分析化学
Print ISSN : 0525-1931
54 巻, 6 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
総合論文
  • 西野 智昭, 梅澤 喜夫
    2005 年 54 巻 6 号 p. 417-426
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    分子探針を用いた走査型トンネル顕微鏡(STM)について,これまで行われた研究を概説した.分子探針を用いることにより,探針-試料間の水素結合,配位結合及び電荷移動相互作用の各々に基づき,化学選択的なSTM観察が可能となる.これは,上記3種の相互作用に伴う電子波動関数の重なりを通じてトンネル電流が促進されるためである.分子探針を用いることによって得られる化学選択性は,探針分子に含まれる官能基を設計することにより制御できる.また,多くの分子探針は自己組織化単分子膜により下地金探針を修飾することによって作製されたが,導電性ポリマー又はカーボンナノチューブを探針として用いても化学選択性が得られる.更に分子探針によって配座解析,単分子-単分子間の電子移動の測定も可能となる.
  • 由井 宏治, 澤田 嗣郎
    2005 年 54 巻 6 号 p. 427-438
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    水と油の界面や,ミセルやベシクルといった分子集合体の内部,また生体細胞中など,バルクに埋もれた,いわゆる界面やナノ空間における液体の分析法が望まれて久しい.このような制限された空間における溶液化学分析には,一般に測定しようとする分子の絶対量の少なさをカバーするための高感度化や,観察したい部分だけを選択的に計測できる空間分解能の向上が要求される.また,このような不均一性が顕著な空間は,バルク中では観測されない興味深い化学反応や分子の集合状態の変化などが観測され,基礎学術的だけでなく,工業的応用にもたいへん興味深い.したがって,このような場における溶液化学反応やダイナミックな構造変化を追跡ができる,時間分解能を併せ持った手法が望まれる.ここではこのような界面・ナノ空間の溶液化学分析の新しい取り組みとして,光散乱を利用した時間分解準弾性レーザー散乱法と電子増強ラマン散乱分光法を紹介する.
  • 奥野 昌二, 下前 幸康, 和田 芳直, 荒川 隆一
    2005 年 54 巻 6 号 p. 439-447
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    マトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix-assisted laser desorption ionization,MALDI)は,低分子から高分子に至る様々な化合物のイオン化に有効である.しかしながら,マトリックス関連イオンが強く検出されるためにマススペクトルが複雑になり,目的イオンの解析が困難な場合がある.また,スペクトルの再現性や定量性に欠け,イオン化の際に試料の酸化還元による分解が起こりやすいという欠点がある.ポーラスシリコンを用いたレーザー脱離イオン化(desorption ionization on silicon,DIOS)は,マトリックスなしでイオン化が可能であるので,ノイズイオンの少ない単純なスペクトルが得られることが期待される.著者らは,DIOSチップ用の電解装置を製作し,DIOS作製の最適条件を決定し,低質量域において夾雑物イオンの影響がほとんどないマススペクトルを得た.そして,DIOS法がいろいろな種類の合成高分子の定量並びに定性分析で有効であることを示した.更に,銅(II)塩,有機色素,フェロセン誘導体,リボフラビンを用いてMALDIとDIOSのイオン化機構を調べるために,それらの酸化還元の挙動を検討した.
報文
  • 野島 高彦, 山下 健一, 八田 泰三, 柘植 乙彦, 岩瀧 敏男, 牧田 直子, 吉川 研一, 藤井 聡, 竹中 繁織
    2005 年 54 巻 6 号 p. 449-454
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    水溶液中における3種類のカチオン性水溶性フラーレン誘導体1a,1b,1c(それぞれα-,β-,γ-異性体)とDNAとの相互作用を種々の手法により詳細に検討した.水溶液中において1a及び1bは直径330 nmから340 nmの集合体を,1cは直径1400 nmの集合体をそれぞれ形成し,凝集状態にあること,そしてバクテリオファージT4由来DNAの添加に伴い集合体が解消されることが動的光散乱測定及び蛍光顕微鏡観察から示された.DNA添加に伴い凝集状態を解消したフラーレン誘導体は,DNA分子鎖に沿って配向することが分光学測定及び電子顕微鏡観察から分かった.DNAとフラーレン誘導体がエネルギー的に安定な会合状態を取り得ることが動力学計算により示された.これら一連の知見は,DNAを基本骨格とするナノ構造体開発において有用な情報である.
  • 鈴藤 正史, 大西 仁志, 平川 靖之, 升島 努
    2005 年 54 巻 6 号 p. 455-458
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    1本の光ファイバーにより顕微照明を行うビデオマイクロスコープ法(ピンファイバービデオマイクロスコープ法)を開発し,蛍光色素YOYO-1で染色したλ-phage DNAの伸張過程をリアルタイムで観察した.そのため,微小流動装置を用いた固定法を開発し,DNA光切断現象の評価も行った.まずpoly-L-lysineコートしたカバーガラス上へのλ-phage DNAの固定様式について詳細に調べ,光切断観察に最適なDNAの末端のみを固定する条件を求めた.そして,この条件下でλ-phage DNAに光ファイバーで一部分のみを集中的に照明すると,蛍光輝度の上昇とともに激しいうねり運動が観察された.照明強度とうねり運動の運動エネルギーの間の強い相関から,このうねり運動は光吸収に伴う熱発生によるものと考えられた.また,窒素置換した条件下では切断するまでに要する時間が大幅に伸びたことから,λ-phage DNA自身の運動とともに活性酸素が切断に関与していることが示唆された.
  • 西川 綾佳, 塚原 聡, 藤原 照文
    2005 年 54 巻 6 号 p. 459-465
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    40 kbp(bp: 塩基対)を超えるDNAの新しい分離法を確立するために,DNAの誘電泳動に注目して研究を行った.フォトリソグラフィー法によって新たに作製した平面マイクロ四重極電極にDNA溶液を滴下し,交流電圧を印加してDNAの誘電泳動を蛍光顕微鏡を用いて測定した.DNAにインターカレートする蛍光試薬のアクリジンオレンジを用いた場合では,より大きな誘電泳動移動度を示した.またDNAのグロビュール転移を引き起こすポリエチレングリコールの高濃度溶液では,転移の効果より,粘性抵抗力の増大の効果のほうが大きかった.陰イオン性と非イオン性の界面活性剤では,DNAの誘電泳動に対する効果はほとんどなかった.陽イオン性界面活性剤である塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAC)を添加した場合には,CTACがDNAと強く結合するため,蛍光色素との結合が阻害されDNAの検出が困難であった.非イオン性のO/Wエマルションは,負の誘電泳動を示し,正の誘電泳動を示すDNAとは相互作用しなかった.
  • 井上 高教, 西 弘敏, 北浦 稔之, 倉内 芳秋, 大賀 一也
    2005 年 54 巻 6 号 p. 467-471
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    油相側に高電圧を印加したオクタン/水溶液界面に紫外線パルスレーザーを全反射で照射し,イオン化電流値を測定することができた.エバネッセント波で芳香族分子がイオン化され,数十nmの深さに存在する分子からの信号である.10-6~10-10 Mの濃度範囲で検出が可能であり,高感度であった.ベンゼン環を多く持つピレンなどの芳香族分子がイオン化効率も高い傾向にあった.濃度依存性よりLangmuir吸着等温式の飽和吸着量と吸着平衡定数を求めると,水中で解離し難い芳香族分子のほうが界面への吸着が強くなることが分かった.アントラセンプロピオン酸を用いて水相のpHを調整すると,pKaを前後に解離体と非解離体で,界面近傍の濃度分布の違いを明確にでき,非解離体は界面付近に高い濃度で分布していた.また,界面活性剤の添加により,臨界ミセル濃度以上で界面付近の濃度の減少を測定できた.
  • 石坂 昌司, 荒木 武志, 西島 喜明, 喜多村 昇
    2005 年 54 巻 6 号 p. 473-478
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,時間分解全反射蛍光法を用い,水/1,2-ジクロロエタン(DCE)界面における6-ヒドロキシピレン-1-スルホン酸(HPSA)の励起状態プロトン移動ダイナミクスの研究を行った.水/DCE界面において観測されたHPSAの蛍光スペクトルには,励起状態プロトン移動反応により生成したHPSAの塩基型の蛍光が495 nmに観測された.しかしながら,HPSAの酸型の蛍光強度(435 nm)に対する塩基型の相対蛍光強度比はバルク水相中の値に比べ小さく,また,全反射蛍光ダイナミクスの解析から得られた励起状態プロトン移動速度定数(kf=5.0 × 108 s-1)もバルク水相中の値(kf=9.8 × 108 s-1)より小さな値となった.これらの結果は,HPSAの励起状態プロトン移動が界面において起こりにくいことを意味する.励起状態プロトン移動速度はプロトンに対する正四面体型の水和クラスター構造形成が律速段階であることから,本実験結果は水/DCE界面における水分子の水素結合構造を反映したものであると考えられる.
  • 蛎崎 洋, 中谷 清治
    2005 年 54 巻 6 号 p. 479-483
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    アルコール-水混合溶媒中におけるオクタデシルシリル(ODS)シリカゲル細孔内分配過程に及ぼすアルコールのアルキル鎖長と混合比率の影響を,単一微粒子ごとの吸光分析により検討した.吸収スペクトルが周囲の媒体の極性と水素結合により変化するフェノールブルー(PB)をプローブ分子として用い,アルコール-水混合溶媒系においてODSシリカゲルにPBを収着させたところ,PBは細孔内におけるODS/溶液界面に吸着していることが分かった.PBの吸収極大波長の変化からODS/溶液界面近傍の極性と水素結合性を,PBの吸着係数の変化からODS相の極性を議論できることを示した.ODSシリカゲル/アルコール-水混合溶媒系におけるアルコール分子は,細孔内溶液相とODS相の両方の極性に影響を与え,アルキル鎖長の増加とともにODS相へのアルコール分子の分配の寄与が大きくなることを明らかにした.
  • 岩見 安展, 山本 雅博, 西 直哉, 垣内 隆
    2005 年 54 巻 6 号 p. 485-494
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    極性をもつ1,2-ジクロロエタン(DCE)を有機相に用いた水|Aerosol OT(AOT)|DCE逆ミセル系において,クマリン343の蛍光寿命測定により蛍光色素周りのサブピコ秒溶媒和ダイナミクスを求めた.クマリン343は逆ミセル表面に存在し,2~4 nmのミセルの粒径が小さな逆ミセル系では拡散運動の溶媒和ダイナミクスが遅くなった.AOTと水の相互作用の変化が影響を与えたものと考えられる.
  • 宇井 美穂子, 山内 晶世, 鈴木 巌
    2005 年 54 巻 6 号 p. 495-501
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    ピレニルメチルアミン修飾α-シクロデキストリン(1)を合成し,N -オクタノイルトリプトファン(D-Trp-C8L-Trp-C8)との包接化合物形成を通した光学異性識別を検討した.1の蛍光はpH依存性を示し,そのpH滴定より1のpKaは6.95と求められた.アミノ基がプロトン化しピレンに対する消光作用を示さないpH 5.9において,1の蛍光はD-Trp-C8L-Trp-C8により消光され,その濃度依存性から1のこれらゲストに対する会合定数はそれぞれ2160,1200 M-1 と決定できた.ゲストのカルボキシル基が解離していないpH 4.0における1の会合定数はD-Trp-C8L-Trp-C8に対しそれぞれ790,597 M-1 であった.1H-核磁気共鳴スペクトルにおいて,1のピレン残基由来のプロトンとD-Trp-C8のインドール環由来のプロトンに高磁場シフトが観察されたが,L-Trp-C81ではこのような高磁場シフトは観察されず,1のピレン環はD-Trp-C8のインドール環とのみ相互作用していることが示唆された.以上の結果は,1のピレン残基とアンモニウム基がα-シクロデキストリン空孔の付加的な認識場として機能し,D-Trp-C8L-Trp-C8に比べ強く包接することを示している.
  • 桑原 哲夫, 鈴木 和也, 宮嶋 尚哉, 鈴木 保任
    2005 年 54 巻 6 号 p. 503-508
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    p-メチルレッドで修飾したα-,及びβ-シクロデキストリン(p-MR-α-CD,p-MR-β-CD)を合成し,これらの水溶液中における構造と色変化を伴う分子包接現象について検討し,分子認識能を評価した.p-MR-α-CDとp-MR-β-CDは水溶液中において,それぞれ「Head-to-Head型」の二量体,及び「自己包接型」の単量体として存在していた.このため色素へのプロトン付加の酸解離平衡挙動が全く異なっていた.両分子のpKa付近にpHを設定しゲストを添加すると,p-MR-α-CDは黄色から赤色へ,p-MR-β-CDはオレンジ色から赤色へと色変化した.これはゲスト包接により両分子のp-MR単位がCD空洞内から空洞外へ追い出されアゾ基にプロトンが付加したことに由来する.様々なアルコールへの分子認識能について調べたところ,p-MR-α-CDは直鎖状の,p-MR-β-CDは環状のアルコールに対して高い分子認識能を示すことが判明した.
  • 細矢 憲, べんど 美月子, 田中 信男, 和田 桂子, 小瀬 良治, 菅井 良政
    2005 年 54 巻 6 号 p. 509-519
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    ミクロンサイズの細孔を有する生分解性発泡状樹脂に対して富栄養化成分である硝酸,亜硝酸,リン酸を捕捉・吸着するナノ分子認識機能を持たせ,これらの樹脂を大量の水環境中(実際の河川水)に放置することにより,連続的なターゲット分子の選択的吸着性能を調べ,河川水の浄化を試みた.バルク状の吸着樹脂では,すぐにミクロンサイズの藻を含む堆積物により表面が覆われて不活性となり,夾雑物の多い実際の環境中での継続的な吸着能の発現が困難であった.一方で,通常の粒子状の吸着剤では,大量の試料を処理することが困難で,実際の環境試料への応用が図れなかった.そこで,生分解性樹脂を発泡状として,ミクロンサイズの小泡の中に水と接するナノ分子認識部位を配置することにより,実際の環境水中での継続的な富栄養化成分の吸着・捕捉が確認できた.この手法は,ナノ界面での富栄養化成分の吸着と,微生物による樹脂の分解,あるいは微生物の捕捉(格納)が有効に絡み合った系であろうと推察される.一方で,微生物は発泡状樹脂を表面から分解し,これによりナノ分子認識部位を常に活性化し続ける効果を発現していることが明らかとなった.また,付加的には,これらの吸着媒体は富栄養化成分を含有したまま,土壌改良剤としての利用も可能であることが示唆された.
  • 河野 喬仁, 堀口 諭吉, 新留 康郎, 新留 琢郎, 山田 淳
    2005 年 54 巻 6 号 p. 521-526
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    アミノエタンチオール塩酸塩(AET)共存下で塩化金酸を還元することにより,金ナノ粒子が得られることが分かった.塩化金酸とAETの濃度を変化させて,金ナノ粒子が生成する条件を検索した.塩化金酸とAETの濃度比がおおよそ1 : 1.5の場合に安定な金ナノ粒子が生成することが明らかになった.生成した金ナノ粒子はプラスのゼータ電位(+23~+84 mV)を示すことから,粒子表面にAET由来のアンモニウム塩を有するカチオン性金ナノ粒子であることを確認できた.チオール末端ポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)を共存させた反応溶液を用いても,粒子が生成する濃度比範囲はあまり変化しなかったが,沈殿に至るような大規模な凝集体形成は抑制された.また,PEG-SHの添加によって,生成する粒子の平均粒径が大きくなること,ゼータ電位が小さくなること(+7~23 mV)が分かった.PEG-SHはAETと競争的に金ナノ粒子に吸着し金ナノ粒子の分散安定剤として機能することが明らかになった.
  • 岩根 美枝, 矢嶋 摂子, 野村 英作, 谷口 久次, 木村 恵一
    2005 年 54 巻 6 号 p. 527-531
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    還元剤として没食子酸エステル部位を有するカリクス[4]アレーン誘導体を用い,エタノール中で銀イオンを還元することにより生じた銀コロイドの表面プラズモン吸収を紫外可視分光光度法により観察した.その結果,銀コロイドに基づく吸収が観察され,その吸光度は時間依存性を示した.これは,生成した銀コロイドが不安定であることを示している.試料溶液を調製後,一定時間経過してから,安定剤としてポリビニルピロリドンを添加したところ,吸光度の時間変化を抑制でき,銀コロイドを安定化することができた.また,銀イオン濃度依存性について検討したところ,銀イオン濃度が1 × 10-5 M以下では,銀イオン濃度の増加に応じて吸光度が増加し,銀イオン定量の可能性が示唆された.
  • 西山 尚秀, 遠藤 史宏, 江口 裕子, 中釜 達朗, 清野 信子, 篠田 正紀, 下坂 琢哉, 保母 敏行, 内山 一美
    2005 年 54 巻 6 号 p. 533-539
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフィー(GC)の試料導入のための新規インクジェットインジェクターを開発した.インクジェットマイクロチップは,チップ先端をテーパー加工し,GCの試料導入部に設置した.本インジェクターの特性を評価するため,試料導入部と熱伝導検出器(TCD)を直結した.試料として水を用い,吐出量,吐出間隔及びインクジェットチップ先端部分にかかる背圧等GC用インジェクターとして用いるための基礎的条件の検討を行った.試料導入量1~5 nlの範囲で,試料の量に応じたTCD応答が得られた.インクジェットによる試料導入は1滴当たりおよそ1 nlであり,その再現性はピーク面積約1.0%(RSD,n =5)であった.開発した新規インクジェットインジェクターでは通常のマイクロシリンジを用いる方法の1000分の1の試料量を再現性よく導入することができた.
  • 松尾 修司, 脇田 久伸
    2005 年 54 巻 6 号 p. 541-547
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/31
    ジャーナル フリー
    X線吸収端近傍構造(XANES)のスペクトル形状に与える境界構造の効果を調べるため,Br L3吸収端XANESスペクトルをdiscrete variational(DV)-Xα分子軌道法による電子状態計算を使って解析した.クーロン力を受けるLiBr結晶の状態を,マーデルングポテンシャルを考慮したバルク状態,表面状態,表面水和状態,及びマーデルングポテンシャルを考慮しないバルク状態の構造モデルを使って検討した.算出されたXANESスペクトルの形状は,それぞれの構造を反映した形状を示し,マーデルングポテンシャルを考慮したバルク状態の結果が実測のスペクトル形状とうまく一致した.KBrの0.1 M水溶液のBr L3吸収端XANESスペクトル形状を,一対の水和したBrイオンと水和したKイオンから成る構造モデルを使って検討した.算出したXANESスペクトル形状から,0.1 M水溶液中の水和したKイオンは,実測のXANESスペクトル形状に影響を及ぼさないことが証明できた.
ノート
feedback
Top