銅あるいは銅化合物と接触したオレフィン系樹脂材料の耐熱劣化性能を向上させる目的で使用されている, アミノトリアゾール系銅害防止剤3-(
N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール (CDA-1: CDAと略記) 及びヒンダードフェノール系酸化防止剤テトラキス[メチレン3-(3,5-ジ-
tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン (I-rganox1010: IRGと略記) を同時に定量することを検討した. 前処理として, パイレックスガラス管 (外径5mm, 長さ35mm) 内にメタノール20μlと試料0.2mgを封入し, 220℃の均一な温度雰囲気下で1.5時間加熱を行った. その際, メタノールとの加熱分解反応によってCDA及びIRGは, 各々サリチル酸メチル及びメチル3-(3,5-ジ-
tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが生成することが分かったので, この化合物のGCによるピーク強度に基づいて定量した. 試料には, CDA及びIRGの配合量を各々0.2~1.0wt%まで変化させて作製した3種類のポリプロピレン (PP) 試料を用いた. その結果, 相対標準偏差 (RSD) が3.1~5.9%と精度良く測定を行うことができた. また, PPの熱劣化過程をCDA及びIRGの残量に基づいて評価することを試みた結果, 異なる残量プロフィルを示すことが分かった. このように本法により, 従来分析することが非常に困難であった銅害防止剤CDAに加えて, 酸化防止剤IRGも簡便に少量の試料量で同時に定量できることが分かった.
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