分析化学
Print ISSN : 0525-1931
52 巻, 3 号
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総合論文
  • 飯島 隆広, 水野 元博, 須原 正彦, 遠藤 一央
    原稿種別: 総合論文
    2003 年 52 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/08/04
    ジャーナル フリー
    固体NMR法は,物質中の分子やイオンの静的・動的局所構造や常磁性イオンの電子スピンのダイナミクスを調べるのに有効な手法である.本研究では,反磁性化合物と常磁性化合物及び変調構造を有する化合物のNMR解析を可能にし,一般式 [M(H2O)6][AB6](M=Mg2+,Mn2+,Fe2+,Co2+,Ni2+; AB6=PtCl6,SiF6)で表される一連の化合物について,固体NMR法によりH2O分子や [M(H2O)6]2+イオンの静的・動的局所構造及び常磁性M2+イオンの電子スピンのダイナミクスを調べた.分子運動と構造相転移との相関や[M(H2O)6]2+イオンの構造と運動性との相関を明らかにした.[M(H2O)6]2+イオンのdynamic disorder構造や変調構造も解析された.
報文
  • 加藤 吉紀, 前川 晃範, 野村 俊明
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/08/04
    ジャーナル フリー
    銅(II)に対して一定過剰量のキレート試薬を加え,未反応のキレート試薬を界面活性剤によってイオン会合体とし,電極分離型水晶発振子の水晶振動子上に付着させることで,振動数変化から間接的に水溶液中の微量銅(II)を定量する方法を開発した.銅(II)と水溶性キレートを形成する2-(5-ニトロ-2-ピリジルアゾ)-5-[N-プロピル-N-(3-スルホプロピル)アミノ]-フェノール(Nitro-PAPS)を用いて検討した結果,イオン会合体の付着は対イオンの濃度,流量,混合管の長さなどに影響されることが分かった.また,熟成した沈殿は水晶振動子上に付着しにくいことに着目し,難溶性キレートを生成するエリオクロムブラックT(BT)を用いて同様の検討を行った結果,銅(II)とBTの反応時間を十分に与えれば間接定量が可能であった.いずれの方法においても,μM濃度の銅(II)を再現性よく定量することができた.
  • 金 谷, 艾尓肯 依不拉音, 板垣 昌幸, 渡辺 邦洋
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 3 号 p. 171-177
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/08/04
    ジャーナル フリー
    フェノール類の定量には4-アミノアンチピリンとの反応を利用する吸光光度法がある.これは簡便な方法であるが,環境試料水の分析に利用するためには感度が不足している.そこで感度増加を目的に固相抽出法に相当するテフロン(PTFE)フィルターチューブ濃縮法を検討した.方法はFIAによった.あらかじめフェノール類と反応させ,生成したアンチピリン色素を含む試料溶液を流量1.6 ml min-1でテフロンフィルターチューブ(内径1 mm,長さ4.5 cm)に15分間流し,捕集した.チューブに濃縮後エタノールで溶離させ,測定波長510 nmで吸光度を測定した.反応pHは濃縮効率の関係から約7.3が最適であった.アンチピリン色素生成には試料溶液100 mlに対し,0.04% 4-アミノアンチピリンが0.35~0.75 mlで最大になった.本法による定量範囲は0.5~40 μg l-1であり,検出限界は0.04 μg l-1であった.感度はAmberlite XAD樹脂を濃縮材として利用する従来法に比較して18倍増加した.0.5 μg l-1での相対標準偏差は2.1% であった.
  • 野島 雅, 神田 雄介, 戸井 雅之, 冨安 文武乃進, 坂本 哲夫, 尾張 真則, 二瓶 好正
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/08/04
    ジャーナル フリー
    近年の電子デバイスの微小化に伴い,ナノレベルでの分析・評価技術の確立が急務となっている.そこで,ナノ局所領域の元素分布分析の実現を目的とし,高空間分解能かつ高効率な二次イオン検出を実現するナノビームSIMS装置の試作を行った.本装置の一次イオンビームの評価を行った結果,面方向分解能の一つの指標となるエッジ分解能は標準偏差1σで22 nm程度と見積もられた.更に二次イオンマッピングにおけるユースフルイールドを議論した結果,数十nmの深さ方向を持つ試料に対して有効な分析手法であることが示唆された.更にDRAMのAlの二次イオンマッピングを行い,高空間分解能かつ高効率な二次イオン検出による27Alの元素マッピングを可能とした.
技術論文
  • 倉田 正治, 相澤 直之, 平野 治夫, 永井 正敏
    原稿種別: 技術論文
    2003 年 52 巻 3 号 p. 187-194
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/08/04
    ジャーナル フリー
    クマリンを含む油類の識別のための簡便な定量分析法として三層分離抽出/蛍光分光光度法を開発した.1 ppmのクマリンを添加した軽油中からのクマリンの抽出操作を1本のねじ口試験管内で行い,そのまま分析試料に用いた.油試料0.25 mlとドデカン1.5 ml,混合アルコール溶液2 ml及びアルカリ性水溶液1.25 mlとを3分間振り混ぜた後,三層に分離した最下層のアルカリ性水溶液層に5分間紫外光を照射して得たo-クマル酸(trans-o-オキシケイ皮酸)陰イオンの定量分析を行った.その際,油中の蛍光物質もアルカリ性水溶液層に抽出され,それらはo-クマル酸陰イオンの定量を妨害した.これを抑制するための消光剤として,硝酸塩,塩化物,臭化物の添加が有効であった.本法による励起波長360 nm/蛍光波長500 nmでの蛍光強度の検量線は,混合軽油中のA重油混入率が5~100% の範囲で直線性(相関係数の自乗r2=0.996~0.999)が得られた.
  • 高 秀峰, 李 永生, 軽部 征夫
    原稿種別: 技術論文
    2003 年 52 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/08/04
    ジャーナル フリー
    本論文は,新規酵素胆汁酸硫酸スルフェターゼ(BSS)とWST-5を用いて,迅速,簡便,高感度な硫酸抱合胆汁酸(SBA)のFIA/分光光度分析法を開発した.測定原理は次のとおりである.SBAはBSSにより脱硫酸化し,3β-ヒドロキシステロイドが生成する.この3β-ヒドロキシステロイドが3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3β-Hydroxysteroid dehydrogenase: 3β-HSD)の触媒作用下でNADと反応し,NADHを生成する.次にジアホラーゼによりWST-5がNADHと反応して水溶性のホルマザンブルーを生成する.この生成物は,550 nmに吸収極大があるので,その吸光度によってSBAを定量した.本法は分析速度が15検体/h,相対標準偏差は1~5.4% であり,測定の範囲は1~75 μMであった.
ノート
  • 善木 道雄, 伊藤 裕昭, 姫野 新典, 横山 崇
    原稿種別: ノート
    2003 年 52 巻 3 号 p. 201-203
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/08/04
    ジャーナル フリー
    A simple solid-phase colorimetry using polyurethane foam (PUF) for the determination of iron(II) has been proposed. The 1,10-phenanthroline (phen) method is selective and sensitive, and is widely used for the determination of Fe(II) in aqueous solution. It is worthwhile to develop this method, which is suitable for visual colorimetry. An iron(II)-phen complex and its ion-associates, such as Br, SCN and ClO4, were not extracted onto PUF at all. In the presence of sodium dodecyl sulfate (SDS), we found iron(II)-phen complex was adsorbed onto PUF and the iron concentration was visually measured from the resulting color onto PUF. The recommended procedure is as follows. Five ml of a 1 M acetate buffer solution (pH 4.7), 1 ml of 10 w/v% ascorbic acid, 3 ml of 0.1 w/v% phen, and 4 ml of 5×10−3 M SDS were added to a 200 ml sample solution containing less than 200 ppb of Fe(II). A chip of PUF (2×2×2 cm) was put into the solution and stirred with a magnetic stirrer for 20 minutes. The chip taken up from the solution was rinsed with distilled water and squeezed to remove any water. The color intensity of the PUF was then visually compared by a standard series method.
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