分析化学
Print ISSN : 0525-1931
51 巻, 7 号
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記念講演論文
  • 木幡 勝則
    2002 年 51 巻 7 号 p. 479-485
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    緑茶研究に分析化学がどのようにかかわっているかを, 著者らの研究の一部である緑茶の主要成分と品質との関係及び不都合成分判別法の開発を中心に記載した. 緑茶の品質評価は, 依然として官能審査が主体であるが, HPLC法やキャピラリー電気泳動法といった機器を使用した品質評価法が一段と進展している. 中でも近赤外分光法は実用化され, 現場での普及が進んでいる. 不都合成分のうち, 白色粉状物質 (カフェイン) の同定には顕微FT-IR法が, 添加茶と発色茶の判別にはイオンメーター法が, またフェオホルビド含有量に基づく健全性の評価には独自に開発したHPLC法がそれぞれ用いられるなど, 目的に応じた分析法が開発されている.
総合論文
  • 島田 和武, 東 達也
    2002 年 51 巻 7 号 p. 487-493
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    生体内のビタミンD (D) 化合物の分析は, 臨床, 栄養診断あるいは新薬の開発上重要であり, その体液中レベルや熱安定性などを考慮すると, 方法論として高速液体クロマトグラフィー/質量分析法が有望視される. しかし, 本法はイオン化法がソフトであるため期待したほどの構造情報が得られないことや, D化合物のイオン化効率が低く実用的な感度が得られないなどの問題を抱えている. そこで著者らは, D化合物のs-シス-ジエンと選択的に反応するCookson型試薬に着目し, これを用いる誘導体化によりこれらの問題の解決を試みた. すなわち, 構造解析及び高感度検出の両面からその有用性を検討し, 本誘導体化が代謝部位の決定に有益なプロダクトイオンを与えること及びD化合物のイオン化効率を数十倍増加させることを見いだした. これらの知見を基にDの新規代謝経路の解明及び超微量活性型D製剤の血中濃度測定に成功した.
  • 壹岐 伸彦
    2002 年 51 巻 7 号 p. 495-505
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    速度論的識別 (KD) モード分離分析法は, 吸光試薬により金属イオンを誘導体化後, 生じた錯体や過剰試薬を相互分離し, 検出する方法である. これは金属錯体の速度論的安定性の識別に由来する高選択性と, バックグラウンド吸収がないことによる高感度性を備えている. 本研究はこれらのKDモードの利点と, 新しい分離法であるキャピラリー電気泳動 (CE) とに着目し, 超微量金属錯体のKDモード-CEシステムを構築すること, 及びその設計指針を得ることを目的としている. アゾ色素をモデル試薬として用い, fmolレベルの金属錯体のシンプルなKD-CE分離システムのほかに, イオン会合CEや水素結合を用いるCEシステムを創成した. その過程で, 中心金属イオンの個性を第二配位圏で識別するための試薬・システム設計が肝要であることを知った. 一方, KDの検出選択性を決める金属錯体の加溶媒分解反応速度解析のための反応器を開発した.
技術論文
  • 佐藤 誠, 橋本 寛喜, 石川 智幸, 松田 淳, 芳村 一, 橋本 晶夫, 四ツ柳 隆夫
    2002 年 51 巻 7 号 p. 507-514
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    現在, 米国では2003年1月から注射剤中のアルミニウム濃度の規制を実施できるように準備が進められている. 本研究では, 著者らが臨床診断用に開発したアルミニウムの蛍光検出HPLC法について, これを注射剤の品質管理方法として応用できるかについて検討を行った. 本測定方法でキレート試薬として用いる8-キノリノールは, アルミニウムイオン以外の多くの金属イオンとも錯体を形成するため, 多種類の元素が混在する試料に適用した場合には十分な測定感度 (μg/lレベル) を達成できない. そこで, 本測定方法では速度論的識別モードによるクロマトグラフィーを適用した. このモードで蛍光検出すれば試料中のアルミニウムだけをねらって測定することが可能である. 本法では2μg/lレベルの注射剤中のアルミニウムが測定可能である. また, 注射剤への添加回収試験の結果も良好であり, 測定値はICP-MSの測定値とよく一致した.
総合論文
報文
  • 橋本 哲夫, 柳川 裕次, 山口 貴弘
    2002 年 51 巻 7 号 p. 527-532
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    天然石英における放射線誘起現象である熱ルミネセンス特性は, 異なった起源の石英試料間はもとより, 石英単結晶薄片面内でも部位により著しく異なっている. この原因追究を目的として, 石英薄片を用いて, 顕微赤外線吸収スペクトル測定によりAl-OHやLi関連Al-OH基の分布を二次元マッピング測定し, BTLCIと比較した. その結果, Al-OH濃度はBTLと明らかな逆相関を示していた. この逆相関は, -OH基の放射線分解で生成する常温で易動性の水素ラジカル (H0) が, ルミネセンスやカラーセンターの主原因であるAlホールセンターと結合し, ルミネセンス強度を減少させるためと解釈した. 液体窒素温度と室温での放射線照射で見いだされたAl-OH濃度の差異も, 電荷補償体としてのH0やアルカリイオンの易動性の差異に起因することが明らかとなった.
  • 上原 伸夫, 富樫 秀雄, 清水 得夫
    2002 年 51 巻 7 号 p. 533-538
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    モノアザクラウン環にカルボジチオ酸基を導入した1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザ-シクロオクタデカン-N-カルボジチオ酸アンモニウム (A18CC) 及び1,4,7,10-テトラオキサ-13-アザ-シクロペンタデカン-N-カルボジチオ酸アンモニウム (A15CC) を合成し, その重金属錯体のキャピラリーゾーン電気泳動挙動について検討した. 検討したA18CC及びA15CC錯体のうち, エレクトロフェログラムに明りょうなピークを与えたのはCoII, PdII-A18CC錯体だけであった. CoII, PdII-A18CC錯体の電気泳動移動度は泳動液中のアルカリ金属イオン濃度の増加に伴い増大した. 特記すべきことはLi+イオンとCoII, PdII-A18CC錯体との会合反応が認められたことである. 一方, 重金属-A15CC錯体はいずれのアルカリ金属イオンを含む泳動液を用いても電気浸透流マーカー (メシチルオキシド) のピークからは分離されなかった. 非線形最小二乗法によりCoII, PdII-A18CC錯体の電気泳動移動度に及ぼす泳動液中のアルカリ金属イオン濃度の影響を解析した.
  • 高久 雄一, 工藤 友華, 木村 盛児, 林 匠馬, 太田 郁子, 長谷川 英尚, 植田 真司
    2002 年 51 巻 7 号 p. 539-544
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    イミノ二酢酸キレート樹脂ディスクを用いた環境水中の希土類元素の予備濃縮法の開発を行い, ICP-MSを用いて, 環境水試料中の希土類元素の定量を試みた. 試料をpH3に調整することにより, 本樹脂ディスクを用いて希土類元素及びTh, Uの濃縮と海水試料の主成分であるアルカリ, アルカリ土類元素の除去が迅速に行える. アルカリ土類金属全般を除去することができ, 試料中のBaもCaと同時に分離されることから, ICP-MSの測定の際にBaOの妨害の影響を受けるユーロピウムについても定量が可能である. 本法を用い, 四つの環境標準試料 {河川水標準物質, JAC 0031 (日本分析化学会), SLRS-3 (NRC Canada), 海水標準試料CASS-3, NASS-4 (NRC Canada)} 及び, 青森県内の五つの環境試料 (海水1, 汽水3, 淡水1) 中の希土類元素を測定した.
  • 渡辺 邦洋, 飯束 友恵, 板垣 昌幸
    2002 年 51 巻 7 号 p. 545-551
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    蛍光定量法においてその検出限界に大きな影響を及ぼす空試験蛍光を, 過剰試薬の除去によって低減させ, 検出限界を向上させる方法について検討した. 蛍光試薬として2,2'-ジヒドロキシアゾベンゼン (DHAB) を使用し, アルミニウムの定量を試みた. 過剰の反応試薬は3mlの溶媒により95.8%除去が可能であった. これは錯体を抽出する方法の約3分の1の有機溶媒の使用量である. これによる空試験蛍光減少の結果, 検出限界は0.03ppbとなった. また, 試薬の水への難溶性を利用し, pH8で錯体生成後, pHを3にさせることにより析出したDHABを濾紙相分離器により除去した. これは有機溶媒を全く使用しないにもかかわらず73.9%の試薬除去が可能であり, その検出限界は0.04ppbとなった. 本法を水道水試料に適用したところ特別な前処理をしないにもかかわらず, ICP-AESの結果と良い一致を示した.
  • 渡辺 邦洋, 渡辺 卓, 板垣 昌幸
    2002 年 51 巻 7 号 p. 553-559
    発行日: 2002/07/05
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    過ヨウ素酸カリウムによるアゾ化合物退色反応はMnIIによって接触的に促進され, MnIIの接触分析に利用される. この場合, 指示反応試薬であるアゾ化合物は金属キレート形成を必要とせず, アゾ基の電子密度を増大させる置換基を有する化合物ほど反応性に富むことが分かった. そこで, この条件を最も満たす1-アミノ-8-ヒドロキシ-7-(o-ヒドロキシ-p-メチルフェニルアゾ)-3,6-ナフタレンジスルホン酸 (p-CH3) と過ヨウ素酸カリウムを用いたMnIIのFIAを検討した. 一定時間後の吸光度減少を利用し作成した検量線は0.3~3.0ppbの範囲で良好な直線関係が得られ, 検出限界 (S/N=5) は0.08ppbであった. 1時間当たりの試料処理数は15サンプルであった. また, MgIIがMnII2ppbに対して100倍量を超えると正の妨害を示した. そこで, トリエタノールアミンでMnIIをマスキングし本法に影響を与えるMgIIによる吸光度変化を求め, 全体の吸光度変化から差し引くことでMnIIの吸光度変化を計算した. 本法を水道水中のマンガンの定量へ適用した結果ICP-AESによって得られた結果と比較的良い一致を示した.
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