分析化学
Print ISSN : 0525-1931
64 巻, 11 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
年間特集「生」:総合論文
  • 庭野 道夫, 平野 愛弓
    原稿種別: 年間特集「生」:総合論文
    2015 年 64 巻 11 号 p. 793-800
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/12/09
    ジャーナル フリー
    著者らは赤外分光法(IRAS)を用いてSi半導体表面・界面反応を調べている.分析の表面感度を上げるために用いた手段が多重内部反射(MIR)法である.この方法では,Si結晶中を赤外線が多数回内部反射させるため,内部反射回数を数十回,数百回と大きくでき,高感度計測が可能である.また,Si結晶の内側から表面を観察するために,様々な外部環境下でSi表面上または表面付近の様々な反応を「その場(in-situ)」で解析できる.本稿では,このMIR-IRAS法の特徴を活かして行った,非標識バイオ計測の応用例を紹介する.この方法では,赤外吸収スペクトルの分析から生体分子間相互作用による構造変化を精度よく検知できるため,DNA,タンパクなどの様々な生体分子間相互作用や細胞の動的過程を非標識でその場観察できる.
年間特集「生」:報文
  • 本田 真央, 北島 信行, 阿部 知子, 梅村 知也, 保倉 明子
    原稿種別: 年間特集「生」:報文
    2015 年 64 巻 11 号 p. 801-810
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/12/09
    ジャーナル フリー
    ヒ素超集積植物として知られるモエジマシダにCr(VI)とCr(III)溶液を添加して栽培し,放射光蛍光X線分析を行った.添加には,K2Cr2O7とCrCl3・6H2Oを溶解して調製した50 ppmのCr(VI)とCr(III)溶液を用いた.放射光蛍光X線イメージングによって,シダの組織に蓄積されたクロムの分布を可視化した.葉,茎,根のすべての部位にクロムは蓄積されており,根において最も高濃度に蓄積されていた.また生体内において有害元素の無毒化に寄与すると考えられている硫黄化合物に着目し,クロムや硫黄の化学形態についてX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルから検討を行った.その結果,植物体内に取り込まれたCr(VI)はいずれも毒性のないCr(III)に還元されていた.Cr(III)を添加した場合,価数変化することなくCr(III)として蓄積されていた.つまりCr(VI)とCr(III)のどちらを添加した場合においても,Cr(III)の化学種として蓄積されていることが明らかとなった.一方,植物の必須元素である硫黄は植物体内で様々な化学種として存在するが,Cr(VI)やCr(III)を添加すると,根では硫酸イオンのようなS(VI)の化学種の割合が減少して,グルタチオンやシステインのようなS(-II)の割合が増加していた.このように蛍光XAFSスペクトルの解析は,有害元素の無毒化機構の解明に有効な知見を与えることが示された.
総合論文
  • 井上 嘉則
    原稿種別: 総合論文
    2015 年 64 巻 11 号 p. 811-819
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/12/09
    ジャーナル フリー
    アミノカルボン酸型キレート樹脂における錯形成能,吸脱着速度及び元素選択性の改善を目指し,各設計因子の捕捉特性への影響を精査した.基材樹脂の親水化及びスペーサを介して配位子の導入により,配位子本来の錯安定度定数の序列と一致した捕捉特性が得られた.この知見を基に,カルボキシメチル化ポリエチレンイミンを配位子とするキレート樹脂を開発した.多座配位が可能な官能基構造の採用により捕捉可能pH範囲を拡大すると共に,アルカリ土類金属元素を捕捉しないという特徴的な捕捉機能を達成した.このキレート樹脂を環境水や尿中の金属元素の固相抽出に適用したところ,アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の妨害を受けずに対象金属元素を効率良く抽出可能であった.また,カルボキシメチル化ポリエチレンイミンをレーヨンと混合紡糸した繊維状金属元素吸着剤も開発し,上記特徴的捕捉機能が繊維状金属元素吸着剤においても発現することを確認した.
  • 小谷 明, 楠 文代, 袴田 秀樹
    原稿種別: 総合論文
    2015 年 64 巻 11 号 p. 821-833
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/12/09
    ジャーナル フリー
    血中薬物の動態分析に適用できる高感度な分離定量法として,アンペロメトリック様式を活用した電気化学検出高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ECD)を開発した.炭素電極を用いた電気化学検出キャピラリー液体クロマトグラフィー(CLC-ECD)によりamolレベルのフラボノイド類を,ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)電極を用いたCLC-ECDによりfmolレベルのポリメトキシフラボン類を定量できた.酸に特異的な検出にキノンを利用してバルプロ酸及び遊離脂肪酸(FFA)のHPLC-ECDを,また塩基に特異的な検出にトロロックスを利用してテオフィリンのHPLC-ECDをそれぞれ開発した.各HPLC-ECDは,感度と特異性に優れる上に,微少量(10 μL程度)の血漿しょう試料で分析可能であった.血中薬物の動態分析へ応用し,時間─濃度プロファイルの取得や薬物動態パラメーターの算出に適用できることを示した.
報文
  • 永田 佳子, 阿南 ゆりえ, 金澤 秀子
    原稿種別: 報文
    2015 年 64 巻 11 号 p. 835-844
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/12/09
    ジャーナル フリー
    高血圧治療薬アムロジピンベシル酸塩を含む薬剤の単剤と配合剤間でbioavailabilityに違いが生じる可能性について,配合錠4剤中の各成分の溶出性とこれら4剤の製剤学的違いを溶出試験と高分解能X線顕微鏡による錠剤の3DX解析及び錠剤の硬度測定を行い検討した.配合錠中成分の定量は超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)の使用により,配合錠中2成分の4分以内での迅速分析を可能とした.試験した配合錠4剤中のアムロジピンベシル酸塩の溶出プロファイルを比較した結果,本研究で用いた配合錠は単剤と同様の挙動を示し,溶出性に関しては同等性が認められた.錠剤の3DX解析では,コーティング層の厚さ・粒子の分布についての観察が可能となった.単剤と配合剤とを比較した情報はいまだ乏しく医療現場においても必要とされている.
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