土壤を構成する物質はきわめて多種多様である.すなわち土壤は動植物および微生物遺体,その分解産物,更に土壤中において新たに形成された,土壤に特有な有機物である腐植,岩石破片や鉱物,それらの風化生成物である各種の粘土,酸化物,イオン等の複雑な混合系である.従って土壤の化学分析における分析対象は著しく多く,しかも土壤学の進歩あるいは社会事情の要請によってその数はますます増加するのであるが,その背後には分析化学一般における進歩が伴なっていることは見のがせない.近年土壤中の各種有機化合物の検索ないしは定量,微量元素の定量などに関する報文の著しく多いことはその一例であろう.土壤の化学分析に関する成書あるいは総説も少くない.なお本稿に主として引用した英国の土壤肥料関係抄録誌Soils and FertilizersはS.F.と略記した.
肥料の分析法の報告は,製造試験や植生についての特別の目的のほかは,公定分析法の改正,追加に対してなされたものが多い.内外の肥料分析法の概要については筆者が分析化学誌に紹介した.本邦の公定法の改正,追加に対する研究の多くは,農林省農業技術研究所および肥料検査所,またはこれらに肥料生産業者の分析小委員会との共同研究であり,その結果などから公定法に採用する.それゆえこれらの報告は,研究担当者の属する機関誌,また関係学会誌に報告される.とくに肥料分析法の報告の多い米国では,主としてJ. Assoc. Offic.Agr. Chem., J. Agr. Food Chem. に報告される.そのほかの国は,それぞれの関係会誌に報告するが,肥料についての報告は少ない.また最近の肥料分析法の実験法,解説書が前記農研,肥検で行われる講習録および文献のほか現在適当なものが市販されていない.
最近の傾向として,分析法は機器による研究が多くなり,分析法の改正や追加などの試験に統計的方法が利用され,とくに研究対象が公定法について多いので,カタヨリ,バラツキの大いさの調査報告が多くなってきた.
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