分析化学
Print ISSN : 0525-1931
58 巻 , 6 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総合論文
  • 中嶋 隆浩, 佐藤 守俊
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 425-434
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    ペプチドホルモンや神経伝達物質,サイトカインなど細胞から分泌される生体分子を可視化分析するために,著者らは生きている細胞からなる新しい蛍光プローブ「細胞型蛍光プローブ」を開発している.この細胞型蛍光プローブは,酵素反応を利用して分析対象を超高感度に可視化検出できるよう工夫を施している.この新しいプローブによって,既存の手法では分からなかった生きた細胞から分泌された生体分子の動態が明らかになりつつある.本稿では細胞型蛍光プローブについての最新の成果を紹介する.
  • 金 誠培, 梅澤 喜夫, 田尾 博明
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 435-446
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    最近の遺伝子工学の発展に伴い,遺伝子操作された蛍光発光タンパク質を標識として様々な融合タンパク質プローブが設計・合成され,リガンド活性計測等に応用されてきた.今日,生体・生細胞に適用できる分子イメージング技術は,生理活性を持つ小さい分子の同定から,タンパク質-タンパク質間結合,タンパク質の構造変化までの幅広い計測ニーズに対応できるものとして応用されている.本総合論文では,著者らが最近数年間成し遂げてきた生物発光イメージング研究を紹介する.例えば,転写因子の核内移行や細胞質内非ゲノム的なタンパク質-タンパク質間相互作用を,独自のタンパク質スプライシング法を用いて計測した.また,一つの分子内に,リガンドセンシングタンパク質と発光タンパク質を集積した形態の一分子型生物発光イメージングプローブを開発した.その後,このプローブをマルチカラー化して,複数の信号伝達過程を同時にイメージングできるように発展させた.更に,生物発光プローブそのもののリガンド感受性を高める手法として,円順列置換や小さい発光酵素を用いた分子設計技術を紹介する.本総合論文を通じて,多くの分析化学者の方にこの分野の面白さをぜひ分かって頂きたい.
  • 戸村 道夫, 田中 順子, 金川 修身, 三輪 佳宏
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 447-460
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    有機系の低分子蛍光プローブには,特定のイオンや分子との結合によって蛍光強度や波長特性が変化し検出できる分子スイッチ機能を有したものが数多く開発されている.近年,蛍光タンパク質を応用したイメージング技術の発展には目覚ましいものがあり,特に生きた動植物個体などの生体イメージングには,遺伝子としてコードされるタンパク質性プローブは威力を発揮している.著者らは,蛍光タンパク質にも「分子スイッチ機能」を導入することで,より高度なイメージングを実現することを目指し,複数の取り組みを進めている.本稿では,著者らが取り組んでいる3通りの分子スイッチ機能の応用法に関して研究成果を中心にその可能性について紹介する.
  • 曽我 公平
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 461-471
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    バイオメディカル分野における重要技術である蛍光バイオイメージングでは,励起短波長光の照射による退色,自家蛍光,光散乱が問題となっている.著者らは希土類含有セラミックスナノ粒子を蛍光体とすることで,近赤外励起光によって蛍光観察が可能なバイオイメージングシステムの開発に,発光体設計と合成,表面修飾,細胞観察システム,in vivo観察システムという材料開発から生命系研究に渡る異分野連携としてのポリスケールテクノロジーにより取り組んできた.本稿ではその一連の成果を,関係する分野のレビューを含めて概説する.
  • 中林 孝和, 太田 信廣
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 473-485
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    蛍光による細胞のイメージングにおいて,蛍光強度ではなく,時間分解分光法を用いて蛍光寿命をイメージングすることにより,各種外来刺激に対する細胞内の応答機構について検討している.発光種が一種類であっても,蛍光強度は蛍光分子の濃度,励起光強度,励起波長及び光学系に依存するのに対し,蛍光寿命はこれらの実験条件に依存しない.そのために蛍光強度測定に比べて定量性が大きく増加し,細胞内の蛍光分子の環境変化などを高感度に検出することができる.また時間分解測定から細胞内の光励起ダイナミクスを直接観測することができ,蛍光寿命というパラメーターから,単一細胞内の様々な現象を明らかにすることができる.本稿では,著者らが製作した蛍光寿命イメージングシステムについて紹介し,変異型緑色蛍光タンパク質を用いた細胞のストレスに伴う蛍光寿命の変化及び蛍光寿命を用いた単一細胞内のpH計測について解説する.また,フルオレセイン誘導体によって染色された高度好塩菌の蛍光寿命イメージング測定の結果についても報告する.
  • 内村 智博, 荒木 祥恵, 川鍋 智史, 三宅 里奈, 今坂 藤太郎
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 487-494
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,数多くの蛍光標識試薬に対する適用性とそれらの迅速分析を目的として,小型波長可変ピコ秒レーザー,倒立顕微鏡及びICCDカメラから成る蛍光寿命イメージング装置を開発した.また,本装置を,赤血球やがん細胞などの蛍光寿命画像測定に適用した.その結果,アポトーシスの発生などの細胞内の微小領域の変化を迅速に観察することができた.このように,本法は細胞の可視化計測のための有力な手法であり,新たな反応機構の解明や生理機能の発見などにつながると期待される.
  • 橋本 雅彦, 塚越 一彦
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 495-506
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    マイクロチャンネル内の層流条件下で形成される液液界面あるいは液液界面崩壊過程を,化学発光の微小空間反応場として利用する新しい化学発光分析法について紹介する.著者らは,この手法をマイクロチャンネル化学発光分析(micro-channel chemiluminescence analysis ; MCCLA)法と称している.本稿では,まず,マイクロチャンネル化学発光分析法の基本概念及びその特長について述べた.つづいて,顕微鏡とCCDカメラを使って得られた蛍光及び化学発光の可視化画像に基づいて,マイクロチャンネル化学発光分析法の概念及び特長に関する考察を行った.つぎに,具体例として,シュウ酸エステル化学発光を用いた蛍光物質のマイクロチャンネル化学発光分析法,一重項酸素化学発光を利用したマイクロチャンネル化学発光分析法における抗酸化剤,飲料物,及び唾液の影響,更にルミノール化学発光を用いた銅(II)のマイクロチャンネル化学発光分析法を取り上げ,それらの基礎的実験結果を概述した.またマイクロチャンネル化学発光分析法の将来性・有用性についても言及する.
  • 山口 央, 上條 利夫, 寺前 紀夫
    原稿種別: 総合論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 507-516
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    クマリン色素を蛍光プローブとした時間分解蛍光測定では,蛍光スペクトルのダイナミックストークスシフト解析からクマリン色素の微視的環境を反映した溶媒和ダイナミクスについての情報を得ることができる.本研究では,複数のクマリン色素を蛍光プローブとし,分子サイズで均一なメソ空間内部における蛍光ダイナミックストークスシフトの解析を行った.直径3.4 nmのシリカメソ細孔内部にCTAB(cethyltrimethylammonium bromide)ミセルが充填されたシリカ-CTABナノ複合体内部では,有する官能基の種類によってクマリン色素の存在分布が異なること,クマリン色素の分布位置によって溶媒和ダイナミクスが異なることが分かった.また,直径3.1 nmのシリカメソ細孔内部に閉じ込められたアルコール溶媒分子では,アルキル鎖長が比較的短いエタノールやブタノールではバルク中に比べて顕著な溶媒和ダイナミクスの低下が起こることを明らかにした.
報文
  • 井上 陽介, 岡本 行広, 加地 範匡, 渡慶次 学, 馬場 嘉信
    原稿種別: 報文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 517-521
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    従来,マイクロチップ電気泳動でレーザー励起蛍光検出を用いて高感度検出を試みる際に試料の蛍光標識を行う.しかし,蛍光標識は煩雑な操作,標識に伴う分離能の低下及び低濃度試料の蛍光誘導体化効率の低下という問題を有しており,蛍光標識を不要とする高感度検出法の開発が望まれている.著者らは遠心操作によりカップ積層型カーボンナノチューブ(cup stacked carbon nanotubes,CSCNTs)が蛍光を発することを見いだし,泳動液へのCSCNTsの添加によりDNAのマイクロチップ電気泳動分離及び非標識(間接蛍光)検出に成功した.CSCNTsは蛍光を有することに加えて,製造段階でのアスペクト比の調整やCSCNTs表面への機能性分子の固定化が容易であるためにマイクロチップ電気泳動のみならず様々な分野における活用が今後期待される.
  • 高橋 秀行, 占部 泰章, 岡本 泰明, 塚原 聡, 藤原 照文
    原稿種別: 報文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 523-529
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    1 : 25(v/v)1-ヘキサノール-シクロヘキサン混合溶媒中に形成させた塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)の逆ミセルを用い,フローインジェクション化学発光(FI-CL)によるコバルトとマンガンの定量法を開発した.ルミノール塩基性溶液(0.08 mol dm−3水酸化ナトリウム)を可溶化させたCTAC逆ミセル溶液と酢酸コバルトあるいは酢酸マンガンをFI-CL法により混合させると,強いCL強度が得られた.また,ルミノール塩基性溶液(0.02 mol dm−3水酸化ナトリウム)に炭酸ナトリウムを添加するとCL強度の増幅効果が見られた.バルク溶媒中の1-ヘキサノールのモル分率を0.042以上にするとCL強度が急激に減少した.コバルトとマンガンの定量における最適条件を検討した結果,1 : 25(v/v)1-ヘキサノール-シクロヘキサンを試料溶液の溶媒として用いた場合,検出限界はコバルトにおいて0.1 ng dm−3に達し,マンガンでは0.5 ng dm−3であった.また,検量範囲はコバルトでは0.01~10 μg dm−3,マンガンでは0.01~20 μg dm−3で,良好な直線性を示した.本FI-CL法を様々な有機溶媒中のコバルトとマンガンの微量定量に適用した.
  • 渡辺 邦洋, 大西 悠, 四反田 功, 板垣 昌幸
    原稿種別: 報文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 531-537
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    フローインジェクション分析法(FIA)によるウンベリフェロンを用いたCo(II)の化学発光(CL)定量法を開発した.フローシステムはコバルト(line 1),検出試薬(ウンベリフェロン,陽イオン界面活性剤 : line 2),過酸化水素(line 3)の3流路から成り,最適条件下,Co(II) 0~10 ppbの範囲で検出限界は0.4 ppb(S/N=3),定量下限は1.2 ppbであった.また本反応のCL強度には陽イオン界面活性剤が大きく影響を与え,特にセチルジメチルエチルアンモニウムブロミドが最も高いCL強度を与えた.本反応系中では過酸化水素に起因する多くのラジカル種が発生しており,特に一重項酸素(1O2)消去剤によりCL強度は大きく減少する.実験によって1O2の消去剤であるL-ヒスチジンは0.1%,ヒドロキノンは11.5% までCL強度を抑制した.結果,本CL反応はウンベリフェロンと1O2の反応によるものと推測された.
  • 太田 奈奈美, 児玉谷 仁, 山崎 重雄, 藤永 薫, 小松 優, 齊藤 惠逸
    原稿種別: 報文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 539-544
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    トリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(III)錯体の化学発光反応を利用したリン酸イオンの高感度測定法を開発した.酸性条件下,リン酸イオンとモリブデン酸イオンが反応して生じるモリブドリン酸イオンをトリ-n-プロピルアンモニウムイオンによりイオン対を形成させることで有機溶媒中に抽出した.この対イオンとして抽出されたトリ-n-プロピルアンモニウムイオンをトリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(III)錯体の化学発光反応を用いて検出することで,間接的にリン酸イオンの検出を行った.抽出と検出のための最適条件を検討し,検量線を作成したところ,0.01~10 μMまで良好な直線性(r=0.9998)が得られた.検出限界(S/N=3)は7.3 nM(0.22 ngP/mL),再現性は2.0%(1 μM,n=6)であった.環境水中のリン酸イオンの測定に応用した結果,既存のモリブデン青法と本法の検出値は両者で近い値が得られ,またモリブデン青法では感度不足で測定不可能な試料においてもリン酸イオンの測定が可能であった.
  • 岡本 哲, 岡本 幸雄
    原稿種別: 報文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 545-551
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    大気圧ヘリウムマイクロ波誘導プラズマ(He-MIP)を,表面波励起型のOkamoto cavityを用いて,大電力領域(~1 kW)でも安定に生成し,その励起温度と電子密度のマイクロ波電力依存性などを明らかにした.マイクロ波電力800 Wのとき,鉄の励起温度と電子密度はそれぞれ8000 Kと2×1014/cm3であった.
    更に,このHe-MIPの発光分光分析への応用として,固体の組成分析のためのレーザーアブレーションと組み合わせた固体中の非金属粒子(カーボン)の検出と微粒子の組成分析などのための懸濁液(アルミナ粉末 : 平均粒径 : ~1 μm)の時間分解発光分光特性を示し,このHe-MIPは,水溶液中の非金属元素分析のみならず,これらの分析にも大変有効であることを述べた.
  • 堀込 純, 和久井 隆行, 白崎 俊浩
    原稿種別: 報文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 553-559
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    一般的な分光蛍光光度計に積分球を搭載したシステムにて,絶対法による固体試料の蛍光量子収率測定方法の検討を行った.特に,積分球を搭載した際に生じる波長特性を補正するために,分光蛍光光度計に搭載されている励起光源を用いて,光拡散素子と積分球の波長特性を比演算する補正方法を検討した.この結果,波長200~800 nmまでの補正スペクトル取得を可能とした.この補正方法を用いた蛍光量子収率の測定においては,報告値のあるMgWO4の測定を行ったところ,蛍光量子収率は0.80(相対標準偏差0.6%)と報告値の0.81とほぼ一致した結果が得られた.
技術論文
  • 熊井 みゆき, 中山 慶子, 古庄 義明, 山本 保, 高村 禅
    原稿種別: 技術論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 561-567
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    新しい原子発光分析である液体電極プラズマ法(LEP-AES法)は,中央が絞られた小型容器(横幅数mm)に数十μLの試料を入れ,そこに高電圧を印加する事でマイクロプラズマを発生させる方式である.ICP-AES法と異なり,アルゴンガスや大電力を必要としないため,小型化並びに可搬化が可能となり,本法を応用したハンディ元素分析装置が開発された.本研究では,認証汚染土壌に含有されているPbをハンディ元素分析装置で測定する事を目的として,装置の性能評価を行った.結果は波長405.8 nmにおける検出限界が1.3 mg/L,相対標準偏差(RSD)は10% 以下,直線性許容範囲は2桁と,ハンディ元素分析装置としては十分な性能であった.汚染土壌は環境省告示第19号に準拠した方法で溶出液を作成し,固相抽出により分離濃縮後,測定を行った.測定結果は80.2 mg/kg(dry)であり,認証値82.7±3.8 mg/kg(dry)の許容範囲内の値であった.
  • 大図 章, 江坂 文孝, 安田 健一郎
    原稿種別: 技術論文
    2009 年 58 巻 6 号 p. 569-576
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    レーザー誘起蛍光によるアスベストの識別計測を目的として,3種類(クリソタイル,クロシドライト及びアモサイト)のアスベスト,アスベスト代替建材試料であるグラスウール,ロックウール,及び建材試料のタルク,石膏等の蛍光スペクトルを調査した.その結果,波長266 nmの紫外レーザー光照射において,それらすべての試料から波長350から700 nmに及ぶ幅の広い蛍光スペクトルが観測された.各試料の蛍光特性を比較した結果,スペクトル形状,蛍光量及び蛍光寿命において,アスベストとそれ以外の建材試料との間に識別可能な差異が確認された.特にグラスウール等の繊維状試料との蛍光スペクトル形状と蛍光量の差異は著しく,蛍光量はアスベストのものの約10倍以上であった.これらの蛍光特性の差異を利用するアスベスト識別法として,二つの離れた波長間の強度比,蛍光の減衰比,及び蛍光量比の3つの比較法について紹介する.
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