分析化学
Print ISSN : 0525-1931
6 巻, 4 号
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  • マイクログラム量のアンチモンの分析化学的研究(第3報)
    松浦 二郎, 戸村 静江
    1957 年 6 巻 4 号 p. 205-210
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アンチモンのロ紙クロマトグラフィーを塩酸を加えたブタノール溶媒で行うと,4種のクロマトグラム・ピークが見られる.これらのピークは試料および展開溶媒の処理により,その大きさが異る.あらかじめ塩化アンチモンの濃塩酸溶液を酸化した試料(クロルアンチモン(V)酸),または,塩化アンチモン(III)試料では,塩酸・ブタノール溶液により酸前線に最大のピークが生ずる.5価のクロル・アンチモン酸が展開中,または試料保存中加水分解をうけると,原点におけるピークの大きさが増す.これは5価のクロル・アンチモン酸の加水分解生成物と考えうる.またクロル・アンチモン酸の加水分解とその逆の反応の速さが遅いために,酸前線と原点との中間に幅の広い,ピークが生じ,その位置は正確に定めにくい.さらに酸前線の前(ブタノール溶媒層)にも小さいピークがあり,これはクロル・アンチモン酸がブタノール層により抽出された部分と考えた.放射性同位体124Sbを用い,クロル・アンチモン(V)酸の加水分解によるアンチモンのクロマトグラムの異常性を明らかにした.
  • 岩崎 岩次, 桂 敬, 吉田 稔, 樽谷 俊和
    1957 年 6 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    磁鉄鉱およびチタン鉄鉱に含まれる元素としては,Fe,Tiが主であるが,ほかに微量成分としてV,Mn,Ni,Crなどが含まれ,また不純物としてSiO2が混入する.砂鉄利用のためには,Fe,Ti,V,MnおよびSiO2を正確迅速に定量することが望ましいので,主成分に容量分析,微量成分には比色分析を用いた.
    Fe2+の定量には試料を硫酸とHFで分解し硼酸で過剰のHFをマスクしてKMnO4で滴定する.Fe3+とTiは,Fe2+を定量した液をZn-Hgで還元し,KMnO4で滴定して全鉄とTiを求め,再び還元してFe3+標準溶液で滴定しTiを求める.必要ならばVの補正をする.
    Vは試料をNa2CO3で融解し,オキシンで分離後燐タングステン酸ナトリウムを加えて発する黄色を比色する.Mnは硫酸とHFで分解し硼酸を加えKIO4でMnO4-として比色する.SiO2についても比色法を用いた.以上主成分だけなら,約30分で充分正確に定量し得る.
  • 品川 睦明, 村田 寿典, 吉田 敬
    1957 年 6 巻 4 号 p. 215-219
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    鉛合金中の錫を分析するために鉛,アンチモンおよび錫の混合試料を酒石酸支持でポーラログラフ分析し次のことがわかった.
    (1)酒石酸中でSn4+は還元波を生じないがSn2+は酸化,還元波を生ずる.その半波電位は溶液のpHによって変化するが酒石酸0.1~0.5M,pH3~4溶液でSn2+の酸化波は鉛およびアンチモン波に妨害されず波高が測定できる.
    (2)錫の還元法を検討しその結果生ずる共存塩,塩化ナトリウムおよび塩化アルミニウムの影響を調べ定量可能な条件を知った.
    (3)錫5~50×10-4M濃度においてSn2+の酸化波高と錫の濃度は比例性がある.
    (4)合成試料について分析した結果錫含有量数%以上の鉛合金中の錫を10%以下の誤差で定量できる.
  • 濾紙微量電気泳動法による医薬品の分析(第4報)
    木下 彌兵衛, 森山 繁隆, 清水 敏子
    1957 年 6 巻 4 号 p. 219-224
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    6種のスルファミン類とアセトアニリド,およびフエナセチンについて,Clark-Lubs,Sorensen,およびKolthoffの3種の緩衝液を用いて,それぞれ,pH3~9にわたる,おのおののpH値に対する泳動距離を求め,その距離の差と試薬による呈色とによって,それぞれを判定する.ときには泳動距離が接近していて化合物をそのまま泳動させると,泳動像が分離しないので,確認が困難になることがある.そのようなときは希塩酸であらかじめ加水分解してから,再び泳動させると,像が異った位置に現れるから,前の泳動位置と,この像の位置とから考えて,判定することができる.泳動像の位置は,パラヂメチルアミノベンツアルデヒドの硫酸酸性溶液を用いて検出すると,スルファミン類は燈色となり,0.2γまで,アニリド類は黄色となり,0.25γまで確認することができる.
  • EDTA錯塩滴定法
    遠藤 芳秀, 谷原 秀太郎, 服部 邦宏
    1957 年 6 巻 4 号 p. 224-228
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    鉄鉱石中のライム,マグネシア定量にEDTAを用いて実験した.分析方法は鉄をエーテル,水銀陰極またはイオン交換樹脂分離法などを用いて分離し,更に残存する鉄をアンモニア水で分離し,その溶液を二分して,一方からライム,マグネシアの合量を,他の一方からライムをシュウ酸塩として濾別した溶液からマグネシアを,それぞれEBTを指示薬としてEDTA溶液で滴定し,両者の差からライムを算出した.この場合被検液中に共存するMnは大過剰のKCNで陰蔽可能であり,また各分離法で共存するその他の元素および塩類も本操作の条件では影響がなかった.その他マグネシア単独定量の場合鉱石中のライムが微量な場合シュウ酸塩の熟成に長時間を要するので一定量のライムを加えて熟成を促進させた.以上実験の結果精度および迅速度の点で満足すべき結果が得られたので報告する.
  • 弗化チタン水素酸-過酸化水素試薬を用いる分析(第1報)
    深間内 久雄, 関口 美恵子, 飯吉 和子
    1957 年 6 巻 4 号 p. 229-232
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    弗化チタン水素酸と過酸化水素の混液は,チタンよりも安定な弗素錯イオンを作る珪酸のような物質をこれに加えると,過チタン酸の生成により黄色を呈する.ゆえにこの混液は珪酸などの呈色試薬になると考えられる.弗化チタンソーダ溶液に過酸化水素を混和しただけで少量の過チタン酸を生じて着色するから,呈色試薬として用いるには,モル比Na2TiF61:NaF 4:H2O2 1のごとき組成のものがよい.また試薬と珪酸の反応は1N以上の酸性で行うのが鋭敏で結果が一定である.対照液の存在において確認限度は,弱HF酸性でSiO2 1mg/5 cc約1.2N H2SO4,酸性でSiO2 0.05mg/0.6ccおよびSiO20.5mg/10 ccであった.光電比色計を用いると,波長420mμ,液層1cm,1NH2SO4酸性において,SiO20.1mg/10ccまで検出された.試薬はガラスと反応するから,試薬容器,試験管,ビユレット,光電比色計用セルなどはすべて合成樹脂製品を用いた.
  • 木村 伸
    1957 年 6 巻 4 号 p. 232-237
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    鉄鋼のガス分析においてSamplingということは,もっとも大きな問題であり,巣,偏析などがなく,かつそのガス組成を適確にしめす分析値を得ることが大切である.これらの問題を究明するためにSamplingのさいの分析試料用金型の大きさの問題およびこの鋳込試料より分析試料を採取する場合の試料採取位置について検討した結果,Samplingのさいの金型は小さい方が偏析が少なくてよい.また鋳込試料より分析試料の採取位置については,その試料の中央部より採取するのが偏析が少なく,かつ試料全体を代表する平均値が得られることを知った.
  • 異種ハロゲンを含む有機化合物中の沃素のセミミクロ分離定量
    近藤 朝士
    1957 年 6 巻 4 号 p. 238-240
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    異種ハロゲンの分離定量法を確立することは,有機ハロゲン元素分析の一課題であるが,その第一段階として塩素または臭素と共存する沃素をセミミクロスケールで選択的に直接定量する方法を考案した.(1)試料の分解はミクロボンベ・過酸化ソーダ法をもちいるが,これに若干の改良を加えて分解を完全にした.(2)分解内容物を水で溶かし出したとき,液中に存在する過酸化水素は白金箔を入れて煮沸することにより分解除去する.(3)液性を中性にしたのち液中の固形不純物は濾過により除く.(4)かくして製した試料液に濃塩酸を加えてpHを1以下にたもち,塩化パラジウム溶液とヒドラジン液を加えて析出した沈澱を一日後に濾集,乾燥,秤量する.生成する沃化パラジウムの沈澱量が7mg以上になるように,試料は8~25mgを秤取する.誤差は理論値に対して±0.3%の範囲である.
  • 入村 達雄
    1957 年 6 巻 4 号 p. 241-242
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ヘンペルあるいはオルザットの方法を応用し得ない各種炭化水素ガスの分析法としてはPodbielniak法が有名であるが装置が複雑,操作が煩雑なのが欠点である.
    Campbell,J.J.Sebastian,H.C.Howardらの温度-蒸気圧曲線測定による分析方法は試料約1cc使用,副資材は液体空気約2l,所要時間は約3時間で,便利な方法である.著者はこの方法用の簡単な装置を試作したので報告する.
  • 荒木 峻
    1957 年 6 巻 4 号 p. 242-243
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
  • 遠藤 芳秀, 服部 邦宏
    1957 年 6 巻 4 号 p. 243-245
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    塩基性平炉鋼滓中のマグネシア定量法は従来より種種あるが,いずれも迅速度の点で満足すべきものがなかった.筆者らは,これにEDTA錯塩法を応用して好結果を得たので,その概要を報告する.すなわち試料を鉱酸で分解後酢酸アンモン,シュウ酸アンモンでカルシウムを沈澱させこれを濾別後濾液に亜硫酸ナトリウム,シアン化加里,酒石酸を加えて,妨害元素の影響を隠蔽し,EDTAで滴定する方法である.
  • 菅原 健
    1957 年 6 巻 4 号 p. 246-255
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    私は昨年欧洲諸国の水化学研究の情況の視察と研究上の連絡のため,ロックフェラー財団の授助をうけて7月下旬東京発,フィンランド・ヘルシンキでの国際理論および応用陸水学会議に出席したのち,芬,諾,瑞,丁,独,白,仏,英の大学研究所などを訪ね,米国をまわって12月15日に戻った.北欧の見聞について肩のこらぬような記事をとの御注文で書いて見たが,肩もこらぬうちに読み飽きられるのでないかと,むしろそれを心配してあらかじめ申訳を記しておくことにする.
  • 浜口 博
    1957 年 6 巻 4 号 p. 256-260
    発行日: 1957/04/05
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    人工放射能が発見されてから間もなく,試料中の痕跡元素を検出する目的で,試料を適当な高エネルギー粒子(陽子,重陽子,アルファ粒子,中性子など)またはガンマ線などで衝撃して,目的の元素に人工放射能を附与し,その放射能の強さを測定することによって分析をおこなう方法,すなわちActivation analysis(放射化分析)が擡頭してきた.1936年にHevesy,Leviがイットリウム試料中の少量のジスプロシウムを,また1938年にガドリニウム試料中のユーロピウムを検出するのに中性子による放射化をもちいたのが最初で,それ以来今日まで多くの研究が報告されている.
    放射化分析に関する総説にはBoyd,Tayler,Havens Leddicotte,Reynolds,Smalesのほか斎藤信房が本誌によい総説を寄せられている.
    放射化分析の利点の一つとして,ひとたび衝撃がおわった後では定量しようとする目的の元素による汚染のおそれがないということが挙げられる.それゆえ10-8g程度以下の極微量の定量分析においては放射化分析はきわめて有力である.
    筆者はシカゴ大学にあって隕石中の微量ウランの定量に放射化分析を適用して,満足すべき結果をえたので,それについて申しのべたい.この問題にとりくんだ事情は次のごとくである.
    隕石のウラン含量については,従来多くの報告があるが,シカゴ大学H.C.Ureyの見解によれば,
    (1)従来の値は大きすぎるように考えられる
    (2)ウランは強電気的陽性元素であるから主としてケイ酸塩相(隕石)にあつまり,金属相(隕鉄)にはほとんど分配されないものと考えられるが,従来のデータによると両相ともに同じオーダーの値が与えられているのは不合理におもわれる.
    うえの二つの理由から隕石中のウラン含量の再検討が強く要望されたのである.
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