タンデム四重極型誘導結合プラズマ質量分析法を用いて貴金属元素{NME,(Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt, Au)を含む}67元素の網羅的測定を行った.最適化したNH
3ガス条件下で共存するマトリックスによるNMEへのスペクトル干渉を低減することができた.分析の妥当性は河川水の認証物質であるSLRS-5で確認し,NMEを含め認証値,報告値,推定値と良い一致を示し,ng L
−1以下レベルの定量を分離・精製をせずに行うことができた.最適化した分析条件を島根県東部の湧水及び河川水に適用し,67元素の網羅的測定を行った.まずは,クラスター分析を用いて元素を統計学的に分類したところ,RhがNa, Mg等を含むクラスターに分類されるなど,必ずしも化学的性質を反映した結果とは言えなかった.次に,地球化学的な視点から,67元素の存在度を化学的に分類したところ,四つの基本パターンとその組合せに分類することができ,その元素パターンの地理空間分布は地質分布と良い一致を示した.一方で,化学的な観点からは説明できないRhの地理空間分布は,道路密度の地理空間分布と良い一致を示しており,排気ガス浄化触媒との関連が示唆された.
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