強誘電体,Y-1,の原材料は主成分であるSr,Ta及びBiが有機溶媒に溶解した溶液である.この中の不純物金属元素の定量には,湿式又は乾式分解法のような長時間の前処理が必要であるため,分析環境や分解容器に起因する不純物金属元素の試料への汚染が懸念されていた.そこで今回,Y-1溶液を酢酸ブチルにより目的濃度まで希釈して試料溶液とした後,直接黒鉛炉に注入し,検量線法によって迅速かつ簡便に定量することを目的とした.本検討ではY-1溶液中のAl,K,Cr,Fe,Ni,Zn及びPbの7元素について直接定量を試みた.しかしY-1溶液中のSr,Ta及びBi量は目的不純物金属量の約10
6倍以上存在しているため,GFAASにおけるマトリックス干渉が問題となった.そこでマトリックス修飾剤としてアスコルビン酸を適用したところ,干渉を抑制する効果があることを見いだした.Al,K,Cr,Fe,Ni,Zn及びPbの検出限界(3σ)は,それぞれ25,2,6,36,9,4及び9ng ml
-1であった.本検討により高マトリックス溶液であるY-1溶液中不純物金属元素の迅速かつ簡便な定量法が確立できた.
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