分析化学
Print ISSN : 0525-1931
66 巻 , 3 号
特集 : 放射線と分析化学-事故後5年
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
分析化学総説
  • 熊本 雄一郎, 青山 道夫, 濱島 靖典, 永井 尚生, 山形 武靖, 村田 昌彦
    原稿種別: 分析化学総説
    2017 年 66 巻 3 号 p. 137-148
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    2011年3月の福島第一原子力発電所事故によって放出された放射性セシウムが,2014年末までの約4年間にどのように北太平洋に広がっていったのかについて,著者らが得た最新の観測結果も含めてレビューした.日本列島南方を東向する黒潮・黒潮続流に由来する黒潮フロントの北側,すなわち混合海域及び亜寒帯域に大気沈着または直接流出した放射性セシウムは,東向きに流れる北太平洋海流に沿って深度約200 m程度までの海洋表層中を,日本近海から東部北太平洋のアラスカ湾まで運ばれた.一方,黒潮フロントのすぐ南側の亜熱帯域北部に大気沈着した放射性セシウムは,冬季に同海域で形成される亜熱帯モード水の南への移流に伴って深度約200~400 mの亜表層を速やかに南方に運ばれた.これらの観測結果から,2014年末までに福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウムは西部北太平洋のほぼ全域に広がったことが明らかになった.
総合論文
  • 眞田 幸尚, 石崎 梓, 西澤 幸康, 卜部 嘉
    原稿種別: 総合論文
    2017 年 66 巻 3 号 p. 149-162
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波に起因した東京電力福島第一原子力発電所事故によって,大量の放射性物質が周辺に飛散した.事故直後より,放射線の分布を迅速かつ広範囲に測定する手法として,有人のヘリコプタを用いた空からの測定方法が適用されている.本手法自体は,1980年代に日本独自に研究開発されていたものの,事故直後に適用できる状態ではなかったためモニタリングしつつデータ解析手法の体系化・最適化を進めてきた.本稿では,事故後体系化した上空からの放射線モニタリング手法及び測定結果についてまとめる.
報文
  • 金野 俊太郎, 大河内 博, 勝見 尚也, 緒方 裕子, 片岡 淳, 岸本 彩, 岩本 康弘, 反町 篤行, 床次 眞司
    原稿種別: 報文
    2017 年 66 巻 3 号 p. 163-174
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    2012年より積雪期を除き1か月もしくは2か月ごと(2015年以降)に,福島県浪江町南津島の山林でスギと落葉広葉樹の生葉,落葉,表層土壌,底砂の放射性Cs濃度を調査した.福島市─浪江町間の走行サーベイでは,除染により空間線量率は急速に減衰したが,未除染の山林では物理的減衰と同程度であった.2014年以降,落葉広葉樹林では林床(落葉と表層土壌)で放射性Csは物理的減衰以上に減少していないが,スギ林では生葉と落葉で減少し,表層土壌に蓄積した.2014年までスギ落葉中放射性Csは降水による溶脱が顕著であった.2013年春季には放射性Csはスギ林よりも広葉樹林で表層土壌から深層に移行していたが,2015年冬季にはスギ林で深層への移行率が上回った.小川では放射性Csは小粒径の底砂に蓄積しており,一部は浮遊砂として流出するが,表層土壌に対する比は広葉樹林で2013年: 0.54,2015年: 0.29,スギ林で2013年: 1.4,2016年: 0.31と下がっており,森林に保持されていることが分かった.しかし,春季にはスギ雄花の輸送による放射性Csの生活圏への流出が懸念された.
  • 越智 康太郎, 藤井 健悟, 萩原 健太, 大渕 敦司, 小池 裕也
    原稿種別: 報文
    2017 年 66 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    事故により福島第一原子力発電所の原子炉内から放出された放射性セシウム(134Cs, 137Cs)は,福島県から北関東を中心に降下し,奥羽山脈に代表される標高の高い山々を境に,土壌における沈着量に有意な差異が見られたことが報告されている.本研究では,福島第一原子力発電所からの距離が等しい関東甲信越の二つの地点で土壌を採取し,土壌中放射性セシウムのモニタリングを,事故以前,事故直後,事故から数年後という三つの期間で行った.加えて,逐次抽出法による土壌中放射性セシウムの化学形態別分析を,事故直後,事故から数年後に行うことで,その挙動について中長期的な評価を行った.モニタリングの結果,2011年以降は福島第一原子力発電所事故由来の137Csが検出され,その化学形態が不溶性であるFe, Mn酸化物態または残留物態であったことから,その濃度に大きな変動は見られなかった.また,137Csの化学形態は対象地点の土壌の鉱物組成により異なることがわかった.
  • 古川 真, 松枝 誠, 高貝 慶隆
    原稿種別: 報文
    2017 年 66 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    オンライン固相抽出-誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)は,単独でICP-MSを使用するより大きな強度のシグナルを得ることができるが,それと同時に,分析対象物と同様に濃縮された共存物質が溶出し,プラズマに導入されることでシグナルが減少(減感)する場合がある.この問題を解決するために,計測されるシグナルを,内標準物質で補正する内標準補正シグナル積算法(ISCSI)を開発した.この方法は,クロマトグラム状のカラム濃縮・溶離ピークと,オンラインで添加された内標準元素の連続シグナルを計測し,過渡的に得られるシグナルを逐次,減感補正してピーク面積を得る手法である.本研究では,一例として,放射性ストロンチウム(90Sr)分析へと適用するとともに,環境水への90Sr添加回収試験を実施した.本法を使用しない場合,添加量に対し87% の値として得られたが,本法を使用することで103% を示した.また,0.4~2.0 ppq(2~10 Bq L−1)の90Sr溶液50 mLにおける繰り返し測定(n=10)ではRSD 5.2~12.6% と高い再現性を示した.
ノート
  • 堀田 拓摩, 浅井 志保, 今田 未来, 半澤 有希子, 斎藤 恭一, 藤原 邦夫, 須郷 高信, 北辻 章浩
    原稿種別: ノート
    2017 年 66 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    A Sr adsorption fiber was prepared for rapid analysis of 90Sr content in the fiber using radiation-induced emulsion graft polymerization and subsequent chemical modification. A polyethylene fiber with a diameter of 13 μm was first immersed in a methanol solution of an epoxy-group-containing vinyl monomer, glycidyl methacrylate (GMA), and polyoxyethylene sorbitol ester (Tween20) as a surfactant for the graft-polymerization of GMA. Octadecylamine was then bound to a polymer chain extending from the fiber surface, providing hydrophobicity to the polymer chain. Dicyclohexano-18-crown-6 (DCH18C6) was finaly impregnated onto the polymer chain via a hydrophobic interaction between the octadecyl moiety of the polymer chain and the cyclohexyl moiety of DCH18C6. The fiber surface structure, characterized by DCH18C6 molecules loosely entangled with polymer chains, allowed for the rapid adsorption of Sr ions at an adsorption rate of approximately 100-times higher than that of a commercially available Sr-selective resin (Sr Resin®).
  • 鈴木 究真, 渡辺 峻, 小野関(湯浅) 由美, 新井 肇, 田中 英樹, 久下 敏宏, 角田 欣一, 森 勝伸, 野原 精一, 岡田 往子 ...
    原稿種別: ノート
    2017 年 66 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    The accident of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant in March, 2011, released large amounts of radiocesium into the atmosphere, and contaminated the environment of Gunma Prefecture in eastern Japan. In particular, 640 Bq kg–1-wet of radiocesium concentration was found in wakasagi (Hypomesus nipponensis) in Lake Onuma on Mt. Akagi in August, 2011. Thus, to elucidate the body-size effect in weight-dependent and dynamics of radiocesium in the ecosystem of Lake Onuma, we determined the age of wakasagi, the body-weight class of the radiocesium concentration in wakasagi and the effective ecological half-life (Teff) of radiocesium in wakasagi 0+ from 2012 to 2016. The body-size effect was found for the 137Cs concentration of wakasagi fished from 2012 to 2015, i.e., the concentration of 137Cs increased with the increase in its body weight. On the other hand, no body size effect was found in 2016. This result may be caused by the following two factors: the 137Cs concentration of the lake water reached a steady state after May 2014; wakasagi is a small plankton-feeding fish, while it is known that larger piscivorous fishes show the strong body size effect. Teff of the 137Cs concentration in wakasagi 0+ consists of two components, fast- and slow-term ones, and the decay rate of the 137Cs concentration in wakasagi 0+ was greatly reduced. As stated above, the radiocesium contamination in Lake Onuma has still been lasting; we are thus continuing our monitoring studies.
アナリティカルレポート
  • 羽倉 尚人, 松浦 治明, 内山 孝文, 岡田 往子
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2017 年 66 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2017/03/05
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー
    Passed five and a half years from the Great East Japan Earthquake, a large number of research papers on the distribution of radioactive material have been published. In this work, based on the monitoring value of the air-dose rate and the radioactive cesium concentration in Tokyo City University Atomic Energy Research Laboratory, we focused on the temporal change of these values and indicated the attenuation of the dose rate. According to the long-term monitoring results, before the Fukushima NPP accident the average of air-dose rate, which is the background level of the laboratory, was 0.034 μSv h–1. In Aug. 2013, the measured data was close to the background value. On the other hand, the concentration of radioactive cesium (Cs-137) decreased drastically until Sep. 2011, and after that the attenuation speed had been quite slow. We focused on the slow pace of the attenuation region, and indicated the correlation coefficient between the air-dose rate and the Cs-137 concentration of airborne particulate matter. As a result, we considered that the magnitude of the correlation coefficients might be related to the existence form of Cs-137.
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