分析化学
Print ISSN : 0525-1931
53 巻, 9 号
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報文
  • 黄 松南, 布施 泰朗, 山田 悦
    2004 年 53 巻 9 号 p. 875-881
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    大気及び雨水中過酸化水素と有機過酸化物の定量法を開発し,これらの環境での動態及び森林生態系への影響を検討した.大気中過酸化水素は0.18~6.96 ppbvの濃度範囲で,夏に高く,冬に低いという季節変化を示した.大気中有機過酸化物は,主にmethylhydroperoxide(MHP)が6~9月にのみ検出され,濃度範囲0.07~0.29 ppbvであった.大気中有機過酸化物濃度は,過酸化水素と同様に温度と正の相関があり,気温25℃ 付近で増加した.一方,大気中有機過酸化物濃度は過酸化水素とは異なり湿度と正の相関を示し,オゾン濃度とも正の相関を示したが,日射量,紫外線量とは明確な関係は認められなかった.雨水中過酸化水素濃度は6~8月に50 μMを超える場合もあった.雨水中有機過酸化物はhydroxymethylhydroperoxideとMHPが夏季の6~8月にのみ検出され,その濃度は2 μM以下の低い値であった.
  • 山田 隆史, 墨田 迪彰, 中西 良明, 本浄 高治
    2004 年 53 巻 9 号 p. 883-889
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    本研究では,河川における重金属汚染状態を化学的視点と生物学的視点から解明することを試みた.石川県内にある旧鉱山下の河川において,堆積物を採取し,全分解と連続抽出を行い,銅の全含有量と堆積物と様々な形で結合している各成分中の銅含有量を測定した.また,礫石上の付着物中に珪藻群集を構成している種の同定を行った.その結果,重金属の全含有量に対する交換性成分(イオン交換できる化学種や炭酸塩等)の割合と,重金属に耐性があり重金属汚染の指標種となる珪藻種Achnanthes minutissima の相対優占度(全珪藻の個体数に対する各珪藻種の個体数が占める割合)との間に相互関係が見られた.交換性成分には藻類にとって毒性となる化学形の重金属が含まれており,これらが珪藻を含む河川の生物相に影響を及ぼしていると考えられる.
  • 中島 仁美, 岡田 孝一郎, 藤村 弘行, 新垣 雄光, 棚原 朗
    2004 年 53 巻 9 号 p. 891-897
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    沖縄島沿岸で採取した海水中で光化学的に生成する過酸化物を太陽光シミュレーターを用いて調べた.海水中で光化学反応により生成する過酸化水素の生成速度には一定のものと,減少していく2つのタイプが見られたが,有機過酸化物の光生成は見られなかった.沖縄の夏の太陽光強度に規格化した過酸化水素の光生成速度は,平均1.38±0.80 nM min-1であった.過酸化水素の光生成初速度と溶存鉄イオン濃度及び300 nmにおける吸光度には,強い相関が見られたが,溶存有機炭素(DOC)濃度との相関は弱かった.海水中での過酸化水素の光生成に溶存有機化合物が関与していることはよく知られているが,溶存有機化合物濃度の指標となるDOC濃度との相関が弱かったことから,溶存している有機化合物の組成によって過酸化水素の光生成速度が異なることが示唆された.また,陸由来の成分が過酸化水素の光生成に関与していることが明らかになった.
  • 竹内 尚子, 武重 進也, 長塚 渉, 神藤 平三郎, 渋沢 庸一
    2004 年 53 巻 9 号 p. 899-904
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    向流クロマトグラフィー(CCC)によるタンパク質の分離用の新規水性二相溶媒系を探索した.卵白中からovomucinの選択的分離が15% ポリエチレングリコール(PEG)1540-15%dextran T10-100 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)二相系の上層を固定相,下層を移動相とする向流クロマトグラフィーにより達成された.分配係数の小さなovalbumin,conalbumin,lysozymeはdextran-richな下層の移動相によりカラムから溶出された.分配係数の大きなovomucinはPEG-richな上層の固定相に親和性が高いのでカラムから溶出されなかった.他の3種類のタンパク質を溶出後,固定相液体を押し出すことによってovomucinをカラムから回収できた.精製後,PEG 1540,dextran T10は限外ろ過によって容易に短時間で除去できた.また,CCCにより精製されたタンパク質はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-PAGEによって確認した.
  • 小寺 史浩, 梅田 実, 山田 明文
    2004 年 53 巻 9 号 p. 905-910
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    本論文では,アノード反応を利用した次亜塩素酸イオンの新しい電気分析法の開発を述べた.測定は,Pt電極を用い,リニアースイープボルタンメトリーによって行った.観察された酸化波のピーク電流は,次亜塩素酸イオン濃度に比例した.様々な物理的及び化学的な要因(繰り返し性,支持電解質,pH,掃引速度,温度,金属イオン及び溶存酸素)の影響を調査した.標準のサンプル(n =5)において,本測定法とヨウ素滴定の間には,非常に良い相関性(R 2=0.987)が得られた.本測定法は次亜塩素酸イオンの分析に非常に有用であると考えられる.
  • 石井 一行, 田中 由香, 秦 恭子, 後藤 将治, 齊藤 和憲, 南澤 宏明, 渋川 雅美
    2004 年 53 巻 9 号 p. 911-917
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    本研究では,水性二相系高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)による無機化合物の分離を目的として,操作条件と分離性能の関係を検討した.HSCCC装置としてはJ型コイルプラネット向流クロマトグラフ,水性二相系としてはポリエチレングリコール(PEG)-Na2SO4系を用い,無機陰イオン(IO3,I,NO3,SCN)をモデル化合物として,二相系の組成,ドラムの回転速度及び移動相流量と分離度の関係を検討した.その結果,カラムを巻き付けたドラムの回転速度が大きいほど固定相保持百分率が減少したが,それにもかかわらず分離度は大きくなるという現象が観測された.理論段数を測定したところ,分離度の増加はほぼ理論段数の増加で説明できることが明らかになった.これは,回転速度の増加に伴って二相のかくはんが激しくなり,液滴が小さくなることによるものと推測される.一方,移動相流量は分離効率に大きな影響を与えなかった.得られた結果に基づいて最適条件を設定し,Cr(III) とCr(VI) の分離を試みたところ良好な分離結果が得られた.
  • 後藤 晃範, 大島 光子, 高柳 俊夫, 本水 昌二
    2004 年 53 巻 9 号 p. 919-923
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    水溶液一相系でイオン会合反応を利用する陰イオン界面活性剤直接定量のための陽イオン性染料を新規に合成した.基本骨格はシアニンとし,二つのNに炭素数の異なるn -アルキル鎖を導入した四級塩染料を合成した.アルキル鎖の炭素数4と6のものは新規合成化合物であり,pKaを求めた.炭素数2と3の市販品と合成した陽イオン試薬を用い,吸光光度法により陰イオン界面活性剤(DBS)との最適反応条件を検討した.3,3'-ジヘキシル-2,2'-チアシアニン(DHT,C6の試薬)を用いて,10-6 MオーダーのDBSを定量することができ,検出下限は4×10-7 Mであった.また,疎水性相互作用により,非イオン性界面活性剤,陽イオン界面活性剤とも反応することが分かり,DHTとのイオン会合定数を求めた.
  • 中村 訓子, 大庭 義史, 岸川 直哉, 黒田 直敬
    2004 年 53 巻 9 号 p. 925-930
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    ルミノール化学発光を用いた,抗酸化物質の次亜塩素酸イオン消去能測定のためのシーケンシャルインジェクション分析(sequential injection analysis,SIA)法を開発した.同消去能は,抗酸化物質の次亜塩素酸イオン消去により減少するルミノール化学発光の減少率により算出した.50 mMホウ酸塩緩衝液(pH 9.5)をキャリヤーに用い,試薬濃度,流量,試薬体積等について最適化を行った.本SIA法によりL-アスコルビン酸,α-トコフェロール及びトロロックスの次亜塩素酸イオン消去能測定に応用した.構築したSIA法は,3検体当たり4分以内で測定可能であり,2 nM L-アスコルビン酸の消去能測定における相対標準偏差は,日内で2.5%,日間で3.8% と良好であった(n =3).本法は迅速,高感度かつ高精度であり,測定時間及び試薬消費量も従来のバッチ法に比べ大幅に減少した.本SIA法は,次亜塩素酸イオン消去能を有する抗酸化物質の迅速なスクリーニングに有用である.
  • 梶原 牧子, 西田 正志, 吉田 烈
    2004 年 53 巻 9 号 p. 931-936
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    p -ニトロカリックス[6]アレーン(CALX-N6)のウラニルイオン(UO22+)との錯形成反応について20% アセトン水溶液中,20℃,μ=0.01においてpH滴定法により検討した.CALX-N6の吸光光度法による測定データからCALX-N6の酸解離定数をpKa1=2.72,pKa2=5.71,pKa3=11.59と決定した.これらの結果は,CALX-N6が弱酸からアルカリにかけて6個の水酸基のうち3個が酸解離する3価のプロトン酸H3Lとして挙動することを示す.また,CALX-N6はUO22+と4種の1 : 1錯体を形成した.CALX-N6 - UO22+混合液のpH滴定データから,これらの1 : 1錯体の全安定度定数βmlh =[(UO2)m Ll Hh ]/([UO2]m [L]l [H]h )の対数値log βmlh111(UO2LH) に対して17.3,110(UO2L) に対して12.1,11-1(UO2LH-12-) に対して7.27,11-2(UO2LH-23-) に対して1.08であった.これらのCALX-N6の酸解離挙動及びUO22+との錯形成挙動は超ウラン試薬である水溶性のカリックス[6]アレーン-p -スルホン酸(CALX-S6)の場合とほぼ同様である.
  • 鈴木 敦, 宇津 秀之, 増岡 伸一, 李 雄, リム リーワ, 竹内 豊英
    2004 年 53 巻 9 号 p. 937-941
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    モノリス型シリカカラムは,アルコキシシランのゾルゲル反応によりμmオーダーのスルーポアとシリカ骨格を共存させることができ,小さな入口圧力で高分離能が達成できることから,次世代カラムとして注目されている.モノリス型シリカキャピラリーカラムは,in-situ で調製が可能なことから,キャピラリー液体クロマトグラフィー及びキャピラリー電気クロマトグラフィーの高分離能カラムとして期待が高い.本研究では,モノリス型シリカキャピラリーカラムの高い透過性を利用して高速分離の可能性を検討した.種々入口圧力下での測定を行い,カラム長さ及び入口圧力を最適化し,1分以内でベンゼン及び5種アルキルベンゼンの迅速分離を達成した.
  • 内田 幸恵, 小松 佑一朗, 佐藤 仁美, 矢嶋 摂子, 木村 恵一, 戸部 義人, 佐々木 真一, 水野 雅章, 渡辺 陽平, 廣瀬 敬治
    2004 年 53 巻 9 号 p. 943-952
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    親水性アニオンを検出可能なニュートラルキャリヤーとして,1つのチオ尿素部位にデンドリマーを導入した化合物,3つ又は4つのチオ尿素部位を含む化合物,3つのチオ尿素部位を含む環状構造をもつ化合物を設計・合成した.有機溶媒中において,これら化合物とリン酸イオンとの会合定数を求めたところ,どの化合物についてもリン酸イオンに対して高い会合定数が得られた.更に,イオン選択性電極のニュートラルキャリヤーとして用いた場合のアニオンセンサー特性を検討した.その結果,どの化合物もリン酸イオンに対しては良好な電位応答を示さなかった.しかし,3つのチオ尿素部位を含む化合物は,環状構造をもつ場合ももたない場合も,硫酸イオンに対して幅広い活量範囲で優れた電位応答を示し,ホフマイスター順列とは異なるアニオン選択性を示した.
  • 東海林 敦, 柳田 顕郎, 神藤 平三郎, 渋沢 庸一
    2004 年 53 巻 9 号 p. 953-958
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    11種類のカテキン類について,オクタデシルシリル化シリカ(ODS)モノリスカラムを用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と,t -ブチルメチルエーテル/アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸(2 : 2 : 3)の二相溶媒系を用いる高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)による逆相分配クロマトグラフィー分離をそれぞれ行った.実験に供したカテキン類の中でも,エピカテキンの三量体であるプロシアニジンC1(PC1)は,オクタノール/水二相溶媒系における分配係数P 及びlog P 値が最も小さな親水性化合物であるにもかかわらず,逆相HPLCのODSカラムに強く保持された.一方,逆相HSCCCにおけるカテキン類の溶出順序は,各化合物のlog P 値によく対応し,log P 値が減少するほどクロマトグラム上の保持時間も短くなった.すなわち,PC1のような最も親水的なオリゴマー成分は,逆相HSCCCのカラムから一番最初に溶出することが確認できた.
  • 太田 早苗, 山口 敬子, 藤田 芳一
    2004 年 53 巻 9 号 p. 959-963
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    レゾルシノールとプロピオンアルデヒドとの縮合発蛍光反応を利用することにより,ピロリン酸の蛍光光度定量法(測定蛍光波長: 457 nm,励起波長: 380 nm)を開発した.本操作法により,0.007~1.4 μgのピロリン酸を簡便,高感度に定量することができた.相対標準偏差も1.25%(0.14 μgピロリン酸)を示し,再現性にも優れていた.また,レゾルシノールとプロピオンアルデヒドの本縮合反応において共存させるピロリン酸の濃度が変化することにより,生成する発蛍光物質が相違することを認めた.
  • 藤井 健太郎, 谷渕 修平, 木原 壯林
    2004 年 53 巻 9 号 p. 965-973
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    ディスクあるいはリング状のグラシーカーボン(GC)の表面に高濃度の酸化還元試薬及び支持電解質を含む2-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)を含浸させたポリ塩化ビニルを薄膜(NPOE-LM)として固定した液膜ディスク電極あるいは液膜リング-液膜ディスク電極を作製し,これらの液膜電極を水溶液(W)中に設置,回転させながら,W | NPOE-LM界面イオン移動ボルタモグラムを測定した.液膜電極系には,W | NPOE-LM及びNPOE-LM | GCの2界面が存在するが,NPOE-LM | GC界面の電位をNPOE-LM中に加えた試薬の酸化還元によって復極させれば,目的のW | NPOE-LM界面の反応のみを抽出・解析できることが分かった.また,W | NPOE-LM界面を回転させると,静止水相 | 有機相界面に比べて,イオン移動電流の検出感度が2けた以上向上し,限界電流の回転数依存性から界面反応の可逆性も判断できること,また,液膜リング電極を併用すれば,液膜ディスク電極での反応生成物を同定できることを明らかにした.
  • 中尾 一紀, 松宮 弘明, 平出 正孝
    2004 年 53 巻 9 号 p. 975-980
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    キレート試薬0.10 mmolと非イオン性界面活性剤(スパン-80)0.03 mlをトルエン2.0 mlに溶解後,1.0 mol/l塩酸0.5 mlを加え超音波照射によりw/o(water-in-oil)エマルションを調製した.これを試料溶液25 mlに添加しかき混ぜることにより,微量の重金属元素をエマルション内水相へ捕集した.テノイルトリフルオロアセトンをキレート試薬として用いた場合,1,10-フェナントロリンをトルエン相に併せて添加するとコバルトやニッケルの回収率が協同効果的に増大し,pH 4でこれらの重金属元素を定量的に回収することができた.このpH条件では,アルミニウムマトリックスからコバルト,ニッケル,銅の3元素を同時に分離することが可能であった.本法を黒鉛炉原子吸光法と組み合わせることにより,高純度アルミニウム及びアルミナ中のこれらの重金属元素を定量した.
  • 川口 俊輔, 鎌田 雅也, 山田 明文, 梅田 実
    2004 年 53 巻 9 号 p. 981-986
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    固体高分子形燃料電池用電極触媒層は,白金担持カーボン(Pt/C)とプロトン伝導性高分子の混合使用により三相界面を形成している.プロトン伝導膜としてナフィオンを使用した場合,ナフィオンの疎水性クラスターに覆われた白金微粒子は,三相界面を形成せず反応に関与できないため,電極触媒中の白金利用率は十分に高くはない.そこで,ナフィオンに代わるプロトン伝導膜として,ポリイオンコンプレックス膜(PEC)を採用しPt/Cに混合させた.PECは疎水性クラスターサイズが小さく白金微粒子を隠蔽しにくいため,白金の利用率がナフィオンよりも高くなると考えられる.本研究では金基盤電極上にPt/CとPECを混合させた電極触媒層を作製し,3電極式電気化学測定により,Pt/Cとナフィオンを用いた場合に対する白金利用率の比較検討を行った.その結果,ナフィオンと同体積のPECを混合した電極では,ナフィオン混合時と比較して約1.5倍に白金表面積が増加することを見いだした.
  • 前田 恒昭, 瀧澤 未希, 中釜 達朗, 内山 一美, 保母 敏行
    2004 年 53 巻 9 号 p. 987-991
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    環境汚染物質などの定性,定量に広く利用されている分光測定は,前処理として有機溶媒を使用した濃縮・精製などの煩雑な操作が必要な場合が多い.近年,ガスクロマトグラフィー(GC)用液相を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)は,GCあるいは液体クロマトグラフィー(LC)による環境汚染物質定量の前処理として用いられてきている.本研究ではこのSPME法を応用し,GC用液相を用いた無溶媒濃縮法を開発した.ピロカテコールバイオレットを担持したカチオン性シリコン液膜を塗布した濃縮用プレートを作製し,水中のアルミニウムを濃縮し抽出吸光光度定量を行った.アルミニウム抽出量による検量線は0~1.0 μgの範囲で良好な直線性を示し,検出限界は0.2 μgであった.従来の方法と比較し,有機溶媒を使用せず,簡便な操作でより高感度な定量を行うことができた.
  • 永安 健敏, 林 英男, 平出 正孝
    2004 年 53 巻 9 号 p. 993-996
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    アルミナ粉末試料をグリセリンと混合することにより,ペースト状試料を作製した.この試料にレーザーを照射し,減圧ヘリウム誘導結合プラズマ質量分析によるアルミナ中の微量不純物元素の定量を試みた.検量線の作成には,高純度アルミナ粉末と既知量の目的微量元素を含むグリセリンを用いた.レーザー照射による試料の蒸発量の変化は,グリセリンに添加したInの信号強度を用いて補正した.本法によって得られた検量線はよい直線性を示し,検出下限はサブppmレベルに達した.本法を高純度アルミナ試料(純度99~99.995%)の分析に応用した結果,加圧酸分解によって得た定量値と良く一致した.本法は,試料調製が迅速・簡便であり,アルミナ粉末の高感度な多元素同時分析が可能であった.
ノート
  • 山本 圭一郎, 中井 隆行, 村上 良子, 佐々木 義明, 田頭 昭二
    2004 年 53 巻 9 号 p. 997-1001
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    The separation and recovery of chromium(VI) by using a cationic surfactant were investigated. Chromium(VI) reacted with cetylpyridinium chloride (CPC) to form a (HCr2O7)(CP+) ion-pair under an acidic condition. This ion-pair was sparingly soluble in water, and was separated as a precipitate with CPC from aqueous solution by centrifugation. In order to desorb the chromium(VI) from CP+, the reduction of chromium(VI) to chromium(III) having positive charge was performed by using sodium sulfite in the presence of sulfuric acid. Finally, chromium was then recovered as Cr(OH)3 under a basic condition. Optimization for the quantitative recovery of chromium(VI) was carried out. This method was applied to the recovery of chromium(VI) in chrome plating including Cr(III) + (VI), Fe, Zn, Cu, Al, Mn and Sb.
  • 竹田 竜嗣, 幾馬 功昌, 松本 貞義, 米虫 節夫, 沢辺 昭義
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1003-1008
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    PAHs are the general term of the compounds, having two or more benzene rings. These are discharged from diesel motor gas, tanker accidents, oil emissions by cars, and so on. They float in the atmosphere, and it is considered that they are absorbed in soil as a result of rain. Generally, compounds that have two or three benzene rings show only toxicity, whereas these having four or more benzene rings show toxicity, carcinogenicity and mutagenicity. Especially, benzo(a)pyrene was shown to be an agency of an endocrine disrupter. We investigated the action of 16 PAHs specified by the U.S. EPA in soil around Nara city. Soil was collected from different locations involving traffic and vegetation. Soil from three locations around our university were collected every month for investigating seasonal movement. PAHs were extracted from soil by soxhlet extraction with dichloromethane. They were then analyzed quantitatively by HPLC/UV. We classed PAHs by the number of rings, and examined the concentration and seasonal movements. All content of 16 PAHs in soils increased in proportion to traffic volume. At the same locations of traffic volume, the gravitation at a location with a plant with all 16 PAHs in soils was, furthermore, found to have a low concentration. There were different seasonal movements of the 2,3-ring and 4, 5, 6-ring PAHs. 4, 5, 6-ring PAHs have strong correlations each others(r > 0.79), but there was no correlation between 2, 3-ring and 4, 5, 6-ring PAHs. As a result, the traffic volumes are exposition sources of 4, 5, 6-ring PAHs in soils.
  • 野口 拓郎, 新崎 博貴, 大森 保, 高田 実弥
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1009-1013
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    An age determination and the chemical composition of hydrothermal barite, collected from an Okinawa Trough hydrothermal field, were studied. Initially contaminated 210Pb in sulfide and other minerals were leached by a chemical treatment. After the treatment, the radioactivity and chemical composition were determined by gamma spectrometry and neutron activation analysis, respectively. The following results were obtained: 1. An accurate and reproducible age was obtained by a chemical treatment of barite samples. 2. A matrix effect of barite samples on gamma-ray measurement was significantly observed, and was calibrated with mixed NaCl-BaSO4 references. 3. The precipitation age, calculated by the 210Pb/226Ra method after correction was concordant with the 228Th/228Ra and 228Ra/226Ra methods. 4. The Sr/Ba weight ratios were in the range of 0.007∼0.053, which seems to have positive relationship with the temperature of the hydrothermal vent fluid. 5. A chronological study of barite in sample No. 974R1 showed that Sr/Ba weight ratio seems to be high in older samples, and tends to decrease in young samples, which would suggest a possible alteration of the hydrothermal activity in this field.
  • 岩崎 祐樹, 狩野 直樹, 大森 和宏, 今泉 洋, 石塚 紀夫
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1015-1019
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    A simple and an efficient preconcentration method for the separate determination of each species of chromium {i.e., Cr(III) and Cr(VI)} in environmental water samples has been investigated, followed by inductively coupled plasma-atomic emission spectrometry (ICP-AES). This method is based on the following ion-exchange method. Cr(III) was adsorbed on cation-exchange resin, and Cr(VI) on anion-exchange resin. The retained Cr(III) and Cr(VI) were quantitatively eluted with 2 mol dm−3 hydrochloric acid (HCl) and 2 mol dm−3 potassium chloride (KCl), respectively. The preconcentration factor was 100 for Cr(III) and 300 for Cr(VI) in this work, and the detection limits were 0.03 μg dm−3 in Cr(III) and 0.01 μg dm−3 in Cr(VI). The method has been applied to environmental water samples from Niigata Prefecture. The recoveries of Cr(III) and Cr(VI) in environmental water samples were all 94∼98%, and the effect of interference from the coexistence ion was not detected. Therefore, the above-mentioned method is applicable to environmental water samples.
  • 南澤 一慶, 横山 崇, 善木 道雄
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1021-1024
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    The spectrophotometric determination of Fe(II) with 1,10-phenanthroline (phen) was carried out by a cyclic flow-injection analysis. Tandem glass columns (4 mm i.d., 8 cm long, each) packed with polyurethane foam (PUF, weight; 0.16 g×2) for the removal of Fe(II)-(phen)3 complex were incorporated in the system, allowing a repetitive determination of Fe(II). A solution of 2.0×10−3 M phen and 5.0×10−4 M sodium dodecyl sulfate (SDS) in a 0.1 M acetate buffer (pH 4.7) in a single reservoir (50 ml) was continuously circulated at a constant flow rate of 1.5 ml min−1. Into the stream, an aliquot (5 μl) of a sample containing Fe(II) was injected by means of a 6-way valve. The formed complex was monitored spectophotometrically at 510 nm. The stream was passed through glass columns, which were introduced after the flow-through cell, and then returned to the reservoir. The colored Fe(II)-(phen)3-SDS ion associates were adsorbed onto PUF, which allowed a baseline constant, and made it possible to adopt a cyclic FIA. This method allowed as many as 100 repetitive determinations of 6 ppm Fe(II) solutions with the same 50 ml of the circulating solution.
  • 佐藤 千鶴, 小林 真理子, 武田 愛, 伊藤 耐子, 嶋田 健次, 大和 進
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1025-1029
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    A convenient analytical method using high-temperature gas chromatography for the determination of mono- and diacylglycerols, lipase-catalyzed cleavage products of triacylglycerol (TG), has been developed. In this study, analytical conditions were examined using triolein (TO), diolein (DO) and monoolein (MO) as standard materials. As a result, a trimethylsilyl(TMS) derivatization with N,O -bis(trimethylsilyl)acetamide and a well-programmed column temperature using a low polar capillary column permitted the regiospecific analysis of 1-MO, 2-MO, 1,2-DO and 1,3-DO. Solid-phase extraction using an aminopropyl silica cartridge was effective for the sequential treatment of lipase-catalyzed cleavage products of TO. A quantitative analysis became feasible by the use of tricaprin as an internal standard. It was suggested that the present method was useful for the analysis of a different manner of cleavage due to the different kinds of TGs and lipases.
  • 松枝 奏輔, 中村 栄子
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1031-1033
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    We reported on a spectrophotometric method for the determination of polyoxyethylene nonionic surfactants(NS) using a polytetrafluoroethylene(PTFE) membrane filter in a previous paper. The method is based on the collection of NS on the filter, and the formation of an NS- iron(III)-thiocyanate complex. Although it is a simple and rapid method, it is not good regarding the precision of repeated blank tests, because of the instability of a mixed solution of potassium thiocyanate and iron(III) chloride. In the present work, the concentration of the potassium thiocyanate and iron(III) chloride solution was studied in detail to improve the precision of repeated blank tests. The improved procedure was as follows. After a 100 ml sample solution(0∼120 μg heptaoxyethylenedodecylether) was filtered through a PTFE filter (pore size : 0.1 μm, Φ : 25 mm), 2 ml of a potassium thiocyanate solution(6 M) and 2 ml of an iron(III) chloride solution(8 mM) were added on the filter, respectively. NS associated with iron(III)-thiocyanate was eluted with 5 ml of methanol, and the absorbance of the solution was measured at 510 nm. The precision of repeated tests (n = 3) was ca. 2% on both the blank and the sample.
  • 宇野 弘重, 鈴木 崇嗣, 後藤 康正, 伊藤 慎祐, 安井 孝志, 湯地 昭夫
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1035-1038
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    A few germanium(IV) complexes were prepared and examined for the anionophore. A nitrilotriphenolato complex ([Ge2(ntp)2O]) with three coordinating phenolates around Ge(IV) showed a sub-Nernstian response (40 mV/decade) to fluoride in the range of 10−3∼10−1 mol dm−3 as a carrier of ion-selective electrodes(ISEs). The dynamic range was extended to 10−4∼10−1 mol dm−3 in the presence of cationic additives. Spectroscopic studies on the reaction of this complex with anions in dimethyl sulfoxide demonstrated the reaction stoichiometry of Ge(IV) : A = 1 : 1 and the thermodynamic stability order of F > CH3COO > H2PO4. The reaction selectivity agreed with that of potentiometry with ISEs. A bis(catecholato) complex with four phenolates showed no response to anions, and a bis(aminophenolato) complex with two phenolates was not stable enough in the reaction with anions.
  • 山川 聡子, 大下 浩司, SABARUDIN Akhmad, 大島 光子, 本水 昌二
    2004 年 53 巻 9 号 p. 1039-1043
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/24
    ジャーナル フリー
    A chitosan-based resin possessing the iminodi(methylphosphonic acid) moiety (IDP-type chitosan resin) was synthesized by using cross-linked chitosan as a base material. The adsorption behavior of trace metal ions on the IDP-type chitosan resin was systematically investigated using a mini-column (1 ml of the resin) packed with the resin. The concentrations of metal ions in the effluents were measured by ICP-MS and ICP-AES. The resin could adsorb four metals, such as In(III), Sn(II), Th(IV), and U(VI), by almost 100% over a wide pH range (1∼7). Uranium(VI) and thorium could not be eluted with nitric acid and hydrochloric acid (1∼6 M); other metal ions were easily and readily eluted with 1 M nitric acid. The IDP-type chitosan resin synthesized in this work can be applied to the separation of U(VI) and Th(IV) from other metal ions.
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