分析化学
Print ISSN : 0525-1931
59 巻, 10 号
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年間特集「水」:報文
  • 渋川 雅美, 代田 大祐, 齋藤 伸吾, 長澤 慎, 齊藤 和憲, 南澤 宏明
    原稿種別: 年間特集「水」:報文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 847-854
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    ポリエチレングリコール,硫酸ナトリウム及び水とで構成される水性二相抽出系による液液抽出を吸光光度法の前処理法として組み込み,環境水中の微量亜鉛(II)の高感度かつ高選択的簡易吸光光度分析法を開発した.抽出剤としてチオシアン酸イオン,発色剤として2-(5-ブロモ-2-ピリジルアゾ)-5-[N-n-プロピル-N-(3-スルホプロピル)アミノ]-フェノール(5-Br-PAPS)を用い,妨害となる金属イオンを抽出段階において除去又は発色段階で適切なマスキング剤によりマスクすることによって,亜鉛(II)について高い選択性を得ることができた.水性二相抽出で亜鉛(II)を10倍濃縮するように設計した条件下で,0~200 μg L−1の濃度範囲で直線性の良好な検量線を得ることができ,定量限界は空試験値の標準偏差の10倍で表したとき1.6 μg L−1であった.水性二相抽出の弱点である,相分離に時間を要するという問題点は,加温による対流現象を利用して克服し,抽出から吸光度測定までの操作に要する時間を15分以下に短縮した.本法を河川水中の亜鉛の定量に応用したところ,ICP-AESにより得られた値とよく一致する結果を得た.
年間特集「水」:技術論文
  • 吉田 達雄, 飛野 敏明
    原稿種別: 年間特集「水」:技術論文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 855-862
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    水中の高魚毒性農薬68成分について,簡易迅速分析法の開発を行った.そのうち48成分をガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により測定し,GC/MSで測定困難な20成分を液体クロマトグラフィー/タンデム型質量分析法(LC/MS/MS)により測定した.GC/MS測定農薬について,試料として標準品を添加した蒸留水を多孔性ケイソウ土カラムに負荷し,溶出溶媒検討の結果,酢酸エチル150 mLを用いたとき,すべての農薬成分について,回収率87~101% の良好な値が得られた.この条件によるGC/MS測定及び試料をアセトニトリルで直接希釈したLC/MS/MS測定を組み合わせることにより,蒸留水,ミネラルウォーター及び河川水を試料とした標準品添加回収試験を行った結果,すべての農薬成分ついて,回収率84~105% の良好な値が得られた.本法は操作時間が約1時間と短く,更に,分析に必要な試料量がGC/MS測定で20 mL,LC/MS/MS測定で5 mL,合計25 mLと少ないという長所もあり,魚へい死事故の原因究明に大きな役割を果たすものと期待される.
報文
  • 赤峰 生朗, 大高 亜生子, 保倉 明子, 伊藤 勇二, 中井 泉
    原稿種別: 報文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 863-871
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    実験室レベルで高感度な分析が可能な三次元偏光光学系蛍光X線分析装置を用いて,コーヒー豆の微量元素を定量し,統計解析を行った.産地判別に有用な元素を明らかにし,簡易・迅速な産地判別法として確立することを目指した.産地の指標となる6元素(Mn,Fe,Ni,Rb,Sr,Ba)を高感度に分析するために測定条件を最適化した結果,各元素において直線性のよい検量線を作成することができ,各元素の検出限界は,サブppmレベルとなった.コーヒー生豆75試料中の6元素を定量し,主成分分析を行った結果,6産地(ブラジル,コロンビア,ベトナム,インドネシア,タンザニア,グアテマラ)の生豆を特性化することができた.また,同ロットの生豆と焙煎豆の各元素濃度を比較した結果,これらの6元素について大きな差は見られなかったため,今回の産地判別手法における焙煎の影響は小さいことが分かった.本手法では,試料の前処理は10分程度,測定時間は2時間30分であり,自動連続測定が可能であることから,簡易・迅速な実用性の高い分析手法として,コーヒー豆の産地判別への応用が更に期待される.
  • 好田 稔規, 玉木 冴子, 宮地 加奈子, 森山 健三, 森本 茂文, 山口 敬子, 藤田 芳一
    原稿種別: 報文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 873-878
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    キサンテン系色素のo-カルボキシフェニルフルオロン(OCPF)と,金属イオンの鉄(III)を併用する三元錯体生成反応を利用したヘパリンナトリウムの簡便で高感度な吸光光度法について検討した.Tris/HCl緩衝液を用いる弱塩基性域において,非イオン性界面活性剤のTriton X-405,フッ化ナトリウム共存下,色素としてOCPF,金属イオンとして鉄(III)を用いることにより,測定波長615 nmにおいて,0.1~1.2 μg/mL濃度範囲のへパリンナトリウムを,見かけのモル吸光係数(ε)がε≒4.6×106 L mol−1 cm−1の簡便で高感度な吸光光度定量法を開発することができた.本操作における相対標準偏差(RSD)はRSD=1.33%(n=5)と再現性にも優れていた.また,本操作法は,共存物質の影響も少なく実試料中のへパリンナトリウムの定量に応用できることが示唆された.更に,本法を低分子ヘパリン及び関連する生体関連物質のコンドロイチン硫酸,D-グルクロン酸などに適用したところ,いずれも良好な検量線を得ることができた.
技術論文
  • 田中 雅人, 大国 英人, 足立 勝彦, 津村 朋昭, 廣川 健, 伊藤 一明
    原稿種別: 技術論文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 879-884
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    イオンクロマトグラフィー(IC)による湖水及び河川水中の無機態窒素(亜硝酸イオン,硝酸イオン,アンモニウムイオン)の同時定量を検討した.亜硝酸イオン,硝酸イオンは,分離カラムとしてDDAB(ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド)を平衡吸着させたシリカ一体モノリス型ODSカラム,溶離液として0.5 M塩化ナトリウム+5 mMリン酸緩衝液(pH 5.0)を用いて分離された後に測定波長225 nmで直接検出された.一方,アンモニウムイオンは,ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムと1-ナフトールを用いたポストカラム反応による生成物として測定波長710 nmで検出された.試薬濃度,pH,反応コイル長,溶離液の流量等を検討し,測定システムを最適化した.各イオンの検量線は,0~10 mg/Lの範囲で良好な直線性(R2=0.998以上)を示した.亜硝酸イオン,硝酸イオン,アンモニウムイオンの検出限界値(S/N=3)は,それぞれ0.2,0.7,2.7 μg/Lであった.繰り返し精度(各イオン濃度0.1 mg/L,n=5)は,0.15% 以下(保持時間),1.13% 以下(ピーク面積),0.88% 以下(ピーク高)であった.本法を湖水及び河川水中の各イオンの同時定量に適用した.その添加回収率は94~108% であった.
総合論文
  • 鈴木 祥夫, 藤川 敬浩, 中野 信夫, 寺内 靖裕, 鈴木 孝治
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 885-894
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    住宅あるいは学校内装材の化学物質が原因とされる目や喉の痛み,あるいはアトピー性皮膚炎の悪化といった健康被害,いわゆる「シックハウス症候群」あるいは「シックスクール症候群」が問題視されている.著者らは,シックハウスの原因物質として挙げられるホルムアルデヒドの高感度,高選択性かつ簡易的な分析手法の確立に着目し,ホルムアルデヒドだけと選択的に反応し,発色する新規分析試薬の開発に成功した.更に,その応用展開として,同試薬を用いた検知タブを開発し,試験紙光電光度法を利用したハンディ型のホルムアルデヒド簡易測定器「FP-30」とホルムアルデヒド検出用試験紙「ドクターシックハウス」の実用化に成功した.ここでは,分析試薬及び各分析装置の技術的な説明について詳述する.
  • 諏訪 雅頼, 渡會 仁
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 895-902
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    ナノ・マイクロメートルサイズの微粒子は自然界に多く存在し,重要な役割を担っているにもかかわらず,現在それらに対する非浸襲な分析方法が極めて限られている.著者らの研究グループでは,物理的外場による微小作用力を利用した微粒子の新規な分離分析法の開発を行ってきている.磁気泳動法は,外部場に不均一磁場を用いた泳動分析法であり,単一微粒子に対する高感度な磁化率測定法である.本論文では,磁気泳動の原理と大きな磁場勾配の作成,二つの応用例について報告する.測定感度を大きくするため超伝導磁石と一対のポールピースを用いて大きな磁場勾配を作成し,磁気泳動挙動を観測する装置を作製した.この装置を用い,界面に常磁性のDy(III)錯体を吸着した液滴の磁化率を測定し,そのサイズ効果を観測,界面のDy(III)錯体の定量に成功した.また,Co-Feプルシアンブルー類似体の光誘起スピン転移挙動を磁気泳動法から観測することができた.
報文
  • 大畑 昌輝, 城所 敏浩, 倉橋 正保, 日置 昭治
    原稿種別: 報文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 903-910
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    RoHS指令対応重金属分析用ABS樹脂ディスク認証標準物質(NMIJ CRM 8105-a,8106-a,8115-a及び8116-a)について,エネルギー分散型蛍光X線(ED-XRF)分析法を用いて,ディスク内の重金属の均質性,重金属の蛍光X線感度の比較,及び長時間のX線照射に対するHgの安定性について評価した.ED-XRF分析法を用いてディスク間及びディスク面内の重金属の均質性を見積もり,ディスク内の重金属の均質性とした.これは化学分析を行って評価した重金属の均質性とほぼ同等であった.異なる4種類のABS樹脂ディスク認証標準物質について,ED-XRF分析法を用いて得られたCd,Cr,Pbの蛍光X線感度(単位濃度当たりの蛍光X線強度)の比較を行った.その結果,共存物による質量吸収やディスクの厚さの違いなどに起因して,蛍光X線感度が変化する可能性が示唆された.ED-XRF分析法を用いた長時間のX線照射に対するABS樹脂ディスク内のHgの安定性について検討を行った結果,本ABS樹脂ディスク中のHgは十分安定であることが確認された.
  • 石田 智治, 秋吉 孝則
    原稿種別: 報文
    2010 年 59 巻 10 号 p. 911-915
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    製造現場における,高密度な原子蒸気量のモニタリングを通じた品質管理の潜在ニーズを満足するため,波長可変レーザーを光源とした原子吸光分析法(AAS)の検討を行った.AASは汎用性が高く,装置構成が単純であるという利点がありながら,光源であるホローカソードランプ(HCL)の光強度が弱いことによるダイナミックレンジの狭さのために用途が限られている.そこで,波長可変レーザーをAAS光源として適用する検討を行った.レーザーの中心波長をMnの吸光極大と一致させた場合,通常のAASと比較して100倍以上の高い吸光度を測定可能であった.実験結果は,高吸光度領域においては濃度ではなく,濃度の対数と吸光度が直線関係となることを示した.シミュレーションの結果もこれを支持したことから,新たなAASの可能性が示された.
アナリティカルレポート
  • 森田 絵美, 中村 栄子
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2010 年 59 巻 10 号 p. 917-920
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    A methyl benzoate extraction procedure was studied for determining small amounts of phenol compounds in waste in the 4-aminoantipyrine spectrometry. The proposed procedure was as sensitive as the typical chloroform extraction procedure. The precision of repeated tests (n = 4) was ca. 0.7% on phenol solution (0.20 μg as phenol/mL). The detection limit was 0.004 μg as phenol/mL. Good results were obtained in recovery tests using both waste water and river water.
  • 川瀬 聡, 杉本 賢一, 藤原 梨斉, 小野 さとみ
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2010 年 59 巻 10 号 p. 921-926
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    Titania powders with different crystallinity were prepared from alkoxide-derived amorphous titania powders by heat-treatments at temperatures of less than 600°C. The amorphous and anatase contents of titania powders were analyzed by measuring the heat of crystallization in DSC and by X-ray diffraction measurements with the Rietveld method. Amorphous powders showed an exothermic peak due to the crystallization of amorphous to anatase at around 360°C in DSC. The heat of crystallization was 163 J/g. The amorphous contents of titania powders decreased with an increase of the heat-treatment temperature. On the other hand, the amorphous powder began to crystallize under a heat treatment at 300°C in the XRD profile. The intensity of diffraction lines attributed to anatase became stronger with an increase of the heat-treatment temperature. The amorphous contents of titania powders decreased with the heat-treatment temperature in an analysis of the Rietveld method. There are linear relationships between the amorphous contents and the temperature in both results from DSC and the Rietveld methods. We examined the relationship between the crystallinity of the tiatnia powders and their photocatalytic activity. The photocatalytic performances of titania powders were evaluated upon the removal of acetaldehyde. The results showed that the photocatalytic activity of titania powders increased with an increase of the anatase contents.
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