分析化学
Print ISSN : 0525-1931
43 巻, 7 号
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  • 後藤 正志, 赤堀 克己, 前田 小百合
    1994 年 43 巻 7 号 p. 505-509
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    日本薬局方における医薬品の臭素滴定及びヨウ素滴定を迅速化することを目的として電気化学検出FIA法の開発を行った.臭素滴定に基づく場合には,臭素酸カリウムと臭化カリウムからなる臭素酸塩試液と酸試液を合流させ,反応管中で臭素を発生させる.次に,試料の流れと臭素の流れを合流させ,反応管中で試料の酸化反応を起こさせる.その流れは塩基性のヘキサシアノ鉄(II)酸塩試液と合流され,反応管中で未反応の臭素は還元され,ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンを生成する.このヘキサシアノ鉄(III)酸イオンに基づく還元電流を測定することによって試料濃度を測定する.ヨウ素滴定に基づく場合には,臭素酸塩試液をヨウ素酸塩試液と交換して臭素滴定の場合と同様な操作を行った.イソニアジド錠,チオ硫酸ナトリウム注射液及びアスコルビン酸注射液についてそれらの成分含量を本法と日本薬局方の手分析によって求めた結果,両者の分析値はよく一致した.本法では1時間に30試料の分析が可能であることが分かった.
  • 福川 茂
    1994 年 43 巻 7 号 p. 511-515
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    不飽和ポリエステルの種類を決定するために,13C-NMRスペクトルを測定し各構成成分の化学シフトを確認した.標準化合物のスペクトルを得るために,種々の二塩基酸及びグリコール成分を用いて27種類の線状不飽和ポリエステルを合成し,分取用ゲル浸透クロマトグラフィーにより未反応物等を除去して精製した.得られた不飽和ポリエステルについて,IR,1H-NMR,13C-NMRスペクトルを測定した.標準化合物の13C-NMRスペクトルより,構成する二塩基酸及びグリコール成分の化学シフトを整理した.その結果,各構成成分が2種類以上混在する場合,従来のIR,1H-NMRのみでは識別が困難であった成分も13C-NMRスペクトルにより識別可能であることが分かった.
  • 斉藤 啓治, 石田 嘉明, 大島 時生
    1994 年 43 巻 7 号 p. 517-524
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    未知有機化合物の13C-NMRスペクトルと原子組成又は分子式から,自動的に部分構造を推定するコンピュータプログラムを作成した.まず,あらかじめ設定した554種の部分構造に含まれる各炭素のピークについて,文献等から収集した約6100件のスペクトルデータを調べ,その中心位置と出現範囲を求めることにより,部分構造を推定するためのパラメーターを決定した.又,これらを判定評価するための関数として正規分布曲線を採用した.入力された未知化合物のスペクトルの各ピークが設定されたどの部分構造に由来するかを,これらのパラメーターと評価関数を用いて判定する.多数の被検化合物についてテストを行った結果,含まれる部分構造を精度よく推定できることが分かった.
  • 山庄司 由子, 藤原 学, 松下 隆之, 田中 稔
    1994 年 43 巻 7 号 p. 525-531
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    ホストとしてβ-シクロデキストリン(β-CyD)誘導体を,ゲストとしてDL-アラニンβ-ナフチルアミド(DL-AN)を用いて,水と有機溶媒との混合溶媒系での包接現象について1H-NMR法により検討した.有機溶媒混合系では,水溶液中に比べて包接の強さ(安定度)は著しく減少するが,有機溶媒の混合割合が20~30(v/v)%の系で不斉認識が最も良好である.有機溶媒として重水素置換したアセトン,アセトニトリル,メタノール,エタノール,2-プロパノール,ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルホキシド(DMSO),ジオキサンあるいはテトラヒドロフラン(THF)をD2Oと適宜混合して用いた.未修飾のβ-CyDに比べて疎水性空洞の深い2,6-ジメチル-β-CyDは水溶液中ではこのゲストを強く包接するが,D体とL体のプロトンシグナルの化学シフトの分裂はほとんど認められない.しかし,この系に有機溶媒を添加すると,ゲスト化合物のプロトンシグナルが分裂し,不斉認識が観測された.検討した各種有機溶媒の中で,溶媒自身がCyDに包接されやすいと考えられるジオキサンやTHFではゲストの包接能も小さく,認識能も低いことが明らかとなった.一方,水酸基をすべてメチル化した2,3,6-トリメチル-β-CyDでは全く認識されないことより,CyDの二級水酸基とゲストとの水素結合が不斉認識に大きな役割を果たしていると推論される.
  • 草野 文男, 佐藤 進, 久安 浪夫, 内山 真喜雄
    1994 年 43 巻 7 号 p. 533-538
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    強リン酸中でセレンをハロゲン化物として蒸留する分離捕集法を適用し,還元気化/ICP-AESでカルシウム中の微量セレンの定量を試みた.ハロゲン化物によるセレンの蒸留は,リン酸(15w/v%)-ヨウ化水素酸(2.0w/v%)-亜鉛(0.2w/v%)の溶液系に,所定量の試料(0.5mol dm-3塩酸溶液)を加えて行い,留出液を過塩素酸系の溶液に吸収捕集した.更に吸収液中のセレン(VI)を(IV)に予備還元し,ICP-AESで測定した.本法によるセレンの回収率は,セレン0.005μg cm-3のとき99.0%であり,RSDは2.05%(n=8)であった.又,本法を炭酸カルシウム中(Ca:5000μgcm-3)の極微量セレンの定量に応用したところ,共存イオンの影響が小さく,高精度(2.00±0,05ng g-1)で定量(検出限界:0.5ng g-1)できることが明らかとなった.
  • 佐竹 弘, 杉田 善浩, 金品 昌志, 池田 早苗
    1994 年 43 巻 7 号 p. 539-544
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    四チオン酸イオンとの酸化還元反応を利用してチオール化合物をノンサップレサー型イオンクロマトグラフィー(IC法)により定量する方法を開発した.すなわち,チオール化合物を四チオン酸イオンでチオ硫酸イオンとした後,IC法により間接的に定量する方法である.システイン,アミノエタンチオール,ペニシラミン及びジチオスレイトールが2~100μM(1M=mol dm-3)の濃度範囲でチオ硫酸イオンの検量線を用いて定量することができた.アミノ酸やジスルフィドの影響はほとんど認められなかった.本法はチオ硫酸イオン標準液の検量線を用いて,常に共存するジスルフィドなどの影響なく,チオール化合物が低濃度まで定量できるという特徴がある.
  • 松田 裕之, 中野 信夫, 石地 徹, 長島 珍男
    1994 年 43 巻 7 号 p. 545-549
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    定電位電解式塩化水素センサーと石英管外周にヒーターを巻き付けたタイプの熱分解器を組み合わせて,代替フロンHCFC123を連続的に検知する方法を開発した.フロン123の塩化水素への熱分解効率は熱分解器のヒーター温度(790~990℃)に依存した.更に,ヒーター温度が一定でも,石英管内でのフロン123の滞留時間が増加すると分解効率が増加した.910℃でもガス吸引流量0.20dm3min-1(滞留時間8×10-4秒)であれば,フロン123 30ppmは約70%の効率で塩化水素に熱分解した.この条件で電気化学式塩化水素センサーと組み合わせることにより,フロン123に対する検出限界は,S/N=3.0としたとき0.1ppmであった.
  • 吉村 坦, 陸 新紅, 鵜沢 惇
    1994 年 43 巻 7 号 p. 551-556
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    底質中の微量のインジウムを水酸化ジルコニウム共沈法により濃縮分離し,微分パルスアノーディックストリッピングボルタンメトリーによる定量を試み,次のような分析法を確立した.蒸留水50mlに溶解した試料溶液(底質0.04gを含む)10mlを加え,インジウム標準溶液を一定量それぞれ添加し,これにジルコニウム塩溶液1ml(ジルコニウム10mgを含む)を加え,アンモニア水(1:2)でpHを8.8に調節して共沈分離させる.これを〓過し,4M塩酸25mlで沈殿を溶かし,5%チオシアン酸カリウム溶液1mlを加え,蒸留水で正確に50mlとする.この溶液の一定量を採り,除酸素後100秒間前電解を行う.10秒間静置した後,-0.9Vから-0.3Vvs.SCEまで掃引して溶出電流-電位曲線を記録して,ピーク高さを測定し定量する.本法によると,ppmオーダーの高感度で簡単な操作でかつ迅速に定量することができる.又,共存する他のイオンの影響はほとんど認められなかった.
  • 中川 清, 米本 理, 岩佐 靄子, 松原 いく子
    1994 年 43 巻 7 号 p. 557-561
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    炭素炉AASによるベリリウムの定量条件を最適化し,この条件によって生物試料中のベリリウムを定量した.試料の酸分解溶液に増感・干渉抑制剤として硝酸マグネシウムを加え,分光計の光電子増倍管を低ノイズのものに替え,検出系の増幅率を通常の10倍にして測定した.添加する硝酸マグネシウムの濃度を10-3M,試料注入量を50μlとし,1250℃,30sで灰化するとき最良の結果が得られた.この条件では検出感度は損なわれず,共存アルカリ塩がよく揮散された.検出限界は0.005ppb(Be 0.25pg)である.この方法によりNIST Bovine Liver(SMR 1557)中のベリリウム分析値0.50ng/g(SD 0.037, n=12)を得た.
  • 工藤 節子, 進藤 大輔, 水渡 英昭
    1994 年 43 巻 7 号 p. 563-567
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    Al2O3-SiO2系球状介在物(粒径0.03~3μm)及び六角板状酸化鉄(III)(粒径3~30μm,厚さ1~4μm)微粒子に超薄切片電子顕微鏡法を応用し,内部観察を行うとともに,微小領域での組成を検討した.凝固過程で鉄中に析出した介在物をマトリックス成分から分離した.酸化鉄(III)としては,著者らが既にNa2O・2B2O3融剤中で合成した2.58mass%Al2O3を含むα-Fe2O3を用いた.これらの微粒子をアクリル系樹脂に包埋し,超ミクロトームで約50nmの薄片を作製した.透過型電子顕微鏡像,格子像,電子線回折法及びエネルギー分散型X線分光法により,以下の結果が得られた.球状介在物では,表面がAl2O3-SiO2系非晶質相であり,内部はAl2O3を主成分とする単結晶相であった.一方,α-Fe2O3は主平面が{0001}面の単結晶であり,粒子の極表面にはAl2O3が析出していないことを確認した.
  • 板垣 俊子, 石黒 三岐雄, 高田 九二雄
    1994 年 43 巻 7 号 p. 569-574
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    水酸化ベリリウム共沈分離/モリブドリン酸青吸光光度法により,高純度クロム,ニッケル,銅及び鉄-クロム合金中の微量のリンを定量した.EDTA共存下でリンをリン酸ベリリウムアンモニウムとして水酸化ベリリウムと共沈分離する方法は,検討したすべての高純度金属に適用できた.但し,高純度クロムの場合,クロム-EDTA錯体生成時のpHを1.5から5.0の間で変化させ,pH9.7±0.2でリンを共沈させると,EDTA錯体生成時のpHの増大とともにリンの回収率は減少した.つまり,リンの回収はクロム-EDTA錯体生成時のpHに大きく依存することが分かった.この分離・濃縮法によって,溶解した試料中のリンの全量が分析に使われるため,鉄鋼のJIS法(溶解した試料の10分の1を分析に使用)の約10倍の感度で定量することができた.本法での定量下限は試料中のリン濃度に換算して0.46μg g-1であった.又,本法は発色時の液量がJIS法の約2倍になるため,発色におけるヒ素の影響は,モリブドリン酸青を生成させるときの試薬の濃度をJIS法の2倍にすることで取り除いた.
  • 緩利 昌代, 中西 弘, 谷口 徠
    1994 年 43 巻 7 号 p. 575-580
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    かぜ薬の有効成分の簡便な定量法を検討した.かぜ薬の10成分を塩基性領域で負荷電する化合物及び中性化合物と酸性領域で正荷電する化合物の二つのグループに分類した.アセトアミノフェン,無水カフェイン,グアイフェネシン,エテンザミド及びグアヤコールスルホン酸カリウムをAグループ,マレイン酸クロルフェニラミン,臭化水素酸デキストロメトルファン,リン酸ジヒドロコデイン,dl-塩酸メチルエフェドリン及びノスカピンをBグループとした.キャピラリー電気泳動により2種類の条件を用いてそれぞれのグループを定量した.Aグループの定量には,50mMドデシル硫酸ナトリウムを含む15mMリン酸塩緩衝液(pH11.0)を,Bグループには,50mMリン酸塩緩衝液(pH3.0)を泳動バッファーとしてそれぞれ用いた.検出は185nmで行い,定量はピーク面積による内標準法で行った.無水カフェイン以外の各成分の回収率は92.7~109%,RSDは0.5~6.3%(n=3)であった.無水カフェインは,メタノールの影響を受けるため,回収率が77.4~110%,RSDが2.0~11%であった.このために,無水カフェインの定量には本法は使用できない.本法を市販製剤に適用した.無水カフェインを除く,各成分の含有量は表示量の94.0~108%であった.
  • 中田 邦彦
    1994 年 43 巻 7 号 p. 581-582
    発行日: 1994/07/05
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
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