ガス拡散膜分離と吸光度検出をオンラインで直結したFIAシステムによる,鉄鋼中微量窒素の迅速,簡便な定量法について検討した.鉄鋼試料を6M塩酸に溶解して調製された試料溶液はキャリヤー流れに運ばれて,多孔質(PTFE)膜チューブからなる分離ユニットへ移動する過程で5.0M NaOHと150g/lの酒石酸の混合溶液と合流し,NH
4+はNH
3に変換される.分離ユニット中で酒石酸によりマスクされた鉄は溶液中に残るが,NH
3は膜をガス拡散し,膜チューブの内側のNaOCl溶液に移動する.このNH
3を含むNaOCl溶液の流れが更に下流で1-ナフトール溶液と合流することによって,インドフェノール系色素が生成し,その吸光度が732nmにて測定記録される.鉄鋼認証標準物質の分析結果は認証値とよく一致し,精度も良好であった.本FIAシステムは,分離,反応,検出が閉鎖系で連続的かつ自動的に行われるため,従来の水蒸気蒸留分離を必要とする方法と比較して,より迅速,簡便な定量が可能となっただけでなく,微量の窒素の定量に不可欠な汚染の機会の少ない方法としても特徴づけられる.
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