2008年~2014年冬季において西日本の四国・高知県の吉野川資源保養林である梶ヶ森山頂(標高1400 m)で採取した新鮮な樹氷及び雪の化学組成(Na
+, NH
4+, K
+, Mg
2+, Ca
2+, F
−, Cl
−, NO
2−, Br
−, NO
3−, PO
43−, SO
42−)及びPb,Cdを測定した.同日に発生した樹氷と雪の[Pb]–[Cd]プロットにおいて同一起源を示す強い正の相関性(
r2=0.9665,[Pb]/[Cd]=35±1.9)があり,[Pb]/[Cd]値は山東省の排出量比(37)に近かった.[Pb]又は[Cd]の[nss-SO
42−]に対するプロットでは雪において良好な正の相関性があったが樹氷では良くなかった.雪での相関関係を基に樹氷の[Pb]濃度から計算された[nss-SO
42−]値以上に過剰量を含む樹氷もあった.これは中国遼寧省南部での石炭燃焼と異なる起源からの影響を示唆している.2014~2012年の樹氷及び2014年~2013年の雪では後方流跡線が遼寧省-吉林省南部,渤海周辺を通過したとき,[Pb]–[Cd]プロットにおいてそれぞれ(
r2=0.9038,32±3)及び(
r2=0.9173,38±3)の良好な正の相関関係があった.[nss-SO
42−]に対するプロットでは,樹氷においてだけ独立した二つの良好な正の相関が得られた.同日採取試料の場合と同様に計算された過剰な[nss-SO
42−]は北東中国の都市エアロゾルが影響したものと考えられた.韓国周辺を後方流跡線が通過したときに得られた,正の相関(
r2=0.9355,15±2)の[Pb]/[Cd]値は韓国ソウルに近い田舎で採取した冬季エアロゾル中の値(14)に対応していた.
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