分析化学
Print ISSN : 0525-1931
57 巻, 11 号
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総合論文
  • 三谷 智明
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 57 巻 11 号 p. 859-869
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/15
    ジャーナル フリー
    高周波グロー放電(rf-GD)は,薄膜試料の深さ方向の組成分析を目的とする発光分光装置等広い分野で利用されている.この高周波グロー放電で発生するArイオンは,照射エネルギー(<50 eV),イオン電流(∼100 mA/cm2)であり,試料へのダメージが主要な検出法の検出下限以下であり,物質への影響を最小限としながら,一方高速スパッタリングを両立したユニークな性質を持っている.近年走査型電子顕微鏡(SEM)は,フィールドエミッション電子銃を搭載により1∼1.5 kVの低加速電圧での観察が可能となっている.加速電圧1∼1.5 kVのSEM検出信号(2次電子,反射電子)は試料表面数原子であり,ダメージのない迅速な試料最表面の前処理が求められている.低加速電圧SEMにrf-GDを用いた試料前処理を組み合わせることによって,SEMのイメージは著しく改善され材料に関する多くの情報を得ることができる.更に,rf-GDは透過型電子顕微鏡(TEM)試料作製,フォーカスイオンビーム装置(FIB)の課題とされているガリウムイオンによる汚染層除去に極めて有効な手段である.SEMを中心にTEM,FIBへの応用について紹介する.
  • 上野 祐子
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 57 巻 11 号 p. 871-881
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/15
    ジャーナル フリー
    新規で実用的な分析手法の開拓を目的とし,メソポーラスシリカを用いた分子認識素子の開発やこれを用いたマイクロ分析デバイスへの応用を行った.メソポーラスシリカのナノサイズの細孔への分子吸着には,細孔径及びシリカ表面と吸着分子の間の相互作用が重要であることを解明し,ごくわずかなサイズ差の分子同士を数十倍の選択性で見分ける分子認識素子を実現した.この分子認識素子を利用して,微小化効果による利点を活かしたままベンゼンなどの有害ガスを数十倍の選択性で見分けるマイクロガス分析デバイスを開発し,排気ガスモニタリングなどの実環境で有用性を実証した.また,メソポーラスシリカがテラヘルツ領域において優れた光学材料となることを見いだし,テラヘルツ領域の波長帯に観測される分子間水素結合モードの影響を低減する分子認識素子を開発し,これを用いたテラヘルツ分光分析法を開拓した.
報文
  • 牧野 崇伯, 宮脇 崇, 本田 克久
    原稿種別: 報文
    2008 年 57 巻 11 号 p. 883-890
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/15
    ジャーナル フリー
    マイクロ波を用いた土壌及び底質中ダイオキシン類の迅速抽出法に関する研究を行った.ヘキサン溶媒のみによる抽出が不十分であったため,マイクロ波及び溶媒特性に注目して水とエタノールを添加したところ,抽出率の大幅な向上が確認された.水及びエタノールの添加量について最適化を検討したところ,試料1 gに対し,水0.3∼0.5 mL,エタノール0.8 mLを添加した条件においてほぼ100% の抽出率を示した.また,主要溶媒であるヘキサンの溶媒量は試料1 gに対し,1 mLまで低減できることが分かった.更に,本抽出法の妥当性を調べるため4種の試料を用いて抽出試験を行ったところ,ソックスレー抽出と同等の結果を得ることができた.本抽出法は30分間で多検体同時抽出を行うことができるため,ダイオキシン類の迅速抽出法として期待できる.
  • 善木 道雄, 片山 裕章, 横山 崇
    原稿種別: 報文
    2008 年 57 巻 11 号 p. 891-895
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/15
    ジャーナル フリー
    果実飲料や清涼飲料水中の酸度の定量やモニタリングに,サイクリックフローインジェクション(FIA)法を適用した.試薬キャリヤー溶液は,1.5×10-4 Mキシレノールオレンジ(XO)と12% のスクロースを含む0.01 Mリン酸塩緩衝液(pH 8.0)を用い,400 nmのXOの変色をモニターしてクエン酸濃度(%,g/100 mL)として酸度を求めた.スクロースは,試薬キャリヤー溶液と試料溶液間の屈折率の違いによる検出ピークの妨害を相殺するために添加し,これにより試料を希釈等の前処理をすることなく,直接システム内に注入し定量することができた.検量線は,クエン酸濃度0∼2.5% までの範囲で良好な直線性を示し,市販の果実飲料や清涼飲料水を分析した結果,公定法である中和滴定法との間によい一致が見られた.更に50回の連続定量や間欠的な繰り返し実験でも良好な結果が得られ,本法は酸度のモニタリング法としても有効なことが分かった.
ノート
テクノレポート
  • 石橋 耀一, 長谷川 幹男, 須藤 和冬, 中野 和彦, 坂東 篤, 鶴田 暁, 小野 昭紘, 柿田 和俊, 坂田 衞
    原稿種別: テクノレポート
    2008 年 57 巻 11 号 p. 901-910
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/15
    ジャーナル フリー
    The Japan Society for Analytical Chemistry carried out proficiency testing on the determination of hazardous elements (lead, cadmium, chromium, mercury and bromine) in polyester disks or chips four times from 2003 to 2007. The number of laboratories that participated was 140 at the most (2nd) and 104 at the least (4th). The analytical methods applied in the testing were chemical analysis and X-ray fluorescence analysis. The concentration levels of the analytes were both low and high ; at low concentration, it was about 1 μg g−1 for Hg and 5∼10 μg g−1 for other elements, and about 10-times at a high concentration in 1st PT. In 2nd∼4th PT, it was 20∼30 μg/g−1 level for each element at low concentration, and 2∼3 times at high concentration. More than 80% of the laboratories obtained z score of less than 2 in absolute value, which represents "satisfactory". The uncertainties were generally larger in X-ray fluorescence analyses than in chemical analyses. However, it was reverse in the case of Br. This would have been caused by incomplete chemical decomposition of the samples. From an estimation of the correlation of the analytical results between two analytical methods using the En number, some points were shown to be improved in the practice of X-ray fluorescence analysis, such as in selecting kinds of reference materials, or in a matrices correction of the sample.
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