分析化学
Print ISSN : 0525-1931
52 巻, 1 号
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総合論文
  • 塚越 一彦
    原稿種別: 総合論文
    2003 年 52 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    キャピラリー電気泳動と化学発光検出を組み合わせた,キャピラリー電気泳動-化学発光検出装置を開発した.本装置の開発では,化学発光検出セルの設計が重要な課題であり,フロー型及びバッチ型の種々の化学発光検出セルを作製した.これまでにルミノール,過シュウ酸エステル,ルテニウム錯体及び1,10-フェナントロリンの化学発光系を利用し,またキャピラリーゾーン電気泳動以外にもミセル動電クロマトグラフィー,キャピラリー等電点電気泳動及びキャピラリーゲル電気泳動の分離モードを導入した.これらの研究を通して,アミノ酸,ペプチド,タンパク質,ヌクレオシド,核酸,糖質,金属イオン,金属錯体,アルカロイド,蛍光物質,蛍光物質包括リポソーム,環境ホルモンなどが本装置を用いて分析可能になった.本装置は,高い分離能と優れた検出感度を示した.例えば,ルミノールの検出限界は,1.5×10-11 M(S/N=3)であり,他グループの報告結果と比較し,最も低い検出下限であった.また,本キャピラリー電気泳動-化学発光検出装置をマイクロチップ技術及び免疫分析へ応用した.更に化学発光検出に見られる特有のピーク形状についての考察も行った.
報文
  • 長谷川 敦子
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)により,プラスチック添加剤であるフタル酸ジイソノニル(DINP),フタル酸ジイソデシル(DIDP),フタル酸ジイソトリデシル(DITP)を大気から検出する手法を開発した.イオン化法として大気圧化学イオン化法(positive-APCI)を用い,生成した [M+H]イオンをコリジョンセルで窒素ガスと衝突させてフラグメントイオンを生成させた.大気試料は毎分12~14 lで24時間石英繊維ろ紙に採取し,アセトニトリルで抽出した.フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)-d4(DEHP-d4)を内標準物質として添加した.添加回収率は94~102%,相対標準偏差は4.3~8.7%,検出下限は0.05~0.8 ng/m3であった.本法を用いて環境大気や屋内空気を分析したところ,クリーンルーム内の空気も含めてDINPが1.2~9.6,DIDPが0.1~1.4 ng/m3検出された.DINPなどは難揮発性である上,多数の異性体混合物で,ガスクロマトグラフで精度良い分析を行うことは困難であったが,本法によって空気中のDINPなどを高感度に定量することができた.
  • 酒井 忠雄, 北村 友秀
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    塩化セチルピリジニウム(CPC)はエオシン(EOS)と1:2会合体を形成するが,検量線は原点を通らず,検量線の直線範囲は低濃度と高濃度領域で異なり,定量範囲が限定される.しかし,EOSと付加錯体を形成するキニーネ(QN)を共存させたイオン会合系に微量のCPCが加えられるとEOS-QN-CPC(1:1:1)三元イオン会合体が形成される.このイオン会合系においてはQN共存による相乗抽出効果が発現し,CPCの抽出性が高まるとともに検量線の直線範囲は拡大し,CPCに対しては2.5×10-7 M~1.5×10-6 Mの広い範囲で良好な直線関係が得られた.従来法の1:2会合体による検量線では1.0×10-6 M程度が定量限界であったが,本法では染料固有の大きなモル吸光係数は維持され,10-7 MオーダーのCPCの分析が可能となった.しかも酸性領域で形成される1:1会合体形成による定量法と比べ選択性もあり,実用分析として有用であることが明らかとなった.
  • 内原 博, 坂東 篤, 吉田 智至, 池田 昌彦, 中原 武利
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    不活性ガス融解法の微量酸素分析において,試料投入口と金属フラックスのSn投入口(デュアル投入機構)を有した装置で,金やすり研磨や化学研磨及び電解研磨などの表面汚染物除去後に生じる表面酸化膜を,不活性ガス中で1000℃ に加熱した黒鉛るつぼ内で予備加熱を行い,試料表面の酸化膜を還元除去後,あらかじめ脱ガスした金属フラックスのSnを投入後,直ちに2300℃ に昇温して試料とともに融解させ鋼中の内部酸素を一酸化炭素に還元して非分散赤外線検出器で測定した.本法では,Mn等によるゲッター作用を抑制でき,3分間で内部酸素の分析が可能となった.また,赤外検出器のセル長を5倍にし高感度化を図り,吸光シグナル測定値の標準偏差を従来の1/5に低減できた.更に,大容量の黒鉛るつぼを用いることで,試料量が2 gで分析可能となった.本装置でJSS GS-6b(全酸素濃度: 3.4 μg g-1)を分析した結果は,表面酸化膜を除いた内部酸素は2.9 μg g-1となり,標準偏差は0.20 μg g-1であった.
  • 工藤 潤也, 高野 淑識, 金子 竹男, 小林 憲正
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    土壌試料マトリックス中の適切なアミノ酸の抽出により,その定量と光学異性比(D/L比)の評価について検討を行った.まず,5 M HFと0.1 M HClの混合溶液によるHF分解法により土壌中から有機物を取り出し,次に6 M HClで短時間の酸加水分解を行い,イオン交換クロマトグラフ法によりアミノ酸濃度の定量を行った.また,逆相高速液体クロマトグラフ法により,D-体及びL-体のエナンチオマーを光学分割し,D/L比を求めた.このD/L比は,HF分解の中でラセミ化を起こしているので,その補正を行い,元来のアミノ酸D/L比を算出した.近年,新規の地球生命圏フロンティアが見いだされ,バイオマーカー(生物指標)を評価する際に,分析化学が果たす役割は非常に重要な意味を持つようになった.とりわけアミノ酸を用いた化学評価を行う場合,本検証は試料の前処理等の最適な分析方法を検討した点で意味を持つと考えられる.
技術論文
  • 渡邊 朋美, 城之園 恵子, 宗 伸明, 今任 稔彦, 今住 則之, 中西 正幸, 八木 純一
    原稿種別: 技術論文
    2003 年 52 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    非水溶媒を用いた酸-塩基緩衝液を利用するフローインジェクション/吸光光度分析法による潤滑油の全塩基価及び全酸価測定法を提案した.本法は,潤滑油中の酸性あるいは塩基性添加剤と酸-塩基緩衝液の中和反応によって引き起こされる指示薬の吸光度変化を測定するものである.全塩基価の測定のときは,潤滑油試料を非水溶媒のキャリヤーに注入し,HClO4の流れと混合させる.このとき試料中の塩基性添加剤はHClO4によって中和される.中和反応後,過剰なHClO4の流れは続いて指示薬m-クレゾールパープル(m-CP)を含むトリフロロ酢酸テトラブチルアンモニウム塩(TFA•TBA)溶液の流れと合流し,吸光光度検出器に導入される.三つの流れが合流することにより,TFA/TFA•TBA緩衝液の組成が変化する.この組成変化は酸型m-CP(536 nm)の吸光度変化を引き起こす.この吸光度変化を吸光光度検出器で測定し,塩基試料に対するピークを得た.Caスルホネートなど数種の塩基試料について,濃度とピーク高さの間に同一の検量線が得られた.本法により,塩基性添加剤と酸性添加剤の両方を含む潤滑油試料の全塩基価を共存する酸性添加剤の影響を受けることなく測定することができた.本FIA法で測定した全塩基価は,従来の中和滴定法による値と良い相関性を示した.また,全酸価測定のためのフロー系をキャリヤー,水酸化テトラブチルアンモニウム溶液及びα-ナフトールベンゼイン指示薬を含む1,1,3,3-テトラメチルグアニジン・塩酸塩溶液の3流路から構成した.このフロー系を用いて,ジアルキルジチオリン酸亜鉛やオレイン酸などの数種の酸性添加剤に対して同一の検量線が得られ,本法による測定値は,従来法による値とよく相関した.本法では,分析速度20試料/hで潤滑油の全塩基価及び全酸価を迅速に測定することが可能で,溶媒消費量も1試料当たり4.5 ml以下であった.
  • 鈴木 俊宏, 日置 昭治, 倉橋 正保
    原稿種別: 技術論文
    2003 年 52 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    シアン化物イオン標準液を約1000 mg kg-1として調製し,保存中の濃度変化に対する,溶液の水酸化カリウム濃度(0.2~1.5 mol dm-3),保存温度(8℃ 及び25℃)及び保存容器の材質(高密度ポリエチレン及びPFA)の影響を検討した.シアン化物イオンは,高純度ニッケルから調製したニッケル標準滴定液を基準として,ムレキシド(MX)を指示薬とする錯滴定法により定量した.したがって,保存している溶液を調製直後の標準液と比較する比色法等と比べると,本研究では確固とした基準に基づいて保存安定性を調べることができた.保存中のシアン化物イオン濃度の変化量は温度に大きく依存し,8℃ において-1.7~-2.8%/年であったのに対して,25℃ では-19~-26%/年の濃度変化がみられた.いずれの条件でも同一温度では水酸化カリウム濃度が高いほど濃度変化が抑えられた.また,保存容器の材質による相違はみられなかった.同時に検討したシアン化カリウムの保存安定性については,プラスチック製の容器をアルミニウム製の袋に入れて密閉し,25℃ で保存した場合,少なくとも0.10%/年劣化する可能性が示された.
ノート
  • 渡辺 邦洋, 岡田 卓也, 板垣 昌幸
    原稿種別: ノート
    2003 年 52 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    The flow injection fluorometry of an ultra-trace amount of magnesium ion was investigated by an on-line concentration method using a PTFE tube. In a weak alkaline solution, magnesium ions were adsorbed and concentrated on the inner surface of a PTFE tube which had been treated with a 2 M NaOH solution for 3 hours at 70°C. Then, magnesium adsorbed on PTFE was eluted with 0.1 M HCl quantitatively, and then mixed with a N,N'-bis-salicylidene-2,3-diaminobenzofuran(SABF) dioxane solution and dimethylamine buffer. Magnesium ions reacted with SABF and formed a Mg-SABF complex in the flow tube, and was determined by on-line fluorometry. Although the presence of calcium ions interfered with the concentration of magnesium, it was removed by the addition of o,o'-bis(2-aminoethyl)ethyleneglycol-N,N,N',N'-tetraacetic acid(GEDTA) as a masking agent. The optimum conditions were as follows: inner diameter of PTFE tube, 0.5 mm; length of PTFE tube, 3 m; concentration pH, 10.3; sample flow rate, 2 ml/min; complexing pH, 10.4; concentration time, 3 min; carrier, 50% dioxane; measurement wavelength: Ex=475 nm, Em=545 nm. The detection limit was 82 ppt. The result for the determination of magnesium was 3.1 ppb in distilled water, which shows good agreement with the value obtained by ICP-AES.
テクニカルレター
  • 岡本 研作, 安原 昭夫, 中野 武, 劔持 堅志, 松村 徹, 八木 孝夫, 柿田 和俊, 小野 昭紘, 坂田 衞
    原稿種別: テクニカルレター
    2003 年 52 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    (社)日本分析化学会は,PCB分析条件検討グループを組織し,河川底質中のPCB同族体含有率の測定における試料の前処理条件のうち,アルカリ分解の温度条件及び抽出溶媒の種類と,アルカリ分解と抽出の順序についての検討を行った.これは2000年に河川底質中のダイオキシン類及びPCB同族体分析用底質標準物質の調製方法の研究を実施したとき,試料前処理の段階における低塩素数同族体の脱塩素化現象について議論があり,その確認と対策のための実験が課題として残されたためである.実験は環境省公布の分析マニュアルにおける前処理法の「試料の加熱アルカリ分解→ヘキサン抽出」法(A法)に対する,「アセトン抽出→抽出液の室温アルカリ分解→ヘキサン抽出」法(B法)と「トルエン抽出→抽出液の室温アルカリ分解→ヘキサン抽出」法(C法)の比較を内容としたもので,参加試験機関7か所による共同実験として実施した.その結果,PCBの定量値は3法ともほとんど差はなく,C法において1~3塩素置換体に2~1.2倍高い値が得られた.なお,この実験ではPCBからの塩素の脱離率の確認は行っていない.
  • 北見 秀明, 渡辺 哲男, 北原 滝男, 石原 良美, 高野 二郎
    原稿種別: テクニカルレター
    2003 年 52 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    A simple and low cost mesurement method for determination of bisphenol A (BPA) in drinking water and river water by high-performance liquid chromatography (HPLC) with an ultraviolet detecter (UV) has been studied. As a result, good linearity of the calibration curve was obtained in the concentration range from 0.01 mg/l to 1 mg/l. The detection limit, based on S/N=3, was 0.0065 μg/ml for BPA. Acetone was recommended for the elution of BPA from the solid phases. The recoveries for BPA from river water spiked at a mesurement concentration of 0.1 mg/l was 55.3∼78.7%, and the relative standard deviations was 5.2∼7.1% by an activated carbon column method. This measurement method could be successfully applied to the determination of BPA in drinking water and river water.
  • 今村 清, 江口 正治, 大平 修平, 白國 忠志, 竹中 規訓, 田代 恭久, 立花 茂雄, 平井 恭三, 藤方 豊, 矢坂 裕太
    原稿種別: テクニカルレター
    2003 年 52 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/05/08
    ジャーナル フリー
    2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いるHPLCによるアルデヒド類の分析法の精度について共同実験を行った.対象としたアルデヒド成分は,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,プロピオンアルデヒド,n-ブチルアルデヒド及びベンズアルデヒドの5種類である.試料はDNPHカートリッジにホルムアルデヒドを捕集したもの,シリカゲルカートリッジにアルデヒド類DNPH誘導体を添加したもの及びアルデヒド類DNPH誘導体アセトニトリル溶液を使用した.カートリッジ試料は有害大気汚染物質測定法マニュアル(1997年2月)に従って溶出を行い,分析した.カートリッジ試料と溶液試料との分析精度にはあまり差は認められず,どちらも良好であった.
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