ヒ素超集積植物として知られるモエジマシダにCr(VI)とCr(III)溶液を添加して栽培し,放射光蛍光X線分析を行った.添加には,K
2Cr
2O
7とCrCl
3・6H
2Oを溶解して調製した50 ppmのCr(VI)とCr(III)溶液を用いた.放射光蛍光X線イメージングによって,シダの組織に蓄積されたクロムの分布を可視化した.葉,茎,根のすべての部位にクロムは蓄積されており,根において最も高濃度に蓄積されていた.また生体内において有害元素の無毒化に寄与すると考えられている硫黄化合物に着目し,クロムや硫黄の化学形態についてX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルから検討を行った.その結果,植物体内に取り込まれたCr(VI)はいずれも毒性のないCr(III)に還元されていた.Cr(III)を添加した場合,価数変化することなくCr(III)として蓄積されていた.つまりCr(VI)とCr(III)のどちらを添加した場合においても,Cr(III)の化学種として蓄積されていることが明らかとなった.一方,植物の必須元素である硫黄は植物体内で様々な化学種として存在するが,Cr(VI)やCr(III)を添加すると,根では硫酸イオンのようなS(VI)の化学種の割合が減少して,グルタチオンやシステインのようなS(-II)の割合が増加していた.このように蛍光XAFSスペクトルの解析は,有害元素の無毒化機構の解明に有効な知見を与えることが示された.
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