分析化学
Print ISSN : 0525-1931
64 巻, 5 号
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年間特集「生」:総合論文
  • 石原 量, 長谷川 和貴, 細川 和生, 前田 瑞夫
    原稿種別: 年間特集「生」:総合論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 319-328
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    病気の兆候を早い段階でとらえることは,予防・治療の両観点から大変重要である.そのためには,多くの人が定期的に受けられる,安価,簡便,かつ信頼のおける診断手法が求められる.近年,それらの要求にこたえる診断方法として,妊娠検査薬に代表される“その場検査”が注目を集めている.本稿では,マイクロチップを用いた,がんなどの疾患のその場検査の確立を目指し,サンプル溶液の注入に外部動力を必要としない自律駆動マイクロ流体チップと,バイオマーカーのシグナルを増幅する層流樹状増幅法を組み合わせ,バイオマーカーであるタンパク質や核酸の高速かつ高感度な検出を可能とした著者らのアプローチを紹介する.
年間特集「生」:報文
  • 西脇 奈菜子, 笠間 敏博, 石田 晃彦, 谷 博文, 馬場 嘉信, 渡慶次 学
    原稿種別: 年間特集「生」:報文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 329-335
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    著者らはこれまでに,光硬化性樹脂と抗体を固定化したビーズを組み合わせた,イムノアッセイによる疾病マーカー検出のためのイムノピラーデバイスと呼ばれるマイクロデバイスの開発を行ってきた.しかし,臨床診断に応用するためには,さらなる性能の向上が求められていた.そこで,イムノピラーデバイスの高性能化を目指し,抗体固定化担体の改良に取り組んだ.従来のイムノピラーデバイスはポリスチレンビーズに抗体を物理吸着により固定化してきた.本研究では,化学結合によりビーズ表面に抗体を固定化することのできるアフィニティビーズを用いたイムノピラーデバイスを作製し,C反応性タンパク質(CRP)の検出を試みた.インキュベーション時間とピラーの直径の検討を行った結果,全測定時間23分で,検出限界0.1 ng mL-1のCRPを測定することが可能となり,従来のデバイスよりも感度が100倍高いことが明らかとなった.本イムノピラーデバイスの長期保存安定性の評価を行ったところ,9か月以上保存可能であることが分かった.以上により,従来よりも優れた感度を有する,高性能なイムノアッセイ用マイクロデバイスを開発することができた.
年間特集「生」:アナリティカルレポート
  • 樋口 賢哉, 大河原 譲
    原稿種別: 年間特集「生」:アナリティカルレポート
    2015 年 64 巻 5 号 p. 337-340
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    Using the same sample solution as the one adopted in the quantitative analysis of nitrate ion in lettuce, which we conducted by way of a prior verification of the analytical method stated herein, simultaneous determinations of potassium ion (K+), magnesium ion (Mg2+) and calcium ion (Ca2+) in lettuce were performed. The concentration of each of the said cations in the sample solution extracted from both leaf lettuce and head lettuce was determined by means of ion chromatography. As a result, the relative standard deviations of the quantitative values were all within five % for both leaf lettuce and head lettuce. Also, our adequacy evaluation of this analytical method (conducted in accordance with the "Guideline for the Adequacy Evaluation of Methods for Testing Metal Contents in Food" prescribed by the Ministry of Health, Labour and Welfare) found the trueness, repeatability and precision within the laboratory for each of the said cations to be: 108.6%, 1.3% and 12.6% for K+; 96.2%, 1.8% and 8.5% for Mg2+; and 104.0%, 1.8% and 5.7% for Ca2+ respectively, attaining the pertinent target values indicated in the said guideline. Based on the above, we deem this analytical method to be effective for determining the concentrations of K+, Mg2+ and Ca2+ in lettuce.
年間特集「金」:報文
  • 藤崎 渉, 澤木 佑介, 横山 哲也, 山本 伸次, 丸山 茂徳
    原稿種別: 年間特集「金」:報文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 341-348
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    顕生代に起きたとされる5度の大量絶滅の原因を明らかにすることは生命と地球の共進化を明らかにする上で非常に重要な課題である.特に約2億年前のトリアス紀─ジュラ紀境界(T-J境界)で起きた大量絶滅の原因として,隕石衝突説や大規模火成活動説の相反する2説が主張されてきた.本研究ではこの大量絶滅事変の原因を特定するため,T-J境界前後の遠洋深海層状チャートの間に挟まれている頁岩を採取し,その内の28試料を用いて高精度白金族元素濃度測定を行った.Pd/Pt比とIr/Pt比の関係性,及び白金族元素濃度パターンから,T-J境界前後の白金族元素の濃集は大規模火成活動に伴う玄武岩からの混入によって説明できることが明らかになった.また化石記録と比較すると,白金族元素濃度(OsとPd)の最大濃集層はジュラ紀放散虫が出現するチャート層の1層準上位の頁岩層であることも明らかになった.これらのことは,T-J境界絶滅前後において大規模火成活動の寄与が大きかったことを示す.
報文
  • 有我 洋香, 田中 美穂
    原稿種別: 報文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 349-358
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)を用い,ケイ酸と金属イオンの錯体の溶存状態を正イオン,負イオンの両イオンについて観測した.金属塩化物(MCl2)溶液及びケイ酸とMCl2の溶液において,検出された化学種を比較し,ESI-MS内における反応機構を推測した上で,錯体の安定性について新たな情報を得た.正イオンにおいては,金属元素による加水分解のされやすさを示す結果が得られた.MCl2溶液にケイ酸を添加した溶液においても,金属元素の加水分解のされやすさを反映した結果が得られ,さらに,2族元素間でケイ酸と錯形成しやすい元素が異なることを確認した.負イオンでは,カルシウムイオン(Ca2+)及びナトリウム(Na)イオンとケイ酸の錯体が確認され,これらの元素とケイ酸の錯体は溶存化学種であると判断した.以上のことから,ケイ酸と金属イオンの錯体の安定性は金属イオンの大きさに依存し,Ca2+及びNaとの安定性が高いことを示唆する結果が得られた.
技術論文
  • 野田 博行, 尾形 健明, 真鍋 礼男
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 359-362
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    ポリブチレンテレフタレート(PBT)製白色成形部品の実用的な温度における熱酸化劣化度を紫外線励起蛍光画像法により検討した.熱酸化劣化度は,反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)で観測されるメチル4-メトキシブチレート(MMB)の生成量と蛍光画像の輝度ヒストグラムから定量した蛍光強度との関係から評価した.その結果,PBT製成形部品の蛍光強度はMMB量の増加とともに直線的に増大することが分かった(120~180℃).これらの結果から,本法が非破壊で汎用的なPBT劣化度評価手法として展開できる可能性が示唆された.
  • 金子 毅, 野島 裕香, 鈴木 雄亮
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 363-369
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    犯罪にかかわる植物油のガスクロマトグラフ分析のための簡便で迅速な手法として,固相マイクロ抽出(SPME)のファイバー部分をステンレス鋼製のマイクロコイルに置き換えたマイクロコイルサンプリング装置(MCSD)を開発した.この手法では,まず,マイクロコイルの先端を微量の油に浸し,毛細管現象によってマイクロコイル内に採取した後,これをガスクロマトグラフへ直接導入し,注入口の温度で熱脱離した油脂中のステロールなどの不けん化物を測定する.次に,マイクロコイル上に残った油脂に水酸化トリメチルフェニルアンモニウム溶液を添加し,これをガスクロマトグラフへ直接導入する.注入口で起こる熱化学分解反応により油脂を構成している脂肪酸をメチルエステル化体に変換し,これを測定する.マイクロコイルを使用するMCSDは,微量な植物油の法科学的識別に有用である.
アナリティカルレポート
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