分析化学
Print ISSN : 0525-1931
68 巻, 4 号
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総合論文
  • 伊藤 一明, 竹田 一彦, 廣川 健
    原稿種別: 総合論文
    2019 年 68 巻 4 号 p. 227-239
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    海水中の無機ヨウ素は,ヨウ化物イオン(I)とヨウ素酸イオン(IO3)として存在している.それらのイオンクロマトグラフィー(IC)とキャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)による測定を検討した.ICでは低イオン交換容量(0.03 meq. mL−1)の強塩基性ポリメタクリレート系陰イオン交換カラム,高濃度塩化ナトリウム溶離液,紫外(UV)検出器を用いて,海水試料中Iの直接UV測定を報告した.分離カラムとして陽イオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウム陽イオン(CTA))を平衡吸着させた逆相系オクタデシルシラン(ODS)カラム(CTA吸着─ODSカラム)を用いるとIC-UV測定が可能であった.IO3はオフラインでIに還元してUV測定した.イオン交換容量が大きい疎水性のポリマーカラム(>3.7 meq. g−1)あるいはCTA吸着─ODSカラムでは,大量の海水試料中Iの濃縮が可能であり,高感度検出(μg L−1レベル以下)が達成できた.ドデシルアンモニウム陽イオン(DA)を吸着させたDA吸着─ODSカラムを用いたICでは,IとIO3とともに亜硝酸イオン(NO2),硝酸イオン(NO3),臭化物イオン(Br)の測定が可能であり,分離機構を考察した.実試料として瀬戸内海水を用い,海水の動態を考察した.過渡的等速電気泳動前濃縮法を併用したキャピラリーゾーン電気泳動法(tITP-CZE)ではIの検出感度はμg L−1レベル以下であった.IとIO3の分別測定,IO3のIへのオンキャピラリー還元による測定が可能であった.有機ヨウ素をIとして分解後,他の無機ヨウ素も含め全ヨウ素を測定した.多成分の陰イオン検出が可能であった.北部太平洋で採取した実試料に対してヨウ素の深度別測定を適用した.

  • 森 勝伸, 増野 友重, 金井 朝子, 小﨑 大輔
    原稿種別: 総合論文
    2019 年 68 巻 4 号 p. 241-251
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    近年,著者らは新たなイオンクロマトグラフィー(IC)用固定相を創出するため,耐薬性及び耐熱性に優れたジルコニア(ZrO2)を固定相に用いたイオン分離の研究を行っている.今回は,ジルコニア充填カラムにリン酸,α-ヒドロキシ酸(クエン酸)及びジアリルアミン─マレイン酸共重合体(DAM)をそれぞれ修飾し,無機イオンの保持挙動を調べた結果を紹介する.未修飾のジルコニアそのものはpH 6〜7に等吸着点を有しており,酸性では陰イオンを,塩基性では陽イオンを保持できる性質を持っており,フッ化物イオンに対してジルコニアに結合している水酸基あるいはジルコニアに配位しているH2Oとの配位子交換に基づき選択的に分離できる.一方,ジルコニアに対し親和性の高いリン酸とα-ヒドロキシ酸であるクエン酸を修飾すると,酸性溶離条件で陽イオン交換基として機能し,一方,両イオン性のDAMをジルコニアに修飾した固定相では,酸性溶離条件において分子内のアミノ基が陰イオン交換基として機能することが分かった.現段階では,ジルコニア固定相を用いるイオン分離は,理論段や分離能の点で従来のシリカゲル及びポリマー担体のイオン交換固定相よりも劣るものの,未修飾の状態でもフッ化物イオンを選択的に分離できること,リン酸や有機化合物を修飾させることでイオン交換体として機能させることができること,修飾カラムではより高温条件(80℃)で安定な保持が得られることを見いだした.

技術論文
  • 小﨑 大輔, 谷畑 壮磨, 森 勝伸, 田中 一彦, 山本 敦
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    植物の生育に必要なイオン性栄養塩類である無機態窒素(NO3,NO2,NH4),HPO42−及びKの簡便な同時分離定量のために,導電率検出/紫外吸光光度検出イオン排除/陰イオン交換型イオンクロマトグラフィー(IEC/AEC)を検討した.本研究では,分離カラムとして親水性多孔質ポリマーをベースゲルとする水酸化物型の強塩基性陰イオン交換樹脂カラムを,溶離液として塩基性溶離液の中でも液体肥料中に含まれるK及びNH4の分離・検出を妨害しないNaOHを用いた.最適分離条件である3.5 mM NaOHを溶離液としたとき,陽イオン(K,NH4)及び陰イオン(NO3,NO2,HPO42−,Cl,SO42−)は,約25分以内で同時分離定量が達成された.また,同じ分離条件下における検量線の直線性,検出限界,再現性及び添加回収率は,良好な結果であった.本法の適用により,液体肥料中の無機態のイオン性栄養塩類の同時分離定量が可能であり,今後の水耕栽培における液体肥料の適正な管理に資する有用な情報が得られた.

  • 黒木 祥文, 山本 喬久
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    分析に用いる超純水は,サンプリング容器,実験室環境,分析者自身などの様々な要因によって汚染され,分析装置に供給する前にすでに水質低下している場合がある.イオンクロマトグラフィー(IC)分析では,インライン分析のためのデバイスが開発され,それに応じた操作方法が提案され,分析精度の向上につながっている.必然的にこの装置への超純水の連続供給や水質の改善などの新しい機能が必要とされていた.著者らはこれらの要求を満たすために,連続供給が可能な超純水装置を開発し,超純水をICへダイレクト供給するICシステムを構築した.本研究では,溶離液生成モジュールへ超純水を直接供給する本システムの精度評価を行った.超純水を直接ICに供給した場合と,いったん容器に水を採取した場合とを比較した.今回開発したシステムは,直接供給された超純水により,バックグラウンドを低減し,長期連続分析時における安定性を維持した.超純水ダイレクト供給型イオンクロマトグラフはIC分析の精度向上に非常に有効であることが示された.

  • 南 秀明, 山梨 眞生, 塩見 昌平, 丸岡 智樹
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 4 号 p. 265-274
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    燃焼イオンクロマトグラフィーによる炭化ケイ素粉末中のフッ素分析に関して,燃焼炉の燃焼時間・温度,燃焼炉に導入するキャリヤーガス(大気,混合空気,アルゴン及び窒素)の種類,加湿ユニットによるキャリヤーガスの湿潤・乾燥条件などの各処理条件が,フッ素の定量値,炭化ケイ素の質量変化及び結晶構造にどのように影響するかについて検討した.その結果,燃焼温度: 1200℃,燃焼時間: 30分において,湿潤条件では,大気,混合空気,アルゴン及び窒素のすべての気流中で,認証標準物質であるファインセラミックス用炭化ケイ素微粉末試料(α形8001a及びβ形8002a)のフッ素の定量値は,参考値 ± 拡張不確かさ(8001a: 700 ± 160 mg kg−1,8002a: 750 ± 54 mg kg−1)内の結果が得られた.いずれの試料も大気,混合空気気流中でのフッ素の定量値は,アルゴン,窒素気流中に比べて30 mg kg−1程度低く,酸素の影響が若干認められた.一方,乾燥条件では,大気,混合空気気流中でのフッ素の定量値は参考値 ± 拡張不確かさ内であったが,アルゴン,窒素気流中でのフッ素の定量値は参考値 ± 拡張不確かさの半分程度となった.フッ素の抽出にはキャリヤーガスに含まれる酸素もしくは水分の最適化が重要であることが示唆されたが,個々の影響については,キャリヤーガスに含まれる酸素濃度や加湿ユニットの水の溶存酸素濃度の影響などさらなる検討が必要である.また,質量変化と結晶構造に関して,8001a,8002aのいずれの試料も,燃焼処理に伴い質量が増え,その質量変化の挙動は結晶構造の違いにより大きく異なっていたが,質量変化及び結晶構造変化に対するフッ素の定量値への相関は認められなかった.

ノート
  • 辻 一真, 丸尾 雅啓, 小畑 元
    原稿種別: ノート
    2019 年 68 巻 4 号 p. 275-278
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    By using ion chromatography (IC), we developed a highly sensitive method for the determination of methylphosphonate present in natural water with an arrangement of the chromatographic conditions that fit for trace phosphate ion in P-limited Lake. IonPac AS-23 (Thermo Fisher Scientific) was applied as analytical column. For the suppression of baseline electroconductivity, an external mode was applied to reduce the baseline noise of chromatograms. The eluent concentration was reduced to half from the recommended condition for an effective separation of the peak of methylphosphonate from those of major anions (sulfate, phosphate, and nitrate). As the peak area linearly increased with an increase in the sample injection volume up to 5 mL, this volume was applied for the analysis of natural samples. The peak area showed a linear increase from 0 to 10 nmol L−1 (R2 = 0.9982). The detection limit was 5 pmol L−1 (S/N = 3). Methylphosphonate was clearly detected in samples from anoxic spring water and from that of R. Amano close to that spring with a concentration of 2.9 nmol L−1 and 2.3 nmol L−1, respectively.

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