解した液を加えて調製した発色液に浸漬,乾燥して作製した.本試験紙によれば100ppm~3000ppm の範囲の高濃度ホルムアルデヒドを40秒間で自動測定が可能となった.アセトアルデヒド,アセトンに対し,ホルムアルデヒドの約1/3,及び約1/25の応答を示したが,メタノール,アンモニアガス,水素及び二酸化硫黄などに対しては全く応答せず,高い選択性を有していることが分かった.
  • 太田 一徳, 加藤 鉄也, 森川 久, 田中 一彦
    1994 年 43 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリト酸)イオンを溶離液として用いる陰イオンの紫外吸光検出イオンクロマトグラフィーについて検討した.マグネシウム及びカルシウムイオンと溶離イオンが紫外吸収を有する錯体を生成し陰イオン交換体に保持されることに着目し,これらの陽イオンと陰イオン(塩化物,亜硝酸,硝酸及び硫酸イオン)を同時定量した.本法において,陰イオンと生成したマグネシウム及びカルシウム-ピロメリト酸錯体の保持挙動及び検出器応答を検討した結果,陰イオンはイオン交換的に,これらの錯体は非イオン交換的に保持されていると考えられた.最適溶離条件下において,これらの6種の陰及び陽イオンは20分以内に良好に分離検出された.本法を酸性雨に関連する雨水及び河川水などの実際試料中の陰イオンとマグネシウム及びカルシウムイオンの定量に適用したところ良好な結果が得られた.
  • 石井 裕子, 滝山 一善
    1994 年 43 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    ごまを粉砕し,粉砕ごまから沸騰水中に遊離のカルシウム及びシュウ酸を抽出した.又0.1M塩酸中にカルシウム及び全シュウ酸を抽出した.抽出液中のカルシウム及びシュウ酸をAAS及びイオンクロマトグラフィーで測定した.一方,ごまを水と共にミキサーで摩砕し,混合物をビーカーに移し,静置した.沈降したシュウ酸カルシウム結晶をデカンテーション法で上澄み液を注意深く流し出して集めた.ごまの種類によるが,洗いごま100gにつき,遊離のカルシウム70mg,遊離のシュウ酸350mg,全シュウ酸1750mg,シュウ酸カルシウム-水和物2320mgとなり,全カルシウムを1200mgとすればシュウ酸カルシウム以外のカルシウムは565mgとなった.結晶はシュウ酸カルシウム-水和物であり,球形の凝集体をしていた.
  • 新井 実
    1994 年 43 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    High performance liquid chromatography was applied to the separation and determination of polycyclic aromatic hydrocarbons (PAH) extracted from diesel particulates. Soluble organic fraction (SOF) contained in PAH was obtained by Soxhlet extraction of particulate samples on filters. PAH were selectively separated from SOF samples, by a silica cartridge with solvents and they were then used for HPLC analyses. Each PAH was separated and quantified by using the methods of reversed phase and partition chromatography with gradient elution. Fluorescence detection with variable excitation and fluorescence wavelength was applied to detect many kinds of PAH with detection limits from 0.24 to 0.91 μg l-1. It was found that aromatics in the fuel strongly affected the quantity of PAH in the SOF.
  • 内田 弘
    1994 年 43 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    多種類の分析試料の分解に広く用いられている密閉分解容器の耐腐食性を検討した.外容器がステンレス製の従来品に加えて,腐食に強いと言われているニッケル基合金(ハステロイ相当)の改良試作品について,腐食減量の測定と腐食生成物の解析を行った.腐食減量は使用分解時間に比例し,又使用温度の上昇に伴って増加した.各種の単一酸と実試料分解に用いられる混酸について,190℃,16時間の腐食減量を求めた結果,混酸における腐食減量が多かった.いずれの場合にも,改良品の腐食減量は従来品より少なかった.とりわけ過塩素酸,硝酸-過塩素酸,硝酸-硫酸を用いた際に,減量比が大きかった.腐食生成物の組成は,同じ酸を用いても,素材の組成,分解時間によって異なることが見いだされた.
  • 曹 俊彦, 楢崎 久武
    1994 年 43 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    水素化物発生/原子吸光法において,妨害となる遷移金属を分離することなくセレン及びアンチモンを定量するために,テトラヒドロホウ酸(III)を結合させた強塩基性陰イオン交換樹脂上で水素化物を発生させた.標準試料(Wheat Flour, Lobster Hepatopancreas及びMarine Sediment)を硝酸及び過塩素酸で分解し,残留物をフッ化水素酸で処理した後,セレンは塩酸と加熱することによりセレン(IV)に還元し,アンチモンはヨウ化カリウム溶液によりアンチモン(III)に還元して定量した.標準試料中のセレン及びアンチモンの分析値は保証値の範囲内であった.
  • 竹中 みゆき, 富田 充裕, 窪田 敦子, 土屋 憲彦, 松永 秀樹
    1994 年 43 巻 2 号 p. 173-176
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    半導体材料であるシリコンウェハーの深さ方向に分布する超微量クロム,鉄,ニッケル及び銅の定量法を加熱気化/誘導結合プラズマ質量分析法を用いて検討した.試料を硝酸とフッ化水素酸の混酸で漸次溶解させる条件を設定し,エッチング厚さを0.01~10μmまで適宜変化させることが可能となった.既知濃度のイオン注入ウェハーを用い,SIMSによる深さ方向のプロフィルを本法の結果と比較検討したところ,金属濃度の分布曲線は良い一致を示した.本法の各元素の検出限界は,最大エッチング厚さ10μmとした場合,Cr及びFeで0.01ng/g(8×1011atoms/cm3),Ni及びCuで0.005ng/g(4×1011atoms/cm3)である.
  • 中野 信夫, 須賀田 健, 長島 珍男, 釜谷 美則
    1994 年 43 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    シリカゲル (粒径約 5μm) を塗布したセルロース系テープ(幅20mm;厚さ 0.27mm)に,硫酸パラジウム 0.05g, 6%亜硫酸水1.5ml及びグリセリン0.75ml を純水で 5mlとした発色液を含浸させて一酸化炭素定量用試験紙を調製した.この試験紙を用いて試験紙光電光度法により一酸化炭素を測定した結果,測定時間を 1 分とすると検出下限は3ppmであった.又,他のガスの応答について試験したところ,硫化水素には一酸化炭素に比べ約38倍の応答を示したが,エチレンには3.6%, 二酸化硫黄には4.7%,水素には0.3% の応答があり,400ppmアンモニアや,10ppm二酸化窒素,5% エタノールのガスには応答がなかった.
  • 安藤 汀, 大蔵 常利, 徳本 淳一, 岡田 光史
    1994 年 43 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    微小な温度変化を光学的に検出する試みとして,光ファイバーケーブルを素材に用い,その高分子クラッド層の一部を液体に置換し,この部分を感温部とする高感度温度計の基礎的な検討を行った.オレイルアルコールなどのクラッド液と,石英ガラスコアとの屈折率が等しくなる温度付近で,光ファイバーケーブルの光伝送量が,わずかの温度変化で大きく変化した.この変化の度合いは,ファイバーのコア径が小さく,感温部の長いほど大きくなった.コア径0.4mm,感温部の長さ20mmの条件では,光電送量が急変する1度の温度範囲において,平均,3.6dB℃-1の温度感度が得られた.
  • 一ノ木 進, 井原 敏博
    1994 年 43 巻 2 号 p. 185-188
    発行日: 1994/02/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
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