分析化学
Print ISSN : 0525-1931
48 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 舟橋 重信
    1999 年 48 巻 1 号 p. 3-20
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    金属イオンの溶液内における動的挙動に基づいて金属イオンの反応性を総覧することを試みた.金属イオンの反応性について総説するために,まず最も基本的な水溶液中における金属イオンの水和構造と水交換反応速度を,更に各種配位性溶媒中における溶媒和構造と溶媒交換反応について概観した.次に分析化学反応として最も関心のある錯形成反応の速度に基づいて金属イオンのキャラクタリゼーションを試みた.最後に,金属イオンの反応性に関連する速度論的分析法の実例を,又反応中間体の動態分析に関して二,三の具体例を示した.
  • 平田 幸夫
    1999 年 48 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    キャピラリー超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)の分離能力を十分に活用し,その応用範囲を拡大するために必要不可欠となる各種の周辺技術の開発を行った.試料導入法については,μlオーダーから数百μlにわたって試料体積に応じた幾つかの試料導入法を開発し,これによりppmからppbの濃度範囲の分析が可能となった.紫外吸収検出法については,圧力プログラム中においてもベースラインを安定に維持する方法を開発し,高感度での操作が可能となった.又,オンラインで混合溶媒を調製しながら同時に圧力プログラムを行うことができる方法を開発し,SFCの適用範囲を拡大した.更に,二次元SFCのためのインターフェースを開発し,これにより複雑な混合物の分析が容易となった.開発したこれらの技術について,原理,基礎条件及び応用例を示した.
  • 平山 直紀
    1999 年 48 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    2-ピリジルメチル基や1-ピラゾリルメチル基,2-ヒドロキシフェニルメチル基などの"芳香環ペンダントアーム(pendant arm)"を複数有する多座配位子の,陽イオン分離や陰イオン分離への分析化学的利用可能性について,各種の基礎的な検討を行った.これらの配位子は疎水性や電子的効果,構造的剛直性,立体的選択性などに関し,芳香環ペンダントアームに基因する特異性を有するため,各種金属イオンの抽出分離において,従来の抽出試薬とは異なる選択性を示した.例えば,N,N'-ビス(2-ヒドロキシフェニルメチル)-N,N'-ビス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン(H2bbpen)による二価遷移金属イオンのキレート抽出選択性はIrving-Williams則に従わず,配位子の空孔サイズに基づくイオンサイズ認識が行われていることが示唆された.又,N,N'-ビス(5-ニトロサリチリデン)エチレンジアミン(H2Nsalen)による三価ランタノイドイオンの抽出では,配位子の構造的剛直性に基づく高い相互分離能が実現された.更に,各種金属イオンと強く錯形成したビス(2-ピリジルメチル)アミノ基(bpa-基)をイオンクロマトグラフィーの固定相陰イオン交換基として用いると,イオン交換と配位子交換の2種類の相互作用の併存により,陰イオンのクロマトグラフ分離において,溶出順序の反転など従来とは異なる分離機能が実現された.
  • 石川 淳一, 坂本 英文, 和田 弘子, 小友 允
    1999 年 48 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    プロトン解離型発色団としてヒドラゾン部分を有するポリチアザアルカン誘導体による金属イオン錯形成平衡,溶媒抽出並びに液膜輸送について検討した.第一にジオキサン-水混合溶液系では,いずれの化合物も類似した酸解離平衡と高い銀イオン錯形成能を示し,銀イオン錯形成により吸収スペクトルが大きく短波長シフトした.銀イオン錯体の安定度は錯形成部であるポリチアザアルカン鎖の硫黄原子の数に依存することを認めた.第二に金属イオンの溶媒抽出を行ったところ,硫黄原子を4個持つ誘導体において高い銀イオン選択性を示し,銀イオン抽出により有機相中の吸収スペクトルが長波長シフトした.銀イオン錯体はポリチアザアルカン部分が非環状のもののほうがより低いpH領域から抽出される.第三に液膜輸送のキャリヤーとして使用したところ,ポリチアザアルカン鎖に硫黄原子を4個持つものがプロトン駆動型の選択的な銀イオン輸送能を示した.特に非環状のポリチアザアルカン鎖を持つヒドラゾン誘導体3は高い銀イオン輸送能を示した.
  • 藤森 英治, 稲垣 和三, 原口 紘〓
    1999 年 48 巻 1 号 p. 57-67
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    プラズマ分光法として現在広く利用されている誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)及び誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いた生体試料の多元素定量分析法について報告する.生体試料中に高濃度に含まれるマトリックスはICP-AES,ICP-MS,いずれの測定の際にも大きな問題となる.本研究では特にICP-MSによる生体試料の分析で問題となる有機物による非スペクトル干渉について基礎的な検討を行った.ICP-MSにおけるスペクトル干渉については,尿標準試料中のクロムの定量を例としてICP-MS/AES複合分析システムによる補正法について検討した.ICP-AES,ICP-MSを用いた生体試料の多元素定量分析例として頭髪標準試料の分析を行い,約40元素の定量値を得た.又,ICP-MS/AES複合分析システムを用いた尿標準試料の分析も行った.更に生体試料中超微量元素の測定例として,ヒト血清試料中の希土類元素について酸分解後キレート樹脂濃縮を用い,ICP-MSによって定量する方法を開発した.
  • 竹内 豊英
    1999 年 48 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ムコ多糖やデキストラン硫酸などのような陰イオン性多糖類で修飾したシリカ系陰イオン交換体を固定相として用いるイオンクロマトグラフィーにおける保持特性について検討した.基質の陰イオン交換容量は,修飾によって大幅に減少することが分かった.導入された修飾剤は,基質の陰イオン交換サイトと結合していないフリーの陰イオン性の基を有し,それによって陽イオン交換性が発現した.本固定相には基質の一部の陰イオン交換サイトが残存するため,陰陽両イオン交換サイトが共存する.その結果,条件を整えると陰陽両イオンの同時分離が可能であった.基質の孔径及び修飾剤の分子量が修飾効果に大きく影響し,溶離液の種類が保持特性に強く影響を与えた.
  • 斎藤 守正
    1999 年 48 巻 1 号 p. 77-86
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    グロー放電質量分析法においては,通常プラズマガスにArガスを用いるが,本研究では,Arガスの代わりにKrガスに容量で0.2%の水素を添加した混合ガスを用いたときの相対感度係数を,鉄鋼,耐熱合金,銅,アルミニウム,モリブデン,インジウム試料を用いて求め,マトリックスの影響,相対感度係数とイオン化電圧との関係を調べた.その結果,各試料間で得られた相対感度係数のばらつきはKrガス単独で得られるばらつきより大幅に小さくなり,マトリックスの影響も小さくなることを確かめた.更に放電セルを液体窒素で冷却する方法と併用することにより,各試料間で得られた相対感度係数の平均値と一次イオン化電圧との間に良い直線関係があることを見いだした.このことは標準試料を用いなくても定量の可能性があることを示唆していると考えられる.
  • 山本 幸市, 門野 睦子
    1999 年 48 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    フルオレセイン系染料(ローズベンガル:RB,フロキシンB:PhB)を用いて,水溶液反応を利用する吸光光度法により,イオン性界面活性剤を定量する方法について検討した.長鎖アルキル基を持つ第四級アンモニウム塩の陽イオン界面活性剤{CS+:CnH2n+1H+(CH3)3,n=12~18;CnH2n+1(CH3)2N+CH2C6H5,n=14,16}はpH3付近でRB又はPhBと反応し,それぞれ568又は558nmでの吸光度を増大させる.又,CS+は陰イオン界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム(LS-)と安定なイオン会合体を形成する.従って一定量のCS+の存在下ではLS-量の増加に伴い,RBでは568,PhBでは558nmでの吸光度は低下する.RBを用いる場合,CS+とLS-の定量濃度範囲はそれぞれ0~1×10-5,2×10-6~1×10-5Mであった.CS+の定量において,RBとCS+のイオン会合体を非イオン界面活性剤を用い水に可溶化させた.PhBを用いる場合,CS+とLS-の定量濃度範囲はそれぞれ0~1×10-5(但し,一部のCS+を除く),0~8×10-6Mであった.見掛けのモル吸光係数(ε/104dm3mol-1cm-1)はCS+:1.10~4.66(RB),1.12~2.87(PhB);LS-:4.84(RB),2.43(PhB)であった.本法は10-6Mオーダーのイオン性界面活性剤の簡便・迅速な定量法である.市販の洗剤に含まれる陰イオン界面活性剤を本法とJIS法(Epton法)により定量した結果,両者の値はほぼ一致した.
  • 我妻 和明
    1999 年 48 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    高周波グロー放電プラズマ励起源を使用した発光分光分析においてその検出限界を向上させるために,外部直流電源によるバイアス電圧制御法を検討した.直流電圧を加えることにより,高周波グロー放電における自己バイアス電圧より高い電圧降下をカソードシースに負荷することができスパッタリング量の増大に寄与する.更に,プラズマ本体における励起・電離衝突を活発なものとすることが,アルゴン発光線の解析より明らかとなった.検出限界をバックグラウンド強度の標準偏差の3倍と定義すると,アルゴン圧力800Pa(6Torr),高周波電力70W,印加バイアス電圧450Vの測定条件における鉄基合金中の銅の検出限界は,2.6×10-3m/m%(CuI327.40nm)であった.
  • 藤原 健児, 森 俊雄, 安宅 とも子, 安宅 稔和, 光亦 博志, 中原 武利
    1999 年 48 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    強誘電体,Y-1,の原材料は主成分であるSr,Ta及びBiが有機溶媒に溶解した溶液である.この中の不純物金属元素の定量には,湿式又は乾式分解法のような長時間の前処理が必要であるため,分析環境や分解容器に起因する不純物金属元素の試料への汚染が懸念されていた.そこで今回,Y-1溶液を酢酸ブチルにより目的濃度まで希釈して試料溶液とした後,直接黒鉛炉に注入し,検量線法によって迅速かつ簡便に定量することを目的とした.本検討ではY-1溶液中のAl,K,Cr,Fe,Ni,Zn及びPbの7元素について直接定量を試みた.しかしY-1溶液中のSr,Ta及びBi量は目的不純物金属量の約106倍以上存在しているため,GFAASにおけるマトリックス干渉が問題となった.そこでマトリックス修飾剤としてアスコルビン酸を適用したところ,干渉を抑制する効果があることを見いだした.Al,K,Cr,Fe,Ni,Zn及びPbの検出限界(3σ)は,それぞれ25,2,6,36,9,4及び9ng ml-1であった.本検討により高マトリックス溶液であるY-1溶液中不純物金属元素の迅速かつ簡便な定量法が確立できた.
  • 野村 俊明, 村上 敏雄
    1999 年 48 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    水平に置かれた金属電極上に水晶振動子を置き,その上に1滴の電解質(塩化カルシウム)溶液を滴下して,この溶液中に浸された白金線電極と金属電極とで,水晶振動子を振動させる.この無電極型水晶発振子の電解質溶液に,ドデシル硫酸イオン(SDS)を含む試料溶液の1滴を滴下して生じた沈殿が水晶振動子上に付着することによる振動数変化を測定してSDSの定量を行った.この際,滴の大きさを一定にするために油性ペンで円を描くこと,金属電極の大きさを滴(円)の大きさにすること,電解質及び試料溶液に緩衝液を加えること,などにより,感度は少し悪くなるが,50μM SDSの採取による5回の相対標準偏差が5.5%となり,再現性の向上が見られた.更に,微量定量を行うために,対イオンとして分子量の大きい陽イオン性界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムイオン(CTAC)を用いて,イオン会合体として付着させることにより,0.2~10μMのSDSが定量できた.このときの5μMのSDSを採取しての4回の相対標準偏差は6.8%であった.
  • 木下 英明, 美矢 豊文, 上平 憲
    1999 年 48 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    By using an unmodified carbon electrode, a sulfhydryl compound can be detected in a potential region more positive than 400 mV vs. SCE, where currents by uric acid, phenols and NADH are also detected. A membrane-covered cobalt phthalocyanine embedded carbon-paste electrode (CoPCP electrode) allows the detection of glutathion (GSH) as low as 2μM at 200 mV with practically no influence from coexisting substances in a biological sample, except for another sulfhydryl compound and ascorbic acid. The GSH contents in twelve samples of yeast extract measured by a CoPCP electrode and those by a photometric method using glyoxalase I are in good agreement with the correlation coefficient of 0.96. The current by GSH increased 3.5 times with the addition of 5, 5'-dithio bis-(2-nitro benzoic acid) (DTNB), since the membrane pearmiability of GSH and TNB formed from DTNB by GSH are quite different from each other. Similarly, the current by yeast extract increased 3.5 times with the addition of DTNB. This result confirms that the current by yeast extract was practically due to GSH. The current due to cysteine was reduced by 13% upon the addition of DTNB.
  • 「有害大気汚染物質の分析に関する共同実験」第1報
    今村 清, 江口 正治, 大平 修平, 田代 恭久, 多々野 秀二, 立花 茂雄, 田中 稔, 中原 忠, 平井 恭三, 藤方 豊, 藤瀬 ...
    1999 年 48 巻 1 号 p. 121-127
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Round-robin tests were conducted in order to investigate a simple and easy method for preparing a standard gas mixture of volatile organic hazardous air pollutants from their mixed solution by 16 members of the Association for Environmental Analysis in Osaka. Seven compounds (acrylonitrile, dichloromethane, chloroform, 1, 2-dichloroethane, benzene, trichloroethylene, and tetrachloroethylene) were accurately weighed into a vial one by one. An aliquot of this liquid mixture was transferred into a glass vessel (1 or 21) using a microsyringe, and then vaporized. The resulting gas mixtures (about 300 ppm each) were evaluated as a first standard gas by gas chromatography. The obtained results prove this method to be accurate and precise for the preparation of a standard gas mixture.
  • 下山 昌彦, 太田 一徳
    1999 年 48 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 1999/01/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
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