分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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総合論文
  • 坂口 洋平
    原稿種別: 総合論文
    2022 年 71 巻 6 号 p. 307-317
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    液体クロマトグラフィー(LC)分析分野における誘導体化法は,測定対象物を分析に有利な化学構造へ変換する手法であり,特に蛍光誘導体化法に代表されるように検出器に対する応答性を向上させることを目的とした誘導体化法が多く報告されている.著者らはこれまでの研究において,検出器に対する応答性の向上だけでなく,誘導体化試薬が持つ特殊な物理的性質を利用することにより,従来法に比べより選択性,定量性が向上するような誘導体化法の開発を進めている.まず,パーフルオロアルキル基同士が示す特異的な親和性(フルオラス)に着目し,それを測定対象物に化学修飾するフルオラス誘導体化法を開発した.次にタンパク質を対象とし,安定同位体標識と高感度化を目的とした化合物をそれぞれ別の官能基へ誘導体化する手法や,微小変化評価を可能とする誘導体化法を開発した.開発した誘導体化法は,LC-蛍光検出法(LC-FL法)またはLC-質量分析法(LC-MS法)へ展開しており,それらについて以下にまとめる.

  • 髙田 匠
    原稿種別: 総合論文
    2022 年 71 巻 6 号 p. 319-324
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    加齢後の組織中タンパク質内部の様々な部位に存在すると考えられる異性化Aspを同定するためには,キラル誘導体分離法,ジアステレオマー誘導体化法など煩雑な研究手法の組み合わせが一般的であった.これに対して,著者らの研究室では質量分析装置を『質量検知装置』として用い,液体クロマトグラフィーと組み合わせた手法を開発,改良して簡便・迅速にタンパク質中の異性化Asp部位を決定することに成功した.本手法では,2段階の酵素消化に応じて生成する合計4つの試料を同条件のnano-scale液体クロマトグラフィー連結型の質量分析装置へと導入する.各ペプチド断片中でAsp異性体に準じた酵素の作用による分子量変化が生じるため,質量で描くクロマトグラムから各々対応するペプチド断片のピークが消失する.これを利用することで各Asp異性化部位の同定及びAsp異性体の区別を同時に行うことが可能となった.

報文
  • 末吉 健志, 松田 景太, 遠藤 達郎, 久本 秀明
    原稿種別: 報文
    2022 年 71 巻 6 号 p. 325-331
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    デジタル電気泳動法は,各種機能性ヒドロゲルに対する試料分子の通過・非通過を利用した分離・濃縮法として近年注目されているが,ヒドロゲル充填デバイス作製の煩雑さが大きな課題であった.そこで,本研究では,簡易デバイスを用いたデジタル電気泳動技術の開発と,機能性ヒドロゲルによるタンパク質の分離・濃縮評価のため,異種ポリアクリルアミドゲル連続充填キャピラリーデバイスを作製し,デジタル分子ふるい電気泳動の基礎評価を行った.その結果,プレポリマー溶液中アクリルアミド総濃度(%T)と通過・非通過タンパク質の分子量との相関が明らかとなった.また,濃縮効率評価の結果,最大で約180倍の高感度化が確認された.さらに,5, 15, 25%Tポリアクリルアミドゲル連続充填デバイスを用いたデジタル分子ふるい電気泳動によって,分子量が異なるタンパク質の分離と濃縮が同時に達成された.以上の結果から,作製したデバイスを用いた簡便・高分離能・高感度なデジタル電気泳動が実証された.

  • 山本 佐知雄, 宮脇 直久, 川上 夏海, 木下 充弘, 鈴木 茂生
    原稿種別: 報文
    2022 年 71 巻 6 号 p. 333-339
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    8-Aminopyrene-1,3,6-trisulfonic acid(APTS)は三つのスルホン酸基を有している蛍光試薬であり,その高い電気泳動移動度を利用することでAPTS標識化糖鎖がキャピラリー電気泳動(CE)で分析されている.しかしながらCE単独で糖鎖の構造解析を達成することは困難である.またAPTSは親水性が非常に高いため,一般的な逆相クロマトグラフィーや親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で分離が困難であった.そこで著者らは,官能基にテトラゾール基を有するポリマーが結合したDCpak PTZカラムの試作品を使用してHILICモードを利用したAPTS標識化糖鎖の分離方法を開発した.しかしながら開発した方法では再現性,構造の類似した糖鎖の分離能が低く,溶出時間も1時間程度を要した.特にシアル酸含有糖鎖においては,成分ごとの分離がほとんどできなかった.そこで本研究では市販のDCpak PTZカラムを利用し,糖鎖の分離方法を再検討した.また,DCpak PTZカラムで分離した糖鎖に関して分取,脱塩した試料をCEの試料に添加してがん細胞のピークの同定を行った.

  • 小林 宏資, 和田 啓男, 久保 拓也, 大塚 浩二
    原稿種別: 報文
    2022 年 71 巻 6 号 p. 341-349
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    界面活性剤や緩衝液へ溶解されたインタクトタンパク質の高精度LC及びLC/MS分析へ向け,モノリス型シリカを基材とするナノフローLC用トラップカラムを開発した.タンパク質と各種添加剤との分離のため,吸着層としてシリカ表面へC4修飾を施した.C4修飾モノリス型シリカトラップカラムではイソクラチック溶離によるタンパク質と界面活性剤(CHAPS)の分離が容易であった.また,高濃度なタンパク質可溶化剤(10 mmol L−1 CHAPS,1 mmol L−1 EDTA・2Na,6 mol L−1グアニジン緩衝液)に溶解したタンパク質試料に対してLC及びLC/MS分析を行った.その結果MSでは,MSスペクトルのデコンボリューションにより適正な分子量が得られた.吸着ロスが懸念される低濃度のタンパク質試料(0.001 mg mL−1)に対しても検量線で高い直線性を与える等,モノリス型シリカトラップカラムはインタクトタンパク質のLC及びLC/MS分析に有用であった.

  • 岸川 直哉, 沼田 翔, 梅野 智大, Mahmoud EL-MAGHRABEY, 大山 要, 田中 正一, 黒田 直敬
    原稿種別: 報文
    2022 年 71 巻 6 号 p. 351-356
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,非天然型アミノ酸である2-アミノイソ酪酸(2-aminoisobutyric acid, Aib)を含むペプチドで修飾した新規固定相を調製し,HPLCにおける分離挙動を調査した.1残基のAib及び2残基のL-ロイシンから構成されるトリペプチドであるAib 3mer,及びそれら2分子が縮合したヘキサペプチドであるAib 6merをaminopropylsilyl silica gel(APS)へと修飾後,ステンレススチール製カラムに充填した.調製したカラムについて,移動相中の有機溶媒含量の変化が低極性化合物の保持に与える影響を調査した.その結果,有機溶媒含量の増加に伴って保持が減少するという典型的な逆相モードの分離挙動が見られた.次に,移動相中の有機溶媒含量の変化が高極性化合物の保持に与える影響を調査した.その結果,移動相中の有機溶媒含量が高い領域において,有機溶媒含量の増加に伴う高極性化合物の保持時間が延長するHILICモードの分離挙動が確認された.本研究で開発した新規固定相は,低極性・高極性化合物の両方の分離に利用可能であることが示された.

ノート
  • 柴崎 浩美, 横川 彰朋, 降幡 知巳
    原稿種別: ノート
    2022 年 71 巻 6 号 p. 357-363
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    著者らはすでに血中コルチゾールと6β-ヒドロキシコルチゾール(6β-OHF)のLC-MS/MS同時定量法を確立し,血中6β-OHF/コルチゾール濃度比がCYP3A活性評価の指標となることを示している.血中6β-OHF/コルチゾール濃度比の臨床応用には,健常人データを蓄積し,基準範囲を設定する必要がある.本研究では,試料収集を簡便にするために,抗凝固剤及び保存法が血中コルチゾールと6β-OHFの定量値へ与える影響の解明を目的とした.また,代替マトリックスを用いない検量線についても検討した.ヘパリンナトリウム,分離剤,EDTA2Kによる採血当日の定量値には差がなく,抗凝固剤が6β-OHF/コルチゾール濃度比によるCYP3A活性評価に影響しないと判断した.また,1週間保存した試料の測定結果より,血液試料の保存は,血漿(けっしょう)あるいは血清に分離した後に凍結保存することが望ましいことを明らかにした.しかし,薬物投与設計において重要となる極めて活性が低い患者を見いだすうえでは,全血液や血清を冷蔵保存した血液試料を用いても問題ないとの結論を得た.

アナリティカルレポート
  • 由井 夕湖, 太田 茂徳, 青山 千顕, 角田 誠
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2022 年 71 巻 6 号 p. 365-368
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/07/07
    ジャーナル フリー

    糖鎖は,生体内において重要な機能を有する.糖鎖分析においては,蛍光誘導体化後に高速液体クロマトグラフィーなどによる分離分析が行われる.この際,過剰な未反応の誘導体化試薬の除去が必要である.本研究においては,この前処理を簡便に行うために,固相抽出遠心カラムであるMonoSpinカラムを用いて,2-aminobenzamide(2-AB)による誘導体化糖鎖の精製について検討した.官能基としてアミド基,アミノ基を有するスピンカラムMonoSpin Amide,MonoSpin NH2は,2-ABの除去及び標識糖鎖サンプルの回収において,従来の固相抽出法と同等の効率を示した.MonoSpinカラムは,遠心分離操作のみで簡便な前処理が可能であることから,ハイスループットな糖鎖サンプル調製への応用が期待される.

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