人工放射能が発見されてから間もなく,試料中の痕跡元素を検出する目的で,試料を適当な高エネルギー粒子(陽子,重陽子,アルファ粒子,中性子など)またはガンマ線などで衝撃して,目的の元素に人工放射能を附与し,その放射能の強さを測定することによって分析をおこなう方法,すなわちActivation analysis(放射化分析)が擡頭してきた.1936年にHevesy,Leviがイットリウム試料中の少量のジスプロシウムを,また1938年にガドリニウム試料中のユーロピウムを検出するのに中性子による放射化をもちいたのが最初で,それ以来今日まで多くの研究が報告されている.
放射化分析に関する総説にはBoyd,Tayler,Havens Leddicotte,Reynolds,Smalesのほか斎藤信房が本誌によい総説を寄せられている.
放射化分析の利点の一つとして,ひとたび衝撃がおわった後では定量しようとする目的の元素による汚染のおそれがないということが挙げられる.それゆえ10
-8g程度以下の極微量の定量分析においては放射化分析はきわめて有力である.
筆者はシカゴ大学にあって隕石中の微量ウランの定量に放射化分析を適用して,満足すべき結果をえたので,それについて申しのべたい.この問題にとりくんだ事情は次のごとくである.
隕石のウラン含量については,従来多くの報告があるが,シカゴ大学H.C.Ureyの見解によれば,
(1)従来の値は大きすぎるように考えられる
(2)ウランは強電気的陽性元素であるから主としてケイ酸塩相(隕石)にあつまり,金属相(隕鉄)にはほとんど分配されないものと考えられるが,従来のデータによると両相ともに同じオーダーの値が与えられているのは不合理におもわれる.
うえの二つの理由から隕石中のウラン含量の再検討が強く要望されたのである.
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